日本ペンクラブは21日、自民党が参院選の公約に掲げる憲法96条の改定に反対する声明を発表しました。
声明は「政治的に強い力を持った者たちが一方的に憲法を変えることを可能にする今回の改変の動きは、多様な言論のなかから合意を作り上げていく主権在民の豊かな可能性をふさぎ、民主主義の根幹を危うくするもの」であり、「戦前戦中、活動停止に追い込まれた痛恨の歴史を持つ日本ペンクラブは、憲法第九十六条の改変に強く反対する」と述べています。
以下に時事通信の記事と日本ペンクラブの声明を紹介します。
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憲法96条改正に反対=ペンクラブ
時事通信 2013年6月21日
日本ペンクラブ(浅田次郎会長)は21日、自民党が参院選の公約に掲げる憲法96条の改正に反対する声明を発表した。
憲法改正の発議要件を衆参各議院の3分の2以上の賛成から過半数に緩めることは「多様な言論の中から合意を作り上げる主権在民の可能性をふさぎ、(国家権力を制限する)立憲主義の否定につながる。民主主義の根幹を危うくするものだ」と批判している。
記者会見した浅田会長は「改憲の是非以前に、手続きから変えてしまうことの無謀さに反対する。見過ごしてはいけない」と訴えた。
日本ペンクラブ声明 「憲法第九十六条改変に反対する」
いま政権与党と政界の一部には、日本国憲法第九十六条を改変し、憲法を改正しやすくしようという動きがある。私たち日本ペンクラブは、これが憲法と日本社会の根幹を揺るがす重大問題であると考え、強く反対する。日本国憲法制定の背後には、自由にものも言えず、時の強権と、強権が振りまく虚偽を疑うことすら許されないまま、悲惨な戦争へと突き進んでいった戦前戦中の歴史がある。国内外に甚大な被害をもたらしたこの苦い経験から、私たちは、国家権力を握った者たちを勝手に振る舞わせてはいけない、ということを学んだのではなかったか。
この教訓から、日本国憲法はその前文で主権在民を謳い、行政・立法・司法と、その立場に就いた者たちの恣意と専横を退けるとともに、平和の希求と人権尊重を定めた憲法に基づいた政治(立憲主義)が行われることを明確に求めている。第九十六条が憲法改正の要件として、衆参各議院の三分の二以上の賛成と、さらに国民投票による過半数の賛成を求めるという高いハードルを課しているのも、その重要な一環である。
ところが、いま見られる第九十六条改変の動きは、憲法改正を一般の法律と同じように各議院の半数の賛成によって発議できるようにし、憲法それ自体の内容を容易に変えられるようにするものである。さらにその先に、憲法の平和主義を変更し、言論・表現・結社の自由を制約することをも視野に入れている。
政治的に強い力を持った者たちが一方的に憲法を変えることを可能にする今回の改変の動きは、いかなる問題であれ、多様な言論のなかから合意を作り上げていく主権在民の豊かな可能性をふさぎ、立憲主義を否定することにつながると判断せざるを得ない。これは単なる手続きの問題ではなく、日本社会にようやく根づいた民主主義の根幹を危うくするものである。
戦前戦中、思想と言論の自由を奪われ、活動停止に追い込まれた痛恨の歴史を持つ日本ペンクラブは、憲法第九十六条の改変に強く反対する。
二〇一三年六月二十一日
一般社団法人日本ペンクラブ会長
浅田次郎