このところ国民党の玉木代表はTVに「引っ張りだこ」だそうで、大いに気を吐いているということです。
しかし彼のいう「『103万円の壁』をなくし、年収178万円まで所得税をなくす」という案は、その範囲内に入る「106万円の壁」と「130万円の壁」の存在を隠しているーという批判が高まっています(いずれも、その年収に達すると社会保険料が発生して「手取りが激減」します)。
植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
植草氏の意見は終始一貫して明快で、今回の衆院選の結果「野党が結束すれば政権交代を実現できる。政権交代を実現し、『消費税率5%』『企業団体献金全面禁止』を成立させれば大刷新で、主権者はこうした変化を待望している」のに、「国民民主が『政権交代』よりも『自公すり寄り』に進んでいるからこの構想は崩壊した」と批判しています。
そして、「現状で国民民主は『隠れ自公』。『企業団体献金全面禁止』、『消費税率5%』が実現しない場合、その責任は国民民主党に帰せられる。このことを主権者は明確に記憶に刻む必要がある」と述べています。
真正の野党が伸びないことには政治は良くなりません。
併せて「年収103万円の壁、実は大したことない!? 手取りがガクッと減る『本当に怖い壁』とは」を紹介します。
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自公すり寄り国民民主の正体
植草一秀の「知られざる真実」 2024年11月9日
衆院総選挙で自公は過半数割れに転落。
自民 197 ・ 立民 148 共産 8
公明 24 ・ 維新 38 参政 3
与党計 221 ・ 国民 28 保守 3
・ れいわ 9 社民 1
・ 野党計 238
無所属 6
衆議院過半数は233。上記の自民には自民党系の無所属当選者6名を含む。
これでも自公は過半数に遠く及ばない。野党が結束すれば政権交代を実現できる。
政権交代を実現し、「消費税率5%」「企業団体献金全面禁止」を成立させれば大刷新だ。
主権者はこうした変化を待望しているのではないか。
ところが、この構想は崩壊した。国民民主が「政権交代」よりも「自公すり寄り」に進んでいるからだ。いずれは自公政権に参画することを目論んでいると見られる。
ただし、いま自公政権に参画すれば「自公派」であることが鮮明になる。
2025年夏に参院選がある。「国民民主は自公の一派」であることが認識されれば、参院選で国民民主は敗北する可能性が高い。
これを避けるために、いまは自公と距離があることを演出している。
しかし、11月11日の首班指名選挙で国民民主党は石破茂氏が内閣総理大臣に指名されることに協力する方針。事実上、石破内閣樹立に協力する。
首班指名選挙で野党が結束すれば政権交代が実現する。
新しい政権を樹立して「消費税率5%」や「企業団体献金全面禁止」を決定することができる。
もちろん、参議院で過半数議席を保持していないため、参議院が異なる議決をする場合には、衆院で3分の2以上の賛成で再可決しないと法律は成立しないから、条件は付く。
それでも、自公がこれら施策に反対して法案を潰せば、25年参院選で自公はさらに深刻な惨敗を喫することになる可能性が高い。
首班指名選挙で野党が結束する場合、現状では立憲民主党の野田佳彦氏を総理に指名するのが順当。維新は首班指名選挙で野田氏に投票することを完全に否定していない。
れいわ新選組も「消費税率5%」に同意するなら野田氏に投票することがあり得るとした。
したがって、消費税率5%を軸に新政権を樹立することは可能。
また、政治改革での最大テーマである企業団体献金全面禁止について、野党が結束すれば実現できる状況が生まれている。
企業団体献金全面禁止について、立民、維新、れいわ、共産、社民が足並みを揃えられる状況が生じている。国民民主が連帯すれば企業団体献金全面禁止を実現できる。
ところが、これにブレーキをかけているのが国民民主。国民民主代表の玉木雄一郎氏は企業団体献金全面禁止に自民党が合意することが必要としている。その自民党は企業団体献金全面禁止に反対なのだ。
つまり、国民民主は企業団体献金全面禁止が実現しないように行動するということ。
国民民主は総選挙で消費税減税を公約に掲げたが、実際に野党連携でこれが実現する環境が生まれると、消費税減税実現に向けて動こうとしない。
立憲民主は野党が結束するなら総理指名選挙で玉木雄一郎の名を書くことまで仄めかしている。
ところが、国民民主の玉木氏は103万円の壁だけを「何とかの一つ覚え」のように繰り返す。
103万円を引き上げても、すぐに社会保険料発生の別の壁が現れる。
これも併せて解消しないと根本的な問題解決にならない。
現状で国民民主は「隠れ自公」。「企業団体献金全面禁止」、「消費税率5%」が実現しない場合、その責任は国民民主党に帰せられる。
このことを主権者は明確に記憶に刻む必要がある。
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年収103万円の壁、実は大したことない!? 手取りがガクッと減る「本当に怖い壁」とは (会員限定記事)
深田晶恵 ダイヤモンドオンライン 2024.11.7
ファイナンシャルプランナー
10月末に行われた衆議院議員選挙で、公示前から大きく議席を増やした国民民主党。同党が訴えたのが「手取りの増加」、具体的には「103万円の壁」の見直しだ。この「103万円の壁」とは一体何なのか。実は、年収にはこれ以外にもいくつかの壁がある。知っておくべき壁とは何か、実際の手取りにどのような影響が出るのか、見ていこう。(ファイナンシャルプランナー〈CFP〉、生活設計塾クルー取締役 深田晶恵)
“手取りスト”のFPが「103万円の壁」に違和感を覚えたワケ
連日、「103万円の壁」が話題になっている。衆議院選挙において、国民民主党が「103万円の壁」を取り払い、手取りを増やすと公約に掲げたからだ。
ダイヤモンドオンライン 2024.11.7 6:00 会員限定「年収の壁」と言えば、パート収入の壁である「106万円」が広く知られているが、話題の「103万円の壁」は税金の壁。国民民主党の玉木雄一郎代表は、所得税がかかり始める103万円を「壁」とし、その壁を178万円に引き上げる政策の実現を与党に迫る。
手取り計算が好きな、自称「手取りスト」の筆者にしてみると、103万円を「壁」と言っていることに違和感がある。なぜなら、年収が103万円から1万円増えても、所得税は500円しかかからないからだ。
一方、パート収入の「106万円の壁」は、年収が壁を越え107万円になると、いきなり約15万5000円もの社会保険料がかかるようになる。所得税の壁と社会保険料の壁は、仕組みが大きく異なるので、パートタイマーの人は違いをよく知っておく必要があるだろう。
「収入の壁」とは、言い換えれば、基準額を超えると、崖から落ちるように手取りが減る年収のこと。その意味で考えると、税金は崖から落ちるように手取りが減るわけではないので103万円は「壁」とは言えない。
以下のグラフは、パートで働く人の額面年収に対する手取り額を試算したものだ。社会保険料がかかり始める106万円を超すと、崖から落ちるように手取り額は減少する。これが「106万円の壁」である。
では、所得税がかかり始める103万円はどうか。前述のように、年収が1万円増えても所得税額は500円であるし、大きな影響はないことがグラフからも読み取れる。
実は「収入の壁」は、103万円、106万円以外にも複数ある。全ての壁を怖がる必要はなく、手取り額に大きな影響があるもの、ないものがあるので、それぞれの違いを解説しよう。その上で、国民民主党案の「103万円の壁引き上げ案」について考えてみる。
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