先の米中首脳会談は米国から開催を提案し、中国側が「極めて迅速に」受け入れて実現したことが、ドニロン米大統領補佐官から明らかにされました。オバマ大統領が2日間ホワイトハウスを留守にしてまで米中会談に専念したことの背景を示すものです。
その会談で習主席が「尖閣は中国の核心的利益」(譲れない国益)と述べて、尖閣諸島への1日上陸、または3時間上陸でもいいから認めるように要求しました。
それに対してオバマ大統領は、尖閣諸島の施政権は日本が持っている現状を追認し、中国の要求する1日上陸などはさすがに認めなかったものの、「領有権の争いに対しては中立を保つ」と明言したと伝えられています。
また米国が中国にTPPへの参加をもちかけ、中国が参加を検討したいからと情報の提供を要求すると、既にTPPへの参加を表明している日本に対しては絶対に情報を開示しないにもかかわらず、米国はあっさりそれに応じたということです。
そもそも米国は当初TPPは中国に対する包囲網であるからと日本を勧誘した筈です。
その米国が中国を勧誘したうえに極秘とされている情報も提供するというわけで、日本にはいい面の皮です。
本来なら今こそTPP参加を取り消すいいチャンスなのですが、安倍首相にはそんな勇気はないことでしょう。
2月に行われた日米首脳会議は、当時安倍氏が年内12月に行いたいと懇願したのですが、大統領は忙しいからとはねつけて、昼食休みの時間で良いならと2月になってからようやく1時間の会談が実現したということです。その会談で安倍首相が見苦しいまでに「媚米」に徹し、TPP参加への熱意を示したのはご存知のとおりです。
それにしても米国の安倍首相の扱いは、その後に行われた韓国の朴大統領や習主席への厚遇とは月とスッポンの違いでした。クリントン大統領の「嫌日」ぶりは有名でしたが、オバマ大統領の「嫌安倍」ぶりも相当なものです。
東京新聞の「習主席、尖閣は核心的利益」の記事と併せて、「米中首脳会談に大騒ぎをする日本外交の自信のなさ」及び「米中関係を直視する勇気とそこからの出発」と題した天木直人氏の2つブログを紹介します。特に後者は「これをチャンスに日本はいまこそ自主、自立した外交を展開すべき時だ。そういう認識を新たにして、さらなる外交努力を始める時なのである」と胸のすくような主張を展開しています。
安倍首相が叫ぶ「戦後レジームからの脱却」は戦前の大日本帝国憲法への回帰願望だといわれています。いま必要なのはそうしたアナクロニズム(時代錯誤)からの脱却であり、戦後に端を発していまなお猖獗を極めている「対米従属」という不可解な「文化」からの脱却です。
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習主席、尖閣は「核心的利益」 米中首脳会談で
東京新聞2013年6月12日
中国の習近平国家主席が7日に米カリフォルニア州で行われた米中首脳会談で、オバマ大統領に対し、沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)は「中国固有の領土」と主張した上で、中国の譲れない国益を意味する「核心的利益」だとの認識を表明していたことが分かった。米中関係筋が11日、明らかにした。両国は会談後の説明でこの発言を公にしていなかった。
習氏は、オバマ氏との初の首脳会談で中国の強い姿勢を明確にすることで、米国が問題に関与しないようけん制するとともに、緊張緩和に向け米国が日本に譲歩を迫るよう促す狙いがあったとみられる。 (共同)
米中首脳会談に大騒ぎをする日本外交の自信のなさ
天木 直人2013年06月10日
これまでにも米中首脳会談はなんども行なわれている。しかし今度のオバマ・習近平会談ほど大騒ぎして報道されたことはあっただろうか。この大騒ぎこそ、日本は米国に見捨てられるのではないかという日本政府の自信のなさのあらわれである。 そしてそのような対米不信はまちがっていない。米国は中国にTPP参加をもちかけた。中国は検討したいから情報を提供してくれと言った。驚いたのは米国があっさりそれに応じたことだ。そう報じられている。
日本は国内の反対を押し切ってまでTPPに参加しようと米国に忠誠をつくしてきた。そのためにTPPに関する情報を得ようと必死だが米国は教えようとしない。今度の米中首脳会談の報道を見れば、日本が米国から見捨てられるのではないかと不安を覚えても無理はない。次は尖閣問題の番である (了)
米中関係を直視する勇気とそこからの出発
天木直人 2013年06月10日
共同通信が衝撃的なニュースを配信した。すなわち今回の米中首脳会談は米国から開催を提案し、中国側は「本当に極めて迅速に」受け入れていたことが8日分かったという。しかもそれをドニロン米大統領補佐官自らが明らかにしたというのだ。
このようなニュースを目にすると、あのTPPの中国参加も米国側が持ちかけたというニュースがやはり正しかったと思えてくる。
ただでさえ、「日本よりも中国を重視するのか」、という不信が募る中で、このようなニュースが流されると、日米同盟「命」の日本政府や外務官僚とそれを支持するメディアは、さぞかし失望することだろう。 そしてそれを打ち消そうと躍起になるだろう。
しかし、うろたえる事はない。むしろこれをチャンスに日本はいまこそ自主、自立した外交を展開すべき時だ。そういう認識を新たにして、さらなる外交努力を始める時なのである。
米中両国が蜜月に入ったと考えるのは間違いである。世界覇権を維持する米国と、それに挑戦する中国が、真の意味で利害が一致する事はあり得ない。それどころか米中がこのまま世界覇権を競い合うようなら、最後は衝突するだろう。
そんな米国と中国は、今後も協調と敵対が、消えては浮かぶ複雑な関係で推移していく。
そのような米中関係に日本はいたずらに一喜一憂すべきではない。
米国と中国のどちらか一方に与するなどという外交を繰り返すべきではない。
そろそろ日本政府は国民のために自主・自立した外交を展開すべき時だ。
それを日本の指導者も官僚もマスコミも気づく時である・・・
(この続きはきょうの「天木直人のメールマガジン」で書いています)