2017年7月25日火曜日

25- 横浜市長選 自公・連合を敵に回して戦う市民派候補

 375万人を擁する巨大市横浜の市長選は30日に投票日が行われます。
 自公と連合の応援を受けて3選を目指す林文子現市長はかつてカジノ誘致を公言していましたが、女性の80%がカジノ誘致に反対であることを知ってからはおくびにも出さなくなったということです。
 もう一つの争点は「学校給食」の是非で、林市長は中学校の学校給食に後ろ向きで、政令指定都市で中学校の給食がないのは横浜だけという状態なので、当然子育て世代には不評です。

 林陣営を支える「自・公・連合・民進の一部」というオール与党に対して、伊藤ひろたか氏は、「カジノより学校給食を」と明確な方針を掲げています。伊藤陣営の中心は市民団体で、庶民の不満と不安に応えることで熱烈な支持者を広げ、林候補を追撃しています。

 23日に行われた仙台市長選で野党統一候補の郡氏が快勝し、市民側はいま大いに意気が上がっています。安倍政権の超反動政治と強引な政治手法に世の批判が高まっているなか、カジノを誘致し学校給食はしないという反市民政治に負けるわけにはいきません。横浜でも野党候補が勝てば安倍政権の受ける打撃は測り知れません。
 それなのに民進党はこの期に及んでも自主投票だということです。党内がバラバラで空気が読めず、肝心な時に全く役に立たない政党は自滅の道を歩んでもらうしかありません


 田中龍作ジャーナルと現代ビジネスの記事を紹介します。
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【横浜市長選】 連合を敵に回して戦う市民派候補 
労働者「給食は確実な希望」
田中龍作ジャーナル 2017年7月24日
 日本最大市の市長選挙には日本政治の病理が凝縮されている。圧倒的多数の人々が拒否する政策を掲げていても、自公の現職(現政権)は強大であるということだ。横浜の場合、連合と民進の一部が乗っかるため、さらに始末におえない

 通勤客、買い物客がひっきりなしに行き交う横浜駅。市民グループが連日、「カジノ要りますか、要りませんか?」のシール投票を呼びかけている。
 道行く人たちは吸い寄せられるように貼りに来て、「要らない」はアッという間に色とりどりのシールで一杯になる。
 「市長選挙の際、カジノを投票の判断材料にするか?」と尋ねると、年配の女性は「あんなの(カジノ)、やっちゃダメ」と顔をしかめた。
 カジノ誘致の是非を問う世論調査で80%が「要らない」と答えたというが、シール投票で見る限り95%である。

 世論を考慮してか。カジノ推進を唱えていた現職の林文子は、選挙戦ではカジノのカの字も言わない。
 カジノ推進に加えて林が中学校の学校給食に後ろ向きであることも、子育て世代には不満だ。全国の政令指定都市で中学校の給食がないのは横浜だけである。
 チャレンジャーで前市議会議員の伊藤ひろたかが掲げる「カジノより学校給食を」は、庶民の不満と不安に応えている
 林陣営を支えているのが「自・公・連合・民進の一部」というオール与党であるのに対して、伊藤陣営を支える中心は市民団体である。
 「伊藤選対」の大黒柱は民進党の真山勇一議員だが、真山を昨夏の参院選で当選に導いたのは、市民たちで作る勝手連だった。「原発反対」を唱える真山は、いっさい連合の支援を受けなかった
 現職を激しく追い詰める伊藤陣営だが、今ひとつ完全燃焼しきれていない。
 昨夏の参院選で真山の勝手連をつとめたYが、今回伊藤の選挙も手伝う。選挙の裏も表も知り尽くした男だ。Yは次のように分析しアドバイスを送る。
 「真山さんは細かく細かく回っていたけど、伊藤さんは殿様選挙だ。大きな駅ばかりでなく、もっと小さな所まで足を運ぶべき」。

 横浜駅西口近くの広場で23日に開かれた伊藤陣営の街頭演説には大勢の市民が詰めかけた。老いも若きも男も女も、熱い視線で伊藤を見つめた。ベビーカーを押す母親は最前線付近で演説に耳を傾けた。
 「何十年もずっと給食なかったのに今回やっと給食ができる。ずっとないのが当たり前だったけど嬉しい」。友人の子供が中学1年生という女性(50代)は顔をほころばせた。
 夢を現実と錯覚するほど、彼女は希求しているのだろう。痛々しくもあったが、これが横浜の母親たちの切なる願いだ。
 時給1500円を目指す労働運動に携わる女性は「給食は栄養士や調理師の雇用になります。地元の農業も潤います。カジノとは大違いです。私は確実な希望の方に賭けたいです」と話した。
 開票日の30日夜、「受け皿になれなかった」は聞きたくない。(敬称略)
〜終わり~


混迷の横浜市長選!争点はやっぱり「カジノか否か」
     ドンも県警もゾロ動き出し
伊藤 博敏 現代ビジネス 2017年7月20日
林市長が青ざめた調査結果
横浜市長選が、16日に告示され、現職の林文子氏(71)、新人で元衆院議員の長島一由氏(50)、新人で元民進党横浜市議の伊藤大貴氏(39)の三人が立候補した。

30日の投票まで選挙戦が繰り広げられ、人口300万を越す横浜市のリーダーが選ばれる。福祉と医療費が増加、逼迫する財政をどう立て直すかといった課題は山積するが、争点をひとつに絞り込めば、「カジノの是非」を問う選挙となる。

色分けはハッキリしている。カジノ推進派が林氏で、長島、伊藤の両氏は反対派。しかし選挙が近づくにつれ、カジノ誘致に最も熱心な首長だった林氏の主張がトーンダウン。16日、横浜駅西口で行った第一声でも、「横浜市の成長のためのシナリオは、ひとつではありません」と、カジノ誘致を争点とする動きを牽制した。
逆に、長島氏は「NO! カジノ」と書いた看板を掲げた選挙カーの上に立ち、「この市長選は、横浜にカジノが必要かどうかの住民投票です」と、訴えた。伊藤氏もこの選挙戦には二つの争点があるとして、「カジノに頼らない街づくりと中学校給食の実現です」と、声を張り上げた。

アベノミクスの成長戦略のひとつにカジノを取り入れている安倍晋三政権は、昨年末の臨時国会で統合型リゾート施設(IR)整備推進法(カジノ推進法)を成立させた。安倍政権を支える菅義偉官房長官は、自らの選挙区である横浜でのカジノ誘致を促進、“子飼い”の林市長は、14年の年頭会見で早くもカジノ誘致を表明している。
「機は熟した」と、カジノ誘致を公約に掲げても良さそうなものだが、林氏が期待する女性票を中心に、カジノ反対派が多いことに気付き、今年に入ってスタンスを変えた。世論調査の結果が、「女性の8割以上がカジノ反対」と聞いて、林氏は青ざめたという。

加えて、安倍内閣の人気急落。共謀罪の強引な強行採決、森友学園、加計学園問題での国民を舐め切ったような国会答弁に批判が渦巻いており、菅官房長官の“手綱”も疑問視されている。都議選での自民党大敗は、国民の怒りの表明だが、カジノ法案の成立も強引だった。
三選を目指す林氏が、カジノ誘致を鮮明にすると、カジノそのものの反対派に加え、公明党など従来の支持層からそっぽを向かれる可能性もある。

「ハマのドン」が動く
今回、民進党は自主投票に回ったが、13年の市長選で林氏は、自民、民主(当時)、公明の推薦を受け、圧勝だった。カジノ反対派の二人が立ったことで反対派の票は割れるが、「多選、高齢批判」もあるのだから危険は避けたい。
しかし「カジノを争点にしない」という姿勢が、今度は「カジノ隠し」という批判を受ける。林氏は、それだけの動きをこれまでしてきた。

カジノ誘致表明の3ヵ月後の14年4月、市役所内にプロジェクトチームを設置。後押しする菅氏は、「横浜をプッシュしたいがそれでもいいか」と、舛添要一都知事に“仁義”を切りに行き、「ご遠慮なく」という快諾を得たという。この時点で、「カジノ第一号は横浜」が濃厚となった。

それまでカジノ誘致をリードしていたのは東京だった。石原慎太郎都知事時代からの継続案件で、後継の猪瀬直樹都知事もフジメディアホールディングスなどとともに、積極的に「お台場カジノ構想」を推進した。
だが、猪瀬都知事は「医療法人徳洲会からの5000万円受領問題」で失脚。石原―猪瀬ラインを引き継がない後任の舛添氏は、カジノに関心を示さず、そこに横浜市が割り込んだ格好だった。

林氏の動きに歩調を合わせるように、横浜財界が動き出し、京浜急行電鉄はIR運営事業への参入を発表。この時点で、候補地は山下埠頭約50ヘクタールが濃厚になった。
最後にダメを押したのが、横浜では知らぬ者のいない「ハマのドン」こと藤木幸夫氏である。港湾荷役の藤木企業会長。横浜エフエム放送社長、横浜スタジアム前会長など数々の要職につき、菅、林の両氏を後援する。
横浜港運協会会長の「ハマのドン」が、山下埠頭のIRに港運協会が主体となることを条件にゴーサインを出し、「カジノも有力な施設選択肢のひとつ」と、公言するようになったことで、横浜カジノは推進体制が整った。

整備へ向けて神奈川県警も動き始めた。
裏経済では有名な話だが、横浜にはXという「裏カジノの帝王」がいて、何軒ものカジノを横浜、東京、札幌などの繁華街で経営している。捜査当局をごまかすために、場所を定期的に移動するのだが、それを可能にするのは、「風俗の帝王」でもあって、キャバクラやクラブを全国展開、「風俗ビル」を所有しているからだ。
神奈川県警は、昨年10月、Xが事実上経営する新横浜の「裏カジノ」を摘発。その余波ともいうべき「みかじめ料の分配」を巡って暴力団同士の争いとなって、Xは拉致監禁された。
すぐに釈放され、大事には至らなかったものの、県警の本気度が伝わってXは活動を控えるようになった。これも、カジノ合法化へ向けた整備の一環といえよう。

スタンスを変化させた林氏は、今年に入ると、「具体的な動きを推進するのは困難な状況」「ギャンブル依存症の問題を解決する仕組みが必要」といった控え目な発言に終始するようになった。明らかに選挙を意識しているが、横浜カジノへ向かって走り出した動きは止めようがないし、本人も選挙が終われば推進派に戻るのだろう。
それを、市民がどう読み取るか。カジノだけでなく、支持率急落の安倍政権への信任も含むだけに、注目度は高い。