2025年11月27日木曜日

台湾有事の政治思想 - J.ナイ、G.アリソン、F.フクヤマ の言説と教義(世に倦む日々)

 世に倦む日々氏が掲題の記事を出しました。
 この頃はあまり聞かなくなりましたが、かつて『ジャパン・ハンドラー』と呼ばれたリチャード・アーミテージジョセフ・ナイ折に触れて発した「アーミテージ・ナイ レポート」は、日本の右翼論者:「安保で喰う人たち」と言われた人たちにとっては正に「聖典」でした。
 彼らは「アーミテージ・ナイ レポート」が出るといち早くそれを熟読し、その趣旨から外れる政治家や政治評論家の論調に対しては、いちいち「米国の意向はこうだ」として日本の右翼をリードしようとしました。
 世に倦む日々氏は、ジョセフ・ナイ、グレアム・アリソン、フランシス・フクヤマの3氏を台湾有事の政治思想史におけるバックボーンを形成する書物を著わした人物と評価し、具体的にJ.ナイの『対日超党派報告書』は米国の台湾有事政策の設計図であり、エンジンでありドクトリンであると、G.アリソンの『米中戦争前夜』は、米国の台湾有事政策のキーノートの位置づけにあり、布教の役割を果たすマニュアルであると、そしてF.フクヤマの『歴史の終わり』は、アメリカが「権威主義体制」の国家を滅ぼす十字軍戦争を正統化するバックボーンの思想書であり、リベラル・デモクラシーの普遍性を肯定するバイブルであるとそれぞれ位置づけます。

 圧巻として、『台湾有事』における日本の『役割?』に関して『対日超党派報告書』には次のように書かれているということです。

「当初、米軍は台湾側に立ち中国と戦闘を開始する。日米安保条約に基づき、日本の自衛隊もその戦闘に参加させる。中国軍は、米・日軍の補給基地である日本の米軍基地、自衛隊基地を「本土攻撃」するであろう。本土を攻撃された日本人は逆上し、本格的な日中戦争が開始される
 米軍は戦争が進行するに従い、徐々に戦争から手を引き、日本の自衛隊と中国軍との戦争が中心となるように誘導する。日中戦争が激化したところで米国が和平交渉に介入し、東シナ海、日本海でのPKO(平和維持活動)を米軍が中心となって行う」

 取り分け高市早苗氏と彼女を取り巻く人たちは、米国のいう『台湾有事』が具体的にどんな意味を持っているのかを熟読玩味し、自分(たち)がいま何を目指していたのかを自覚するべきです。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
台湾有事の政治思想史 - J.ナイ、G.アリソン、F.フクヤマ の言説と教義
                       世に倦む日日 2025年11月25日
高市発言から3週間近く経った。中国側の習近平仕様を全開させた、自滅効果を導く尊大外交の悪影響と、その機を捉えた右翼とマスコミの巻き返しによって、日本国内の世論は高市発言が正当化される流れに染まっている。日中両国は戦争する可能性が高くなった。悲観的な気分になるが、今回は台湾有事の政治思想史について整理を試みよう。左翼リベラルの界隈では、台湾有事は根拠のない幻想であり陰謀論であると長く言われてきた。それは憲法改正や軍備拡張を達成するための政権側の口実であり、虚構であり、真に受けてはいけない詭計だと窘められてきた。その言説を主導したのは内田樹であり、田岡俊次と升味佐江子であるそれに対して私は、台湾有事はアメリカの国家戦略であり、実体のある計画的なものだと反論し続けてきた。残念ながらその孤軍奮闘は功を奏さず、言論世界で全く響かず、共通認識となる端緒すら得られなかった

現在でも、左翼の中の議論を垣間見ると、高市発言を本人の偶然的な失敗だと決めつけ、高市個人の資質の問題だと矮小化して嘲笑するような政局視の傾向が散見される。台湾有事がアメリカの国家安保戦略であるという本質が看破・認識されておらず、デービッドソンが宣告した開戦の時期設定が、再来年(2027年)であるという事実が忘却されている。内田樹の等閑の悪影響だろう。台湾有事については多く本が出版されてきたが、ほとんどが右翼側・日米同盟側からの洗脳工作の著作であり、その反対側からの分析や考察は皆無だった。本来なら、布施裕仁や半田滋や前田哲男や前泊博盛が担うべき任務だったと思う。彼ら専門家が私と同じ視角と緊張感を持ち、左翼リベラルに正確な知識を提供していれば、危機感と警戒感が醸成され、現在のような無抵抗な状況にはならなかった。日米同盟側の戦略を阻止する政治的対抗軸の主体性が形作られていたと思われる

2008年、クリントン政権下で米国家安全保障会議NSCの議長を務め、安全保障担当の国防次官補でもあったジョセフ・ナイが『対日超党派報告書』なる文書を発表している。そこにはきわめて重大な内容が書かれていて、今日の観点から振り返ってまさしく 台湾有事 の神髄が表現され、核心が提言されていることが発見できる。現在、ネットには僅かに情報の断片が、言わば考古学的なあやうい存在感で残っていて、そしてこれは日米同盟側にはきわめて不利で不都合な情報であるため、いつ消去・抹殺されてもおかしくない。読者各位には保存と調査をお願いしたい。10年ほど前は、もっと詳しい情報が載っていた記憶がある。が、台湾有事について、これほどアメリカの戦略的本質を直截に記述した文書はなく、われわれの理解の手助けになる史料はない。決定版の証拠資料といえる。アメリカはこの戦略の実行実現に向けて着々と動いてきた。アメリカの国家安保戦略でナイの上に立つ者はなく、ナイが司令塔の地位と立場だった

当初、米軍は台湾側に立ち中国と戦闘を開始する。日米安保条約に基づき、日本の自衛隊もその戦闘に参加させる。中国軍は、米・日軍の補給基地である日本の米軍基地、自衛隊基地を「本土攻撃」するであろう。本土を攻撃された日本人は逆上し、本格的な日中戦争が開始される

米軍は戦争が進行するに従い、徐々に戦争から手を引き、日本の自衛隊と中国軍との戦争が中心となるように誘導する。日中戦争が激化したところで米国が和平交渉に介入し、東シナ海、日本海でのPKO(平和維持活動)を米軍が中心となって行う。


台湾有事についてずいぶん議論がされてきたが、2008年のナイによる『対日超党派報告書』に着目した者は一人もいない。誰も発掘しなかった。不思議である。右翼・日米同盟側がそれを隠蔽する動機は分かるが、左翼リベラル側がこれを無視し看過した理由は何なのだろう。私には理解できない。ナイには当初から、90年代から、台頭する中国に対して日本を軍事的に衝突させ、両者を戦争で疲弊させ、アメリカが漁夫の利を得るという戦略的発想があった。90年代前半は日本の国力が強く、特に経済的実力(技術開発力・製造業競争力・教育水準)が抜群で、当時はアメリカにとって脅威の存在であった。21世紀の経済覇権を日本に奪われるという強迫観念が現実にあったのだ。今ではナイの懸念のリアリティがよく分からないほど日本が衰退してしまい、日本はアメリカの従僕に凋落してしまったが、当時の日米関係は、特に経済面では今と逆の位相であり、ナイはアメリカの生き残りのために真剣にこの策を着想・発案したのである

ナイの「報告書」の後のアメリカの東アジア安保戦略については、拓殖大の川上高司の2011年の小括があり、右翼の論者だが参考になる。アメリカの対中戦略のキーワードであるヘッジ⇒将来のリスクに対する自衛手段)とエンゲージが解説されている。オバマ政権は2009年から2016年まで8年間続いたが、前半と後半で対中国の認識と戦略が大きく変わった点を看取できる。前半は、特にリーマンショックの打撃の影響が深刻に残っていて、経済成長著しい中国を取り込み、G20の枠組みを新設し、中国を活用し共存して、アメリカの世界支配を維持・再編成するという性格が強かった。が、後半は一転し、中国が世界のルールを決めるのは許さないと強調、中国脅威論を押し出すようになる。このオバマの対中姿勢の変化においては、おそらく、2013年から習近平が党総書記に就き、それまでの胡錦涛の紳士的で近代的な路線を転換させ、毛沢東と文革期の思想様式を蘇らせ、中国の国家的野心を剥き出しにした影響があると思われる。アメリカは反中政策を基本に据えた

2017年、グレアム・アリソンの『米中戦争前夜』が出版され話題となる。原書の題名は「Destined for War - Can America and China Escape Thucydides’s Trap ?」で、直訳すると「戦争の宿命 - アメリカと中国はトゥキディデスの罠を回避できるか」。ブログで何度も論及してきた本だが、この著作が台湾有事を考える上で二番目に注目されるべき文書だろう。米中関係のリアルを精緻によく分析した労作で、出版から8年経った今でも価値は衰えていない。だが、その思想と主張はきわめて毒性で危険だ。キューバ危機の専門研究者のアリソンは、その立場から現在のアメリカの安保外交の政策担当者を叱咤、もっと勇気を出せと奮励している。ケネディ始め当時の国家責任者たちは、核戦争の第三次世界大戦に突入する事態も恐れず、果敢にソ連との冷戦を戦い抜き、勝利してアメリカを唯一の超大国にしたのだと言い、中国との新冷戦もそうして全精力を集中して勝てと指導している。具体的に、中国に対して以下のような恐ろしい指南を与えていた

もし(アメリカが)中国政府に対する根本的な不信感を明言するなら、ついでにもう少し思い切ったことをしてもいいのではないか。(略)アメリカは(略)中国を分断し現体制を混乱させる戦略として、チベットと台湾の独立も支持してはどうか。そんなことをすれば、中国が暴力的な反応を示すのは間違いない。しかしこの選択を排除すれば、独立運動を支持するアメリカの伝統をないがしろにし、みずからの影響力を放棄することになる。

アメリカは冷戦時代、ソ連政府とそのイデオロギー的基盤に打撃を与える工作を、公然とあるいは極秘で行ったではないか。現代の政策担当者たちはこの手法を大いに活用して、中国で政変が起きるよう促すことができる。冷戦中に東ヨーロッパ諸国やソ連でやったように、中国の反体制派グループを支援・奨励してもいい。(略)極端な選択肢としては、米軍が分離独立勢力を密かに訓練し、支援するという選択肢もある

中国国内を分裂させ政府を国内の治安維持に忙殺させれば、対外的にアメリカの優位に挑戦するのを抑止するか、少なくとも大幅に遅らせられるかもしれない。(ダイヤモンド社 P.198-199)。


アリソンのこの著作が出るまでは、アメリカの政府高官や軍情報機関関係から、ここまで極端で過激な反中戦略を言い上げる者はなかった。新冷戦の解禁である。本の中でアリソンは3歳年上のナイを「同僚」と呼んでいる。アメリカの最高学府ハーバードの国防エリートの同僚。アリソンの著作はナイの戦略を理論武装し、教義化して、アメリカおよび同盟国の政策関係者とマスコミを共感させ意思統一させる教材だ。中国との新冷戦を根本から正統化する教科書に他ならない。この本が出てアメリカの空気は忽ち新冷戦態勢一色となり、2018年10月のハドソン研究所でのペンス演説へと進行する。アリソンの提言が国家政策となった。そこでは、中国がアメリカのハイテク技術を盗んで製造業基盤を作り上げたと言い、WTOに招き入れてやったのに裏切られたと罵り、中国に対する怨恨と憎悪を爆発させている。中国の存在を頭から全否定していて、平和共存の余地はない。アメリカにとって中国共産党と中華人民共和国は、打倒して崩壊させるべき不倶戴天の敵となった

このとき大統領だったトランプは、その前年までは習近平をマールアラーゴに呼んで蜜月関係を演じるなどしており、イデオロギーではなくビジネスの利益を対中政策の第一の目的にしていた事情が窺えた。ペンス演説によって政権の対中姿勢は一気に変わったが、アメリカの国家の政策決定の中枢がホワイトハウスではなく別の場所にある真実を知らされた瞬間でもあった。ここから、経済ではデカップリング政策が基軸となり、外交では露骨な台湾介入工作が活発化する。Quad(日米豪印)の枠組みが推進され、中国を封じ込める対中包囲網が強化された。最近はフィリピンもその一翼に加わり、日米比3国の軍事同盟関係が強化される展開に至っている。バイデン政権に変わった2021年、アメリカは「民主主義サミット」なる国際会議をオンラインで開催、110か国を集めて「権威主義からの防衛」を謳う取り組みを展開した。巷では「民主主義陣営 vs 権威主義陣営の対決」のナラティブ⇒言説)が流行し、特にロシアがウクライナに侵攻した2022年からその構図と概念が支配的になる。

順番としては逆になったが、最後に、三番目に台湾有事の政治思想史として取り上げて重視したいのは、やはりフランシス・フクヤマの『歴史の終わりである。1992年の出版。あらためて中身を要約する必要もないだろう。ざっと振り返って、この30年間はまさにフクヤマの時代だったと言ってよく、今もフクヤマの反共主義のイデオロギー支配が強固に続いている。現代人は、特に日本人はフクヤマ教の宗徒であり、ひいては統一教会と安倍晋三の子分の衆愚だと言ってもいいだろう。反共の毒素で脳内を汚染されきっている。三番目の文書の指摘に辿り着いたところで、この稿の狙い - 台湾有事の政治思想史のラフスケッチ - は一応達したので筆を置きたい。纏めよう。 ジョセフ・ナイの『対日超党派報告書』は、米国の台湾有事政策の設計図であり、エンジンでありドクトリンである。今でもこの17年前の指針が貫徹され遂行されている。 グレアム・アリソンの『米中戦争前夜』は、米国の台湾有事政策のキーノートの位置づけにあり、エバンジェリズム⇒伝道・布教)の役割を果たすマニュアルである

アリソンはナイの同僚で、ケナンやキッシンジャーの系譜を継ぐ国家の最高エリートだ。ナイが戦略立案、アリソンが理論研究のコンビであり、言わばラインとスタッフの共同関係にある。 フランシス・フクヤマの『歴史の終わり』は、アメリカが「権威主義体制」の国家を滅ぼす十字軍戦争を正統化するバックボーンの思想書であり、リベラル・デモクラシーの普遍性を self-convince ⇒自己肯定)するバイブルであり、反共政策のコミット⇒積極的に関わる)へと人の情動を誘い導くバッソ・オスティナート⇒執拗低音技法)である。この執拗低音の響きに感化され、覚醒され、米国人は反共の正義の闘士となり、中国と戦う政府を支持し翼賛する精悍な反共戦士となる。西側諸国の住人たちをその共鳴盤として包摂・統合する。このドグマが思想的基層だ。以上、メモ程度の貧弱軽量な記事で恐縮だが、台湾有事の政治思想史をアメリカにフォーカス⇒焦点を合わせる)して概括した。が、台湾有事の政治思想史の全体像を把握するには、日本と中国にも目を配らなくてはいけない。パズルのピースを埋める必要がある

その課題はまた別途としよう

高市米国傀儡政権の末路/政府御用番組のテレ朝「報ステ」(植草一秀氏)

 植草一秀氏が掲題の2つの記事を出しました。
 政治家たるもの ましてそのトップに居るものは「日本の平和と繁栄」をこそ目指すべきであり、その逆を行くものであってはなりません。
日米同盟が全ての基礎」とは自民党議員だけでなく多くの政治家が枕詞のように口にしますが本当にそうでしょうか。
 別掲の記事で明らかにされたように、米国のいう「台湾有事」の真意は日本を事実上壊滅させることを意図したものです。それも知らずに唯々米国の言うがままに突き進むとは、あまりにも愚かなことです。
 それこそは正に「米国傀儡政権」であって、ひたすら「わが身を亡ぼす」ことを目指して突き進んでいるということです。

 2つ目の記事では、高市氏が総務相時代、放送番組の「政治的公平性」を定めた放送法の政府解釈をめぐり、安倍政権下の214~15年に総務省に対する政治的圧力がかけられたとする「内部文書」に関して追及が行われた際に、高市国務相は指摘された文書を「ねつ造文書」だと断じ、「ねつ造でなければ議員を辞職する」と述べました。
 その後、当該文書は総務省の正規の内部文書であることが明らかにされましたが、高市氏は議員を辞職していません。窮地に立たされると「ねつ造文書」であると言い逃れして、「そうでなければ議員を辞職する」とまで開き直ったのにも拘わらずにです。
 そもそも「公正な放送」を司れる人間でありません。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
高市米国傀儡政権の末路
              植草一秀の「知られざる真実」 2025年11月25日
日本の平和と繁栄のために何が必要か。
この視点で全体を見直すことが必要。
日米同盟がすべての基礎だと言うが本当にそうだろうか。

日本の一般会計・特別会計歳出純計における社会保障関係費と防衛関係費を除く政策支出の合計額は約24兆円。この24兆円であらゆる政策支出が賄われている。
公共事業関係費、文教及び科学技術振興費、食料安定供給関係費、エネルギー対策費、経済協力費、中小企業対策費などのすべてを合わせた支出が1年間で約24兆円。
数年来、ほとんど変わらない。

ところが、防衛費だけが突出して増大している。
これまで年額5兆円だった防衛関係費が年額10兆円水準に激増しているのだ。
岸田首相が22年に防衛費のかさ上げ方針を決めた。
5年間で27兆円の防衛予算を5年間で43兆円に増額する方針を決めた。

その基本構造は米国の命令。
日本の軍事予算拡大は米国軍事産業への利益供与そのものなのである。
米国の軍事装備品を日本が買わされる。米国にとって大事なことは日本を取り巻く安全保障環境を悪化させること。

東アジアに平和と安定がもたらされてはならない。
トランプ大統領が第一期において北朝鮮との和解に取り組もうとした。
これを力づくで阻止したのが米国軍産複合体。

トランプ大統領による北朝鮮との和平を阻止した中心人物がボルトン補佐官。
北朝鮮の脅威は日本の軍事費増大を実現する上で不可欠な要素である。
日中友好関係が構築されれば日本の軍事費増大を実現できない。
このことから米国は人為的に日中関係が悪化する工作活動を進めてきた。
その象徴事例が2010年9月7日の尖閣海域中国漁船衝突事件。この事件は日本の自作自演だ。

日本と中国の間には尖閣領有権問題に関する「棚上げ合意」が存在した。
1972年の国交正常化と78年の平和友好条約締結の際に「棚上げ合意」が結ばれた。
それは「日中双方とも領土主権を主張し、現実に論争が存在することを認めながら、この問題を留保し、将来の解決に待つことで日中政府間の了解がついた」もの。

1979年5月31日付読売新聞が社説で次のように記述している。
「それは共同声明や条約上の文書にはなっていないが、政府対政府のれっきとした「約束ごと」であることは間違いない。
約束した以上は、これを遵守するのが筋道である。」

「棚上げ合意」に基づき日中漁業協定が締結され、尖閣海域では日中両国が漁業活動を実施する際、相互の国が領海内における相手国漁船に対し漁業協定に基き領海外に誘導する運用が行われていた。 
ところが、2010年6月8日、菅(直人)政権が「尖閣諸島に関する我が国の立場は、尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題はそもそも存在しないというものである」
とする質問主意書答弁書を閣議決定し、尖閣海域の対応を「日中漁業協定基準」から「国内法基準」に変更した。

2010年9月7日、従来は海保巡視船が漁船を追い払うだけだったのを、
この日は海保巡視船が1隻の中国漁船を接触するほど追い上げ、あげく漁船と他の巡視船がぶつかり、接触から3時間も追い回した末に漁船と乗組員を確保し、船長を逮捕した。
この事件を契機に「中国の脅威」が叫ばれ、日中関係が急激に悪化してきた経緯がある。
この事件「創作」を主導したのは前原誠司氏であると見られる。
前原氏と駐日ルース米大使との極秘会談の内容などがウィキリークスによって暴露されたために、こうした悪事が白日の下に晒されることになった。

高市首相は米国の命令に服従して日本の軍事費を増大させ、日本の中国への宣戦布告まで示唆している。
戦争が勃発すれば瞬く間に日本は焦土と化す。これは間違いない。
この路線で日本が突き進むのが良いのか。
根本的な再考が必要だ。

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政府御用番組のテレ朝「報ステ」
              植草一秀の「知られざる真実」 2025年11月26日
放送法に次の条文がある。
(国内放送等の放送番組の編集等)
第四条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
二 政治的に公平であること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

高市首相が国会答弁で台湾有事に関して「戦艦を使って、武力の行使をともなうものであれば、どう考えても存立危機事態になり得るケースである」と述べた問題。
これまで本ブログ、メルマガで記述してきたように暴言であり、撤回する必要がある
鳩山友紀夫元総理も過ちては改むるに憚ること勿れ」、「過ちて改めざる、是を過ちと謂う」との孔子の言葉を引用して高市首相に発言撤回を求める見解を表出している。

これに対して「撤回すべきでない」との主張も存在する。
テレビ朝日「報道ステーション」は「撤回すべきでない」と主張する垂秀夫元駐中国大使を出演させて自説を述べさせた。
放送法の主旨に基けば、「撤回すべきでない」と主張する論者を出演させるなら、同時に「撤回すべきである」と主張する論者を出演させるのが適正だ。
少なくとも番組司会者が反対意見について明示することが必要。

同番組の対応が逆だったなら政府はクレームがつけただろう。
番組に「高市首相は発言を撤回すべきだ」と主張する論者を出演させ、自説を延々と述べさせたなら、どのような反応が生まれたのか。

2023年3月の参議院予算委員会質疑で高市早苗国務相の総務相時代の言動が問題にされた。
放送番組の「政治的公平性」を定めた放送法の政府解釈をめぐり、安倍政権下の2014~15年に総務省に対する政治的圧力がかけられたとする内部文書に関する追及が行われた。
高市国務相は指摘された文書を「ねつ造文書」だと断じ、「ねつ造」でなければ議員を辞職すると述べた。
その後、当該文書は総務省の正規の内部文書であることが明らかにされた。
だが、高市氏は議員辞職していない。

この文書は放送事業に対する政治権力による介入の可否に関わる問題についての一種の工作活動に関する経緯が記されたもの。
放送法が定める放送事業者の政治的公平について、「一つの番組ではなく、番組全体として評価する」とされてきた解釈を、
「一つの番組でも、明らかにおかしい場合には取り締まりができる」ようにする「条文の解釈変更」が目論まれた事案である。

工作を主導したのは磯崎陽輔首相補佐官で、礒崎氏は自分がコントロールできる議員に国会で質問をさせて、その質問に対する総務相答弁によって解釈変更の既成事実を創作することを目論見たと見られる。
その「工作」に加担したと見られるのが高市早苗総務相(当時)である。

文書のなかで磯崎氏は、
「けしからん番組は取り締まるスタンスを示す必要があるだろう」
「サンデーモーニングはコメンテーター全員が同じことを述べている等、明らかにおかしい」
などと述べて、「一つの番組でも、明らかにおかしい場合」には取り締まりができるようにすることを目指したと見られることが記されている。
こうした経緯を踏まえてテレビ朝日は萎縮、忖度しているのか。
テレビ朝日の「報道ステーション」の逆の偏向が目に余る。

高市氏は国会答弁で
「戦艦を使って、武力の行使をともなうものであれば、どう考えても存立危機事態になり得るケースである」と述べた。
メディアは大きく取り上げないが「どう考えても」と述べた点がとりわけ重要だ。
11月22日付ブログ記事「高市首相発言撤回は不可避」https://x.gd/0Sofm
メルマガ記事「高市氏過ちて改むるに憚る勿れ」https://foomii.com/00050 
に詳述したが、高市首相発言は不適切発言そのもの。
鳩山元総理が指摘するように中国政府が激怒するのが当然の発言

このために、国民がさまざまな経済的損失を蒙る事態が生じている。
問題を中立公正の視点から捉えぬテレビ朝日の偏向は極めて深刻な状況にある。

UIチャンネル第600回記念放送「混迷する日本政治と活路https://x.gd/DafTc
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続きは本日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」4262号
「高市発言撤回せずが国益を毀損」 でご高読下さい。
                 (後 略)

27- 欧米と日本のメディアが理解していないふりを続けていること(賀茂川耕助氏)

 海外記事を紹介する「耕助のブログ」に掲題の記事が載りました。
 かなり手厳しい記事です。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
欧米と日本のメディアが理解していないふりを続けていること
               耕助のブログNo.2730 2025年11月27日
   Here’s the part Western and Japanese media keep pretending not to
   understand: @OopsGuess

欧米と日本のメディアが理解していないふりを続けている部分がある:
中国が高市早苗にしている対応は、単なる発言の問題ではない。敗戦国の枢軸国(日本)が、1945年に設定された境界線を試していること、そして北京が世界に対しその境界線が今も存在することを再認識させているのである。
この動画は、鄧小平の元通訳であり中国で最も尊敬される地政学評論家の一人、Gao Zhikaiによるものだ。
  https://x.com/i/status/1991493308309467281

彼の主張は単純である:日本は触れる権利のない一線を越えた。高市早苗の「台湾=日本の存立危機事態」というレトリックは外交術ではない。
これは日本が1931年(満州)と1941年(真珠湾)に用いた論理の繰り返しだ:軍事拡張を正当化するために「安全保障上の脅威」を捏造している
そして北京のメッセージは明快である:火遊びをするな。中国との紛争に日本が干渉する法的または道徳的な立場にあるかのようにふるまうな。過去の過ちを繰り返せば、その結果も繰り返すことになる。
中国の立場は国際法に基づいている:

無条件降伏(1945年) – 日本はその軍事的役割を再構築できない。

戦後憲法 – 自衛隊 ≠ 外国の戦争に参加する許可。

国連敵国条項 – これを発動すれば、中国は国連安全保障理事会の承認なしに軍事行動を取ることができる

1971年共同声明 – 日本は正式に「一つの中国」を認めた。

では実際、中国は何をしているのか?
「過剰反応」ではない。
「日本語の誤解」でもない。
安倍晋三が掘った穴を、日本に埋めさせることだ。その穴とは、10年間再軍備化に手を出し、第二次世界大戦は終わってないふりを続けてきたことだ。
それを北京が全世界に警告を突き付けている:
台湾はおもちゃではない。
交渉材料でもない。
そして絶対に、日本が歴史的記憶喪失を正当化する舞台ではない。
表向きは中国は謝罪を要求している。
実際は、日本の立場を明確に再確認させるものだ:日本は敗戦国である。今もまだ敗戦国なのだ。
一つの軽率な発言で、その事実が覆ることは決してない。

https://x.com/oopsguess/status/1991493308309467281

2025年11月26日水曜日

26- お知らせ

都合により27日(木)の記事の更新は午後になります。


2025年11月25日火曜日

御用発言者と御用メディア(植草一秀氏)/習主席がトランプと電話会談 台湾の件などで

 植草一秀氏が「御用発言者と御用メディア」と題したブログを出しました。
 かつては「メディア(当時は「新聞」)は社会の木鐸」という標語がありましたが、もはや死語になったようで、植草氏は「そのスタンスを明確に示す報道は皆無に近い」と述べます。
 高市氏の台湾有事発言に関連して、テレビ番組は専門家見解として台湾が中国の領土の不可分の一部という中国の主張を日本政府は承認していないと強調するので、視聴者はその通りに思い込み「中国の反発が不当である」と感じるのだろうが、その解説は間違っていると指摘します。
 1972年の日中国交正常化に当たり、日本政府は当初「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であること」を承認しませんでしたが、中国に拒否されたため「日中共同声明」をまとめるに当たり、「台湾の中国帰属」が中国の「核心的利益」であることに同意するとともに、「中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言 第八項に基づく立場を堅持する」としました。 11月18日日中友好を破壊する高市首相(植草一秀氏)
 ここに「ポツダム宣言 第八項(領土条項)」は、「カイロ宣言ノ条項ハ履行セラルべク」と規定していて、それは「満洲、台湾及澎湖島の如き日本国が清国人より盗取したる一切の地域を中華民国に返還すること」としています。
 原文では当時の「中華民国」が用いられていますが、日本政府が「一つの中国」を承認した以上、「中華人民共和国政府が中国を代表する唯一の正統な政府である」と認めたわけです。
 TV解説者がこうした明白な事実に基づかない間違った解説をすることは許されません。

 ところでNHKが「(24日夜に)中国 習主席がトランプ大統領と電話会談 台湾めぐり立場を強調」という記事を出しました。
 それによると、中国外務省は「習主席は台湾について中国の原則的な立場を説明し、台湾の中国への復帰が戦後の国際秩序の重要な要素だ」と強調した上で、「中国とアメリカはファシズムや軍国主義に肩を並べて立ち向かった。今こそ第2次世界大戦の勝利の成果をともに守るべきだ」と述べ、それに対してトランプ大統領は「アメリカは、台湾問題の中国にとっての重要性を理解している」と述べたということです。
 トランプ大統領は「いい電話会談だった。ウクライナとロシアの情勢やフェンタニル、大豆など多くの議題を話した」とSNSに投稿し、台湾について話題になったのかどうかについては言及しませんでしたが、「台湾問題の中国にとっての重要性を理解している」という発言はあったのでしょう。
 米国政府は一貫して「台湾問題」では慎重な態度を取っていて、判断力に衰えを見せたバイデン大統領が在任中に何度か「台湾有事」を口にした際には、ホワイトハウスはその都度、「米国の姿勢に全く変更はない」という実質的な「発言取消」を繰り返していました。
 要するに「台湾有事」に関わる問題は、高市氏が考えているように軽々しく扱ってよいものではないし、それによってトランプの歓心が買えるというようなものでもありません。
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御用発言者と御用メディア
              植草一秀の「知られざる真実」 2025年11月24日
日本の行く末が案じられる。高市首相の台湾有事発言。中国が強く反発しているが当然のことだ。
メディアは社会の木鐸として問題の背景を中立公正の立場から検証する必要がある。
しかし、そのスタンスを明確に示す報道は皆無に近い。

台湾問題について日本と中国は1972年の国交正常化の時点で明確な取り決めをしている。
日中共同声明に記された文言は次のもの。
二 日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。
三 中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する

台湾問題については三の記述が焦点になる。
日本国政府は、「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であること」を承認しなかったが、「中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重する」とし
さらに、「ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」とした。

テレビ番組は専門家見解として、台湾が中国の領土の不可分の一部という中国の主張を日本政府は承認していないと強調する。
これを見た視聴者は「台湾が中国の一部との中国の主張」を日本政府は承認していないと思い込み、中国の反発が不当であると感じるだろう。この解説は正しくないしミスリーディングである

番組制作者が無知でコメントする人物の説明の不正確さを認識していないのか、不正確さを知りながらそのまま垂れ流しているのかは不明。
しかし、事実としてこの説明は極めて不正確である。
日中国交正常化交渉の際に、当初、日本政府は、「中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重する」を提案した。
しかし、これを中国政府が拒否して、「ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」
を書き加えることで決着した
この部分が重要だ。

日本が受諾したポツダム宣言(1945年7月26日)第八項(領土条項)が「カイロ宣言ノ条項ハ履行セラルべク」と規定している。
カイロ宣言は「満洲、台湾及澎湖島の如き日本国が清国人より盗取したる一切の地域を中華民国に返還すること」が対日戦争の目的の一つであると明記している。

日本政府は「一つの中国」を承認したから中華人民共和国政府が中国を代表する唯一の正統政府と認めた。
カイロ宣言にある「中華民国」を継承したのが「中華人民共和国」であるから、「ポツダム宣言第八項に基づく立場」とは、「中華人民共和国への台湾の帰属を認めるとする立場」を意味することになる。この文言が加わったことで中国が同意した。

この点を正確に伝えずに、「日本政府は台湾の中国帰属を承認していない」と説明するのは極めて恣意的かつ悪質である。
また、日中両国政府は1972年の日中共同声明および78年の日中平和友好条約で
「日本国政府及び中華人民共和国政府は、主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政に対する相互不干渉、平等及び互恵並びに平和共存の諸原則の基礎の上に両国間の恒久的な平和友好関係を確立することに合意する。」
「両政府は、右の諸原則及び国際連合憲章の原則に基づき、日本国及び中国が、相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し、武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する。」などとした。

高市発言は台湾有事で米軍が展開されれば日本の存立危機事態になる可能性が高いとしたもので、具体的には日本が中国に対して宣戦布告するという意味になる。
これまでの日中両国政府が築き上げてきた友好信頼関係を根底から覆す暴言と言って間違いない。

社会の木鐸として冷静な考察を促すべきメディアが歪んだ情報を垂れ流して可燃性の高いナショナリズム感情を扇動する現実は慙愧に堪えない。

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中国 習主席がトランプ大統領と電話会談 台湾めぐり立場を強調
                    NHK NEWS WEB 2025年11月25日
中国の習近平国家主席は、アメリカのトランプ大統領と電話で会談し、中国が高市総理大臣のいわゆる「台湾有事」をめぐる国会答弁に反発を強める中、中国の原則的な立場を強調しました。一方、トランプ大統領は、会談についてSNSに投稿しましたが、台湾をめぐるやりとりには言及しませんでした。
中国の習近平国家主席とアメリカのトランプ大統領は日本時間の24日夜、電話会談を行いました。

中国外務省によりますと、習主席は台湾について中国の原則的な立場を説明し「台湾の中国への復帰が戦後の国際秩序の重要な要素だ」と強調しました。
その上で「中国とアメリカはファシズムや軍国主義に肩を並べて立ち向かった。今こそ第2次世界大戦の勝利の成果をともに守るべきだ」と述べたということです。
一方、トランプ大統領は「いい電話会談だった。ウクライナとロシアの情勢やフェンタニル、大豆など多くの議題を話した」とSNSに投稿しました。
ただ、中国側の発表では、トランプ大統領が「アメリカは、台湾問題の中国にとっての重要性を理解している」と述べたとしていますが、トランプ大統領の投稿では、台湾について話題になったのかどうかを含め、言及していません。

中国は高市総理大臣のいわゆる「台湾有事」をめぐる国会答弁に反発を強めていて、習主席としては日本の同盟国であるアメリカに対して中国の立場を強調した形です。
米中関係について、習主席は電話会談で「安定し、よい方向に向かっている。この勢いを維持し、正しい方向を堅持すべきだ」と述べ、トランプ大統領も「中国との関係は非常に強固だ」と投稿しました。

また、トランプ大統領は、習主席から来年4月に北京に招かれ、受け入れたことや、その後、来年中に習主席を国賓としてアメリカに招くことも明らかにしました。