2024年11月27日水曜日

戦争犯罪と人道に対する罪 ネタニヤフ、ガラント両氏の国際刑事裁逮捕状

 国際刑事裁判所(ICC)予審裁判部は21日、イスラエルのネタニヤフ首相とガラント前国防相に対して逮捕状を出しました。その具体的な容疑の要旨がしんぶん赤旗に載りました。
 逮捕状は、証人を保護し捜査活動を守るために「秘密」とされるのが通例ですが、冒頭の節で今回公開した理由について説明しています。

 EUのポレル外相は23日、「EU加盟国は国際刑事裁判所(ICC)発行の逮捕状を執行するか否かを選べない」「ローマ条約に署名した国には、裁判所の決定を履行する義務がある。任意ではない」と訪問先のキプロスで述べました。

 一方 ドイツのヘーベシュトライト政府報道官は22日、イスラエルのネタニヤフ首相らの逮捕状発付を受けて声明を発表し「実際に訪独が見込まれる状況まで判断を留保する考え」を表明し、ドイツはユダヤ人を迫害した歴史的な負い目から、イスラエルを擁護しており、逮捕状執行に慎重な姿勢を見せました。

 しんぶん赤旗の記事を紹介します。
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戦争犯罪と人道に対する罪 
ネタニヤフ、ガラント両氏の 国際刑事裁逮捕状発表から
                      しんぶん赤旗 2024年11月25日
 国際刑事裁判所(ICC)の予審裁判部は21日、イスラエルのネタニヤフ首相とガラント前国防相に対して逮捕状を出しました。ICCが発表したプレスリリースから、戦争犯罪と人道に対する罪に関わる具体的な容疑について述べた部分(要旨)を紹介します。
                                (中見出しは編集部)
 犠牲者と家族の
 利益のため公開
 予審裁判部は、少なくとも2023年10月8日から検察官が逮捕状を請求した2024年5月20日までに犯された人道に対する罪と戦争犯罪ついて、ネタニヤフ氏とガラント氏に逮捕状を発出した。
 逮捕状は、証人を保護し、捜査活動を守るために「秘密」とされる。しかし予審裁判部は、以下の情報を公開することを決めた。それは、逮捕状で言及されたものと類似の行動が今も継続しているようにみえるからである。さらに予審裁判部は、逮捕状の存在を知らしめることが、犠牲者やその家族の利益になると判断した。
 まず予審裁判部は、ネタニヤフ氏、ガラント氏が行ったと推定される行動は、ICCの管轄権の対象だと判断する。すでに予審裁判部は、ICCの管轄権が、ガザ、ヨルダン川西岸、東
エルサレムにも及ぶと決定していた
 国際武力紛争の
 法律に基づいて
 予審裁判部は、当該の時期に、イスラエルとパレスチナの間の紛争に、国際武力紛争に関する国際人道法が適用されると信じる合理的な根拠を見いだす。これは両者が1949年のジュネーブ条約の締結国だからであり、イスラエルがパレスチナの一部を占領しているからである。
予審裁判部はまた、イスラエルとハマスの間の戦闘に対して、非国際的武力紛争に関する法律が適用されると見なす。予審裁判部はネタニヤフ氏とガラント氏が行ったとされる行為は、パレスチナの民間人、より具体的にはガザの民間人に対するイスラエル政府機関や軍の活動に関係していると判断した。従って、それは国際的な武力紛争の両当事者の関係に関わるとともに、占領国と被占領地の住民の間の関係にも関わる。これらの理由から、戦争犯罪に関して予審裁判部は、国際武力紛争の法律に基づいて逮捕状を発出することが適切だと判断した。予審裁判部はまた、推定される人道に対する罪は、ガザの民間人に対する広範かつ組織的な攻撃の一部だと判断した。
 飢餓を戦争手段
   =戦争犯罪
 予審裁判部は、両人が、少なくとも2023年10月8日から2024年5月20日にかけて、ガザの民間人から生存に不可欠な物資-食料、水、医薬品、医療物資、および燃料や電気を含むを意図的かつ故意に奪ったと信じる合理的な根拠があると考えた。この所見は、ネタニヤフ氏とガラント氏が国際人道法に違反して人道援助を妨害するうえで果たした役割や、あらゆる手段を通じて援助を促進しなかった事実に基づいている。予審裁判部は、両人の行動が、ガザで困窮する住民に食料その他の必需品を届ける人道団体の能力の崩壊につながったと考えた。すでに述べた制限や、電力の切断、燃料供給の削減もまた、ガザでの水の入手可能性や病院が医療を提供する能力に重大な影響を与えた。
 予審裁判部はまた、ガザヘの人道援助を許可し増させる決定はしばしば条件付きったことに留意した。それらの決定は、国際人法上のイスラエルの義務を果たすためや、ガザの民間人に必要な物資を十分に供給することを保障するために行われたわけではなかった。実際には、それは国際社会の圧力や米国からの要請に応じたものたった。いずれにせよ、人道支援の増大は、住民による必需品入手を改善するには不十分だづた。
 加えて予審裁泗部は、人道支援の搬入に対して課された制限について、明確な軍事的な必要や国際人法に基づく正当な理由がないと信じる合理的な根拠を見いした。国連安保理、国連事務総長、各国、政府系や市民社会の組織が、ガザの人道状況に関して発した警告や訴えにもかかわらず、最低限の人道援助しか許可されなかった。この点で予審裁判部は、はく奪が長期間にわたったこと、および必需品や人道援助の停止と戦争目的とを結びつけたネタニヤフ氏の声明を考慮した。
 従って予審裁判部は、ネタニヤフ氏とガラント氏が、戦争の手段として飢餓を用いた戦争犯罪に刑事責任を負うと信じる合理的な根拠を見いたした。
 「殺人」
   =人道に対する罪
 予審裁判部は、食料、水、電気、燃料、特定の医療物資の欠如がくり出した生活条件は、ガザの民間人の一部の破壊をもたらすように事前に計画されたもので、それが栄養不良や脱水症状によって子どもを含む民間人の死をもたらしたと信じる合理的な根拠があると考えた。検察が援示した2024年5月20日までの物証に基づいて、予審裁判部は、絶滅させる行為という人道に対する罪のすべての要素が満たされたと判断することはできなかった。ただ、これらの犠牲者に関して殺人という人道に対する罪が犯されたと信じる合理的な根拠があると考えた。
 極度の苦痛
   =人道に対する罪
 加えて、ガザに医家物資や医備品、特に麻酔薬や麻酔器が入らないように意図的に制限および妨害することで、両人は、治療が必要な人々に対し非人道的な行為によって重い苦痛を与えたことにも責任がある。医師は、子どもを含む負傷者の手術や四肢切断を麻酔なしに行うことを強いられ、患者を鎮静させるために不分で安全でない手段を用いることを強いられ、これらの人々に極度の苦痛と苦しみをもたらした。これは、その他の非人道的行為という人道に対する罪に相当する。
 「迫害」
   人道に対する罪
 予審裁判部はまた、上記の行為がガザの民間人のかなりの部分から、生命と健康への権利を含む基本的人権をはく奪したこと、住民が政治的および民族的理由で標的にされたことを信じる合理的な根拠を見いだした。従って、迫害という入道に対する罪が犯されたと考える。
 民間人攻撃指示
   =戦争犯罪
 最後に、予審裁判部は、ネタニヤフ氏とガラント氏が、文民の上司として、ガザの民間人に対して攻撃を意図的に指示するという戦争犯罪に対して刑事責任を負うと信じる合理的な根拠があると評価した。ネタニヤフ氏とガラント氏は、犯罪の遂行を予防し、やめさせる、あるいは問題を管轄する当局の処理に任せることを保障するうえで、行使可能な手段を持っていたにもかかわらず、そうしなかったと信じる合理的な根拠が存在する。


決定履行は締約国の義務」ICC逮捕状にEU外相
                      しんぶん赤旗 2024年11月25日
 欧州連合(EU)のポレル外相は23日、EU加盟国は国際刑事裁判所(ICC)発行の逮捕状を執行するか否かを選べないと述べました。
 lCC21日、イスラエルのネタニヤフ首相、ガラント前国防相、イスラム組織ハマスのマスリ氏に対し、人道に対する罪などの容疑で逮捕状を発行しました。EU加盟国はすべて、口マ規程と呼ばれるICC設立条約に署名しています。EUのいくつかの国は、必要なら規程の約束を果たすと表明。しかし、ハンガリーのオルバン首相はネタニヤフ首相を自国に招待するとし、自国を訪問しても何の危険もないとネタニヤフ氏に保証しています。
 ボレル氏は「ローマ条約に署名した国には、裁判所の決定を履行する義務がある。任意ではない」と訪問先のキプロスで述べました
 米国はICC決定を拒否し、イスラエルはICCの動きについて反ユダヤ主義だと述べました。
 ボレル氏は「誰かがイスラエル政府の政策に同意しないと、毎回反ユダヤ主義として非難される」「ネタニヤフ首相であれ他の誰かによるものであれイスラエル政府の決定について、反ユダヤ主義だと非難されることなく批判する権利が私にはある」と述ぺました。(ロイター)


ドイツは慎重姿勢
                      しんぶん赤旗 2024年11月25日
【ベルリン=時事】ドイツのヘーベシュトライト政府報道官は22日、国際刑事裁判所(ICC)によるイスラエルのネタニヤフ首相らの逮捕状発付を受けて声明を発表し、実際に訪独が見込まれる状況まで判断を留保する考えを表明しました。ドイツはユダヤ人を迫害した歴史的な負い目から、イスラエルを擁護しており、逮捕状執行に慎重な姿勢を見せました。
 声明は、機関としてのICCを支持するとしつつ、「同時にイスラエルとの間に特有の関係と大きな責任がある」と主張しました。
 ベシュトライト氏は同日の定例記者会見で「(判断を)急ぐ必要はない」述べました。