2日投開票された東京都議選(定数127)は、小池百合子知事率いる地域政党「都民ファーストの会」の49人が当選し、第1党になりました。公明党の23人なども含め、小池氏の支持勢力で過半数の79議席を獲得しました(都民ファ推薦の無所属6議席など含む)。
自民党は過去最低の23議席で、これまで最も少なかった1965年と2009年の38議席を大幅に下回る歴史的大敗となりました。
公明党(23議席)は7回連続の全員当選となりました。
共産党は19、民進党は5、地域政党「東京・生活者ネットワーク」と日本維新の会が、それぞれ1議席でした。
AERA dot.の記事を紹介します。
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安倍自民党、都議選で歴史的大敗「首相の判断ミス」
進次郎人気にあやかって内閣改造も
AERA dot. 2017年7月2日
注目された東京都議会議員選挙が7月2日、投開票され、下馬評とおり、小池百合子都知事率いる地域政党「都民ファーストの会」(以下は都ファ)が圧勝となった。
都ファは第1党となり、公明党などの支持勢力を含めて過半数を大幅に上回る79議席を獲得した。
一方、60人を擁立した自民は、安倍晋三首相はじめ閣僚らが積極的に応援に回る総力態勢でのぞんだが、過去最低の38議席を大幅に下回り、まさかの23議席(現有57)にとどまり、歴史的惨敗となった。
「事前の調査と数字が違いすぎるじゃないか…」
ある自民党議員は、午後8時の開票を前にメディア各社の出口調査で「歴史的大敗」の情報が伝わると、驚きを隠せなかった。
党内では早くも責任論が噴出している。自民党幹部は言う。
「1年前、小池さんが都知事選に出たとき、推薦していたら、こんなことにならなかった。完全に戦略ミス…。明日から政局だ。もう、与党も野党も関係ない。安倍内閣はそう遠くないうちに総辞職になるかもしれない」
選挙戦最終日の1日には、自民党候補者の応援演説に立った安倍首相に対し、退陣を求めるグループが大声で「安倍、やめろ!」「帰れ!」とコールを連発し、警察官ともみ合いになる騒ぎも起きた。
ヤジが激化するにつれ、安倍首相もヒートアップし、「こんな人たちに負けるわけにはいかない!」と応酬したが、結果は……。
安倍首相は自民党本部内(東京・永田町)に設けられた都議選対本部センター党本部に2日夜、姿を見せず、都内のレストランで、麻生太郎副総理兼財務大臣、菅義偉官房長官らと会談し、今後の政権運営を話し合ったとされる。
一方、記者会見の場には姿をみせず、自民党幹事長室にこもっていた二階俊博幹事長は淡々とこう話した。
「厳粛に受け止め、反省すべき点は大いに反省し、これからの党勢回復に全力を尽くしてまいりたいと思っております。(責任はどなたが?)これから検討をしたいと思います」
記者会見に出席した都連会長の下村博文幹事長代行は、「国政の問題が都議選に影響したとなると残念」と力なく、答えるしかなかった。
自民党の閣僚経験者は、「安倍首相のメチャクチャな政権運営のツケが一気にきた」と話す。
「下村の加計からの〝闇献金〟騒動、稲田(朋美)の『自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願い』という憲法違反発言、豊田(真由子)の『このハゲー』という怒声の3点セットのダメージが大きかった。終盤でテレビに3人が映し出されるたび、100票以上は逃げた。安倍政権がこのまま続けば、次の衆院選は勝てない。普通ならもう総辞職モノです。なのに首相自身にその自覚がないことが一番の問題だ」
都議選大敗北が濃厚となり、ある自民党幹部は苦渋の表情で語った。
安倍官邸サイドとしては6月中旬時点で、都議選で第1党を維持できると踏んでいたが、もろくも崩れた。
自民党幹部によると、森友、加計問題の疑惑をかわすため、当初は9月とされていた内閣改造を早め、国会閉幕(6月18日)直後、都議選前に内閣改造を断行する方針を一旦は決めたが、土壇場で安倍首相が見送ったという。
「完全に裏目に出た。改造時期を見間違えた首相の判断ミス」(前出の自民党幹部)
加計疑惑の〝実行犯〟としてやり玉に挙がった萩生田光一官房副長官や、下村、稲田、豊田の戦犯トリオが最大派閥・細田派に集中している点について、同派最高顧問の衛藤征士郎・元衆院副議長は本誌にこう語った。
「総裁派閥として、大きな責任があり反省している」
自民党幹部によると都議選劣勢が伝えられていた6月28日夜に官邸中枢から自民党執行部に改造での更迭リストと日程が届けられたという。
「更迭リストには共謀罪でめちゃくちゃな答弁をした金田勝年(法相)、防衛相の稲田、加計などで問題発言が多かった山本幸三(地方創生担当相)、前川の乱を抑えられなかった文科相の松野博一、受動喫煙でミソをつけた厚労相の塩崎恭久、北方領土問題で世耕弘成(経産相)と仲が悪い沖縄北方担当相の鶴保庸介の名前があった」
日程は7月中旬が有力視され、野党が求める衆参予算委員会での閉会中審査に応じた後という青写真だ。
政府関係者によると、内閣改造の目玉として、政権が新たに掲げた看板政策「人づくり革命」担当相に日本維新の会創設者の橋下徹・前大阪市長を充て、人気が高い小泉進次郎衆院議員を農水相か厚労相に抜擢する案が挙がっているという。稲田防衛相の後任に国防族の岩屋毅・元外務副大臣、萩生田官房副長官の後任には「細田派の真のホープ」との呼び声が高い西村康稔総裁特別補佐を充てたい意向だ。また、女性閣僚として、乳がんを公表し、政府の「働き方改革実現会議」の有識者委員を務めるタレント、生稲晃子氏や三原じゅん子参院議員らの起用が取り沙汰されている。
6月下旬、首相公邸で首相と2人きりで会食した首相の信頼が厚い政策ブレーンはこう打ち明ける。
「話題はもっぱら憲法改正でした。安倍さんの最優先政策は改憲です。来年の通常国会で発議すべく党内議論を急がしている。国民投票と総選挙との同日選挙は『党派性が出て、すべきではない』と話し、同日選には否定的でした。『次期組閣は仕事がしっかりできる質実剛健な内閣を作りたい』と力が入ってました」
さらに、橋下氏に対して、菅官房長官を通じて、再三にわたり、「国政出馬、入閣要請を行っているが、『本人が首を縦に振ってくれず困っている』」と語ったという。
加計問題で答弁が迷走し、集中砲火を浴びた菅官房長官の処遇について閣僚経験者はこう語る。
「菅さんは霞が関のグリップが落ちたとはいえ、代えたら内閣崩壊です。また最近、メディアや安倍さんにプッツン気味の二階(俊博)幹事長を代えれば、倒閣に動きかねない。下村都連会長は当然、クビだが、基本的な骨格は変わらず、目新しい印象はない」
その上、首相への不信感は党内で募っている。
「改造に失敗したら政権は維持できない。報道各社の内閣支持率は30%台に下がるだろう。10年前に健康問題で辞任した雰囲気に似てきた。異論を封じられてきた8回生以上のベテラン中心に不満が爆発している。特に二階派の今村雅弘さんが復興相の当時、失言したときはすぐに首を切ったのに、自派閥の稲田は森友問題での虚偽答弁、自衛隊の日誌隠蔽問題、憲法違反発言があってもかばい続けた。完全なえこ贔屓。首相はもう信用できない」(ベテラン議員)
都議選の大敗北が号砲となり、「ポスト安倍への激しい戦いが始まる」(細田派議員)。
(本誌・村上新太郎、西岡千史)
※週刊朝日 2017年7月14日号より抜粋、加筆