ロシア自然科学アカデミー客員ビクトル・ミーヒンが掲題の記事を出しました。
記事は10月26日夜、イラン領奥深くで行われた未曾有のイスラエル大規模空爆作戦に関するもので、基本的には「イラン攻撃に対するイスラエルの見解」と「攻撃に関するイラン情報」の2つの客観的報告からなっていて、最後の「作戦に関する噂と憶測」では、このイスラエルの空爆作戦に対して、米国とロシアがどういう立場であったかについて述べられています。
やや異色の報文です。
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イスラエルとイラン:中東の決闘
マスコミに載らない海外記事 2024年11月10日
ヴィクトル・ミーヒン 2024年11月3日
New Eastern Outlook
10月26日夜、イラン領奥深くで行われたイスラエル大規模空爆作戦は未曾有のものだった。イスラエルがこのような大規模作戦を実施しただけでなく、それを公然と認めたのは今回が初めてだ。
イスラエルの主要航空作戦
約100機の戦闘機が参加した協調多波攻撃で、20以上の軍事施設が攻撃を受けたとイスラエル・メディアは報じた。しかし、こうした大げさな成功の兆候にもかかわらず、被害の程度は未だ確認されておらず、この事件の重要性を軽視しようとするイランの試みは、この重要な瞬間における状況の緊張と複雑さを強調している。
イスラム革命指導者アヤトラ・セイイェド・アリ・ハメネイは、イランがイスラエルの攻撃に反撃することを明らかにした。
一方、10月26日、国内の複数軍事施設に対するイスラエル攻撃に関連して短期間停止していた民間航空便再開をイラン政府は発表した。国営イラン通信社によると、民間航空機関代表者は「10月26日土曜日午前9時(グリニッジ標準時午前5時30分)に通常通り運航を再開する」と述べた。
イラン攻撃に対するイスラエルの見解
200発の弾道ミサイルでイランがイスラエルを攻撃してからわずか三週間余り、イスラエル空軍はついにイラン軍事施設に対する報復空爆を開始した。イスラエル空軍攻撃は3時間続き、イラク領空から3波に分かれて行われたと報じられている。その前にも、イスラエル機はヨルダン、サウジアラビアの領空を著しく侵犯し、イラク領空に侵入したため、イスラエルは国際法を無視していると国連で非難された。イスラエル空軍の行動はアメリカの衛星情報に基づいており、今月初めのイスラエル攻撃で成功したイランによる弾道ミサイルが製造されているミサイル製造施設を標的とした。イスラエル空軍は、地対空および地対地ミサイル・システムも攻撃した。
核施設や油田をイスラエルは攻撃せず、軍事施設に限定した。この攻撃の性質は、ガザ地区とレバノン国境に閉じ込められたイスラエルが、イランとの全面戦争にエスカレートする準備ができていないことを示している。それでも「イラン政権が間違いを犯し、新たなエスカレーションを開始した場合、我々は対応せざるを得ない」とイスラエル国防軍報道官ダニエル・ハガル少将は述べた。いつものように、彼は安っぽい自慢げな言説に頼り「我々のメッセージは明確だ。イスラエルを脅かし、この地域をより大規模エスカレーションに引きずり込もうとする者は大きな代償を払うことになる」と述べた。
イラン攻撃は限定的だとイスラエルの野党指導者ヤイール・ラピドは批判した。彼の意見では、イランは「侵略行為に対し、高い代償を払わねばならない」という発言をタイムズ・オブ・イスラエル紙は報じた。イランの戦略的・経済的施設は攻撃しないという決定は誤りだったと彼は指摘した。
イスラエル軍代表ダニエル・ハガリと他のイスラエル当局者は、いつものように自分たちが被害者であるかのように見せかけながら、大げさに作戦成功を宣言している。しかし、このイスラエル言説の問題点は、現実を隠して、自分を被害者のように見せかけ、自分の行動を「何ヶ月にもわたる絶え間ない攻撃への反応」と表現している点だ。政治的観点から状況を考えれば、この発言には根拠がない。イスラエルには、ダマスカスのイラン領事館を攻撃し破壊することで敵対行為を勃発させた責任があり、パレスチナとレバノンでの大量虐殺作戦も行っていることを忘れてはならない。
攻撃に関するイラン情報
公式筋によると、イラン防空軍はイスラエル・ミサイルの大半を迎撃することに成功したが、一部地域では軽微な被害が記録された。イスラエル空軍がイランのテヘラン、フーゼスターン、イラム各州の軍事施設を空爆したことが明らかになった。現時点で、攻撃でジャハンディダ中佐とシャフロケファル軍曹を含む兵士4人が死亡したことが確認されている。
アル・マヤディーンによると、イスラエル・メディアは、この攻撃は単なる武力誇示で、重要な戦略的狙いは実現されなかったと認めた。イスラエルのイランに対する「限定的」攻撃をイスラエル我が祖国党党首で元国防大臣のアヴィグドール・リーベルマンは批判し「イランはそこで止まらないだろう」と警告した。イスラエル政府は現状の本当の結果を直視する代わりに、「明確で確固とした決断を下す代わりに沈黙を買うことを好み、見せかけの宣伝を再び行うと決めたようだ」とリーベルマンは強調した。
抑止力の観点から見れば、トゥルー・プロミスII作戦中、200発以上のイラン・ミサイルがイスラエル領土に撃ち込まれた後、イスラエルが抑止力を回復できなかったのは明らかだ。イランの核施設や石油施設への脅迫を含む数週間にわたる壮大な復讐約束後の、イスラエル攻撃は、力の誇示というより、むしろ弱さを認めたと受け止められている。
イランの防衛能力は敵に与える損害のレベルを決定できるほどだと指摘する者も専門家の中にはいる。イスラエルに対して、更に決定的な攻撃を仕掛けるとイラン当局が決めた場合、イラン軍はそれを実行する準備ができている。
イラン兵4人の死亡は、イスラエル領土を狙ったイランの軍事的反撃に不可避的につながる可能性があるとフォアド・イザディ(イラン)などの専門家は警告している。イスラエルとアメリカ共通の戦略目標の一つは、あらゆる手段を使ってイランを弱体化させることだが、これは実現していない。
現時点では、この作戦で弱体化したのはイスラエルだったことをあらゆる兆候が示している。イランとの直接かつ大規模な対決が起きた場合、アメリカの支援にもかかわらず、イスラエルは安全と感じていないことを示した。
作戦に関する噂と憶測
アメリカは作戦について「事前に知らされていた」と米国防当局者は匿名を条件にAFPに語った。アメリカがどの程度事前に知らされていたのか、具体的にイスラエルが何を明かしたか当局者は詳細に述べなかったが、最新の第5世代F-35I航空機を、国防総省が緊急に引き渡し、最新のTHAAD防空システムと米兵をイスラエルに配備し、使用と保守作業を行ったことはわかっている。
イラン軍事施設をイスラエルが攻撃する数時間前、イランに攻撃が迫っているとロシアは警告し、中東の同盟国イランに、イスラエルとアメリカ軍の攻撃目標と行動に関する情報を提供した。これはスカイニュース・アラビアTVチャンネルが独自情報源を引用して報じたもので、モスクワのこの措置は地域の緊張緩和を目的としたロシアとイランの協力の表れだと同局は指摘した。情報源によると、ロシア側から警告を受けたイランは、間に合うよう準備し、被害を最小限に抑える措置を講じたという。
10月26日土曜日、イスラム革命指導者アヤトラ・セイイェド・アリ・ハメネイ師は、イスラエルの攻撃に対してイランが反撃すると明言し、イスラエルが必要と考える対応でイランの強さと決意をイスラエルに知らせるようイラン軍指導部に求めた。「彼ら(イスラエル人)は、イラン国民とその若者の強さや決意や革新性を理解する必要がある」と、殺害されたイラン軍人の家族との日曜日の会合で同師は述べた。更に、イスラエルの残虐行為は「誇張も軽視もすべきではない」と彼は強調した。
別の演説で、自国を防衛できない弱い国は当然ながら安全を失うとアヤトラ・ハメネイ師は警告した。「国の安全を保証するのは国力で、科学、経済、防衛力、軍備などあらゆる分野における国の強さだ」と同師は述べた。
ビクトル・ミーヒンは、ロシア自然科学アカデミー客員。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/11/03/israel-iran-a-middle-eastern-duel/
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。