植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
「103万円の壁」の撤去では何も解決せずに、消費税5%への減税に拠るしかないことは、植草氏がいち早く指摘したところです。103万円の壁の撤去だけでは「106万円」の壁でパートたちの年収はがた減りになり、「130万円」の壁では更に中小企業に大打撃を与えるので、勤め先自体を失うことにもなり兼ねません。
低所得層の手取り額を増やすには「消費税5%への減税」しかありません。
ところでTV界で「引っ張り凧」だった玉木代表(国民党)はいまやスキャンダルを暴露されて「渦中の人」となりました。しかし、政府=財務省にとって彼は手放せない人物なので、フジサンケイが懸命に火消しに走っているということです。それは「消費税5%への減税」を避けるためには「103万円の壁の撤去」で国民の手取りが増えるかのような幻想を与える必要があるからです。植草氏は「日本の主権者はそろそろ国民民主(党)バブルに気付いた方がよい」と述べています。
併せて日刊ゲンダイの記事「国民民主・玉木代表に漂う“裏切り”のニオイ…党役員まで「消費税減税」封印のお茶濁し」と「『103万円の壁』攻防もデキレースで決着か…気がつけば政界中枢に“財務省マフィア”がウヨウヨ」を紹介します。
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壁提案の目的は消費税減税潰し
植草一秀の「知られざる真実」 2024年11月11日
国民民主の欺瞞を指摘してきたが、その国民民主バブルが崩壊した。
国民民主を異常に持ち上げる報道に最も熱心なのがフジサンケイグループ。
自公が野党に転落する危機。玉木雄一郎代表のスキャンダルも、フジサンケイグループが懸命に抑え込もうとしている。
典型的な記事がこちら
「国民・玉木代表の『続投を了承』 不倫スキャンダル発覚も『玉木さんを中心にもう一度頑張ろう』両院議員総会でのお詫び」 https://x.gd/cfMp2
芸能人のスキャンダルでは大騒ぎになるが、これと対照的。これが玉木雄一郎ではなく山本太郎なら、フジサンケイグループが総力を挙げて叩きまくるだろう。
「103万円の壁」の本質は「消費税減税隠し」である。
玉木氏は「103万円の壁」について憲法第25条=生存権=命の問題だと述べる。
所得税制度では一定水準の収入までは課税義務が発生しないようにしている。
これが基礎控除の考え方。これはこれでよい。
しかし、現行税制で最大の歪みが生じているのは「103万円の壁」ではない。
生存権との関係で言えば、給与収入が年間103万円以下の階層が深刻な問題に直面している。
年収が10億円でも、年収が100万円でも、消費税率がまったく同じ。
年収100万円をすべて消費に回すと8~10万円が消費税で巻き上げられる。
これが「生存権」を脅かす。
玉木氏が「生存権」を根拠に「103万円の壁」を主張するなら、年収103万円以下の人に対する対応が必要。
103万円を178万円に引き上げると、給与収入が103万円から178万円の給与所得者は減税になる。
このレンジ内では給与収入178万円の人の減税が最大になる。
しかし、年収103万円までの人は恩恵がゼロ。
この人々にメリットが生じるようにするには「給付付き税額控除」を実施するか、「消費税減税」を実施するしかない。
国民民主は「103万円の壁」を大声で主張するが「消費税減税」については小声でも主張しない。選挙期間中は「消費税率5%」を唱えていたはずだが、選挙が終わるとまったく言わなくなった。
財務省の最重要目標は消費税減税の封殺。国民民主はこれに全面協力している。
これは立憲民主も同じ。自・公・立・国が足並みを揃えて「消費税減税封殺」を目指している。
しかし、所得の少ない人を苦しませている最大の元凶は消費税。消費税減税が最重要施策だ。
玉木氏が「生存権」を掲げ、「命」を重視するなら「消費税減税」を掲げなければならない。
選挙直後からメディアが国民民主大絶賛を始めたのは、「政権交代」と「消費税減税」を封殺するためである。
メディアが「国民民主バブル」を創作したが、身から出たさびでバブルが崩壊した。
103万円の壁を引き上げても労働供給は増大しない。
103万円の壁よりもはるかに巨大な壁が106万円の壁、130万円の壁。
年収が103万円を超えても手取りが減るわけではない。増えた収入の一部が税金に回るだけだ。手取りは増える。
しかし、106万円の壁を超えてしまい、社会保険料負担が発生すると手取りは「減少」する。
年15万円程度の負担が発生して、収入が125万円程度にまで達しないと手取りは減る。
106万円の壁も同時に178万円まで引き上げるなら、まだ理解できる。こちらの問題の方が重大な問題。
日本の主権者はそろそろ国民民主バブルに気付いた方がよい。
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国民民主・玉木代表に漂う“裏切り”のニオイ…党役員まで「消費税減税」封印のお茶濁し
日刊ゲンダイ 2024/11/11
トーンダウンした感が否めない。時限的な消費税減税を訴えている国民民主党のことだ。年収103万円を超えると所得税が課される「103万円の壁」の突破を重点政策のひとつに掲げ、自公与党と政策協議に入ったが、同じく重点政策であるはずの消費税減税は棚上げしている。
国民民主は8日に行われた自公との初の政策協議で▽「年収の壁」の見直し▽ガソリン減税などエネルギーコストの削減▽災害対策─などを要求。一方、消費税減税については、これから本格化する税制改正大綱の取りまとめに向けた議論に先送りした。総選挙で「手取りを増やす」を合言葉に消費税減税を訴えていた割に、さほど熱量は感じられない。
実際、10日のNHK「日曜討論」で国民民主の浜口政務調査会長は目下の経済対策を問われ、賃上げや「年収の壁」の突破、ガソリン減税や社会保険料の負担軽減などに言及したものの、消費税減税には触れなかった。
国民民主の榛葉幹事長も、言葉の端々に消費税減税に後ろ向きな態度をにじませている。8日の定例会見で、消費税減税について「これは交渉相手がいることですし、我々は衆院で28人しかおりません」とハードルの高さを強調。「今後の税制改正の中で、もろもろ消費税も含めて議論になるだろうと思います」とお茶を濁した。
「期待を変えないという意味で言い続けている」
肝心のトップは何と言っているか。玉木代表は2日に公開されたインターネット番組で、「(消費税減税を)やるかどうかは、(消費税が)安定的な財源なので経済状況とうまく対比しながら」とゴニョゴニョ。「コロナの時に出した政策なんですけど、期待を変えないという意味で言い続けている」と、しゃーなしに続けているかのような口ぶりだった。
消費税減税をひっこめたわけではないが、トップも役員も一様に「封印」しているように見える。ジャーナリストの横田一氏がこう言う。
「『年収の壁』の引き上げの国民案が7兆~8兆円の税収減につながると言われる中、さすがに消費税減税まで踏み込めないのでしょう。財源論にツッコまれないように『年収の壁』の突破を与党にのませつつ、党の人気を集めたい党利優先の戦略が透けます。キャスチングボートを握っているのだから、本来なら消費税減税を含め与野党両方と交渉して政策実現性を考えるべきなのに、首班指名で闘争する姿勢すら見せなかった。与党の補完勢力のそしりは免れません」
国民民主に漂う裏切りのニオイは消えるのか。
「103万円の壁」攻防もデキレースで決着か…気がつけば政界中枢に“財務省マフィア”がウヨウヨ
日刊ゲンダイ 2024/11/8
衆院選後の一大テーマとなっているのが「年収の壁」問題だ。国民民主党が掲げた非課税枠を103万円から178万円へ引き上げる公約をめぐり、政府が「7兆~8兆円の税収減になる」と難色を示せば、国民民主の玉木雄一郎代表は「予算の使い残しや税収の上振れ分で賄える」と反論。これにはSNSなどでも、「財源なく減税を主張するのは無責任」「いや、壁を取り払うことで経済活動が活発化する」と賛否両論が渦巻く。
【顔を見る】セクハラで財務次官を辞任した福田淳一氏
少数与党の石破政権は野党の協力を得なければ法案も予算案も通せない。玉木氏の主張する「手取りを増やす」が実現するのかどうか。年末の税制改正に向け、政府・自公vs国民民主の攻防が注目されているが、「関係者はみな財務省マフィアだから、本気のバトルにはならない」(自民ベテラン)との囁き。どういうことか……。
「103万円の壁」は税制に関係する。自民党の宮沢洋一・税制調査会長は1974年入省の元大蔵官僚。税調幹部の後藤茂之・元厚労相(80年入省)と小林鷹之・元経済安保相(99年入省)もそうだ。自民執行部では、辞任した小泉進次郎・前選対委員長の後任に名前が挙がる木原誠二・元官房副長官(93年入省)が元大蔵官僚である。そして、国民民主党は代表の玉木氏が木原氏と同期の93年入省組。古川元久・国対委員長も88年入省、とまあ財務省(大蔵省)出身者ばかりなのだ。
自民党では麻生太郎・最高顧問が財務大臣を戦後最長の8年9カ月務め、財務省にとっては最強の後ろ盾だ。「岸田政権時に、麻生さんが財務省つながりで玉木・国民民主党を連立政権に引き込もうと画策し、木原氏を仲介役にして連絡を取っていた」(前出の自民ベテラン)という。
もっとも、野党第1党の立憲民主党の中枢にも財務省マフィアはいる。大串博志・選対委員長が89年入省組。野田佳彦代表は財務大臣経験者だ。
財務官僚は霞が関の府省でもエリート中のエリート。選ばれし者の意識が強く、とりわけ出身者の結束が固いと言われる。
「みんな裏でつながっていて、『年収の壁』見直しはデキレースになるんじゃないか。事務方の財務省が落としどころを用意しているだろう。玉木代表の要求がある程度通ったという形で見せ場をつくりつつ、財務省の傷(税収減)をできるだけ抑えるような計算をしながらやっている」(政治評論家・野上忠興氏)
抜本的な改革になるのかどうか。財務省マフィアに騙されないよう、議論の行方をしっかり注視する必要がある。
◇ ◇ ◇
ラサール石井さんは自身のコラム『東憤西笑』(関連記事【もっと読む】)で、玉木代表が「よく見ていないと危険な人物」と看破している。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。
2024年11月13日水曜日
壁提案の目的は消費税減税潰し(植草一秀氏)
トランプが圧勝したアメリカ大統領選挙 - ハリスのカリスマ欠如と〝多様性″の挫折
世に倦む日々氏が掲題の記事を出しました。
米大統領選に関する同氏の考察が述べられています。具体的事実から深く考察していて、既に米国の属国化している日本と西側各国はこの選挙を通じて改めて米国の実態に触れ、同時に関係を見直すべきではと述べているようにも思われます。
「ポリティカル・コレクトネス、あるいはアイデンティティ・ポリティックスの脱構築の政治思想は、…」と書き出された最終の3節目~2節目では、(それは)「21世紀の流行思想(輸入ファッション)に過ぎ」ないもの、との氏の感慨が述べられています。ここは複雑で容易には辿れません。
ただ最終節は、「今回のアメリカの選挙結果は、物価高と生活苦という経済的な矛盾と苦痛が、性や人種というアイデンティティの問題に勝って選択された事例だと意味づけることができる。~黒人も、ヒスパニックも、若者も、白人女性も、経済問題を優先事項として選挙に臨んだ」としていて、明快であり且つ本質的であると思われます。
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トランプが圧勝したアメリカ大統領選挙 - ハリスのカリスマ欠如と〝多様性″の挫折
世に倦む日日 2024年11月10日
アメリカ大統領選(11/5)の結果、トランプがハリスに大差をつけて圧勝した。激戦州と呼ばれた7州で悉く勝利を収め、選挙人の数で圧倒しただけでなく、総得票数でも上回る結果となり、まさに予想外の大勝となった。上院も共和党が過半数を制し、下院は現時点(11/10)で議席が固まってないが、共和党が優勢な情勢となっている。投票率は戦後2位の高さの65%を記録していて、今回は明らかにアメリカ国民がトランプを支持した選挙結果だと断言できる。民主党は岩盤支持層と見られていた黒人票やヒスパニック票、さらには若者票を切り崩されて失い、衝撃を受けて党内で混乱が起きている。11/8 にはサンダースが「労働者階級の人々を見捨てた」と民主党指導部を批判、「民主党を支配しているのは富裕層や大企業、高給取りのコンサルタントたちだ」と痛烈に主張した。正論である。
選挙前の報道を見るかぎり、この結果は妥当なものだ。夏以降、日本のマスコミ陣は我も我もとペンシルベニア州に馳せ参じ、番組キャスターたちが(円安で高額となった旅費を会社が払ってくれる)役得の物見遊山を満喫しつつ、以下の現地情勢を伝えていた。①ヒスパニック票がトランプに流れている。②黒人票がトランプに流れている。③若者票がトランプに流れている。インタビュー映像を含めたこれらの現地取材を何度も確認していたから、11月の投票結果はトランプ圧勝だろうと私は予想していた。最終盤にアメリカの世論調査でハリスが猛追した「事実」は、ハリスを応援する米マスコミ主導の情報戦ではないかと私は疑っている。今回もまた、アメリカの世論調査の精度の低さが問題となったが、そもそも、両候補の支持率についての世論調査報道は、米国内と海外の属国民に米大統領選に関心を惹き付けるための道具だったのではないかという疑念を強く持つ。
政治の勝ち負けのゲームに関心を持たせ、そのことを通じて属国民がアメリカを知り、自らをアメリカ国民の一部と意識する教育(洗脳)をCIAが施すため、わざと接戦を演出し、面白いショーイベントに仕立て上げていたのではないか。とにかく、来る日も来る日も、この極東の国のテレビ報道は地球の裏側の大国の大統領選挙の報道に明け暮れ、「どっちが勝つか」と騒いで公共の電波を埋めていた。選挙権があるわけでもないのに、まるで自分のリーダーを決める重大な選挙のように報じていた。見ながら、ドイツやフランスなど他の国でも同じなのだろうか、韓国も同じことをやっているんだろうかと思い、もしそうならどの属国民も悲しいことだと感じた。このような体制になってもう20年近く経つ。属国化はどんどん甚だしくなり、NHKのニュースのスポーツの時間はMLBの話題ばかりだ。日本に住むアメリカ人が視聴者の主役として設定され、ニュース番組が編集されている。
民主党の岩盤支持層が離れた理由は明確で、インフレ・物価高による生活苦と現政権批判の民意である。今年、世界各国で大きな選挙があったが、ほとんど例外なくこの要因のために政権与党が選挙で敗北、英国とアメリカでは政権交代が起きた。韓国とフランスと日本では政権側が少数与党となった。年末の折にこの政治変動が総括されるだろう。このインフレ・物価高は、ウクライナ戦争勃発に伴う資源価格高騰が影響している。が、根本的にはそれ以前に、コロナ禍の経済対策でFRBが強力に量的緩和したこと、トランプ政権とバイデン政権が大規模な財政出動を行ったことが要因だ。マネー供給と需要が拡大し、労働力不足で賃金が上がり(日本を除く)、それが物価に転嫁された点も影響している。日本のインフレ率が各国よりも低いのは、賃上げがされてないことの反映である。財政出動がインフレを招いた問題は、サマーズがMMTと民主党政権の財政政策を批判する中で論及していた。
少し横道に逸れるが、インフレの原因はトランプが作ったのであり、民主党政権に責任転嫁するのは筋が通らない。この点は玉川徹が指摘していた。実は、トランプの経済政策(2016年からのトランプノミクス)は、安倍晋三のアベノミクスをそっくり真似たものである。大胆な金融緩和と機動的な財政出動。この二つは不況を好況に転換するためのインフレ促進政策であり、政府が市場にマネーを供給して需要を創出拡大する経済政策である。右のトランプも、左のMMT(⇒現代貨幣理論) も、アベノミクスをモデルにしてこの政策を採用推進した。その結果、セオリーどおりインフレになった。問題は、アメリカでかくも熾烈なインフレになったのに、日本はなぜ金融と財政を原因とするインフレが起きず、資源価格(輸入物価)と為替(円安)を原因とするインフレだけで収まったかという点だ。それには種明かしがある。アベノミクスには成長戦略(構造改革)という三本目の矢があり、これがデフレ促進政策だったからだ。
アベノミクスの三本目の矢については、関心と議論が少なく、記憶もあまりないのが一般の現状だろう。が、具体的に中身を見れば、非正規雇用の無期限延長のルール改定とか、裁量労働制(残業代ゼロの合法化)の導入とか、労働者の待遇環境を悪化させ、賃金を切り下げる目的の労働政策ばかりが実行され、それに奇妙な”美名”が付されて通ってきた。このところ、日本は30年間実質賃金が下がって欧米は上がったというグラフがよく紹介されるが、これは自然現象ではなく、現実に労働政策が改悪された帰結である。三本目の矢は、実に純粋に竹中平蔵の新自由主義政策であり、大企業にこれでもかと優遇税制を敷いて補助金をバラ撒き、東京五輪の特需を割り当て、株価を吊り上げる目的の諸政策のオンパレードだった。そして、きわめつけのデフレ推進政策が消費税増税で、2014年に8%に、2019年に10%に引き上げ、消費と景気を冷え込ませた。アベノミクスはインフレ推進政策とデフレ推進政策のミックスだった。
アメリカ大統領選の結果を論じようとして、インフレの原因論に筆が進み、アベノミクスの分析に脱線してしまった。元に戻そう。ハリス敗因の大きな要因は、彼女自身のカリスマの不足にある。どう考えても能力不足が明らかで、資質が基準要件を満たしていなかった。それは否めない事実だろう。マスコミと受け答えする場面では、小泉進次郎と同じお粗末な珍対応が頻出し、本人の頭の中が整理されておらず、質問に回答するに十分な知識や思考が欠如していた。意味不明の発言は「言葉のサラダ」と呼ばれ、未熟さや拙劣さが際立っていた。われわれの通念では、民主党大統領候補というのは、切れ者の優秀なエリートで、ハーバード仕込みの刮目すべき能弁者だと相場が決まっている。JFKもB.クリントンもオバマもそうで、ヒラリーもそうだった。みな頭脳明晰で、さすがアメリカのトップエリートは違うと留飲を下げさせられる逸材が登場した。ヒラリーの説明上手は特に印象に残っていて、学校の先生が生徒に話すようだった。
民主党支持層の方が共和党支持層よりも学歴が高い。民主党支持層は、自らの知性の高さをプライドとしていて、それが共和党支持層を見下す優越感の根拠となっている。デーブ・スペクターなどの態度が露骨で典型的だ。その民主党支持層にとって、ハリスの「進次郎構文」的な稚拙と失態はショックだっただろう。ハリスには明らかに自信の無さが窺え、それはオバマやヒラリーやリズ・ウォーレンとは対照的だった。スピーチやトークに意思の芯が通っておらず、要領を得ないまま途中で萎れ、がははという無意味な笑いが割り込み、弁論が崩れて締まりなく終端した。それは、ハリス自身に持論や政見がなく、政治家としての信念と哲学がないからで、自身の主張に確信がない所為である。破綻なく論理を貫き通す自信がない証拠だ。説得と訴求に一身を賭ける情熱と素質がない由縁だ。あのハリスの無意味な(ゴマカシの動機からの)破顔は、物価高・金利高に苦しむ民主党支持者にとっては歯痒く苛立たしい絵だっただろう。代弁になってない。
ウェーバー的に言えば、ハリスは政治家としての「天職」に不適格な個性であり、指導者としてのカリスマ的資質を欠如させた人物だ。その不具合については、民主党指導部も不安を持っていただろう。その欠陥の事実は、副大統領の在任期間中に十分証明されており、3年半の間、ハリスが副大統領として活躍する場面と実績はなかった。ハリスは「お飾り人形」であり、バイデン政権で”多様性”の意義を象徴してアピールする広告塔の存在だった。本来ならもっと優秀で能弁な、いかにも民主党が選抜した俊英だと人々が納得する、「天職」的指導者の類型を副大統領に据え、高齢のバイデンの後継者に、あるいは病魔進行中のバイデンの非常時に備えるべきだっただろう。だが、4年前の民主党は多様性のイデオロギーを選別評価の基準とし、女性・黒人・アジア系の属性要素を優先させてハリスをポジションに抜擢した。ウェーバー的基準を押しのけて、誤った人選を決定してしまった。その戦略判断が裏目に出たのが今回の選挙結果に他ならない。
ハリスの資質貧弱と、それをもたらした過度の多様性主義への依拠の問題が、中林美恵子らから指摘されている。私は(客観的には左派の範疇に属するけれど)、その見方に静かに同調する立場である。ポリティカル・コレクトネスとか、アイデンティティ・ポリティックスとか、文化左翼の概念で括られる脱構築の政治思想と政治運動に対して、ずっと懐疑的で異議的な意見を保持し、しばき隊との厄介な闘争も含めて、その位置と観点からの言論姿勢を崩さなかった。つまり、文化左翼とか文化右翼 - そんな言葉があるかどうか知らないが ー を分類する座標系では、中立あるいは保守の側に立っていると自覚する場合が多い。具体的に言えば、ジェンダー・マイノリティ・LGBTの政治的争点に対して、相対的にニュートラルあるいはコンサバティブな認識であり、慎重派であり、その争点をラディカルに切り出され押しつけられる進行に賛同できない者だ。傍目には、新時代について行けない古い老人かもしれないが、その偏見と断定で結構である。
ポリティカル・コレクトネス、あるいはアイデンティティ・ポリティックスの脱構築の政治思想は、私の視角からは、少なくとも日本では「つぎつぎとなりゆくいきほひ」であり、21世紀の流行思想(輸入ファッション)に過ぎず、したがって丸山政治学の方法によって相対化され裁断される一対象に他ならない。22世紀以降も続く人類史の普遍的思想とは認められず、日本国憲法に「ジェンダー」の片仮名が明記される事態はないと思う。世界の人々は、いずれこの思想現象が一過性のムーブメントだったと悟る地平に至り、いま全盛を極めているリベラリズムが止揚された新しい時代に生きていると展望する。リベラルの契機はソシアルの契機によって中和され、個と全体がバランスよく調和される。資本主義・利己主義を規制するソシアリズムの理念が基軸となり、それぞれの国で伝統思想が見直され、個人中心ではなく共同体中心のマイルドな原理方向に移行し収斂して行くだろう。
今回のアメリカ大統領選の結果は、世界を支配し君臨していたポリコレ思想(リベラリズム)が、絶頂期を迎えて挫折した一瞬と測定できるかもしれない。アメリカこそポリコレ思想の王国であり、最先端を行くモデルの地である。そして、アメリカの分断の病弊にはポリコレ思想が深く関与している。表面的には確かに、分断を図り、分断を煽り、分断を利用しているのはトランプに違いない。が、思想的基底を正視すれば、躊躇と妥協のないポリコレ(⇒差別的な表現をなくそうとする考え方、または対策)主義の全面化と優越意識が、性と人種の分断を激化させる因子となり、対立と不寛容を固定化し正当化する役割を果たしている面も否めない。人にはそれぞれ社会的常識があり、倫理規範があり、それは家庭環境や人生経験の中で内面化されたものである。その価値観がいきなり否定され、おまえは今の時代で異端で無価値な保守派だと決めつけられたとき、その人間にとってポリコレの潮流は「文化大革命」的なネガティブな圧力に映るだろう。
今回のアメリカの政治結果は、物価高と生活苦という経済的な矛盾と苦痛が、性や人種というアイデンティティの問題に勝って選択された事例だと意味づけることができる。言い換えるなら、マルクスを否定し超克するはずの脱構築のセオリーに対して、マルクス(土台問題)が逆襲して勝利を収めた政治的瞬間だと言える。黒人も、ヒスパニックも、若者も、白人女性も、経済問題を優先事項として選挙に臨んだ。一期目のトランプ政権下ではインフレがなく、トランプノミクスで株価が爆上がりし、さらにコロナ禍で給付金を大盤振る舞いして失業者を喜ばせていた。未曾有の物価高で喘ぎ苦しむアメリカ国民は、当時の記憶が懐かしく甦ったに違いなく、議会襲撃事件が発生してそれに直面した際の恐怖と反省は棚上げにしたのだろう。
13 米国の好戦派はウクライナでの軍事作戦失敗をメディアの幻術で隠すことが困難に
櫻井ジャーナルが掲題の記事を出しました。
トランプは、大統領になれば「ウクライナ戦争は1日で終わらせる」と豪語していました。彼は、ウクライナ戦争に米国が深く関わることに一貫して反対して来ました。
そもそもウクライナ戦争は米国が長年ウクライナの政治に干渉し、遂には2014年に暴徒を組織してクーデターまで起こして「招来」させたものでした。
いまの「ウクライナ戦争」の前史を辿れば、その元凶は米国であり、最後の段階(⇒ウクライナ国軍によるドンバス地方の征討)には勿論ゼレンスキーも深く関わっていました。バイデンは一貫して「ウクライナでの工作」に関り、最後の段階ではプーチンに侵攻を促すかのように盛んに挑発を繰り返しました。
そんな経過もあってバイデン(や民主党政権)としてはいまさら「終戦」に踏み出すことはできませんでしたが、トランプはその間の様々な「工作」には全く関与していなかったので、面目など気にせずに「終戦」に踏み切れる立場にあります。
現在のウクライナ戦争はウクライナ兵(ロシア兵も)の人命をいたずらに失うのみで、何の正義も見出せません。いまさらメディアの幻術で米国の失敗を取り繕うなどということも無用です。
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米国の好戦派はウクライナでの軍事作戦失敗をメディアの幻術で隠すことが困難に
櫻井ジャーナル 2024.11.12
次期アメリカ大統領に選ばれたドナルド・トランプが11月7日にロシアのウラジミル・プーチン大統領と電話でウクライナにおける戦争について話し合ったとワシントン・ポスト紙が10日に報じたが、ロシア政府のドミトリー・ペスコフ報道官はそれを否定、トランプの広報担当スティーブン・チュンもこのやりとりを認めていない。またウクライナ外務省は、キエフがトランプとプーチン大統領の電話会談について事前に知らされていたという報道は誤りだと述べた。
ワシントン・ポスト紙を含む西側の有力メディアは支配層が人びとを操る道具にすぎないことは明確になっている。今回の記事を書いた記者は「ロシアゲート」なるフィクションを宣伝していたひとりでもある。有力メディアは人びとに幻影を見せ、支配層が望む方向へ国を進めるのが役割であり、ワシントン・ポスト紙が事実を伝えると考えることはできない。
トランプがプーチンに対してウクライナ戦争をエスカレートさせないよう助言、アメリカがヨーロッパにかなりの軍事力を有していることを思い起こさせたと同紙は伝えているのだが、現在、ウクライナ軍は戦死者の山を築きながら後退している状況。ロシア軍は進撃のスピードを速めていると伝えられている。またロシア軍と戦うだけの戦力はヨーロッパに配備されていない。「エスカレート」なる表現が入り込む余地はないのが実態。
ウクライナで戦争を始めたネオコンは「膠着状態」を演出したかったのか、8月6日に1万人から3万人の兵力でロシアのクルスクへ軍事侵攻した。国境警備隊しか配置されていないクルスクを狙ったのかもしれないが、ロシア軍はすぐに航空兵力などで反撃を開始、さらに予備部隊が投入されてウクライナ軍は壊滅的な打撃を受けている。増援部隊を投入しようとしたとも言われているが、成功しなかったようだ。
この軍事作戦には虎の子の「精鋭部隊」が投入されているが、兵士の数が圧倒的に足りないため、アメリカ、イギリス、フランス、ポーランド、コロンビアなどから特殊部隊や傭兵が参加、東アジアからもウクライナ側へ兵士が派遣されているとする噂もある。
この作戦でウクライナ側はすでに3万1000人以上が死亡したとも言われている。戦死者の遺体交換でロシアは563体をウクライナ側へ引き渡し、ウクライナは37体をロシア側に引き渡したとも言われ、こうしたことからウクライナ軍の戦死者数はロシア側の10倍以上だと見られている。ネオコンはウクライナ兵に「玉砕攻撃」を繰り返させ、ロシア兵の死傷者を増やそうとしたようだが、成功したとは言えない。
プーチンはアメリカ側と話し合う用意があるとしているが、西側に対する信頼を失っているロシア政府は軍事力で解決するしかないと覚悟しているはずで、米英が得意とする「幻術」は通用しない。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキーはイギリスの情報機関、イギリスの対外情報機関SIS(通称MI-6)のエージェントで、MI6長官のリチャード・ムーアがハンドラーとして操っているとスコット・リッターは自身が作成した2部構成のドキュメント「エージェント、ゼレンスキー」の中で指摘した。(パート1 、 パート2)イギリス、あるいはシティは厳しい状況に陥っている。
リッターはアメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官。調査にはフランスの元情報機関員エリック・デネーゼが協力している。
2024年11月11日月曜日
自公すり寄り国民民主の正体(植草一秀氏)
このところ国民党の玉木代表はTVに「引っ張りだこ」だそうで、大いに気を吐いているということです。
しかし彼のいう「『103万円の壁』をなくし、年収178万円まで所得税をなくす」という案は、その範囲内に入る「106万円の壁」と「130万円の壁」の存在を隠しているーという批判が高まっています(いずれも、その年収に達すると社会保険料が発生して「手取りが激減」します)。
植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
植草氏の意見は終始一貫して明快で、今回の衆院選の結果「野党が結束すれば政権交代を実現できる。政権交代を実現し、『消費税率5%』『企業団体献金全面禁止』を成立させれば大刷新で、主権者はこうした変化を待望している」のに、「国民民主が『政権交代』よりも『自公すり寄り』に進んでいるからこの構想は崩壊した」と批判しています。
そして、「現状で国民民主は『隠れ自公』。『企業団体献金全面禁止』、『消費税率5%』が実現しない場合、その責任は国民民主党に帰せられる。このことを主権者は明確に記憶に刻む必要がある」と述べています。
真正の野党が伸びないことには政治は良くなりません。
併せて「年収103万円の壁、実は大したことない!? 手取りがガクッと減る『本当に怖い壁』とは」を紹介します。
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自公すり寄り国民民主の正体
植草一秀の「知られざる真実」 2024年11月9日
衆院総選挙で自公は過半数割れに転落。
自民 197 ・ 立民 148 共産 8
公明 24 ・ 維新 38 参政 3
与党計 221 ・ 国民 28 保守 3
・ れいわ 9 社民 1
・ 野党計 238
無所属 6
衆議院過半数は233。上記の自民には自民党系の無所属当選者6名を含む。
これでも自公は過半数に遠く及ばない。野党が結束すれば政権交代を実現できる。
政権交代を実現し、「消費税率5%」「企業団体献金全面禁止」を成立させれば大刷新だ。
主権者はこうした変化を待望しているのではないか。
ところが、この構想は崩壊した。国民民主が「政権交代」よりも「自公すり寄り」に進んでいるからだ。いずれは自公政権に参画することを目論んでいると見られる。
ただし、いま自公政権に参画すれば「自公派」であることが鮮明になる。
2025年夏に参院選がある。「国民民主は自公の一派」であることが認識されれば、参院選で国民民主は敗北する可能性が高い。
これを避けるために、いまは自公と距離があることを演出している。
しかし、11月11日の首班指名選挙で国民民主党は石破茂氏が内閣総理大臣に指名されることに協力する方針。事実上、石破内閣樹立に協力する。
首班指名選挙で野党が結束すれば政権交代が実現する。
新しい政権を樹立して「消費税率5%」や「企業団体献金全面禁止」を決定することができる。
もちろん、参議院で過半数議席を保持していないため、参議院が異なる議決をする場合には、衆院で3分の2以上の賛成で再可決しないと法律は成立しないから、条件は付く。
それでも、自公がこれら施策に反対して法案を潰せば、25年参院選で自公はさらに深刻な惨敗を喫することになる可能性が高い。
首班指名選挙で野党が結束する場合、現状では立憲民主党の野田佳彦氏を総理に指名するのが順当。維新は首班指名選挙で野田氏に投票することを完全に否定していない。
れいわ新選組も「消費税率5%」に同意するなら野田氏に投票することがあり得るとした。
したがって、消費税率5%を軸に新政権を樹立することは可能。
また、政治改革での最大テーマである企業団体献金全面禁止について、野党が結束すれば実現できる状況が生まれている。
企業団体献金全面禁止について、立民、維新、れいわ、共産、社民が足並みを揃えられる状況が生じている。国民民主が連帯すれば企業団体献金全面禁止を実現できる。
ところが、これにブレーキをかけているのが国民民主。国民民主代表の玉木雄一郎氏は企業団体献金全面禁止に自民党が合意することが必要としている。その自民党は企業団体献金全面禁止に反対なのだ。
つまり、国民民主は企業団体献金全面禁止が実現しないように行動するということ。
国民民主は総選挙で消費税減税を公約に掲げたが、実際に野党連携でこれが実現する環境が生まれると、消費税減税実現に向けて動こうとしない。
立憲民主は野党が結束するなら総理指名選挙で玉木雄一郎の名を書くことまで仄めかしている。
ところが、国民民主の玉木氏は103万円の壁だけを「何とかの一つ覚え」のように繰り返す。
103万円を引き上げても、すぐに社会保険料発生の別の壁が現れる。
これも併せて解消しないと根本的な問題解決にならない。
現状で国民民主は「隠れ自公」。「企業団体献金全面禁止」、「消費税率5%」が実現しない場合、その責任は国民民主党に帰せられる。
このことを主権者は明確に記憶に刻む必要がある。
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年収103万円の壁、実は大したことない!? 手取りがガクッと減る「本当に怖い壁」とは (会員限定記事)
深田晶恵 ダイヤモンドオンライン 2024.11.7
ファイナンシャルプランナー
10月末に行われた衆議院議員選挙で、公示前から大きく議席を増やした国民民主党。同党が訴えたのが「手取りの増加」、具体的には「103万円の壁」の見直しだ。この「103万円の壁」とは一体何なのか。実は、年収にはこれ以外にもいくつかの壁がある。知っておくべき壁とは何か、実際の手取りにどのような影響が出るのか、見ていこう。(ファイナンシャルプランナー〈CFP〉、生活設計塾クルー取締役 深田晶恵)
“手取りスト”のFPが「103万円の壁」に違和感を覚えたワケ
連日、「103万円の壁」が話題になっている。衆議院選挙において、国民民主党が「103万円の壁」を取り払い、手取りを増やすと公約に掲げたからだ。
ダイヤモンドオンライン 2024.11.7 6:00 会員限定「年収の壁」と言えば、パート収入の壁である「106万円」が広く知られているが、話題の「103万円の壁」は税金の壁。国民民主党の玉木雄一郎代表は、所得税がかかり始める103万円を「壁」とし、その壁を178万円に引き上げる政策の実現を与党に迫る。
手取り計算が好きな、自称「手取りスト」の筆者にしてみると、103万円を「壁」と言っていることに違和感がある。なぜなら、年収が103万円から1万円増えても、所得税は500円しかかからないからだ。
一方、パート収入の「106万円の壁」は、年収が壁を越え107万円になると、いきなり約15万5000円もの社会保険料がかかるようになる。所得税の壁と社会保険料の壁は、仕組みが大きく異なるので、パートタイマーの人は違いをよく知っておく必要があるだろう。
「収入の壁」とは、言い換えれば、基準額を超えると、崖から落ちるように手取りが減る年収のこと。その意味で考えると、税金は崖から落ちるように手取りが減るわけではないので103万円は「壁」とは言えない。
以下のグラフは、パートで働く人の額面年収に対する手取り額を試算したものだ。社会保険料がかかり始める106万円を超すと、崖から落ちるように手取り額は減少する。これが「106万円の壁」である。
では、所得税がかかり始める103万円はどうか。前述のように、年収が1万円増えても所得税額は500円であるし、大きな影響はないことがグラフからも読み取れる。
実は「収入の壁」は、103万円、106万円以外にも複数ある。全ての壁を怖がる必要はなく、手取り額に大きな影響があるもの、ないものがあるので、それぞれの違いを解説しよう。その上で、国民民主党案の「103万円の壁引き上げ案」について考えてみる。
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