植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
植草氏は、7月の東京都知事選と最近行われた衆院総選挙、米大統領選そして兵庫県知事選の4つの選挙に3つの共通点を見出すことができるとして、「既存メディアの影響力低下」「SNS等の新規インターネットメディアの影響力拡大」「低年齢層の選挙への影響力拡大」を上げ、結果的に「マスメディアが支配する選挙が崩壊し始めている」と指摘します。
ただしインターネットメディアの活用は、人々の納得や共感を獲得できれば大きな成果を上げることができるが、「問題は流布される情報が必ず真理とは限らないこと」で、兵庫県知事選では斎藤前知事が元県民局長(故人)の内部通報に対して取った行動が適切であったのかどうかが最重要の評価対象だったが、同局長のプライバシーに関する情報が拡散されて有権者の行動が誘導された側面が強く、「目的のためには手段を問わない」とのスタンスで選挙戦が展開されたとすれば、選挙が公正な状況で執行されたのかどうかについての検証が必要になると述べています。
そしていずれにしても「今後の日本政局を左右する最大の分岐点になるのが25年参院選で、参院選に向けて各陣営は選挙戦術を根本から見直さねばならない」と結んでいます。
併せて同氏によるもう一つの記事「名古屋市長選広沢氏先行の理由」を紹介します。
ここでは「兵庫県の斎藤氏勝利の要因を探ると、政策提言のなかに示される〝財政資金の使い方″が極めて大きな意味を持つ」として、「新庁舎建設」、「外郭団体縮小」、「県立大学授業料無償化」の中でも、県庁舎建設費用(1000億円)の圧縮を斎藤氏がアピールしたことが勝敗を分ける大きな要素になった点を否定できないと述べます。
そして、「河村たかし前市長から後継指名された広沢一郎候補は市長給与800万円、市民減税継続を公約に掲げるのに対して、この二点に明確な姿勢を示さない大塚耕平氏は主権者の広い支持を集めるのが困難ではないかと考えられる」と指摘しています。
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新時代情報戦争と兵庫知事選
植草一秀の「知られざる真実」 2024年11月18日
10月27日の衆院総選挙、11月7日の米国大統領選、11月17日の兵庫県知事選が実施された。
衆院総選挙では国民民主党が議席を4倍増させた。
米大統領選ではトランプ前大統領が圧勝。
兵庫県知事選では斎藤前知事が勝利した。
また、7月7日には東京都知事選があり、石丸伸二氏が第2位の票を得た。
四つの選挙に三つの共通点を見出すことができる。
第一は既存メディアの影響力低下。
第二はSNS等の新規インターネットメディアの影響力拡大。
第三は低年齢層の選挙への影響力拡大。
日本の選挙の最大特徴は投票率の低さ。主権者の5割が参政権を放棄してきた。
自治体首長選挙では投票率が3割台も珍しくない。眠れる主権者が大量に存在する。
眠れる主権者の投票を取り込むことができれば選挙結果が激変する。この点に目を付けた陣営が得票を大幅に伸ばした。
インターネットメディアの特徴は情報流布の幅の広さ。マスメディアが否定的に取り扱う情報も拡散できる。
同時に、政治に関心を持たなかった有権者がインターネット上の情報に引き寄せられて選挙に新規参入する現象が広がり始めた。これを誘導する戦術を採用した陣営が得票を大幅に伸ばした。「マスメディアが支配する選挙」が崩壊し始めている。
米国大統領選では大半のマスメディアがハリス支援体制を敷いた。
トランプとハリスの最大差異は 戦争・ワクチン・CO2に対するスタンスの相違として捉えることができる。
ハリスは戦争推進、ワクチン推進、CO2対策推進に基本的に全面賛成である。
戦争・ワクチン・CO2は米国を支配する巨大資本が重視する戦略分野。
ハリスはこの路線に異論を差し挟まない。マスメディアは戦争・ワクチン・CO2対策を全面的に支援する。。
トランプは真逆の対応を示した。戦争の早期終結、ワクチン懐疑、CO2起源説懐疑を前面に押し立てた。米国の主権者多数がマスメディアの誘導に従わずにトランプを支持。
マスメディアの人心支配力が低下。米国有権者のメディアリテラシーが格段に向上している。
SNSやYOUTUBE情報の特徴は情報発信に対する規制=コードが緩いこと。
ワクチンなどではこの用語を用いただけで「監視対象」に組み入れられるなど、インターネットメディアでも情報統制が存在するが、「ワクチン」を「ちくわ」などの言葉に置き換えて対応すれば規制を免れる道は存在し、利用者の側での創意工夫も観察される。
インターネットメディアを活用して、人々の納得や共感を獲得できれば、大きな成果を上げることができる。
問題は流布される情報が必ず真理とは限らないこと。
事実に反する情報であっても、情報の受け手が納得し、真実だと信じ込めば投票結果などに影響を与えることができる。
兵庫県知事選では、斎藤前知事が亡くなった県民局長の内部通報に対して取った行動が適切であったのかどうかが最重要の評価対象だったが、県民局長のプライバシーに関する情報が拡散されて有権者の行動が誘導された側面が強いと見られる。
「目的のためには手段を問わない」とのスタンスで選挙戦が展開されたとすれば、県民局長が使用していたPCに保存された情報の管理が適切であったのかどうかに関する評価がなされる必要がある。
この意味で、選挙が公正な状況で執行されたのかどうかについての検証が必要になる。
この問題は別途十分な検証が必要だが、選挙における情報戦のあり方が激変し始めている点に注目することが必要だ。
今後の日本政局を左右する最大の分岐点になるのが25年参院選。
参院選に向けて各陣営は選挙戦術を根本から見直さねばならない。
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名古屋市長選広沢氏先行の理由
植草一秀の「知られざる真実」 2024年11月19日
裏金事件は政治に対する不信を顕在化させる重要な契機になった。
これ以前にも多くの不祥事が相次いできた。
モリ・カケ・サクラの不祥事は重大問題だったが責任を問われるべき者の責任が追及されなかった。
森友事件で摘発されたのは籠池泰典夫妻だけ。籠池夫妻は真実を明らかにしたために標的にされた。
国家財産を不当な安値で払い下げたのは財務省である。そして、財務省は虚偽公文書作成の犯罪行為に手を染めた。その背後にあるのが安倍晋三氏の意向だった。
国家に巨大な損失を与えた背任の罪でも虚偽公文書作成の罪でも犯罪を指揮した者の責任は問われていない。
加計学園に対する獣医学部新設の許可も極めて不透明である。加計学園理事長は安倍首相等に対して利益供与した疑いが濃厚である。安倍内閣が便宜供与を行った疑いは強い。
桜を見る会前夜祭では選挙区有権者に対して利益供与が行われたと見られている。
しかし、これらの犯罪行為の刑事責任は問われなかった。
日本の検察には巨大で不正な裁量権が付与されている。その裁量権とは「犯罪が存在するのに犯罪者を無罪放免にする裁量権」と「犯罪が存在しないのに無実の市民を犯罪者に仕立て上げる裁量権」である。私は後者の被害者。
2022年7月に安倍元首相が殺害されたことを契機に自民党と旧統一協会の癒着に焦点が当てられた。自民党は組織ぐるみで旧統一協会と癒着してきた。政策運営が著しく歪められてきたと言える。
そして2023年秋から問題が表面化したのが裏金問題。
政治資金規正法は、政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため、政治資金の収支公開等の措置を講ずることにより、政治活動の公明と公正を確保し、もつて民主政治の健全な発達に寄与することを目的として制定されたもの。
政治資金の収支公開はすべての基本である。
ところが、自民党は組織ぐるみでこの根幹を意図して破壊した。巨大な組織犯罪を実行した。
しかし、日本の刑事司法当局は巨大犯罪のほんの一部しか摘発しなかった。
85人の議員が犯罪行為に手を染めたのに検挙したのはわずか3人だった。
統一協会との癒着も裏金犯罪も問題の核心は旧安倍派だった。
10月27日の衆院総選挙で自民党が議席を激減させたが、最大の議席減に直面したのは旧安倍派である。このことを日本の主権者が歓迎している。
旧安倍派と密着してきたフジサンケイグループだけが、このことに反発する姿勢を示している。
10月27日の衆院総選挙では裏金問題を許さない主権者の気持ちが自民議席激減の結果をもたらした。
主権者である国民が自らの判断で投票行動を激変させ始めている。
兵庫県知事選で斎藤元彦前知事が再選された。インターネット上への情報発信を担うスタッフが400人も存在したことが伝えられている。
SNSやYOUTUBEを活用した選挙活動が新たな票の掘り起こしに絶大な力を発揮することが確認されたと言える。
このなかで、斎藤氏勝利の要因を探ると、政策提言のなかに示される「財政資金の使い方」が極めて大きな意味を持つことが浮かび上がる。
とりわけ重要な意味を発揮したのが「新庁舎建設」、「外郭団体縮小」、「県立大学授業料無償化」だった見られる。
斎藤氏が「新庁舎建設」に関して費用圧縮の方向性を示したのに対し、稲村候補は新庁舎建設に1000億円投入との情報が広く流布されたと見られる。
1000億円投入は事実に基づく情報流布ではないと見られるが情報が氾濫して、そのまま有権者に受け取られた可能性がある。
また、「県立大学授業料無償化」は斎藤氏がアピールした政策で、これに否定的なスタンスを示せば市民の批判を浴びる項目だった。
「外郭団体の縮小」は斎藤氏だけでなく稲村氏も提示した政策だったが、県庁舎建設費用の圧縮を斎藤氏がアピールしたことが勝敗を分ける大きな要素になった点を否定できない。
24日に名古屋市長選が投票日を迎える。
河村たかし前市長から後継指名された広沢一郎候補は市長給与800万円、市民減税継続を公約に掲げる。この二点に明確な姿勢を示さない大塚耕平氏は主権者の広い支持を集めるのが困難ではないかと考えられる。
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(後 略)
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。