2013年6月22日土曜日

朝日新聞・沖縄タイムスが自民の公約を批判 +

 朝日新聞が「有権者を甘く見るな」と自民党の参院選の公約を批判しました。 曰く
  ・アベノミクスの先行きは不安なのに、威勢のいい数字を並べても実現の道筋が見えない。
  ・消費税率の引き上げに触れていない
  ・社会保障改革の内容を示していない
  ・先の総選挙で「原子力に依存しない経済・社会構造」を公約したのに半年で再稼動に転換した
  ・憲法改正や集団的自衛権行使などを正面に強く打ち出していない
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 そして、参院選が終わったら「白紙委任」を得たとばかり走り出すのではないかと。
 
 沖縄タイムスも同様に、「世論を二分する重要対立案件は控えめに公約に盛り込み、選挙の結果をみて本格的に取り組む、という二段構えの姿勢、二股こう薬」だとする社説を掲げました。

 以下に朝日新聞と沖縄タイムスの社説を紹介します。 
(+ 両社説ともTPP問題には触れていませんが、TPPに関しては、「守るべきは守り、攻めるべきは攻めることで、国益にかなう最善の道を追求する」とするだけで何を守るかは書いてありません、公約と同時に発表した総合政策集「Jファイル」には「農林水産分野の重要5品目などの聖域を確保する」「確保できない場合は、(交渉から)脱退も辞さないものとする」などとしましたが、その位置づけは高市氏曰く「公約とは分けて考えてほしい」ということで、正に語るに落ちています)
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【社説】 自民党の公約―有権者を甘くみるな
朝日新聞 2013年6月22日
 自民党が発表した参院選の公約の冒頭に、安倍首相はこうつづっている。 
 日本を覆っていた暗く重い空気は一変しました――。 
 本当にそうだろうか。 
 出足こそ好調だったアベノミクスだが、このところの市場乱調で先行きには不安が漂う。首相の認識は楽観的すぎる。 
 個別の政策目標でも、政府の成長戦略そのままの威勢のいい数字が並ぶ。 
 ▽今後3年間で設備投資を年間70兆円に回復 
 ▽17年度末までに約40万人の保育の受け皿を新たに確保 
 ▽20年に農林水産物・食品の輸出額を1兆円に 
 しかし、これまでにも指摘してきたようにいずれもハードルは高く、実現の道筋は描けていない。 
 一方で、来年4月の消費税率引き上げに一切触れていないのはどうしたことか。社会保障改革も「国民会議の結果を踏まえて必要な見直しをする」とするにとどめた。 
 ともに国民に負担を強いるテーマだ。選挙に不利になるから盛り込まなかったとすれば、これほど有権者をばかにした話はない。 
 09年の総選挙で、民主党は実現不能なバラ色のマニフェストを掲げ、破綻につながった。野党としてそれを批判してきた自民党が、いままた同じ轍を踏もうというのか。 
 看過できないのが、原発をめぐる政策転換だ。 
 先の総選挙で自民党は「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立をめざす」と公約していた。たった半年前のことである。 
 それが今回は「地元自治体の理解が得られるよう最大限の努力をする」と、休止中の原発の再稼働推進に踏み込んだ。 
 3・11から2年が過ぎ、安全より経済優先で理解が得られると思っているのか。首相は衆院選公約との整合性をきちんと説明する責任がある。 
 この参院選を機に、与党は衆参両院で過半数を得て「政治の安定」を実現しようとしている。そうなれば、今後の政策を進めるうえで与党の力は格段に強まる。 
 私たちが、自民党の公約に注目するのはそのためだ。 
 公約では、憲法改正や集団的自衛権行使など、いわゆる「安倍カラー」を強く打ち出してはいない。だが、参院選が終わったら「白紙委任」を得たとばかり走り出すようでは困る。 
 この公約には、そんな危うさがつきまとう。

社説】 [自民党参院選公約]普天間は二股こう薬か
沖縄タイムス 2013年6月22日
 自民党は20日、参院選公約を発表した。国内外から安倍政権の右傾化を懸念する声が上がっていることを念頭に、保守色の強い安倍カラーを抑え、国民の支持の高い経済政策「アベノミクス」を前面に押し出している。
 参議院で過半数を獲得し、国会の「ねじれ」を解消することを最優先にした公約である。世論を二分する重要対立案件は、控えめに公約に盛り込み、選挙の結果をみて、本格的に取り組む、という二段構えの姿勢がうかがえる。
 だが、政権党が中央と地方組織の政策のねじれを放置したまま選挙戦に突入するのは、有権者を欺く「二股こう薬」のようなものである。あってはならないことだ。
 米軍普天間飛行場の移設問題について参院選公約は、こんなふうに書いている。
 「抑止力の維持を図るとともに、沖縄をはじめとする地元の負担軽減を実現するため、『日米合意』に基づく普天間飛行場の名護市辺野古への移設を推進し、在日米軍再編を着実に進めます」

 これに対し、自民党県連は、「辺野古移設容認では選挙は戦えない」と、県外移設を堅持。5月27日に開いた県議団による議員総会で、「県外移設を求めて固定化阻止に取り組む」との地域公約(ローカルマニフェスト)を全会一致で承認している。
 自民公認・公明推薦で立候補する予定の安里政晃氏は、5月31日の出馬表明会見で、「ウチナーンチュの声を代弁し、県外を求めてまいりたい」と明言した。もはや後には引けない状態だ。
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 ねじれたまま選挙戦に突入したら、どういうことになるのか。自民党は有権者の立場にたって、ことの深刻さをよくよく考えてもらいたい。
 Aさんという有権者がいたとしよう。Aさんは候補者の主張を聞き、公約集を読み、「これなら支持できる」と投票前に考えをまとめた。ところが、安倍晋三首相をはじめ党幹部から聞こえてくるのは「辺野古移設推進」の声だけ。一体、誰を信じて投票すればいいのか。
 二股こう薬とは「自分の利益や都合だけを考え、状況によって態度や立場を変えること」(集英社国語辞典)である。昨年12月の衆院選後、自民党の当選組の中から、公然と公約撤回を主張する議員が現れ、有権者のひんしゅくを買った。今回、二股こう薬的な選挙公約に嫌気がさして投票を見あわせる有権者もいるのではないか。
 党中央と地方組織の政策の食い違いが投票率の低下を招くようなことがあれば、政権党の罪は大きい。統治能力の欠如を意味するからだ。
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 憲法改正に関して公約は、一番最後に取り上げ、「発議要件を『衆参それぞれの過半数』に緩和」することを明らかにしている。連立を組む公明党に配慮し、いかにも忍び足の風情だ。
 憲法96条の先行改正を明記していないのは、先行改正はしないという意味なのか、選挙結果次第では先行改正も辞さずという意味なのか。そこがあいまいだ。最重要課題があいまいでは困る。