2019年3月4日月曜日

04- 村木厚子元次官が 厚労省への官邸の圧力を示唆

 2日の朝日新聞に、〈「毎月勤労統計」の調査手法変更をめぐり、村木厚子・厚生労働事務次官(当時)が2015年春、中江元哉首相秘書官(同)が従来の総入れ替え方式を問題視していると部下から報告を受けていたことが分かった〉とする、小さい記事ながら衝撃的な話が載りました。部下は姉崎猛・厚労省統計情報部長(同)と見られるということです。
 厚労省は約2カ月後の6月に、調査方法を見直すための「毎月勤労統計の改善に関する検討会」を発足させました。当時の委員の一人は「サンプルを(全数)入れ替えるたびに数値が悪くなるそれまでのやり方に官邸か、菅(義偉官房長官)さんかが『カンカンに怒っている』と厚労省職員が相当気にしていた」と述べていますが、それは委員たちの共通の認識でした。
 
 それでも村木次官は、首相官邸の言いなりになるのでなく発足させた検討会を尊重して、従来通りの公正な総入れ替え方式を守ろうとしましたが、9月、中江首相秘書官が安倍首相に総入れ替え方式の問題を伝えたあと、官邸からの圧力はさらに強まりました。
 後は一気呵成で、9月14日、再び中江首相秘書官と姉崎統計情報部長が面会した日の夜に、「総入れ替え方式が適当」と記述されていた検討会の中間整理案が、「引き続き検討することとする」と書き換えられ、2日後の9月16日の第6回会合で、姉崎統計情報部長が「サンプルの入れ替えのところで総入れ替え方式ではなく、部分入れ替え方式を検討したい」とそれまでの議論をひっくり返し、そのまま検討会をなくしてしまいました。
 
 この経過は村木次官も認識していたはずですが、翌月10月に退任することが決まっていたため、強く出ることができなかったと見られています。
 村木氏は1月20日のNHK『あさイチ』で官邸の圧力を示唆する発言のあと、こんなことを語っています。
「いま起きている歪みを、役所自体が暴露していけるという環境を作っていくというのがまず第一歩で、ではなんでそんなことをしなくちゃいけなかったのかっていうのをちゃんと見ていく、調べていく。そこから再発防止をきちんと考えていくことが大事になるかなと思います(要旨)」
 まさに正論ですが、強権を持つ安倍氏がのさばっている限りはそれも出来ません。
 
 安倍首相は国会で、「18年に起きたことを15年に予見するなどということはあり得ない」という趣旨の答弁としていますが、あり得ないどころか正確に意図して画策したのであり、この賃金統計の不正でも、実質的には全て安倍首相が要所、要所で差配していたわけです。
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村木厚子氏が厚労省次官時代、官邸・中江首相秘書官の圧力の報告を受けていた! 『あさイチ』でも圧力を示唆
LITERA 2019年3月3日
 安倍官邸の圧力を示す証拠が次々と発覚している統計不正問題だが、ここにきてさらに新たな事実が判明した。当時、厚労省事務次官だったあの村木厚子氏が、官邸からの圧力の報告を受けていたことがわかったのだ。
 報じたのは、朝日新聞。3月2日付朝刊、総合4面の小さな記事だったが、こんな衝撃的な話が書かれていた。
〈「毎月勤労統計」の調査手法変更をめぐり、村木厚子・厚生労働事務次官(当時)が2015年春、中江元哉首相秘書官(同)が従来の総入れ替え方式を問題視していると部下から報告を受けていたことが分かった。部下は中江氏との面会が判明している姉崎猛・厚労省統計情報部長(同)の可能性があるという。関係者が明らかにした。〉
 
 村木氏といえば、厚労省課長時代の2009年、虚偽有印公文書作成・同行使の容疑で逮捕されるも、のちに冤罪が証明され、復職。安倍政権下の2013年から2015年にかけて事務次官をつとめていた。
 安倍官邸が賃金下降を隠すため、厚労省に対して、毎月勤労統計調査の調査サンプルを総入れ替え方式から部分入れ替え方式に変更するよう圧力をかけていたのが、2015年。村木氏はその時期に厚労省の事務方トップの職にあり、中江首相秘書官から統計が「問題視」されていたことを、部下の姉崎統計情報部長から聞かされていたというわけだ。
 実際、この時期、官邸の中江首相秘書官と、厚労省の姉崎統計情報部長の間で、報告通りのやりとりがあったことがわかっている。
 
 朝日新聞によれば、村木氏が報告を受けたのは、「3月末前後」ということだが、厚労省は3月30日に、毎月勤労統計の速報値公表の延期を突如決定。翌31日には、首相官邸で姉崎統計情報部長が中江首相秘書官に面会して、総入れ替え方式によって賃金の伸び率が下がることを正式報告。その際に、中江首相秘書官が姉崎統計情報部長に総入れ替え方式の「改善」を求めているのだ。
 中江首相秘書官は国会での答弁でこのときの圧力について追及され、「問題意識を伝えた」などと言っていたが、「問題意識を伝えた」だけの話が、トップのところまで報告されるわけはない。これは明らかに、首相官邸による厚労省全体に対する「圧力」だったのである。
 
 実は、統計問題で圧力があったことについては、村木氏自身がテレビで口にしていた。それは今年1月20日放送の『あさイチ』(NHK)でのこと。同番組のプレミアムトークに村木厚子氏が出演したのだが、そのとき、視聴者から「毎月勤労統計」の不正など、なぜ役所はデータ改ざんや隠蔽をおこなうのか、という内容のメール質問がよせられた。これに対し、村木氏はこう答えたのだ。
「悪いことをしたいって思ってやっている公務員って、私は少ないんじゃないかと思っているんですね。何かの圧力がかかったり、あるいは何かの歪みが起きていて、そういうことをやっている」
 この発言については、本サイトでもいち早く紹介し、「村木氏の発言は統計不正をめぐる安倍官邸の圧力を示唆するものではないか」と分析したが、まさに、そのとおりだったということだろう。
 
中江首相秘書官の「圧力」に当初は抵抗するも、完全屈服した厚労省
 実際、中江首相秘書官が厚労省に対して強い圧力を加えていたことは、そのあとの動きや、内部の声からも窺い知ることができる。
 厚労省は、約2カ月後の6月に調査方法を見直すための「毎月勤労統計の改善に関する検討会」(以下、検討会)を発足。この検討会の委員である第一生命経済研究所の永濱利廣氏は、朝日新聞の取材に対し「官邸が(改訂を)問題視して、なんとかしろと言う話で厚労省が立ち上げたのが検討会」と話しているが、ほかの委員もこんな証言をおこなっている。
「サンプルを(全数)入れ替えるたびに数値が悪くなるそれまでのやり方に官邸か、菅(義偉官房長官)さんかが『カンカンに怒っている』と言って厚労省職員は検討会の最初から相当気にしていた」(東京新聞2月10日付)
「プラスだと喜んでいたところ実はマイナスだったということで、官邸が怒っているという話を、誰からか聞いた記憶はある」(朝日新聞2月15日付)
 
 しかし、それでも、厚労省は当初、首相官邸の言いなりになるのでなく、発足させた検討会を尊重して、従来通りの公正な総入れ替え方式を守ろうとしていたようだ。
「検討会を尊重するという方針は、村木さんが決めたようです。実際、8月7日におこなわれた検討会の第5回会合では、座長である阿部正浩・中央大学教授がはっきりと『検討会の方向性としては、総入れ替え方式で行うことが適当であるということにさせていただければと思います』と、官邸の主張する一部入れ替え方式を拒否する方針を打ち出しました」(全国紙厚労省担当記者)
 ところが、周知のように、9月、中江首相秘書官が安倍首相に総入れ替え方式の問題を伝えたあと、圧力がさらに強まり、厚労省は首相官邸に完全に屈することになる。この間、明らかになったメールをみてもわかるように、阿部座長に対して「官邸からの圧力」が間接的に伝わるようになり、9月14日、再び中江首相秘書官と姉崎統計情報部長が面会。すると、その日の夜に、調査方法は「総入れ替え方式が適当」と記述されていた検討会の中間整理案が、「引き続き検討することとする」と書き換えられ、2日後の9月16日の第6回会合で、姉崎統計情報部長が「サンプルの入れ替えのところで総入れ替え方式ではなく、部分入れ替え方式を検討したい」とこれまでの議論をひっくり返し、そのまま検討会をフェードアウト(消失)させてしまったのだ。
 
村木厚子元次官の「何かの圧力があった」発言の裏にあった思いとは
「厚労省が首相官邸の圧力に屈して、恣意的な調査方式に変えたことについては、村木次官も認識していたはずです。ただ、この時点で村木次官は翌月10月に退任することが決まっていたため、強く出ることができなかったのではないでしょうか」(前出・厚労省担当記者)
 そう考えると、『あさイチ』における村木氏の「何かの圧力があった」という発言は、こうした自分への忸怩たる思いから発したものだったのかもしれない。
 今回の朝日の記事には、村木氏自身の肉声は掲載されていないが、検察と真っ向闘い、冤罪を証明した村木氏のことである。今後、実名で、その圧力の詳細を告発する可能性もあるのではないか。
 
 村木氏は先の『あさイチ』で圧力を示唆する発言のあと、こんなことも語っていた。
「やっている人間も決して喜んでやってないはずで、そういうことをやらずにすむ、隠せないようにしてあげる。外からの目が必ず入って、いろんなことが、プロセスがオープンになれば、逆に隠さなくてすむわけですよね。それがすごく大事なことじゃないかなっていうふうに思います。
 正直に、今、起きている歪みとかっていうのを、役所じたいがカミングアウト(暴露)していける。そういう環境を作っていくっていうのがまず第一歩かなっていうふうに思います。外の目が入るほうがずっと健全になって、前向きにいろんなことが進むのかなっていうふうに思います」
「ああいう不正をしたら誰かが得したとか、ポケットにお金が入ったっていうことはないわけですから。じゃあ、なんでそんなことをしなくちゃいけなかったのかっていうのをちゃんと見ていく。調べていく。そこから再発防止をきちんと考えていくことが大事になるかなと思います」
 村木氏の勇気ある告発に期待したい。 (編集部)

2019年3月3日日曜日

県民投票尊重は憲法上の義務 小林節・慶大名誉教授

 安倍政権が沖縄の辺野古において新基地工事を続行していることには何の正当性もありません。そもそも辺野古新基地が完成すれば普天間米軍基地が返還されるという保障もありません。
 小林節・慶大名誉教授が、政府には沖縄県民の意向を尊重すべき憲法上の義務があると改めて述べました。
 政府は辺野古新基地建設は米国との条約に相当するので法令に優先するという考え方のようですが、小林教授は、国策であっても特定の地域に負担を強いる法律の制定には地域住民の同意が必要で、住民に拒否権があるというのが憲法95条の法意であるとしました。
 また「公が個人の幸福追求権を害する場合は、それをはねのけることができる」というのが憲法の基本構造で、それを保証した憲法13条にも反すると述べました。
 
 そして政府やNHKが反対票の絶対得票率が38%しかなかったことを強調するのは、17年の小選挙区で絶対得票率は25%にとどまった自民党・安倍政権には正統性がないと述べるに等しい、という矛盾に陥るものだと批判しました。
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県民投票 尊重憲法上の義務 小林節・慶応大名誉教授
東京新聞 2019年3月2日
 沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設への賛否を問うた県民投票について、小林節・慶応大名誉教授(憲法)に聞いた。(関口克己)
 
 県民投票で、新基地反対票は七割を超えた。安倍政権には、住民投票の結果に拘束される憲法上の義務がある。政府は建設を断念しなければならない。
 憲法九五条は、特定の自治体に適用される特別法は、その自治体の住民投票で過半数の同意を得なければならないと定めている。国策であっても、特定の地域に負担を強いる法律の制定には地域住民の同意が必要で、住民に拒否権があるというのが法意だ。
 辺野古新基地建設は法律によるものではないが、それは形式論にすぎない。国の名で地域の個性をつぶしてはならないというのが、人権や地方自治の本質に根差した憲法常識だ。
 
 新基地建設は、
 憲法は権力を縛って国民の人権を保障し、幸福を増進するためにある。刑法の拡大解釈は許されないが、幸福追求権を擁護するための九五条の拡大解釈は何ら問題がない。
 
 反対票の絶対得票率が38%しかなかったとして、県民投票の意義を否定する声も安倍政権側から聞こえてくるが、矛盾している。二〇一七年衆院選の小選挙区で、自民党の絶対得票率は25%にとどまった。県民投票の絶対得票率を持ち出すことは安倍政権の正統性を否定することになる。
 
<こばやし・せつ> 1949年生まれ。慶応大卒。弁護士。2015年6月の衆院憲法審査会で、当時審議中だった安全保障関連法を違憲と指摘。現在も同法廃止を唱える。
 
■憲法の関連条文
 【一三条】
 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
 【九五条】
 一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。

日本ペンクラブが官邸の質問制限で声明文 日本出版者協議会も

 首相官邸側が東京新聞・望月記者の質問を事実誤認などと主張している問題で、日本ペンクラブは1日、記者の質問に対して十分な説明をするよう官邸側に求める声明を発表しました。
 声明では、官邸側の対応を「大人げない」とし、官房長官の記者会見は、国民の知る権利を前提にして「記者がさまざまな角度から政府の政策を問いただす場」だと指摘しています。
 日本出版者協議会も同日、安倍政権が報道に圧力をかけて「言論の自由」を侵しているとする抗議文を公表しました。
 二つの声明を紹介します。
 
 また菅官房長官が東京新聞に対して、社内の人事で決められる記者が「国民の代表とする証拠を示せ」と子供じみたことを述べたのに対して、小林節・慶大名誉教授が「報道機関の記者は紛れもなく主権者国民の代表である」と述べた記事と、官邸が望月記者の質問を「事実誤認に基く質問」と極めつける文書を出したことに対して、作家の適菜収氏が「確実な証拠がないから追及が必要なのだ」と批判した記事を併せて紹介します。
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日本ペンクラブ声明 
「首相官邸記者会見の質問制限と回答拒否問題について」
 
 いったい何を大人げないことをやっているのか。内閣官房長官と首相官邸報道室のことである。両者は昨年末、内閣記者会に対し、東京新聞記者の質問が「事実誤認」「問題行為」であるとして「問題意識の共有」を申し入れたのを手始めに、2ヵ月が経ったいまも、同記者の質問に対し、「あなたに答える必要はない」と高飛車に応じている。
 官房長官の記者会見は、記者がさまざまな角度から政府の政策を問い質す場である。その背後に国民の「知る権利」があることは言うまでもない。質問に誤解や誤りがあれば、それを正し、説明を尽くすことが官房長官の仕事ではないか。「答える必要はない」とは、まるで有権者・納税者に対する問答無用の啖呵である。
 そもそもこの問題には最初から認識の混乱がある。官邸報道室長が内閣記者会に申し入れた文書(昨年12月28日付)には、会見はインターネットで配信されているため、「視聴者に誤った事実認識を拡散させることになりかねない」とあった。
 ちょっと待ってほしい。政府は国会答弁や首相会見から各種広報や白書の発行まで、政策を広める膨大なルートを持っている。問題の官房長官記者会見も「政府インターネットテレビ」が放送している。仮に「誤った事実認識」が散見されたとしても、政府には修正する方法がいくらでもあるではないか。それを「拡散」などとムキになること自体、大人げないというべきである。
 私たちは今回の一連の出来事に対する政府側の対応を、なかば呆れながら見守ってきた。この硬直した姿勢は、特定秘密保護法、安保法制審議、いわゆるモリカケ問題から、最近の毎月勤労統計不正、沖縄県民投票結果への対応までほぼ一貫し、政府の資質を疑わせるまでになっている。
 私たちが懸念するのは、これらに見られた異論や批判をはねつけ、はぐらかす姿勢が、ものごとをさまざまな角度から検討し、多様な見方を提示し、豊かな言葉や音楽や映像等で表現しようとする意欲を社会全体から奪っているのではないか、ということである。これは一記者会見のあり方を超え、社会や文化の活力を左右する問題でもある。
 私たちは官房長官と官邸報道室が、先の申し入れ書を撤回し、国民の知る権利を背負った記者の質問に意を尽くした説明をするよう求めるとともに、報道各社の記者がジャーナリストとしての役割と矜持に基づき、ともに連携し、粘り強い活動をつづけることを期待する。
2019年3月1日
一般社団法人日本ペンクラブ
会長 吉岡 忍
 
日本出版社協議会声明 首相官邸による内閣記者会への申し入れに抗議する
 
 昨年末、上村秀紀・総理大臣官邸報道室長の名前で、内閣記者会加盟社宛に、「東京新聞の特定の記者」による質問内容が「事実誤認」であり、「正確でない質問に起因するやりとり」は「内外の幅広い層の視聴者に誤った事実認識を拡散」させることで「記者会見の意義が損なわれる」ので、「当該記者による問題行為については深刻なものと捉えており、貴記者会に対して、このような問題意識の共有をお願い申し上げる」とした文書が送られた。  
 2月20日付け東京新聞の検証記事によれば、この「特定記者」の質問を巡っては、2017年8月から2019年1月までに、9回にのぼる申し入れを官邸から受けたという。さらに記者会見の場においても、一昨年の秋以来、この記者の質問中、進行役の報道室長によって「簡潔にお願いします」などとしばしばせかされ、質問を何度も遮られる事態に陥っているという。
 同記事は、「権力が認めた『事実』。それに基づく質問でなければ受け付けないというのなら、すでに取材規制だ」「記者会見は民主主義の根幹である国民の『知る権利』に応えるための重要な機会だ。だからこそ、権力が記者の質問を妨げたり規制したりすることなどあってはならない」と訴えている。
 今回の文書の直接の契機となった質問は、辺野古新基地建設に関するものだった。「埋め立ての現場では、いま赤土が広がっております」と記者がただしたことに対し、報道室長名の文書は、区域外への汚濁防止措置をとっているとして「赤土による汚濁が広がっているかのような表現は適切ではない」という。こうしたやりとりそのものは、通常の記者会見の場における質疑でなされればよく、その事実がどこに存在するかは、実際の現場の状況そのものによって明らかにされることだろう。しかし、たとえ記者が取材に基づいて明らかにした事実であっても、官邸の判断で「事実に基づかない」とされ、「事実誤認」を拡散する行為とされるなら、政府の説明を額面通りに受け取れというに等しい。そして、そういう恭順な姿勢を示さない記者を「事実」の名の下に排除することを意味する。何が事実であるかを決定するのは官邸であり、メディアは黙ってそれを受け入れよという不遜な態度だ。
 これに対して記者会は、「質問を制限することはできない」と応じ、日本新聞労働組合連合(新聞労連)も2月5日、「官邸の意に沿わない記者を排除するような申し入れは、明らかに記者の質問の権利を制限し、国民の『知る権利』を狭めるもので、決して容認できない」とする抗議声明を発表した。全く当然の主張であり、私たちも言論、出版に携わるものとしてこれを支持する。
 安倍政権は、一方ではマスコミ各社の幹部や論説委員などとひんぱんに会食を重ね、他方では「公正中立な報道」を繰り返し要求するといったかたちで、権力に対して批判的な報道に圧力をかけ続けてきた。今回の官邸の姿勢も、そうしたメディア支配の流れにあるものであり、「言論の自由」「報道の自由」を犯すものとして、私たちは強く抗議する。
2019年3月1日
(社)日本出版者協議会
会長 水野 久
ここがおかしい 小林節が斬る!
報道機関の記者は紛れもなく主権者国民の代表である
小林節・慶大名誉教授 日刊ゲンダイ 2019年3月2日
 東京新聞が「記者は国民を代表して質問に臨んでいる」と記したら、官邸が「国民の代表とは選挙で選ばれた国会議員で、東京新聞は民間企業で、会見に出る記者は社内の人事で決められている」「記者が国民の代表とする証拠を示せ」と返したとのことである。
 まるで子供の喧嘩のようである。秀才揃いの官僚たちに囲まれた最高位の政治家がこんな明白な嘘を返して平然としているとは、この国の政治はいよいよ末期症状である。
 選挙で選ばれた政治家が形式的に国民の「代表」であることは間違いない。しかし、歴史の教訓が示しているように、権力者もその本質はただの人間であり、絶対的権力は絶対に堕落するものであるから、人類は、政治権力を牽制する仕組みをさまざまに工夫しながら、今日まで進歩してきた。
 立憲主義、三権分立、議院内閣制、法治主義、権力の乱用に対する盾としての人権と司法の独立、法の支配、地方分権などである。
 それでも、最高の権力を握る人間どもは巧みに法の網をくぐり抜けながら私利私欲を追求し悪事を繰り返すものである。モリカケ問題は未解明・未解決であるが、これなど権力の堕落の典型である。
 国会議員は、形式上、国民の代表であるが、例えば菅官房長官は1億人もいる日本人の中の12万人余りから明示的に支持されただけの存在である。
 1776年にアメリカが独立して世界初の民主国家が誕生して以来、人類は、政治家の堕落を直視しながら政治の質を高める努力を続けてきた。
 そして、その中で重要な役割を果たしてきたのが主権者国民の知る権利を代表する報道の自由である。つまり、国民が皆それぞれに自分の生活に忙殺されている日常の中で、職業としての権力監視機関として、報道が発達し、憲法の重要な柱のひとつとして確立され、世界に伝播(でんぱ)していったのである。
 だから、報道機関は紛れもなく憲法上、国民の代表であり、また、権力を監視する以上、権力の紐が付かない民間機関なのである。これは、わが国を含む自由で民主的な社会における世界の憲法常識である。 
 
 
それでもバカとは戦え
言論統制が深刻化…確実な証拠がないから追及が必要なのだ
適菜収 日刊ゲンダイ 2019年3月2日
 ナチスの宣伝相でヒトラーの女房役のゲッベルスによるプロパガンダの手法は、より洗練された形で今の日本で使われている。デタラメな説明を一方的に繰り返し、都合が悪くなれば、言葉の置き換え、文書の捏造、資料の隠蔽、データの改竄を行う。わが国は再び20世紀の悪夢を繰り返そうとしているが、言論統制も深刻な状況になってきた。
 
 2018年12月、東京新聞の望月衣塑子記者が、官房長官の菅義偉に対し、辺野古の米軍新基地建設について「埋め立て現場では今、赤土が広がっており、沖縄防衛局が実態を把握できていない」と質問。すると官邸は激怒し「事実に反する質問が行われた」との文書を出した。では、事実に反するのはどちらなのか?
 土砂投入が始まると海は茶色く濁り、沖縄県職員らが現場で赤土を確認。県は「赤土が大量に混じっている疑いがある」として沖縄防衛局に現場の立ち入り検査と土砂のサンプル提供を求めたが、国は必要ないと応じなかった。その後、防衛局が出してきたのは、赤土投入の件とは関係のない過去の検査報告書だった。
 
 東京新聞は官邸から過去に9回の申し入れがあったことを明らかにし、反論を掲載。それによると望月記者が菅に質問すると報道室長が毎回妨害。安倍晋三が流した「サンゴ移植デマ」についての質問は開始からわずか数秒で「簡潔に」と遮られた。国会で「申し入れは報道の萎縮を招く」のではないかと問われた菅は「取材じゃないと思いますよ。決め打ちですよ」と言い放ったが、特定の女性記者を「決め打ち」しているのは菅だ。
 
 もちろん、メディア側が間違うケースもある。にもかかわらず、疑惑の追及は行われなければならない。モリカケ事件の際も「確実な証拠があるのか」とネトウヨが騒いでいたが、アホかと。確実な証拠があるならすでに牢屋に入っている。確実な証拠がないから追及が必要なのだ。事実の確認すら封じられるなら、メディアは大本営発表を垂れ流すだけの存在になる。
「(沖縄の県民投票が)どういう結果でも移設を進めるのか」と問われた菅は「基本的にはそういう考えだ」と述べていたが、そのときの満足げな表情は、望月記者をいじめ抜いたときと同じだった。菅の行動原理が読めないという話はよく聞くが、単なるサディストなのかもしれない。言い過ぎだって? いや、そのご指摘はあたらない。
 
 適菜収 作家
1975年生まれ。早大で西洋文学を学び、ニーチェを専攻。ニーチェの「アンチクリスト」を現代語訳した「キリスト教は邪教です!」、「ゲーテの警告 日本を滅ぼす『B層』の正体」など著書多数。近著に「もう、きみには頼まない 安倍晋三への退場勧告」。

03- 新聞労連・南彰委員長が語る“望月記者排除”の構造(後編)(LITERA)

 官邸による東京新聞・望月記者バッシングに対して抗議の口火を切ったのが新聞労連の声明でした。その後各種団体から続々と官邸の態度を批判する声明が出されています。
 それにもかかわらず、前編によればいまも上村報道室長による同記者へのほぼ10秒ごとの妨害発言が繰り返され、同記者の質問は最後に回された上に1問だけに限定されるという、考えられないような横暴がまかり通っているということです。
 官邸記者クラブが官邸と癒着していればこうした横暴は留まるところを知らなくなるということで、現に望月記者に対するバッシングは、一部良心的な他の記者に対しても拡大しつつあるということです。
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新聞労連・南彰委員長が語る“望月記者排除”の構造(後編)
官邸の“質問締め出し”を受けているのは望月記者だけじゃない! 
記者の沈黙で日本は「質問できない国」に
LITERA 2019年3月1日
 安倍官邸が、東京新聞の望月衣塑子・社会部記者を官房長官会見から排除しようと圧力を強めている問題。ついには菅義偉官房長官が「あなたに答える必要はない」と堂々と言い放ち、“報道機関への不当な介入でも国民の知る権利をも侵害する行為でもない”とする答弁書を閣議決定までしてしまった。
 記者への圧力を正当化し、事実上「今後も弾圧をつづける」と宣言した安倍政権。そこで本サイトでは、今回、問題を最初に提起した日本新聞労働組合連合(新聞労連)の南彰委員長に緊急インタビューを実施。前編では、官邸による驚愕のフェイクニュース流布の実態まであきらかになった。
 そしてこの後編では、一体、安倍政権下でどのようにして記者による自由な質問が奪われていったのかを南委員長に語ってもらった。そこから浮き彫りになる、不都合な追及を封じ込めようとする官邸の動きと、ご都合主義の御用メディアの追随とは──。
 
●かつての官房長官会見では、質問妨害や制限が加えられることはなかった
──南委員長は、官房長官会見で500回以上、質問をおこなった経験をもっていると。以前といまとでは、どういう変化があったのでしょうか。
南 まず、記者の質問が妨害されたり、制限が加えられるような状態は、いままでになかったことです。
 僕が朝日新聞社の政治部記者として官房長官会見に入るようになったのは、2008年、自民党の福田内閣のときで、当時は町村信孝さんが官房長官を務めていました。会見場の最前列に官房長官番の記者が15〜6人並んでいるという光景は当時もいまも変わらないんですけど、違うのは、番記者の後ろの席にいる記者たちも自由に手を挙げて自由に質問し、それに官房長官も答えていたということ。僕は当時、総理番で会見に入りたてでしたけど、訊きたいことがあれば自由に質問して、町村さんもそれに対して普通に答えるし、僕の質問に官房長官番が何か言うわけでもない。それは次の麻生内閣で河村建夫さんが官房長官だったときも同じような感じでした。
 その後、民主党政権になって、僕はいちばん最後の野田内閣のときに藤村修官房長官の番記者を1年4カ月やったんですけど、そのときも後ろから普通に質問は出ていたし、官房長官番から厳しい質問が出ることも普通にありました。それがいまは、官房長官番以外の質問は減った印象がありますよね。
 
──当時、厳しい質問をして、官房長官から嫌がらせを受けるようなことはなかったんですか?
南 ないですよ。もちろん、秘書官から「南さん、あれなんですか」とか、そういう電話はしょっちゅうかかってくるんですよ。「ああやって訊くのはないんじゃないの」とか。かといって、それで萎縮するようなものではなかった。そうした記者と官邸側のせめぎ合いはつねにあるし、そのなかでどうかわしながらやっていくかというのが大事なわけですから。
 
──では、南さんが明確に「変わったな」と肌で感じたのは、いつごろですか。
南 民主党政権が終わってから僕は大阪に2年半行って、戻ってきたのが2015年9月の安保法制のときでした。でも、当時は官房長官会見で何が語られているかというのは、そんなにつぶさに見てはいなかったんです。それが、2017年に国会審議の担当をやっているときに、菅官房長官が「総理のご意向」文書のことを「怪文書のような文書」と発言するなどいい加減な質疑がつづいていて、「もうちょっと突っ込んで訊いてくれないかな」「こんな言いっ放しで終わっているとまずいのでは」と思うようになって。それでその年の6月後半くらいから会見に入るようになりました。
 
記者の質問への締め付けは、官房長官会見だけではなく総理の記者会見でも
──当時は孤立する望月記者に、南さんや、ジャパンタイムズの吉田玲滋記者が援護射撃をしていましたよね。
南 こう切り込めばもうちょっと引き出せるとか、政治部なりの技術もあるので、それを望月さんの質問に組み合わせていけばいいんじゃないかなと思ったんです。それに何より、望月さんのあとに誰かがつづかないと、官邸から分断を図られたときにこの流れは立ち消えてしまうと感じていた。しかも、断ち切られたときには、もう一回アクションを起こすことは難しいだろうと。少なくとも質問の機会を拡大して、ちゃんと追及しなくてはいけない場面だということは、記者全体で共有したほうがいいなと思っていたんです。けれども、そこがあんまり広がらなかった。
 そして、その年の8月には、官邸側が「公務がある」ことを理由に、質問数に制限をくわえるルールをつくってしまったんです。
 
──官房長官番以外の質問が減り、その質問にもまともに答えず、さらには追及の手を緩めない記者の登場に対して質問を制限する勝手なルールで縛るようになった……。
南 以前までは「説明がおかしいんじゃないんですか」と言えていたのに。しかし、記者の質問への締め付けが厳しくなったというのは、官房長官会見だけではなく、総理の記者会見でも起きています。
 総理会見というのは儀式的なところが昔からあって、総理会見では更問い(追加質問)ができないので、結局、総理の言いっ放しになってしまう。そういう部分は昔もいまも変わらないんですが、第2次安倍政権では、まず会見の回数自体が減ってしまった。たとえば、首相官邸での総理の単独記者会見は、森友・加計問題が起こった2017年は4回、昨年は3回。ちなみに前の民主党政権最後の2012年は13回です。
 しかも、総理会見では、こういうこともありました。安保法制をやっていたころと思いますが、ある記者が総理会見の前に、こういうテーマで質問しようと思っていますと官邸側に伝えていた。ところが、会見の流れが変わったので違う質問をしたら、「なんであなたはそんな失礼なことをするんですか」と、記者が怒られてしまった。
 でも、ほんとうによくなかったのは、総理の「ぶら下がり取材」をなくしてしまったことだと思うんですよ。やめたのは3.11がきっかけで、これは民主党政権の罪だと思っているんですが、それを安倍政権も踏襲した。
 総理のぶら下がりは、かなり自由にやれていたんです。もちろん、事前に秘書官が「どういう質問するんですかね」と訊いてくるんですが、絶対に応じないというグループもあって、つねに一定の活気はあった。それがスタンダードだったんです。つまり、いろんな仕掛けをして、相手を困らせながらも何かを引き出すということを、最高権力者である総理に対してやっているのだから、ましてや二番手の官房長官には、事前に通告してこいだのなんだのと言われる筋合いはないんじゃないか、という感覚です。
 その総理のぶら下がりがなくなって、総理記者会見は更問いもできないし、そもそも当てられる質問の数も少ない。そういうなかで、それまで闊達にできていた官房長官会見までもが雰囲気が変わってしまったわけです。
 
産経新聞の阿比留記者は菅直人首相の会見で直接、退陣を迫っていた
──首相に自由に質問を浴びせる機会が失われ、総理会見の儀式的な流れが官房長官会見にも波及してしまった。そしていま、その空気に抗って質問をする望月記者が排除されようとしている、と。
南 だから、これは望月さんだけの問題ではないということなんです。たとえば民主党政権のとき、産経新聞の阿比留(瑠比)さんは菅直人首相の会見で直接、「総理の存在自体が国民の不安材料になっている」「一体、何のためにその地位にしがみ付いていらっしゃるのか」と退陣を迫る質問をしていましたが、いまの状況は、そんな質問ができなくなるということなんですから。
 
──しかも阿比留記者がいる産経は、そうやって自由に質問していたのに、いまは自由に質問しようとする記者の足を引っ張ろうと、官邸に丸乗りで必死に望月記者をバッシングするような記事を流しているという……。
南 どんな政権が出てくるかはわからないから自由に質問できることは必要だ、というところは認識してほしいですよね。いいんですよ、どんな質問をしたって。ほかの人が「ちょっとやりすぎかな」っていうくらいでもいい。自由にやっておけば、ここぞというときにいろいろできるわけですから。
 それをいま、不都合な質問をする記者を官邸が締め出そうとしたり、質問する権利を無視したりするなかで、官邸側に同調する、あるいは沈黙するのは、ゆくゆくは自分たちの首を絞めることになるんです。
 実際に、最近では望月さんだけではなく、官邸が官邸記者クラブに提示した文書について質問した朝日新聞の記者や、辺野古新基地建設について質問した琉球新報の記者も、質問妨害に遭っています。
 つまり、官邸にとって都合の悪い質問は潰されていく、ということ。「質問ができない国」になるということです。
 トランプ政権がCNN記者の記者証を取り上げた際、政権寄りのFOXも異議を唱えました。新聞労連ではこのとき、ホワイトハウス記者協会と連帯するという声明を出し、〈ホワイトハウスでの出来事は、日本で働く私たちにとっても他人事ではありません〉と書いたんです。対岸の火事じゃない、いま官邸で起きていることも同じだ、と。NHKをはじめ、日本のメディアはトランプ政権のそうした問題を面白がって報じるけれど、そんな場合じゃないですよ、と。でも、そうした危機感も広がらず、ズルズルときてしまった。それがいまの現状であり、将来世代がまともに取材できる環境に変えていくための最後のチャンスなんだと思っています。
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 記者に弾圧が加えられ、フェイクニュースを流すことさえ厭わない安倍官邸。だが、これはたんに記者に対する嫌がらせや妨害ではなく、「知る権利」を踏みにじろうという国民に対する圧力・恫喝だ。そして、国民が当事者として「許せない暴挙」だと認知できなければ、このまま状況は悪くなっていくだろう。メディアはもっと大きく、さらに継続して警鐘を鳴らしつづけなくてはならないはずだ。 (取材・構成/編集部)

2019年3月2日土曜日

安倍首相が玉城デニー知事に沖縄無視・辺野古続行をあらためて宣言

 1日、玉城デニー沖縄県知事は県民投票の結果を通知するため首相官邸で安倍首相に面会し、「直接示された民意は何より重く、尊重されなければならない」、「いままさに、日本政府の民主主義が問われている」と突きつけました。
 
 それに対して安倍首相の回答は、「結果を真摯に受け止め、基地負担の軽減に全力を尽くしていきたい」、「普天間飛行場の危険な状況を置き去りにするわけにはいかない。もはや、先送りできない」という、聞き飽きた何の真実味もないものでした。
 就中「真摯に」という言葉はまことに不適当で、首相がその意味を知っているのかとさえ思わされます。そもそも最初のセンテンスと後のセンテンスの間には何の脈絡もありません。工事期間として13年(以上)が掛かる辺野古新基地の工事を進めることが、何故「先送りできないから」の解決策になるのか首相は説明できるのでしょうか。
 首相の発言は国語力の欠如と人間としての不誠実さが相俟った理解不能なものです。
 
 完成が期せずに米軍がそこの移動するかも不明な工事に、2兆円余を掛けることに何の問題意識も持たないことも大いに問題です。これまで海外に何十兆円もバラまいて来たために、そういう感覚がマヒしているのであれば即刻退場すべきでしょう。
 
 1日夜、永田町の首相官邸前では「辺野古埋めるな東京大抗議」と題した集会が開かれ、政府の不当な態度に怒った多くの市民らが駆け付けました。
 LITERAは、「安倍首相が玉城デニー知事に沖縄無視・辺野古続行をあらためて宣言!~」とする怒りの記事を出しました。 
 毎日新聞とLITERAの記事を紹介します。
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「民主主義を埋めるな」 官邸前で辺野古反対集会
毎日新聞 2019年3月1日
 東京・永田町の首相官邸前では1日夜、「#0301辺野古埋めるな東京大抗議」と題した集会が開かれた。ツイッターなどで開催を知った多くの市民らが駆け付け、米軍普天間飛行場の移設計画に伴う名護市辺野古沿岸部の埋め立て工事をすぐにやめるよう訴えた。 
 
 集会が始まった午後7時半には官邸前の歩道に三重、四重の長い列ができた。「民主主義を埋めるな」「辺野古に基地はいらない」と書かれたプラカードを手に、太鼓の音に合わせて「辺野古を埋めるな」「安倍(晋三首相)は辞めろ」と声を上げ続けた。 
 会場では、約9万人分の有効署名を集めて県民投票の実施を求めた「『辺野古』県民投票の会」の元山仁士郎代表(27)がマイクを握った。元山さんは、県民投票で「反対」が7割超を占めたにもかかわらず、安倍首相が埋め立てを進めようとしていることを踏まえ、「残念ながら沖縄の意思は形になっていない。(政府による)いじめの状態を終えなければならない」と強調。「みんなで知恵を出せば、辺野古以外の選択肢も生まれるはずだ。今回の問題について立場が違う人とも話し合ってほしい」と参加者に呼び掛けた。 
 
 仕事帰りに半年ぶりに抗議集会に参加した東京都西東京市東伏見4の会社員、後藤大輔さん(40)は「私は辺野古新基地建設に反対します」とのプラカードを持参した。「沖縄に行ったことはないが、基地負担を沖縄にばかり押しつけるのはおかしいと思っている。沖縄の民意が明確になったのに、その声を聞かない安倍首相の態度に腹が立つ」と話した。【川村咲平】 
 
 
安倍首相が玉城デニー知事に沖縄無視・辺野古続行をあらためて宣言! 
小林節は「県民投票には憲法上の拘束力ある」と指摘
LITERA 2019年3月1日
 「直接示された民意は何より重く、尊重されなければならない」
 「いままさに、日本政府の民主主義が問われている」
 辺野古新基地建設について7割超が「反対」という民意を示した県民投票の結果を通知するため、本日、玉城デニー沖縄県知事が首相官邸で安倍首相と面会し、このように突きつけた。
 しかし、安倍首相の回答は、県民投票をまったく無視した冷酷なものだった。
「結果を真摯に受け止め、基地負担の軽減に全力を尽くしていきたい」
「(普天間飛行場の)危険な状況を置き去りにするわけにはいかない。もはや、先送りできない」
 
 玉城知事は安倍首相との面会のあと、外国人特派員協会でおこなわれた会見において、「安倍総理からポジティブな意見はなかった」と語った。
 辺野古埋め立ての賛否を問うシングルイシューの県民投票によって明確に示された民意を「真摯」に受け止めるのであれば、辺野古での工事をまずは即刻中断、断念し、その上で普天間の県外・国外移設など別の案を政府として検討、沖縄県に提案するのが筋であり、それではじめて「真摯」と言える。
 それがどうだ。結局、安倍首相は県民投票前から言いつづけている「普天間の危険除去」を理由にして、工事続行を正当化するだけ。だが、辺野古に新基地ができてもそれだけでは普天間は返還されない上、水深90メートルにも達する軟弱地盤に約7万7000本もの杭を打つという、世界的にも例がないとされる途方もない地盤改良工事について、その工期も工費もあきらかにされてはない。
 
 にもかかわらず、政府は県民投票の翌日も辺野古の海に土砂を投入し、軟弱地盤がある大浦湾側でも護岸工事をおこない、さらに警察は抗議する市民たちを強制排除するという暴挙に出た。これこそが、沖縄県民の民意に対する、安倍首相の答えなのだ。
 しかも、耳を疑ったのは、岩屋毅防衛相の発言だ。2月26日におこなわれた閣議後会見で、岩屋防衛相は安倍首相と同じ主張を繰り返した上、こう言い放ったのである。
「沖縄には沖縄の民主主義があり、国には国の民主主義がある」
 民主主義に則って実施された県民投票によって沖縄が示した結果に対し、「国の民主主義は違う」と切り捨てる──。この発言は「沖縄」と「本土」の分断をはかるだけでなく、この「国」の民主主義というのは主権者たる国民の声を政府は無視して勝手にできる、と言っているようなものではないか。
 
 それだけではない。安倍首相は「真摯に受け止める」と言って憚らないが、安倍首相の意向に沿った報道に終始する政権に近いメディアは、見事に県民投票の結果を矮小化。NHKは“「反対」は全有権者の約37%しかない”と印象操作するような付ける報道をおこない、読売新聞は「投票率52% 広がり欠く」「『反対』最多 影響は限定的」と見出しを立てた。
 もっと露骨だったのは、フジテレビ解説委員・平井文夫氏の主張だ。平井解説委員は「FNNプライムオンライン」において〈(「反対」票を投じたのは)全有権者の中の割合を見ると38%、4割弱に過ぎない〉〈投票に行かなかった54万人を巧妙に無視している〉などと主張。「投票結果報道はフェイクニュース」「トリックに騙されるな」と無茶苦茶な論理を展開したのだ。
 こうした意見はネット上でもネトウヨが振りかざしているものだが、その論でいえば、安倍政権こそ“トリックを利用したフェイク政権”ということになるではないか。実際、憲法学者の小林節・慶應義塾大学名誉教授はこう反論している。
 
小林節は「県民投票には憲法上の拘束力がある」と安倍政権の対応を問題視
「先の衆院選小選挙区で自民党の小選挙区での得票率は47%余りで全有権者に占める割合は約25%にとどまった。それにもかかわらず約74%の議席を獲得した。安倍政権が県民投票の獲得票の割合が低いと言うのであれば自己矛盾になる」(琉球新報2月28日付)
 さらに、小林名誉教授は、安倍首相が県民投票の結果を無視していることに対しても、重要な指摘をおこなっている。
「県民投票には憲法上の拘束力がある。政府には憲法の趣旨に従って『少なくとも県外への移設』を追求すべき義務がある」
 小林氏によると、憲法95条では「ひとつの地方自治体のみに適用される国の法律は、その自治体の住民投票で過半数の同意を得なければならない」と定めており、「辺野古への米軍基地移設は形式上は『法律』ではないが、中央から地方へのいじめをしてはならないという憲法の趣旨からすれば、政府が過重な負担を沖縄に押し付けてはならないという規範が95条の法意だ」と解説するのだ。
 
 安倍首相が県民投票の結果を無視し、強権的に工事を続行させることは、断じて許されない。無論これは、日本全体の問題だ。
 工事の見通しも立たない状態であるというのに「辺野古が唯一」と筋が通らない主張を繰り返す安倍首相のやり方を、国民は認めるのかどうか。そしてなにより、県民が示した民意を政府がまるで無視するという暴挙を、それを「この国の民主主義」と言ってのける政権を、受け入れるのかどうか。いま、日本全体がこの問題を突きつけられているのである。
 きょう、いままさに首相官邸前では、「辺野古埋めるな東京大抗議」と題した抗議活動がおこなわれ、多くの市民が安倍首相による沖縄への蛮行に反対の声をあげ、沖縄の民意に向き合うことを求めている。
 沖縄に対して安倍首相が振るいつづける暴力を見過ごすことは、わたしたちは安倍政権の加担者になることを意味する。いまこそ「沖縄への暴力をやめろ」と、「本土」こそが民意を叩きつけなければならない。(編集部)