櫻井ジャーナルが掲題の2つの記事を出しました。
ここで「何が変わらないのか」の部分は、ウラジミル・プーチンが言うところの「アメリカではあらゆる政策が大統領ではなく『黒いスーツと青いネクタイの男たち』が決めている」という部分です。
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米大統領選でトランプが勝利して何が変わり、何が変わらないのか
櫻井ジャーナル 2024.11.07
アメリカ大統領選でドナルド・トランプがカマラ・ハリスを破り、時期大統領に選ばれたようだ。トランプは2016年の選挙でも勝利しているが、その際には民主党だけでなくCIA、FBI、有力メディアから攻撃を受け、国家安全保障担当補佐官に選ばれたマイケル・フリン元DIA局長がホワイトハウスから追い出されている。
2009年1月から17年1月まで大統領を務めたバラク・オバマはロシアとの関係悪化に力を入れ、2010年8月にはPSD-11を承認してムスリム同胞団を利用して北アフリカからシリアにかけての地中海沿岸国で体制転覆作戦を進めた。いわゆる「アラブの春」だ。
シリアやリビアではムスリム同胞団のほかサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を中心とするアル・カイダ系武装集団を投入、リビアでは体制転覆に成功、今では無法国家。シリアでは戦乱が続いている。
シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒せないため、リビアから武器弾薬や戦闘員を移動させるだけでなく、新たな戦闘集団を編成している。イラクのサダム・フセイン政権時代に軍人だった人びとが参加したと言われているが、その新戦闘集団をオバマ政権は支援した。
そうした動きを危険だと判断したのがDIA。オバマ政権が支援している反シリア政府軍の主力はアル・カイダ系武装集団のAQI(イラクのアル・カイダ)で、アル・ヌスラと名称が変わっても実態は同じだと指摘している。その集団の中心はサラフィ主義者やムスリム同胞団だ。
DIAは報告書の中で、オバマ政権の政策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになるとも警告、それがダーイッシュ(IS、ISISなどとも表記)という形で現実になった。2014年1月にダーイッシュはファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言、6月にはモスルを制圧する。
その後、この武装集団は残虐さを演出、アメリカ/NATOの介入を誘うのだが、2015年9月にシリア政府はロシア政府に軍事介入を要請、ロシア軍がダーイッシュなど傭兵部隊を一掃していった。
こうした経緯があるため、フリンはオバマ政権がダーイッシュを含むアル・カイダ系武装集団の後ろ盾だったことを熟知していた。武装集団を操っていたオバマ政権のネオコン、CIAなどはフリンが安全保障担当補佐官として活動することを嫌っていたはずだ。
今回、トランプは民主党だったロバート・ケネディ・ジュニアやタルシ・ガッバード元下院議員を要職につけると見られているが、このふたりを民主党幹部は恐れているだろう。COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動の暗部、ロシアとの核戦争に向かった政策に関する情報が明るみに出ることも恐怖しているかもしれない。
しかし、トランプ政権が外交や安全保障分野の政策を大きく変更することはないと見られている。ウクライナでの戦闘を「現状維持」で終わらせることは不可能であり、トランプの人脈はガザやレバノンでの住民虐殺を支援している。イスラエルではレバノンへの軍事侵攻に慎重だったヨアブ・ガラント国防相が解任された。イスラエル政府は戦乱を望んでいるのだろうが、その先には破滅が待つ。ペルシャ湾岸の産油国はアメリカやイギリスの従属、イスラエルとの関係を強めてきたが、その政策を続ければ彼らも破滅する可能性が高い。
選挙で誰が選ばれても政策は「黒いスーツと青いネクタイの男たち」が決める
櫻井ジャーナル 2024.11.06
アメリカの時期大統領を決める選挙が実施される。民主党のカマラ・ハリスと共和党のドナルド・トランプの争いになるそうだ。ウクライナを舞台とした対ロシア戦争をハリスは推進しようとし、トランプは止めようとしていると言われているが、パレスチナでの住民虐殺に関しては両者に大差はない。皆殺しにしろということだ。
しかし、過去を振り返ると、どの政権も政策に大差はない。外交や安全保障分野の政策はシオニストが決めてきた。ジョン・F・ケネディ政権まではそれでもイスラエルに対して厳しい姿勢を示す大統領もいたのだが、ケネディが暗殺されて以降、そうしたことは無くなっていった。
フランクリン・ルーズベルト政権は反植民地、反ファシズムを掲げていたが、第2次世界大戦後、侵略、殺戮、破壊、略奪という帝国主義的な政策を継続してきた。ベトナム戦争のようにアメリカ軍が直接出てくることもあったが、傀儡軍を使ったクーデター、アル・カイダ系武装集団やネオ・ナチで編成された戦闘集団による侵略という手法が取られることが多い。
ウラジミル・プーチンに言わせると、アメリカではあらゆる政策が大統領ではなく「黒いスーツと青いネクタイの男たち」が決めている。
イギリスをはじめとするアングロ・サクソンの支配者は19世紀以来、侵略の最終目標をロシア征服においている。1941年6月にドイツが始めた「バルバロッサ作戦」でもそうだったが、ロシアへの突入はウクライナから始まる可能性が高い。
シオニストの一派であるネオコンは1992年2月にアメリカ国防総省のDPG(国防計画指針)草案として世界制覇プロジェクト(ウォルフォウィッツ・ドクトリン)を作成した。
ウクライナで実施された2004年の大統領選挙で中立を掲げるビクトル・ヤヌコビッチが勝利すると、アメリカは2004年から05年にかけて「オレンジ革命」と呼ばれたクーデターを実行、西側の傀儡だったビクトル・ユシチェンコを大統領に据えた。
ユシチェンコ政権は新自由主義政策を推進、不公正な政策で貧富の差を拡大させたことからウクライナ人の怒りを買い、2010年の大統領選挙では再びヤヌコビッチが勝利。そこでアメリカのバラク・オバマ政権は2013年から14年にかけてネオ・ナチを利用したクーデターを実行、西側資本の属国にしたわけだが、ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部の住民はクーデタを拒否、クリミアはロシアの保護下に入り、ドンバスでは内戦が勃発した。
アメリカ/NATOはその内戦をエスカレートさせ、ドンバスに対する本格的な軍事作戦を始めようとしていた2022年2月にロシアは機先を制してウクライナに対する攻撃を開始、その月のうちにキエフ側の敗北は決定的。そこでウォロディミル・ゼレンスキー政権は停戦交渉を開始、ロシア側とほぼ合意しているのだが、それをイギリスとアメリカ両政府が壊してしまった。彼らにとってウクライナはロシアをできるだけ疲弊させるための道具にすぎなかった。
アメリカ/NATOは兵器を供与、兵士を訓練、さらに傭兵や自国兵を送り込んできたが、限界に達している。これ以上続けるためにはアメリカ/NATOが前面に出てこなければならない状況だ。
そうした中、アメリカはジョージアとモルドバの支配を確たるものにしようとしている。ジョージアでは苦戦しているようだが、モルドバの選挙結果は反ロシア派が優勢。11月3日の投票ではハーバード大学ケネディ行政大学院を卒業した反ロシア派のマイア・サンドゥが大統領に選ばれた。
サンドゥに対抗する政党が分裂、投票率が54%にすぎない。投票率の低さは投票しにくい環境が作られていることもある。投票に向かう自動車で大規模な渋滞が発生している様子を撮影した映像も流れている。
モルドバの選挙は国外からの投票で左右されるのだが、「反EU、親ロシア」の有権者の投票をサンドゥ政権はブロックしているとする人もいる。ロシアにいるモルドバの有権者50万人のために設置された投票所の数は2カ所にすぎず、十分な数の投票用紙がなかった。反EU派の投票数を抑えたということだ。親ロシアのトランスニストリアには約45万人のモルドバ人がいるが、そこには投票所がない。勿論、西側諸国には十分な数の投票所が設けられた。
アメリカ支配層にとって都合の良い結果をもたらす選挙は何があっても「公正」であり、都合の悪い結果をもたらす選挙はどれだけ公正な仕組みでも「不正」だとされる。それが西側流の民主主義である。アメリカの選挙には事実上、選択肢がないと言う人もいる。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。