加計学園疑惑を中心テーマとする閉会中審査が10日、衆参両院で行われました。注目の前川喜平前文科事務次官は、「背景に官邸の動きがあり、初めから加計学園に決まるように進められた。政権側のキーマンは和泉洋人首相補佐官である」と述べました。
それに対して萩生田副長官など政権側の答弁は従来通り隠ぺいを旨とするもので、特に山本地方再生相の答弁は虚偽と矛盾に満ちたもので民進党・共産党のなどの委員から叱責を受けていました。
自民党関係者は審査会によって問題の解明は進まなかったとこの審査の意義を否定しましたが、それは政権側のメンバーの不誠実な対応によるもので、特に当事者である安倍首相や和泉補佐官らが出席しなかったことに原因があります。
審査の中で自民党の委員たちは前川氏を貶める発言や質問に力点を置きましたが、そのあからさまな意図は聴く人をしらけさせました。
このところ伝えられている各メディアの世論調査では、「加計問題についての首相の説明は納得できない」が「納得できる」をダブルスコア以上で上回っています。都議選の大敗北を受けて安倍首相は今後は「丁寧に(説明し)進めてゆく」と語ったばかりですが、自らが審査会出席を避けた上に、こうした信じがたい弁明を繰り返すのでは国民の疑惑は深まるだけです。解明が進まなければ自民党に対する新たな打撃となって帰っていきます。
日刊ゲンダイと東京新聞の記事を紹介します。
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加計問題で閉会中審査 前川前次官「歪められた行政」暴露
日刊ゲンダイ 2017年7月10日
加計学園の獣医学部新設をめぐる問題で、前川喜平前文科事務次官が初めて国会の議論の場に立った。加計学園ありきで「不公平」「不透明」に行政が歪められた事実を告発。「背景に官邸の動きがあった」と、政権中枢の関与を明言した。
10日午前の衆院の閉会中審査は、文科委員会と内閣委員会の連合審査会として、第1委員室で行われた。参考人として呼ばれたのは前川氏と国家戦略特区諮問会議ワーキンググループ(WG)委員の原英史氏の2人。前川氏は開始予定時刻の午前9時には入室、官僚時代何度も答弁に立った委員会だけに、落ち着いた様子だった。
ところが、審議は冒頭から不穏な空気に。いったん、委員長や質問者が席に着いたものの、再び、委員長以下メンバーが離席。民進党議員が質疑の際に掲示するパネルと配布する資料の取り扱いを巡ってモメ、理事会で協議となったためだ。結局、審議は26分遅れで始まった。
最初の質問者の民進党・福島伸享議員はまず、安倍首相の不在を糾弾。九州豪雨が激甚災害指定となりそうなほどの甚大な被害をもたらしている状況下で、「G20は終了したのになぜすぐに欧州歴訪から帰国しないのか」と追及した。安倍首相はエストニア訪問だけキャンセルして帰国を11日に1日早めたが、福島議員は「まさかこの委員会に出席したくないから帰国しないのか」と疑問を投げかけ批判、安倍首相と昭恵夫人出席の集中審議の開催を求めた。
加計問題への官邸の関与について問われた前川氏は、「直接の担当は内閣府だが、その背景には官邸の存在があり、和泉洋人首相補佐官がさまざまに動いていたことは、文科省が公開した文書からも明らかだ」と、官邸の関与を明言した。
また、国家戦略特区の規制改革で獣医学部の新設が認められたことについて、「どこに事業をやらせるか、という穴のあけ方に不公平、不透明な部分がある。初めから加計学園に決まるよう結論までのプロセスが進められたように見える」と、加計ありきで行政が歪められたと断言した。前川氏は終始、冷静な口調だった。
■萩生田副長官は「官邸の意向」発言を全面否定
委員会には、山本幸三特区担当大臣や文科省の常盤豊高等教育局長も出席して答弁した。
山本大臣は獣医師の需給について「量や数をはっきり示すことは無理」とトンデモ発言で場を騒然とさせた。ダラダラ発言を続け、委員長(自民党)から「答弁は簡潔に」と注意される場面もあった。
常盤局長は文科省が公開した昨年10月21日付の文書について聞かれると、萩生田官房副長官とのやりとりについては「記憶にない」を繰り返した。
前川氏の発言と山本大臣や萩生田副長官の答弁は食い違うばかりで、共産党は前川氏と萩生田副長官、和泉補佐官の3人の証人喚問を求めた。
「特区担当は内閣府だが、背後に官邸の動きがあった。和泉洋人首相補佐官がさまざまな動きをしていた」――。
これまでの会見と同様、国会の場でも堂々とした様子でこう訴えた前川氏。あらためて獣医学部新設をめぐり、「(選定の)プロセスが不透明で不公正だと思っている。初めから加計学園と決まっていた」と強調した。
「行政が歪められたとは何か。隠蔽された事実とは」。共産党の宮本岳志議員がこう尋ねると、前川氏は国家戦略特区の規制改革に触れつつ、「(岩盤規制に)穴を開けるかどうかではなく、穴の開け方、穴を通ってどの主体がやるのか。規制緩和の恩恵を受けるのか。その結論に至るまでのプロセスに問題がある。不公平、不透明な部分がある」と答えた。
獣医学部新設で満たすべき条件である「石破4条件」に照らし、「今治市の提案が合致しているかどうか十分な議論がされていない。不公平で、国民から見えないところで決定された」と訴えた。
一方で、萩生田光一官房副長官が「首相の意向」を示したとされる文書について、前川氏が「在任中に目にした」と断言したのに対し、萩生田副長官は表情をこわばらせ「このような項目をつまびらかに発言した記憶はない」と全面否定した。
前川氏、加計問題で発言 「背景に官邸の動きがあった」
東京新聞 2017年7月10日
安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部新設を巡り、衆院文部科学、内閣両委員会は十日、前川喜平・前文部科学省事務次官らを参考人招致し、閉会中審査をした。前川氏は国家戦略特区で学部新設を認める過程について「はじめから加計学園に決まるようなプロセスを進めてきたように見える」と発言。「背景に官邸の動きがあった」との見方を示した。
前川氏は昨年九月、和泉洋人首相補佐官に呼ばれ、「総理が言えないから私が言う」と学部新設の早期対応を直接要請されたことを認め、「和泉補佐官がさまざまな動きをしていたことは、(昨年)十月二十一日の文書を見ても明らか」と述べた。
この文書は、「10/21萩生田副長官ご発言概要」の表題で、獣医学部新設に関し、萩生田光一官房副長官の発言をまとめたとみられ、「総理は『平成三十年四月開学』とおしりを切っていた」「官邸は絶対やると言っている」と官邸側の関与をうかがわせる。
「加計学園が誰も文句が言えないような良い提案をできるかどうか」などと、加計学園を前提にしたようなやりとりが記されている「10/7」の文書について、前川氏は「在職中に担当課から説明を受けた際に受け取り、目にした文書に間違いない」と述べた。「10/7」の文書は、文科省の調査では存在が確認できなかった。
萩生田氏は昨年十月七日に文科省の常盤豊高等教育局長と面会した事実を認め、「特区のことについても説明された記憶がある」と発言。ただし、学部新設における自身の関与には「私が総理から指示を受けたり、文科省や内閣府に指示を出したりすることはない」と否定した。
野党から「加計ありき」と批判がある決定プロセスについて、特区審議にかかわったワーキンググループ委員の原英史氏は「全くの虚構」と反論した。これに対し、前川氏は「順次条件を付すことで、加計学園しか残らない。ブラックボックス化されている」と疑問を呈し、「非常に不公平で、国民の見えないところで決定が行われている不明瞭さがある」と指摘した。
この日の審査には、安倍首相や和泉首相補佐官は出席しなかった。政府・与党は、東京都議選の自民党大敗を受け、野党が求めてきた閉会中審査に応じた。参院文教科学、内閣両委員会でも午後から審査がある。
<加計学園問題>
(中 略)
<参考人招致>
(後 略)
加計問題で官邸の関与、主張対立 前川氏「補佐官から要請」
東京新聞 2017年7月10日 19時13分
安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設計画を巡る参院の閉会中審査が10日午後、開かれた。政府の国家戦略特区制度を活用した計画について、参考人として出席した前川喜平前文部科学事務次官は、和泉洋人首相補佐官から早期対応を要請されるなど、首相官邸の働き掛けがあったと改めて強調した。ただ、新たな事実や文書は示さず、萩生田光一官房副長官らは従来通り、官邸の関与を否定。双方の主張が対立したまま審査は終了した。
安倍首相は欧州歴訪中のため出席せず、野党側は首相出席の予算委員会の集中審議や和泉氏らの証人喚問を求めた。(共同)