2017年7月5日水曜日

05- 霞が関の「大反乱」で安倍官邸の転落は止まらない

 「現代ビジネス」が「霞が関(=官僚)の『大反乱』で官邸の転落は止まらなくなる」とする記事を載せました。
 記事の日付は7月4日となっていますが、その中身は「週刊現代」(7月8日号)の記事の転載なので都議選投開票前に書かれたものです。都議選では自民党は予想を上回る大敗北をしたので、記述されている事態はそれによって加速されこそすれ、内容が変わるということはありません。

 前川前文科次官はキャリア(国家公務員)試験を全体の第4位の成績でパスしながら、自分の栄達は願わずに、教育分野に尽くす想いから敢えて文科省を選びました。その気概が現役の官僚たちを奮い立たせたのか、いま文科省の官僚たちが内部告発で政権を揺るがせ始めていますが、安倍官邸はそれを止めることができないということです。
 役人は戦前は天皇の官吏として権勢を誇りました。いまは公僕と呼ばれていますが、彼らが行政のプロであることに変わりはありません。教育行政を誤らせてはならないとする信念と気概を持って、是非共 官邸がダウン・降参するまで闘って欲しいものです。

 ところで財務省の官僚たちも安倍首相には不満を高めているということですが、それは消費税10%アップを早く実現したいという利己的な理由からです。もしも税収が不足であれば所得税の累進課税率の改定などで対処すべきです
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悪夢は繰り返されるのか?安倍官邸「支持率の堤防」がついに決壊
霞が関の「大反乱」で転落は止まらない
現代ビジネス 2017年7月4日
週刊現代 7月8日号
蟻の一穴天下の破れ――。たった一人の元官僚による実名告発が、盤石だった政権をガラガラと突き崩していく。すべては「一強」による慢心と驕りが招いた。第一次政権の「悪夢」を繰り返すのか。

リークはまだまだ続く
文部科学省に今、目に見えない連帯感が広がっている。これまで「三流官庁」と揶揄されてきた文科省が、政権の屋台骨を揺るがせ始めた
「文科省からのリークはまだまだ続きます。前川(喜平・前次官)さんの座右の銘は『面従腹背』ですが、今の省内の雰囲気もまさにそんな感じです。表面上は淡々としていますが、内心は『官邸の思い通りに幕引きはさせない』と燃えている。
最終的な狙いは、森友学園同様、加計学園の獣医学部新設を白紙に戻すこと。そのために、獣医学部の新設を最終的に議論する大学設置・学校法人審議会の開催が予定されている8月に向けて、断続的にネタをリークする手はずを整えている」(文科省関係者)

「総理のご意向」を表す文書の次は、前川氏による実名告発。さらに萩生田光一官房副長官の発言を記した文書と、文科省側は少しずつ官邸サイドを追い詰めてきた。官邸関係者がこう漏らす。
「前川氏とその一派がまだ爆弾を抱えていても驚きません。思い返せば、昨年の秋に前川氏は杉田和博官房副長官に呼び出され、『出会い系バー』通いを注意されています。その頃から、加計学園の獣医学部新設などで官邸に歯向かっていた前川氏は、自分を更迭しようとしている動きに気づいていたはずです。
官邸からの圧力を示す証拠を前川氏が密かに集めていたフシもある。官邸の誰かと面会したときの音声データが出てきたら最悪です。政権が簡単に吹き飛んでしまう。
また、文科省の中にも前川氏に続けとばかりに現役官僚が実名で告発する動きがあると聞こえてくる。実際、前川氏は小泉政権時代に財務課長だった頃、実名で官邸の政策に対して反論するブログを開設していました。それに倣う官僚が出てきてもおかしくない」

若手の同時多発テロ
前川氏はしたたかだ。「一強」と言われる安倍総理に公然と歯向かうにあたって、後ろ盾を万全なものにしている。
「前川氏の妹は、中曽根弘文元外相に嫁いでいます。その父親は言わずと知れた大勲位・中曽根康弘元総理。
実は大勲位は安倍総理との間に因縁があります。小泉政権時代、自民党は議員定年制を徹底して、大勲位に引退を迫った。
その際の『伝書鳩』となったのが当時、党幹事長だった安倍総理です。気位の高い大勲位が、後輩である安倍晋太郎のそのまた息子に政治家としての引導を渡されたのですから面白いはずがありません。したがって中曽根家は、前川氏の反乱を支持しています。
しかも、前川氏の実家は大手冷凍機メーカーの前川製作所。政治的にも経済的にもバックアップがあり、社会的に抹殺されない自信があるからこそ、告発に踏み切ったのです。もう前川氏に怖いものはありません」(全国紙政治部記者)

「官邸の最高レベル」からの圧力をちらつかせて服従をせまる官邸に対して、文科省はゲリラ戦を展開している。
元文科省審議官で、前川氏とも親交のある寺脇研氏が言う。
「文科省には文書を持っている職員がたくさんいるわけだから、それぞれが個人で行動した結果、いくつもの文書がリークされているのでしょう。特別に省内に『前川グループ』というものが存在するわけではなく、個人個人が立ち上がっている。そのことにこそ意味があると思います。
実際、今回のNHKの『クローズアップ現代+』で報じられたメールは前川氏も見たことのないものだったと言っていました」
まさに「同時多発テロ」。だからこそ、これまで幹部の人事権を握ることで霞が関を掌握してきた菅義偉官房長官も、この「反乱」は御しきれない
社会部記者が言う。
「総理の直接の関与があったかは別にして、萩生田副長官や和泉洋人首相補佐官が加計学園の獣医学部新設を認めるよう圧力をかけたのは明白でしょう。
担当する高等教育局の常盤豊局長や浅野敦行専門教育課長も表向きは部下のリークを奨励するはずがありませんが、課長補佐や係長、ノンキャリ職員がしていることを知っていて黙認しています。

今回わかったのは、官邸は霞が関の幹部の動向は封じ込められるが、現場の官僚が反乱しては何も打つ手がないということ。さすがに若手をあからさまに人事で飛ばすと目立ちすぎる。
文書の内容の真偽を確かめる内部調査に対しても、ヒアリングを受けた職員は『記憶が曖昧』としか答えていません。これは、葛藤の中で、『あったことをなかったとはいえない』という信念があるからです」
こういった背景から萩生田副長官が、
〈和泉補佐官からは、(加計学園の獣医学部新設を)農水省は了承しているのに、文科省だけが怖気づいている、何が問題なのか整理してよく話を聞いてほしい、と言われた。官邸は絶対やると言っている〉
〈総理は「平成30('18)年4月開学」とおしりを切っていた〉
などと発言していたとする文書が文科省内部から暴露された。

萩生田副長官がついたウソ
もとより、萩生田副長官は加計学園問題が飛び火するのを恐れて、子供でもわかるウソをついている。安倍総理が加計孝太郎理事長の「腹心の友」であることを最近まで知らなかったと、6月16日の国会で答弁した。
そんなわけはない。萩生田副長官は'13年5月のブログで、安倍総理と加計理事長とのバーベキューを楽しむ写真を掲載している。
しかもこの時に行われたゴルフのメンバー表によれば、1組目のメンバーは安倍総理、加計理事長が同組だった。2組目に萩生田副長官と自民党の中山泰秀副幹事長。3組目には今井尚哉首相秘書官や本田悦朗元内閣官房参与の名前がある。注目は4組目で、安倍昭恵夫人と加計理事長の妻・泰代氏、そして萩生田副長官の妻・潤子氏がともに回ったという。
それぞれが妻を帯同する付き合いをしていて、安倍総理と加計理事長が「腹心の友」の関係にあったことを知らなかったわけがない。

にもかかわらず、萩生田副長官はこの期に及んで『週刊文春』の取材に、「'13年5月、'14年夏と2回、総理の別荘で加計理事長とご一緒しました。ただ、飲食をともにしたのはその時くらい。こうした形で学園の名前が報じられることについては、本当に申し訳ない思いで一杯です」と言う。
また、先の文書についても、〈不正確なものが作成され、加えて、意図的に外部に流されたことについて非常に理解に苦しむとともに、強い憤りを感じております。
いわゆる加計学園に関連して、私は総理からいかなる指示も受けたことはありません〉と文書でコメントを発表した。
しかし、こんな言葉を真に受ける者はいない。民進党衆議院議員の玉木雄一郎氏が言う。
「文科省が存在を認めたこの文書で一番問題なのは、萩生田副長官が『平成30年4月開学』と、開学時期のおしりを切っていることなんです。なぜこの時期かというと、補助金が早く必要だからでしょう。
加計学園グループは、全体として資金繰りが豊かではありません。とにかく新しいキャッシュフローを手にするために、早急に新規学部を開設する必要があったのではないか

加計学園は160名という西日本最大の定員での開設を求めていますが、これはその規模でないと、多額の私学助成金を得られないからです。
文科省は、最終的には獣医学部の新設を認めてもいいが、どれだけ急いでも再来年(平成31年)と考えていました。当初は萩生田副長官も'18年は早すぎると言っていました。それを覆したのが、『総理のご意向』ということではないか」

苛立つ菅官房長官
加計理事長は安倍総理や萩生田副長官のみならず、自民党文教族の大物で元文科相の下村博文幹事長代行とも家族ぐるみの付き合いをしていることで知られる。
『文藝春秋』7月号に掲載されたノンフィクション作家・森功氏の記事によれば、加計理事長は下村氏の今日子夫人にも食い込み、昭恵夫人とともに連れ立って旅行するほど仲が良かったという。加計学園の獣医学部新設へのレールは、下村氏が文科相だった時代に完成しつつあったとも森氏は指摘する。
安倍官邸が総理のお友達にばかり便宜を図っているのではないか。そうした疑念を、有権者も抱き始めた。
報道各社の世論調査では、安倍政権の支持率が軒並み10ポイント前後も低下。毎日新聞の調査では、支持率が36%で、不支持率が44%と、ついに逆転した
支持率の急落は、官邸の要が機能しなくなったことも影響を及ぼしている。これまで安倍一強政権を支えてきた菅官房長官はこうした状況を苦々しく感じている。
「当初の『怪文書』対応がまずかったと党内から批判されていますが、菅さんにしてみれば、森友学園は『総理の妻』の関与が取り沙汰され、加計学園の場合は『総理のお友達』。なんで俺がその尻拭いで叩かれなきゃいかんのか、という思いでしょう」(自民党関係者)

だが、官邸もこのまま黙ってはいない。怒りに燃えてなりふり構わぬ反撃に出る。その第一弾が森友学園と籠池泰典前理事長宅へのガサ入れだ。
籠池氏は補助金を不正に受給していた詐欺の容疑で、6月19日に大阪地検特捜部から家宅捜索を受けた。
「籠池氏は7月3日にも逮捕されるでしょう。一方、国有地を不当に安く売却した容疑で、近畿財務局の担当者が告発され、大阪地検はこれを受理していますが、こちらに捜査の手が伸びることはありえません。本気で解明しようとすれば、昭恵夫人の関与まで捜査の対象になるからです」(全国紙在阪記者)
森友学園や加計学園の問題を追及する自由党参議院議員の森ゆうこ氏がこう批判する。
「最初は安倍夫妻が自分たちと同じ考えの教育を行う学校を作るために籠池氏を利用していたのに、都合が悪くなると、国会に証人喚問し、口封じで国策捜査。完全な恐怖政治ですよ。
国民の負担は医療費にしろ、介護費にしろ、増えるばかりなのに、お友達には大盤振る舞い。籠池氏は途中で友達ではなくなったので、手のひら返し。
さらに『共謀罪』が成立したことで、歯向かう者は口封じする体制が整いました。来月には施行されるといいます。あまりにも早すぎる。政府に批判的な発言をするな、話し合うな、監視しているぞ、というわけで、独裁国家の完成です」

こういった安倍政権の強引な手法に、さすがに党内からも批判の声が上がり始めた。
自民党二階派の議員はこう話す。
「二階(俊博・幹事長)さんは籠池氏への家宅捜索に対して相当怒っています。安倍総理が記者会見を終えた直後にガサに入るなんて、あまりに見え透いたタイミングだからです。
自分に都合の悪い存在を検察にパクらせて、ブタ箱に送って黙らせようとする意図が見え見え。安倍さんの周辺は『籠池前理事長も犯罪者になれば、もう何も言えない』と考えているのでしょうが、有権者はそこまでバカじゃない。
二階さんはこれまで前川氏の国会招致にあえて言及するなど、党内の不満をガス抜きしようとしてきました。都議選で勝つために、自民党のイメージをこれ以上、悪くしないためです。
籠池氏のガサ入れで加計問題から国民の目をそらそうとする官邸のやり方は、二階さんから見れば安倍さんの『保身』。すでに党内は一枚岩ではなく、ポスト安倍を意識し始めた

「倒閣運動」が始まる
安倍政権の「支持率の堤防」は決壊した。持ちなおすために、政権が打つことのできる手は限られている。その一つが、内閣改造だ。
7月7~8日にドイツで開催されるG20に合わせた外遊から戻って来た頃に、内閣支持率を見ながら改造内閣の顔ぶれを考えるようです。目玉となるのは橋下徹前大阪市長。
安倍総理は『人づくり改革』を新たな看板に掲げて『みんなにチャンス!構想会議』の立ち上げを表明しました。新設される人づくり改革相に、橋下氏を民間登用するのではないかと取り沙汰されています。
また、子育て支援などの財源を社会保険料に上乗せして徴収する『こども保険』を提唱している小泉進次郎農林部会長を、受動喫煙問題で党と揉めた塩崎恭久氏に代えて、厚生労働相に抜擢するとも言われています。
小泉氏が受けるかは不透明ですが、いずれにしても、支持率アップが狙いの『客寄せパンダ』。こんなことをすれば、党内の不満がさらに高まるのは明らかです」(全国紙政治部記者)

'15年7月、集団的自衛権を認める安保法制を強行採決したときも、安倍政権の支持率は急落したが、それは一時的なものに留まった。安倍官邸は今回も、時間が経てば加計学園問題が鎮静化し、支持率が回復すると考えている
しかし、霞が関における安倍官邸への不満は、前川氏の登場によって爆発寸前だ。
「前川氏の『面従腹背』にシンパシーを感じる役人は多い。とくに二度も消費増税を先送りされている財務官僚は、安倍政権に対して大きな不満を抱いている
麻生太郎財務相の再登板も視野に、財政再建に理解のある政権の誕生を待ち望んでいます。文科省に続けとばかりに、内情をリークする『倒閣運動』が始まってもおかしくはない」(キー局政治部デスク)
4年半にわたって盤石だった安倍政権が瓦解する日も近い。
「週刊現代」2017年7月8日号より