2019年3月3日日曜日

県民投票尊重は憲法上の義務 小林節・慶大名誉教授

 安倍政権が沖縄の辺野古において新基地工事を続行していることには何の正当性もありません。そもそも辺野古新基地が完成すれば普天間米軍基地が返還されるという保障もありません。
 小林節・慶大名誉教授が、政府には沖縄県民の意向を尊重すべき憲法上の義務があると改めて述べました。
 政府は辺野古新基地建設は米国との条約に相当するので法令に優先するという考え方のようですが、小林教授は、国策であっても特定の地域に負担を強いる法律の制定には地域住民の同意が必要で、住民に拒否権があるというのが憲法95条の法意であるとしました。
 また「公が個人の幸福追求権を害する場合は、それをはねのけることができるというのが憲法の基本構造で、それを保証した憲法13条にも反すると述べました。
 
 そして政府やNHKが反対票の絶対得票率が38%しかなかったことを強調するのは、17年の小選挙区で絶対得票率は25%にとどまった自民党安倍政権には正統性がないと述べるに等しい、という矛盾に陥るものだと批判しました。
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県民投票 尊重憲法上の義務 小林節・慶応大名誉教授
東京新聞 2019年3月2日
 沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設への賛否を問うた県民投票について、小林節・慶応大名誉教授(憲法)に聞いた。(関口克己)
 
 県民投票で、新基地反対票は七割を超えた。安倍政権には、住民投票の結果に拘束される憲法上の義務がある。政府は建設を断念しなければならない。
 憲法九五条は、特定の自治体に適用される特別法は、その自治体の住民投票で過半数の同意を得なければならないと定めている。国策であっても、特定の地域に負担を強いる法律の制定には地域住民の同意が必要で、住民に拒否権があるというのが法意だ。
 辺野古新基地建設は法律によるものではないが、それは形式論にすぎない。国の名で地域の個性をつぶしてはならないというのが、人権や地方自治の本質に根差した憲法常識だ。
 
 新基地建設は、
 憲法は権力を縛って国民の人権を保障し、幸福を増進するためにある。刑法の拡大解釈は許されないが、幸福追求権を擁護するための九五条の拡大解釈は何ら問題がない
 
 反対票の絶対得票率が38%しかなかったとして、県民投票の意義を否定する声も安倍政権側から聞こえてくるが、矛盾している。二〇一七年衆院選の小選挙区で、自民党の絶対得票率は25%にとどまった。県民投票の絶対得票率を持ち出すことは安倍政権の正統性を否定することになる
 
<こばやし・せつ> 1949年生まれ。慶応大卒。弁護士。2015年6月の衆院憲法審査会で、当時審議中だった安全保障関連法を違憲と指摘。現在も同法廃止を唱える。
 
■憲法の関連条文
 【一三条】
 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
 【九五条】
 一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。