2024年11月8日金曜日

08- 米軍は死のスパイラルに陥っている(賀茂川耕助氏)

 海外記事を紹介する「耕助のブログ」に掲題の記事が載りました。

 一見、むずかしそうなタイトルですが、米国の武器の価格が如何に常識を超えた法外なものになっているのかがよく理解できます。
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米軍は死のスパイラルに陥っている
                耕助のブログNo. 2324 2024年11月7日
   The US Military is in a Death Spiral   by Indrajit Samarajiva
物資は減り、コストは上がる。予算の数字には軸がなく、ただ60%増加しているだけだ。

米軍は世界最悪の軍隊だ。世界支配を望む唯一の軍隊であり、その能力は最低であるあらゆる戦争に負け、国庫を略奪する唯一の帝国だ。最後の戦争での負けは、次の戦争を始めることで常に隠蔽されてきたが、歴史的に見れば、アメリカはここ数十年負け続けている。韓国、ベトナム、アフガニスタン、ウクライナ、パレスチナ、すべて負けか引き分けだ。今日、アメリカは自国の軍隊を派遣できず、海軍は海上輸送路を確保できず、代理勢力は自立できず、軍事資産は老朽化し、負債となっている。アイゼンハワーが産み落とした軍産複合体という獣は今、死に向かってベツレヘムに倒れこんでいる。諸行無常、鷹は鷹匠の声を聞かない、などなど。

アメリカは依然として世界で最も高い軍事費を支出しているが、これは計量時に腫瘍だらけで現れたボクサーのようなものだ。それは癌で、筋肉ではないのだ。アメリカの軍事予算は腐敗の尺度であり、能力の尺度ではない。パウンド・フォー・パウンドで比較すると、アメリカの軍事力はかつてないほど弱体化している。もっと吸い取るためにさらに多くを費やしているのだ。戦争犯罪人ダン・グレイザーが『責任ある国家政策』で述べたように、死のスターは死のスパイラルに陥っている。

死のスパイラルはペンタゴンの主な病理のひとつである。国防にますます多くの資源を費やしているが、米国民への見返りはますます少なくなっている。空軍は、国防改革派が本格的に活動を開始した1975年には10,387機の航空機を保有していた。現在、空軍の保有機数は5,288機である。海軍は1975年には559隻の現役艦船を保有していた。今日、艦隊はわずか296隻である。国防総省の基礎予算は、インフレ調整後の1975年と比較すると、現在では60%以上も増加している。

限界収益の低下
これは人類学者ジョセフ・テインターが「限界利益の低下」と呼んだ現象をわかりやすく示している。この現象は、瞑想家や麻薬常用者、あるいは長時間歌を聴き続ける人なら誰でも気づくはずだ。やがて取り分は減っていく。存在を主張するものはすべて、いずれはそれを失う。これは永遠の法則である。この現象は、市民だけでなく文明にも当てはまる。これは、エントロピーの物理法則、すなわち時間の矢の方向性と似ている。テインターは文明におけるこの現象を以下のようにグラフ化し、説明している。










多くの重要な分野において、社会政治的な複雑性への継続的な投資はある時点でその利益が最初は徐々に、それから加速的に減少する。したがって人口は進化する社会を維持するためにますます多くの資源を割り当てなければならないだけでなく、ある時点を超えると、より多くの投資を行っても得られる利益はより少なくなっていく

米軍のリターン
この例として米軍ほどふさわしいものはない。どの兵器プログラムを挙げてもいいが、史上最高額の兵器プログラムであるF-35を例に挙げよう。この「夢の兵器」には1兆7000億ドルが費やされ、その額は増え続けている。納入されたのは500機にも満たず、半分は機能せず、しかも正しいマニュアルさえ付いていない。これは2023年のGAO報告書(GAO-23-105341)による事実である。F-35の悲惨な稼働率を調査した政府説明責任局は、 
   我々が訪問した両整備工場の当局者は、技術データの不足と不完全な技術データが整備修理の遅れの原因となっていると述べた。例えば、我々が訪問したある整備工場の当局者によると、修理が必要な部品には整備部品維持マニュアルが付属している。しかしこれらのマニュアルは曖昧で、整備工場の職員が修理を行うのに十分な詳細さであることはまれである。その結果、整備工場の職員は部品を修理できないだけでなく、部品の修理方法を学習し理解することもできない

なぜ米軍は自分たちのものを維持できないのだろうか? その理由は「プログラム責任者が、メーカーは民間企業としての競争力を損なう可能性のある情報を開示するのを嫌がり、プライム・コントラクターを通じて国防総省(DoD)に機密情報を渡したがらない」からだ。 そのため彼らは自分たちの飛行機を修理することも、自分たちのソフトウェアのデバッグ⇒改修)もできない 彼らにはマニュアルもソースコードもない。米国政府は、所有していない軍事プログラムに資金を提供しているのだ。F-35はネットフリックスのような定額制サービスの戦闘機版にすぎない。また、半分は機能せず、機能しているときは子供たちを殺している。

またF-35は古いプログラム(2006年から)で現代の戦争にはまったく適応していない。F-35はもはやそれほどステルス性が高いわけではなく、地上の安価なミサイルに対してはまったく無防備である。別の戦争犯罪者であるフランク・マッケンジーが別の報告書で述べたように、「F-35は空中では攻撃するのが非常に難しい。地上では、それは太陽の下でただ座っている非常に高価で脆弱な金属のかたまりにすぎない」のだ。

この病理は米軍全体に存在している。あらゆる技術や人材において、より多くのお金でより少ない成果を得ている。彼らはより複雑で、より高価で、市場投入に時間がかかり、実際には機能しない新技術を次々と生み出し続けているのだ。米国は軍事予算の高さを資産として宣伝しているが、実際にはそれが負債の指標である

テインターが言うように、「この投資額の増加はより少ない利益の増加をもたらす」。テインターのグラフは、ある時点で、実際には利益がマイナスになることを示している。米国の軍産複合体にとって、その瞬間は数十年も前に訪れていた。エベレスト・E・リッチョーニ大佐が2001年に記したように。
1969年、国防総省の正式な諮問機関であるプログラム分析・評価委員会のメンバーであったピエール・M・スプレイは、30人のペンタゴンの将官、提督、高官ら30名を前にプレゼンテーションを行った。彼は結論として「前例のない法外な価格で軍事兵器を購入した結果、戦争に勝つにはあまりにも少ない兵器しか手に入らず、一方的な軍備の縮小を選択している」と非難して締めくくった。さらに、兵器の複雑さ(コスト上昇の要因)が、兵器が指定された戦闘要件を満たせない主な要因であると指摘した。

限界利益の低下の例はどこからでも挙げることができるが、リッチョーニは航空機ミサイルを挙げている(これも2001年の論文から)。同氏は次のように述べている。

発射のコスト(バーストまたは発射)は、銃では数百ドルだったのが、AIM-9B/Dでは1万5000ドル、AIM-4では9万ドル、AIM-713では19万ドル、そしてフェニックスでは190万ドルという途方もない額に上昇した。有効性を考慮すると消耗品のコストだけでも、大砲(ガン)で約5,000ドル、サイドワインダー・ミサイル(AIM-9)で10万ドル、ファルコン(AIM-4)で90万ドル、スパロー(AIM-7)で190万ドル、そしてフェニックスではほぼ無限大となる

フェニックスを搭載した戦闘機では、空戦はおろか、たった1機の敵機を撃墜することさえできないだろう。

退役した将官や大佐、会計検査官たちが誰に言うでもなく口をそろえて言うように、これは持続可能ではないが、それがどうした?5万ドルの便座や100万ドルの弾丸を売るともうかるが、こうした報告書やブログ記事は儲からない。経済的なインセンティブは軍事目標とは完全にずれている。アメリカ軍産複合体の構造全体は、ネズミ講であり、真の調達プログラムではない。そして、この構造が終焉を迎える方法はただ一つ。崩壊だ。

お金を印刷
しかし、アメリカはお金の印刷機がブルルルと音を立てて、国の根本的な脆弱性を覆い隠してくれるのでどうでもいいと思っている。 理論的には、アメリカは永遠にお金を印刷し続けることができるが、心理的には、いつかは耐えられなくなるだろう。 アメリカはすでにGDPに対する負債比率が高く、利払いはすでに軍事費よりも高くなっている。これは普通の国にとっては破滅的とみなされるが、多くの人々にとっては問題ないとみなされている。なぜなら十分な数の人々が問題ないとみなしているからだ。これは、実際には死のスパイラルである循環論理であり、ネジを回すたびにどんどん小さくなっていく。

最近のランド研究所の報告書が述べているように、「米国の工業生産は、大国間の紛争の要求を満たすことはおろか、今日必要とされる設備、技術、軍需品を供給するにはまったく不十分である」。米国はお金を「印刷」し続けることはできても、銃弾は印刷できない。その代わり、軍事予算は増え続け、軍事生産は減少している。ますます多くの資金がますます少ない財を追い求めるという、教科書通りのインフレの定義である。そして、このインフレは衰退する文明全体に広がっている。アメリカはインフレの定義を政治的に利用しているが、人々が実際に最も多く費やしているもの、つまり住宅、医療、教育に目を向けると、インフレはすでに彼らの文明を破滅させている

軍事的な破滅だけに話を戻すと、Grazierは次のように語る。

 死のスパイラルを放置すれば、行き着く先は一方的な軍備の縮小である。国防総省の元高官で、ロッキード・マーチンのCEOを務めたノーマン・オーガスティンは、1983年に、少し皮肉を込めて、2054年には「国防予算のすべてでたった1機の航空機しか購入できなくなるだろう。この航空機は、閏年を除いて、週に3日半は空軍と海軍で共有され、閏年には海兵隊が1日使えるようになるだろう」と予測した。

自分の尻にしか目が行っていない少数の米軍アナリストたちが理解していないのは、軍備を維持すべきではないということだけではない。できないのだ。文明が死のスパイラルに直面するのは初めてではない。存在を主張するものはすべて、それを失わなければならない。生きるものはすべて死ぬ。国家も同じであり、アメリカのような苦境に陥った国は、苦闘するほどスパイラルが加速する

アメリカがより複雑で効率の悪い軍隊を手に入れるために、より多くのお金を使っているというだけではない。限界利益の低下は、アメリカの文明の多くの分野、自動車、住宅、鉄道、教育、映画、政治家など、至る所で共通して見られる。もはや道路や地下鉄、船を建設することも、競争力のある製造を行うこともできない。すべてがはるかに高価になり、そして、はるかに質の悪いものになっている。限界利益の低下は現実であり、これほどひどい文明は他にない。多くの命と住みやすい地球を巻き添えにしなければ、さっさと消えてしまえと言いたい。だから、私はただこう言おう、アメリカ、クソくらえ。早くおちぶれろ。

https://indi.ca/the-us-military-is-in-a-death-spiral/