2017年7月2日日曜日

国民を愚弄する政権幹部 都議選で惨敗すれば“安倍降ろし”に発展も

 週刊文春に「(文科省大臣時代に)闇献金200万円」と報じられた下村自民党幹事長代行は、「現金は加計学園からではなく、同学園の秘書室長が11名の個人や企業から預かったものだ」、「個々の購入金額は20万円以下だから記載する必要はない」と強弁しました。しかし肝心の11人の氏名や額は分からないということではそんな説明を信じる国民はいません。加計学園からのマネーは1円も入っておらず、秘書室長が友人知人に声をかけて集めたものだという釈明も不自然です。
 百歩譲ってそうだとしてもこんどは秘書室長の行為は「あっせん」に当たり、集めた金額が20万円を超えた場合はあっせん者の名前を記載しなければならないとされていますその記載ありません
 下村氏は文科大臣時代にも、いわゆる資金集めの不明朗さが問題になり辞職に追い込まれました。いずれにしても200万円がワイロだった疑惑は晴れず、そんな拙劣な弁明で済むと考える神経が理解できません。

 それとは別に稲田防衛大臣27日夕方、都議選・自民党候補の応援演説で、「防衛省・自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いしたい」と支持を訴えました。それは自衛隊を私物化・政治利用したもので、中立を強く要求される自衛隊のあるべき姿を著しく蹂躙した発言でした。彼女はそれを党から指摘され、ニュース番組が終わる深夜近くに記者会見を開いて「誤解を招く発言だった」と撤回しました。
 前記の発言は明白に自衛隊を私物化・政治利用したものであって誤解の余地などはありません。しかしメディアが「それは既遂の法令違反だ」といくら問い糺しても、稲田氏はひたすら「誤解を招く発言だった」と、実に「誤解」を35回も連発する堂々巡りをしただけで議論は全く深まりませんでした。
 そういう点でも稲田氏は安倍首相と瓜二つです。
 いずれも国民を愚弄する詭弁と呼ぶべきもので、自民一強・安倍一強の驕りの顕れです。
 日刊ゲンダイの二つの記事を紹介します。

お知らせ 都合により3日は記事の更新ができませんのでご了承ください)
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選挙前にいい度胸だ 国民愚弄政権の詭弁とドーカツ
 日刊ゲンダイ 2017年7月1日
 こんな詭弁が通用すると、本気で思っているのか。国民をダマせると思ったら大間違いである。自民党の下村博文元文科相に200万円の「加計マネー」が渡っていた疑惑は、誰が考えても怪しさ100%である。
 2013年と2014年、「加計学園」の秘書室長が、政治資金パーティー券の代金として、下村サイドに現金で100万円ずつ渡していたことが発覚した。「政治資金規正法」は、20万円を超えるパーティー券の購入があった場合、政治資金収支報告書に記載するように義務づけている。ところが、下村事務所は記載していなかった。200万円は、裏金になっていた疑いがある。

 週刊文春に「闇献金200万円」と報じられた下村は周章狼狽。「現金は加計学園からではなく、秘書室長が11名の個人や企業から預かったものだ」「個々の購入金額は20万円以下だから記載する必要はない」と強弁したが、果たして、その説明を信じる国民がいるかどうか。肝心の11人については「分からない」とシドロモドロなのだから話にならない。
 200万円の中に「加計マネー」は1円も入っておらず、秘書室長が友人知人に声をかけて集めたものだと下村は釈明してみせたが、だとしたら秘書室長の行為は「あっせん」に当たり、集めた金額が20万円を超えた場合は、あっせん者の名前を記載しなければならないが、こちらも記載がない
 いずれにしろ200万円の不記載は、政治資金規正法に抵触する可能性が高い。政治資金規正法違反(不記載・虚偽記載)は、5年以下の禁錮または100万円以下の罰金という重罪である。

 最大の問題は、200万円はワイロだった疑いが捨てきれないことだ。
「この問題のポイントは、200万円のカネが渡った当時、下村博文は文科大臣だったことです。その時期、加計学園は獣医学部の新設を切望し、さらに教育学部を新設するために下村文科相に認可を申請していた。結果的に教育学部の新設は認められています」(政治学者・五十嵐仁氏)
 200万円と教育学部の新設には、どんな関係があったのか。学部の設置認可は文科大臣が決定する。ところが下村は、設置の可否は“大学設置審”で行われ、大臣の意向は入らないと詭弁を弄しているのだから、国民をバカにするにも程がある。

■稲田大臣はこのまま逃げ切るつもり
 国民を愚弄しているのは、下村だけじゃない。「自衛隊発言」をした稲田朋美防衛相も、責任を取らず、このまま逃げ切るつもりだ。
 都議選の応援演説で、稲田防衛相が「防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてお願いしたい」と発言したことに対し、さすがに批判が噴出している。この発言は、明らかに「公選法違反」である。公選法は、公務員が地位を利用した選挙運動をすることを禁じている。公務員には「閣僚」も含まれている。「防衛大臣としてお願いしたい」と口にしたのだから完全にアウトだ
 それよりなにより、「自衛隊としてお願いしたい」と、自衛隊を持ちだして有権者に支援を求めたのは、とんでもない話だ。どの民主国家も、暴力装置である軍隊が政治に関与しないように、細心の注意を払っている。軍事政権下では、選挙さえ民主的に行われないと分かっているからだ。なのに稲田防衛相は、進んで自衛隊を政治利用したのだから信じられない。野党が「辞任」「罷免」を求めたのは当然である。
 ところが、稲田大臣は辞任するつもりがなく、安倍首相も罷免するつもりはサラサラない。フザケたことに、8月の内閣改造の時に交代するという空気が広がれば、国民は納得すると計算しているという。
「国民の中に“どうせ稲田大臣は8月の内閣改造の時にクビになるのだろう”という空気が広がっているかも知れませんが、内閣改造に合わせた退任と更迭とでは、意味がまったく違います。改造に合わせて退任しても責任を取ったことにならない。絶対に国民は“8月に辞めるのだろ”などと納得してはダメです」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)
 この政権は、国民と真摯に向き合うつもりがまったくない。

自民党38議席という大敗の可能性
 どうやら錯乱政権は、国民の怒りの実態がまったく分かっていないらしい。都議選の直前だというのに、国民を愚弄する詭弁と言い訳に終始するとは、安倍政権もいい度胸である。
 こうなったら、あす(2日)行われる都議選では、絶対に自民党に議席を与えてはダメだ。この期に及んで子どもダマしの戯れ言を繰り返すいかれた政権には、鉄槌を下すしかない。
 はたして、現時点で都議選の情勢はどうなっているのか。都議会の定数は127。自民党の現有議席は57である。
 大手メディアが先週の24、25日、「期日前投票」を終えた有権者に実施した出口調査によると、都民ファースト48、自民39という結果だったという。自民党の調査でも、都民ファースト45、自民41だったそうだ。自民党は09年の都議選の時、48↓38議席という大敗を喫している。このまま国民の怒りがつづけば、あの時の結果が再現される可能性が高い
「勝負を決するのは、7つある1人区です。自民党は1人区で全滅する可能性があります。ただ、自民党は土壇場になって底力を発揮する政党です。大敗しそうだと危機感を強め、組織を総動員している。都連からは候補者に対して、『ミニ集会では、東京五輪に向けてインフラ整備を加速していくと訴えろ』と指令が下りているといいます。公共事業をチラつかせて票を集めるつもりでしょう。自民党候補の多くは、定数が3以上の複数区を中心に、最後の1議席をめぐってギリギリの戦いをしている。彼らが土壇場で浮上し、最後の1議席に次々に滑り込んだら、自民党は意外に負けないかも知れません」(都政関係者)

■7月2日はラストチャンス
 自民党が大敗するかどうか、すべては無党派層が動くかどうかにかかっている。
 自民党が38議席と歴史的な惨敗をした09年の都議選の投票率は54%。逆に自民党が59議席と「全勝」した13年の都議選の投票率は43%だった。
 もし、投票率が伸び悩んだら、自民党はたいして負けない可能性が高い。
 政治評論家の本澤二郎氏は、こう言う。
「今度の都議選は、ただの都議選ではなく、安倍政権を信任するかどうかの選挙だと考えるべきです。森友学園、共謀罪、加計学園、稲田発言、レイプ事件……。こうした安倍政治を国民が許すのかどうかです。東京都の有権者に考えて欲しいことは、この先、安倍政治に審判を下すチャンスは、しばらくないということです。ある意味、安倍首相を退陣に追い込む最後のチャンスかも知れない。もし、都議選で自民党が大敗を喫したら、必ず、自民党内から“安倍降ろし”の動きが出てくるでしょう。逆に、自民党がそれなりの議席を奪ったら、野党や心ある有権者が『この状況でも自民党は負けないのか』と絶望し、安倍政権に対してノーという声をあげる気力が失われていく恐れがある。安倍首相も『ほら見ろ! 俺はなにをやっても許されるんだよ!』と、さらに暴走してくるでしょう。それだけに、1票を持つ東京都民は、雨が降ろうが、ヤリが降ろうが、絶対に投票所に足を運ばないとダメです」

 都民にとっても、国民にとっても、あすの都議選はラストチャンスである。国民をなめ切った安倍首相や下村を高笑いさせて本当にいいのか。都民は決起しないといけない。


都議選惨敗が号砲 内閣改造どころか“安倍降ろし”に発展も
日刊ゲンダイ 2017年7月1日
 歴史的な大惨敗になりそうだ。7月2日投開票の都議選で、自民党が現有57議席から大幅に減らすのは確実。民主党旋風が吹き荒れた2009年に記録した過去最低の38議席を割り込む可能性が高くなってきた

■一気に党内政局へ
「加計学園問題で有権者が安倍政権に対する疑念を募らせ、内閣支持率が急落している中での都議選です。ただでさえ苦戦を強いられているのに、稲田防衛相の大失言と『週刊文春』の下村都連会長のヤミ献金報道がトドメを刺した。これで自民党に投票しろという方が無理ですよ。候補者自身に問題がなくても、自民党の公認というだけで落選の憂き目に遭うケースが続出し、壊滅状態になる。怒りの矛先が安倍官邸に向かって党内はガタガタになるし、支持率もますます低迷していくでしょう」(政治評論家・本澤二郎氏)

 党内からは「都議選が終わったら、すぐに内閣を改造すべきだ」という声も上がっている。8月に予定されている内閣改造を7月に前倒しして、稲田などの問題大臣をごっそり交代させる。同時に目玉人事でイメージアップを狙うしか政権浮揚の材料がないからだ。だが、いまの安倍首相に内閣改造なんてやれるのか。都議選で38議席を割り込んだら、一気に政局だ。
「従来、都議選で負けて責任を問われるのは都連会長や党幹事長クラスでした。しかし、今回は安倍首相の責任問題になってくる。加計疑惑は安倍首相自身の問題だし、惨敗ムードを決定づけた稲田防衛相と下村都連会長は首相の側近中の側近です。都議選で惨敗すれば、内閣改造どころか安倍降ろしですよ。ポスト安倍の最右翼とみられている麻生副総理がナリを潜めているのも、都議選後の安倍降ろしに備え、意図的に距離を置いているように見えます」(本澤二郎氏)

 麻生は告示日には千代田区、中野区、足立区の3カ所を回ったが、その後はほとんど応援に入っていない。くしくも都議選投開票の翌日には、麻生派と山東派などが合流し総裁派閥の細田派に次ぐ新派閥を旗揚げする。その準備で忙しいのか。
 4年前、前回の都議選では25カ所で街頭に立ち選挙の顔を自ら買って出た安倍首相も、批判ヤジを恐れているのか、今回は一度も街頭演説をしていない。党トップが堂々と街頭に立てないなんて異常事態だが、ついに出てくる気になったようだ。
「『逃げている』という批判があまりに多いことに総理がブチ切れ、最終日の7月1日の夕方、秋葉原駅前で街頭演説する方向で調整を始めました。『ぜひ麻生さんも一緒に』と言って、日程を組んでいるそうです。麻生さんと一緒に秋葉原に立つと、聴衆の反応が違うんだとか。これまで大勝してきた国政選挙で、最終日は秋葉原に立つのが総理の恒例パターンになっています。日の丸を掲げた支持者で埋め尽くされ、非常に盛り上がる。総理にとって縁起のいい場所なのです」(官邸関係者)

 ブチ切れて街頭演説をやるというのも大人げない話だが、都議選で安倍首相が街頭に立つとしても、“ホームグラウンド”の秋葉原で一度きり。自分に好意的な支持者の前でしか演説できないのは、それだけ政権が弱体化している証拠だ。

 もっとも、安倍首相が最終日の街頭演説に麻生財務相を引っ張り出そうとしているのは、「都議選敗退の連帯責任を負わせて党内政局を封じるための深謀遠慮」(自民党ベテラン議員)という見方もある。
 水面下では、都議選後を見据えたつばぜり合いが激しくなってきた。内閣改造に着手する前に安倍退陣という展開も十分あり得る。都議選惨敗が安倍降ろしの号砲になるのか。