2024年11月9日土曜日

玉木国民党とマスコミに簒奪された総選挙の民意ーやる気ゼロの棚ボタ野田立憲

 世に倦む日々氏が掲題の記事をだしました。

 彼は、「このところ、テレビには国民党の玉木雄一郎が出ずっぱり状態であり、選挙の意味は完全にスリ替えられてしまっている。有権者は自民党の腐った裏金体質に鉄槌を下し、裏金問題を決着しさせるべく投票権を行使したのであり、その民意が反映した結果 自公過半数割れとなった。これが今回の総選挙の正しい総括であり、この選挙の争点は裏金問題である(要旨 以下同)」と書き出しています。
 従って、「国会議員は、ただちに裏金問題の実態調査をやり直し、自民党の組織犯罪を分析検証し、裏金問題が再び起きないよう法改正する準備を始めないといけない」にもかかわらず、「投票翌日からあっと言う間にマスコミの場でスリ替え工作が始まり、玉木雄一郎が選挙の主役だったような構図に仕立てられ、恰も『103万円の壁』なる税制問題が主たる争点で、玉木雄一郎が選挙で勝利したような物語に置き換えられた。テレビは控除と所得税と保険料の解説ばかりで報道を埋めている」と述べています。
 一方、「野党第一党の野田立憲党は ただ首班指名での『野党共闘』に血眼で、『政治とカネ』の問題を糺す意思は全くない。選挙では『政治改革』の標語を吹きまくり、裏金問題批判一点で支持を集めて議席を増やしたにもかかわらず、首班指名までの時間を無為に浪費して何も動こうとしない。事実上、自公国 連立政権が組み上がる政局の脇役となった」として、「野田佳彦には裏金問題を追及する意思はなく、この男が選挙で述べた口上はすべて嘘で、有権者を騙す巧言である」と批判しています。

 そして、「裏金問題は、国民一人一人の暮らしの問題と重なり、物価高・生活苦の現状と結びついている。なぜ政治家だけが特権的に脱税や贈収賄が許されるのかという根本的問題は、(国民の心の中で)今後も長く引き摺る」「企業団体献金の禁止を求める声が小さくなることはないし、政治家の金集めパーティへの監視は厳しくなる。自民党は従来のように選挙で買収資金をバラ撒くことが困難になる。政治資金規正法改正についても、国民は玉木雄一郎が自民党に妥協することを許さず、玉木雄一郎が詭弁で逃げるのを許さず、裏金問題は国民の関心事であり続ける」と結論づけています。
 その方向で「裏金問題」を真に解決して欲しいものです。
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玉木国民とマスコミに簒奪された総選挙の民意 ー やる気ゼロの棚ボタ野田立憲
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衆院選の投開票から1週間以上が過ぎた。この間、テレビには国民民主の玉木雄一郎が出ずっぱり状態であり、選挙の意味は完全にスリ替えられてしまっている。この選挙の争点は裏金問題だった。有権者は自民党の腐った裏金体質に鉄槌を下し、民意を一票の行動に表したはずだ。国民は裏金問題を決着しさせるべく主権者の投票権を行使したのであり、その民意が反映した結果、すなわち自公過半数割れとなった。これが今回の総選挙の正しい総括である。後世、2024年の衆院選は「裏金選挙」と呼ばれて定着し記録されるだろう。であれば、国民代表である議会の議員は、ただちに裏金問題の実態調査をやり直し、自民党の組織犯罪を分析検証し、裏金問題が再び起きないよう法改正する準備を始めないといけない。有権者は、玉木国民の「手取りを増やす」や野田立憲の「政権交代」を支持したのではなかった。その二つの標語は(マスコミが定義する)選挙の争点ではなかった

しかるに、投票翌日からあっと言う間にマスコミの場でスリ替え工作が始まり、玉木雄一郎が選挙の主役だったような構図に仕立てられ、恰も、玉木雄一郎の公約主張が選挙全体の争点であったように結論づけられてしまっている。「103万円の壁」なる税制問題が主たる争点で、その是非をめぐって選挙が行われ、玉木国民が勝利したような物語に置き換えられているではないか。意味が盗まれている。その悪質な詐術と陰謀に対して反論を唱える者がいない。野党第一党の野田立憲はただ首班指名での「野党共闘」に血眼で、玉木国民と保守マスコミのクーデターに対して無力なまま黙過している。議席を減らして存在感のない日本共産党には言上げする器量がなく、れいわは裏金問題に無関心で独自路線を貫徹し、国会で裏金問題をクローズアップさせる勢力がない。結局、裏金問題は背後に押しやられ、消され、テレビは控除と所得税と保険料の解説ばかりで報道を埋めている

本当ならマスコミは、厚顔にも国会に帰って来た荻生田光一や世耕弘成や西村康稔にカメラを当て、囲みを作り、この民意をどう思うかと迫り、反応を拾ってワイドショーや夜のニュース番組で論評すべきだっただろう。国会から締め出された下村博文と丸川珠代を追跡し、撮影のライトを浴びせ、戦犯たるの責任を言わせた上で裏金問題の実態について新証言を求めるべきだっただろう。統一教会問題についても、牧原秀樹や山本朋広や山際大志郎を取材し、彼らがどう民意を受け止めたか確認する必要があったはずだ。それらの映像と議論こそが、民意を示した後の有権者が見たかった成果である。そうした情報が天下に示されて初めて、投票結果の意味が物語として具象化され、正義が庶民に実感されるところとなったに違いない。だが、マスコミは、その絵を提供する代わりに、玉木雄一郎を選挙の英雄に捏造する工作に集中し、狡猾に物語を作り変えてわれわれにシャワーしたのだ。

裏金議員や統一教会議員だけではない。例えば、なぜ麻生太郎や岸田文雄や甘利明の絵が表面に出ないのだろう。大敗北を喫し、長く続いた一強体制での放恣と傲慢が不可能になった麻生太郎や河野太郎の挫折の絵が登場しないのか。アンシャンレジームを支えてきた山口那津男が、どう反省の弁を言うかも、われわれが聴きたいコンテンツだ。引く手あまたで選挙の応援に入りながら、多くを落選させる始末となった高市早苗の心境についても、われわれの関心が及ぶ対象である。さらに、今回の安倍派惨敗の象徴である杉田水脈も、ぶら下がりのショットを撮れば視聴者の興味を惹くに違いない。こうした面々をカメラが捉えて報道材料に供することで、「自公過半数割れ」の現実は大衆に実感されたのだろうし、政治が新しく変わるという期待感や刷新感の空気が社会を覆い、霞が関の官僚や自治体首長や大企業経営者の姿勢に影響を与えたかもしれない。だが、その政治進行は阻害された。

選挙後の野田立憲を見ていて確信するのは、彼らに「政治とカネ」の問題を糺す意思が全くない事実である。選挙では「政治改革」の標語を吹きまくり、裏金問題批判一点で支持を集めて議席を増やしたにもかかわらず、首班指名までの時間を無為に浪費して何も動こうとしない。圧倒的な民意を受けた位置にあるのに、裏金問題追及の先頭に立って狼煙を上げようとせず、批判と攻勢の意気を高めようとしない。特別国会を裏金問題の総決算の場にしようとしない。野田佳彦や辻元清美がその旨を明言し提起すれば、国民は大いに共鳴して沸き立ち、年末までの政治の流れが出来ただろう。委員会人事も立憲が主導権を握り、来年の通常国会も立憲が優位に立つ展開を作れたことは間違いなく、国会で多数となった諸野党を纏める首座の地位を確保できたはずだ。不信任案を実効化する権力を持てた。だが、野田立憲はその努力をせず時間を潰し、事実上、自公国連立政権が組み上がる政局の脇役となった

いかに野田佳彦が裏金問題を追及する意思がないかがよく分かった。この男が選挙で述べた口上はすべて嘘で、有権者を騙す巧言である。本気で民意を背負って裏金問題の解決をやる気なら、選挙後すぐにチームを立ち上げ、他野党や学者や弁護士に協力を求め、ラフな素案と目標で合意を取り、院内外にプロジェクトを起動させればよかった。政治資金規正法抜本改正の青写真を示し、企業団体献金禁止の世論を波立たせればよかった企業団体献金禁止の賛否を問う世論調査を打たせるところまで、素早い説得でマスコミをキャリーすればよかった。選挙で勝利した野党第一党の立場とモメンタムで、それは十分可能だったし、それこそが国民の負託に応える中身だったはずである。そうした図柄こそがわれわれが望んだ10月末から11月初の政治だったが、事態は全く面妖な方向に逆転し、玉木国民が主導権を握り、石破自民と霞が関とマスコミが玉木国民を支える脱力の新体制が現出している

だが、選挙の真実をあらためて再確認しよう。自公過半数割れの衝撃は、裏金問題に憤激した国民の民意の結果である。一強で順風だった自民党に突如として逆風が吹き荒れ、手痛いアクシデントの発生と遭難の幕となった。そして、選挙の最終版に「2000万円」問題の暴露があり、まさに台風の最大瞬間風速が絶頂に達した時点で投票が行われ、泣きっ面に蜂の「不運」が重なった56議席減だったのである。別に、野田立憲や玉木国民の政策が支持された結果ではなく、野党が能力を評価されて選択された政治ではない。言わば、文永・弘安の役で蒙古軍を襲った神風のようなものであり、赤旗新聞のスクープの台風に飛ばされて石破自民は壊滅的な敗北を喫した。野党からすれば、偶然的要素が大きく作用した勝利に他ならない。であるとすれば、台風による政治的所産は、果たしてこのまま政治環境として固定化するのだろうか。それとも、自民党の支持率が再び上がって元に戻るのだろうか。

丸山真男的な「いきほひ」の視角からすれば、日本人は変化がもたらした今の現実を絶対化する心性があり、眼前の変化の状況をば将来への時間軸に噴射し推進するエネルギーとして認識する態度を持つ。そこから考えると、玉木雄一郎がヘゲモニーを握り、自公国とマスコミと霞が関で作る新体制が構造建築され、新しい政界再編運動の混乱時代が始まるという見方もあり得る。けれども、他方、よく観察すれば、投票率は上がっておらず、野田立憲は得票を増やしていない。単に安倍支持の保守ネオリベ票が自民から国民に移動しただけの浮気現象であり、実体としては台風禍的な事故に過ぎず、構造だの時代だのを新しくする契機は何も存在しないとも言えるだろう。つまり、一時的に離れた票が次の選挙ですぐに自民党に戻ってもおかしくない。保守ネオリベ票が玉木国民を新しい棲家にして安住するかどうか、私には疑問だ。経験則に照らせば、与党と野党の二兎を追う玉木国民は失敗し、浮動票(保守ネオリベ票)から見放され、自民党に吸収される可能性が高い

そして、もう一つ言えるのは、国民は裏金問題を忘れてないという点である。正直、私は、この問題が1年近く長生きするとは楽観せず、また岸田政権の命取りの要因になるとも思わず、まして衆院選を決定づける最重要争点になるとは思ってなかった。国民はもっと早く関心を他に移すだろうと予想していた。世論調査でマスコミが、選挙や政治への関心内容を尋ねたとき、生活と景気が第一で、社会保障が第二で、安保外交が第三で、政治とカネは第四以下となる。そういう順番で項目が並ぶ。だから、裏金問題も早々に消える運命になると安易に眺めていた(岸田も麻生も田崎も)。だが、実際はそうはならなかったし、本質的にそうはならないのだ。なぜかと言うと、裏金問題は「政治とカネ」の独立した範疇ではなく、一人一人の暮らしの問題と重なり、物価高・生活苦の現状と結びついていて、国民の中で政治への怨嗟として一つだからである。なぜ政治家だけが特権的に脱税や贈収賄が許されるのかという根本的な問題なのだ。だから長く引き摺る

為替が是正されず円安が止まらない以上、物価高と生活苦は今後も重く厳しく続いて行く。経済は現在よりもっと悲惨な局面が到来するかもしれない。そして、上脇博之は健在であり、毎週のように自民党政治家の資金不正事案を告発し続けている。検察が不起訴にしたら検察審査会に申し立てしている。企業団体献金の禁止を求める声が小さくなることはないし、政治家の金集めパーティへの監視は厳しくなるし、自民党は従来のように選挙で買収資金をバラ撒くことが困難になるだろう。当然、政治資金規正法改正についても、国民は玉木雄一郎が自民党に妥協することを許さず、玉木雄一郎が詭弁で逃げるのを許さないに違いない。裏金問題はなお続き、国民の関心事であり続けるのだ。