2024年11月18日月曜日

18- トランプがマスクをイランの国連大使と会談させ、イランとの開戦計画を阻止か

 17日付の櫻井ジャーナルに掲題の記事が載りました。
 それはニューヨークタイムズの記事によるもので、トランプは何とまた早手回しのことかとその実行力に感心しました。ところが18日付櫻井ジャーナルの記事には、誤報だったと訂正が載り、ニューヨークタイムズ紙はこれまで米支配層の意向に沿う偽情報を流してきたので、嘘だとしても驚きではないと書かれていました。
 米支配層の意向を忖度した記事であるなら、それに近い構想がトランプサイドにあるということでしょうか。トランプは今度も「大統領の任期中には新たな戦争は始めない」という強い意思を持っているようです。
 トランプ次期米大統領は、コロナワクチンに懐疑的なロバート・ケネディ・ジュニアを保健福祉長官(HHS)に任命し、情報機関に不信感を持っているタルシ・ガッバード元下院議員を国家情報長官候補に指名するなど、大胆な構想を持っているようです。

 逆に米国民はそういう人物を支持したということです。

 併せて18日付の櫻井ジャーナル記事「オバマ政権が始めたウクライナ侵略で、22年から英国の軍や情報機関が重要な役割」を紹介します。
 公約通り早急にウクライナ戦争を終結させてほしいものです。
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トランプがマスクをイランの国連大使と会談させ、イランとの開戦計画を阻止か
                         櫻井ジャーナル 2024.11.17
 ドナルド・トランプ次期米大統領はロバート・ケネディ・ジュニアを保健福祉長官(HHS)に任命、タルシ・ガッバード元下院議員を国家情報長官候補に指名、イーロン・マスクをニューヨークへ派遣してイランのアミール・サイード・イラバニ国連大使と会談させたという。
 HHSを構成する部局の中にはCOVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動で中心的な役割を果たしたCDC(疾病管理予防センター)やFDA(食品医薬品局)も含まれている。アメリカを支配している人たちは医療システムを支配の道具として利用、COVID-19騒動の背後に国防総省が存在しているので、HHSは重要な省だと言える

 国家情報長官は情報機関を統括する重要な役職だが、それだけに情報部門を支配しているネオコンがガッバードをすんなり受け入れることはないと見られている。
 トランプは前回、国家安全保障補佐官にマイケル・フリン元DIA(国防情報局)局長を選んだのだが、この人物が局長だった当時のDIAは、バラク・オバマ政権が中東で進めていたアル・カイダ系武装集団への支援を危険だと指摘していた。
 オバマ大統領はムスリム同胞団を使い、地中海沿岸国で体制転覆作戦を展開するため、2010年8月にPSD-11を承認。「アラブの春」はその結果だ。
 その作戦ではムスリム同胞団だけでなくサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)も投入、リビアではNATOも連携させた。リビアのムアンマル・アル・カダフィ体制はその年の10月に倒され、カダフィ本人惨殺された。

 シリア軍はリビア軍と違って強く、アル・カイダ系武装勢力だけではバシャール・アル・アサド政権を倒せない。そこでオバマ政権はリビアから兵器や戦闘員をシリアへ移動させるだけでなく、新たな軍事支援を実行した。
 DIAはオバマ政権が支援している「反シリア政府軍」の主力はアル・カイダ系武装集団のAQI(イラクのアル・カイダ)で、アル・ヌスラと実態は同じだと指摘、その中心はサラフィ主義者やムスリム同胞団だと報告している
 報告書の中でDIAは、オバマ政権の政策によってシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域が作られると警告しているが、2014年にそれがダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)という形で現実になった。そのダーイッシュは残虐さを演出してアメリカ/NATOの介入の口実を作ろうとしたが、2015年9月末にシリア政府はロシア政府に軍事介入を要請、ロシア軍がダーイッシュなど傭兵部隊を一掃していった。
 トランプはこうした背景を持つフリンを国家安全保障補佐官に任命した人事をヒラリーを支えていたネオコンや戦争ビジネスは怒り、フリンに最も近い副補佐官とされていたロビン・タウンリーがNSC(国家安全保障会議)で働くために必要なセキュリティ・クリアランスの申請をCIAは拒否、フリンは2017年2月に解任された。ガッバードを国家情報長官に据えられるのか、長官に据えても仕事をできるのか、不明だ。
 2015年の6月に欧米の一部支配グループはヒラリー・クリントンを次期大統領にすることを内定していたと言われている。この月の中旬にオーストリアで開かれたビルダーバーグ・グループの会合へジム・メッシナというヒラリー・クリントンの旧友が出席していたからだ。
 オバマ大統領は2015年12月にロシアの外交官35人の追放を命じ、アメリカとロシアとの関係を悪化させようとした。アメリカの大統領選挙に介入しようとしたからだとされているが、この「ロシアゲート」は民主党幹部がCIAやFBIと手を組んで仕掛けたでっち上げであることは明確になっている。

 ヒラリー勝利の流れが変わったとする噂が流れ始めたのは2016年2月10日。この日、ヘンリー・キッシンジャーがロシアを訪問し、ウラジミル・プーチン露大統領と会談している。ドナルド・トランプが注目されるようになるのはその後だ。
 その一方、3月16日にウィキリークスがヒラリー・クリントンの電子メールを公表、その中にはバーニー・サンダースが同党の大統領候補になることを妨害するよう民主党の幹部に求めるものがあり、サンダースの支持者を怒らせることになる。民主党幹部たちが2015年5月26日の時点でヒラリー・クリントンを候補者にすると決めていたことを示唆する電子メールもあった。こうした情報はサンダースを支持していた人びとを怒らせることになる。

 オバマ政権で副大統領を務めていたジョー・バイデンはオバマと同じようにロシアとの関係を悪化させ、軍事的な緊張を高めた2016年の大統領政権でヒラリーが勝利していたならオバマやバイデンと同じようにロシアとの軍事的な緊張を高めていただろう。もっとも、トランプもネオコンの好戦的な政策を変えることはできなかった。

 トランプは今回、エリース・ステファニック、マルコ・ルビオ、マイケル・ウォルツというシオニストを要職につけた。トランプがイスラエルと親密な関係にあることは否定できないそこで注目されているのがマスクの動きだ。
 トランプが大統領選挙で勝利した3日後、FBIはイラン系アメリカ人のファルハド・シャケリの話を発表した。ファルハド・シャケリがイランの革命防衛隊に指示されてトランプを暗殺しようと計画していたというのだが、ラリー・ジョンソンによると、この話はCIAの工作である可能性が高い
 シャケリは2019年にスリランカで逮捕された。92キロのヘロインを運ぼうとしていたのだが、この逮捕にはアメリカのDEAが協力、その後DEAはシャケリを情報提供者として採用、シャケリをイランの情報機関員だとする話に信憑性を持たせるため、彼をイランに移住させ、職を得るよう指示したという。シャケリの話を利用し、トランプが大統領に就任する前にイランを攻撃しようとしていた疑いが持たれている。

 このストーリーはジョン・F・ケネディ大統領が暗殺された際に使われたシナリオに似ている。当時、軍や情報機関の好戦派はソ連に対する先制核攻撃を計画、それを正当化するため、ソ連やキューバが暗殺の黒幕だとする話が流されていた。
 シャケリの訴追が発表された後、マスクをイランの国連大使と会談させたのは、イランと間接的な協議しか行わなかったバイデン政権と対照的だ。マスクの派遣は好戦派のシナリオを潰すことが目的で、それは成功したのではないかと言われている。

 少なからぬシオニストを抱えたトランプ次期大統領はイスラエルを支援すると見られているが、マスクの動きに関する分析が正しいなら、和平に向かう可能性もあ


オバマ政権が始めたウクライナ侵略で、22年から英国の軍や情報機関が重要な役割
                         櫻井ジャーナル 2024.11.18
 ドナルド・トランプ次期大統領がイーロン・マスクをニューヨークでイランのアミール・サイード・イラバニ国連大使と会談させたとニューヨーク・タイムズ紙が伝えが、イラン外務省はこの報道を否定した。
 同紙はこれまでアメリカ支配層の意向に沿う偽情報を流してきたので嘘だとしても驚きではないが、アメリカやイスラエルによるイランに対する攻撃が近いとする推測が流れる中での出来事だ。
 ちなみに、トランプは大統領として2017年4月に巡航ミサイルのトマホーク59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射、18年4月にはイギリスやフランスを巻き込み、100機以上のトマホークをシリアに対して発射したが、成功しなかった。
 そして2018年5月にトランプ大統領はイラン核合意から自国を正式に離脱させ、20年1月にはイランのコッズ軍を指揮してきたガーセム・ソレイマーニーとPMU(人民動員軍)のアブ・マフディ・ムハンディ副司令官をバグダッド国際空港で暗殺している。
 また、民主党に所属するふたりの上院議員、ジャック・リード上院軍事委員会委員長と外交委員会メンバーのジーン・シャヒーンはマスクがロシアの高官数人と連絡を取っていたという情報について調査するべきだと要求しているが、今後、こうした話を突破口にしてマスク攻撃を展開するつもりなのかもしれない

 トランプ政権が中東に対してどのような政策を打ち出すのか明確でないが、ロシアとの戦争を回避しようとしていることは可能性は高い。それに対し、一貫してロシアとの戦争に執着しているのがイギリスの支配層だ。
 ロシア軍は2022年2月24日にウクライナ軍に対するミサイル攻撃を開始したが、その直後にウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー政権はロシアのウラジミル・プーチン政権と停戦交渉を始めた。仲介役はイスラエルのナフタリ・ベネット首相とトルコ政府で、ほぼ合意に達していた。
 停戦が内定したことを伝えるためにベネットは同年3月5日にドイツへ向かい、オラフ・シュルツと会うのだが、その日、ウクライナの治安機関SBUはキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフを射殺している。
 そして4月9日、ボリス・ジョンソン英首相がキエフへ乗り込んで停戦交渉の中止と戦争の継続を命令4月30日にはナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対してウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めた。

 2022年10月8日にクリミア半島とロシア本土を結ぶクリミア橋(ケルチ橋)が爆破された。ロシアのFSB(連邦保安庁)によると、容疑者は12名。そのうち8名が逮捕されたという。トラックに積まれた建設用のフィルム・ロールに偽装したプラスチック爆弾で、爆破工作を計画したのはウクライナ国防省のGUR(情報総局)だとされたが、計画の黒幕はイギリスの対外情報機関SIS(通称MI6)だとする情報もあった。この情報機関はイギリスの金融界、通称「シティ」との関係が深い。
 このクリミア橋爆破を含む工作にイギリスの退役した軍人や情報機関のメンバーで組織された一団をイギリス国防省は組織し、「プロジェクト・アルケミー」と呼ばれるようになった。この計画を作り出したのはイギリス軍のチャーリー・スティックランド中将だとされている。このスティックランドがプロジェクト・アルケミーの最初の会議を招集したのは2022年2月26日だという。

 イギリスの情報機関は第2次世界大戦の終盤、アメリカの情報機関と共同で「ジェドバラ」なるゲリラ部隊を組織した。メンバーにコミュニストが多かったレジスタンスに対抗するためだとされている。
 大戦後、アメリカではジェドバラの一部メンバーは軍へ移動してグリーン・ベレーをはじめとする特殊部隊の創設に関わり、一部は極秘の破壊工作部隊OPCの中核メンバーになった。またヨーロッパでは「ソ連の軍事侵攻に備える」という名目で破壊工作機関のネットワークが構築された。
 NATOが組織されると、そのネットワークは吸収され、メンバー国には秘密部隊が作られている。その中で最も有名な組織はイタリアのグラディだろう。こうしたグラディのような組織がウクライナでも作られたという。

 ウクライナは2014年2月22日、アメリカのネオコンが仕掛けたクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権が倒され、ネオ・ナチが主導権を握る体制が築かれた
 ネオ・ナチを率いてきたひとりがドミトロ・ヤロシュ。この人物はドロボビチ教育大学でワシル・イワニシン教授の教えを受けたことが切っ掛けになってOUN-B(ステパン・バンデラ派)系のKUN(ウクライナ・ナショナリスト会議)に入るが、この人脈はソ連消滅後に国外からウクライナへ戻り、活動を始めている。2007年にヤロシュはKUNの指導者になり、そのタイミングでNATOの秘密部隊ネットワークに参加したとされている。
 プロジェクト・アルケミーのメンバーはウクライナにおける代理戦争を長引かせことでプーチン大統領に対するロシア内外の信頼性を失わせ、NATOと戦う能力を低下させることができると考えた。ドンバスでロシア軍が敗北すればプーチン政府崩壊の引き金になってロシアを西側が支配する金融秩序へ吸収でき、ロシアが敗北すればロシアの安い天然ガスや穀物を手に入れられる。おそらく、ヨーロッパ諸国はその「おこぼれ」にあずかれると思ったのだろう。

 アルケミーはICC(国際刑事裁判所)にあらゆる可能な支援を提供するよう提案、イギリスの著名な弁護士はICTY(旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所)に類似した組織を設立しようと目論んでいたとも言われている。マックス・ブルーメンタールによると、イギリスはカリム・カーンのICC主任検察官任命で重要な役割を果たしたとされている。
 そのカーンは2023年3月にプーチン大統領と子どもの権利オンブズマンであるマリア・リボバ-ベロバに対する逮捕令状を発行、5月にはロシア当局がカーンに対する逮捕令状を発行した。ICCは2024年6月にロシアの元国防大臣セルゲイ・ショイグとロシア軍のワレリー・ゲラシモフ参謀総長に対する逮捕状も発行した。
 こうした西側の妄想が成立するためにはロシアがウクライナで軍事的に劣勢にならなければ成立しないのだが、実際はロシアの軍や経済の強さを明らかにすることになっている。西側は窮地に陥った。