2013年6月29日土曜日

東京新聞が「参議院考」を掲載

 改憲を目指す安倍首相「『分の』を次回の参院選で取るのは不可能だ」訪問先のポーランドで16に語ったそうです。自民、みんな維新の会のを合わせて100議席を獲得するのは無理だと判断しているという意味です。

 「しかし・・・」首相にはその言葉の裏に、「民主党内には96条の改憲発議要件の緩和に賛成する議員は少なくないし、公明党も国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の三原則以外では改憲に一定の理解を示し始めている」、「だから・・・」という思いがあった筈です。
 今回の参院選で「3分の2」に達しなくても、もしも改憲勢力がまた躍進すれば3年後の参院選で念願の「3分の2」を達成する可能性は非常に大きくなります。

 国防軍の設置を「3年間だけ遅らせた」というような結果であっては、滅亡への歩みにさしたる変化はありません。  ・・・・・・・・・・・・

 東京新聞の「参議院考」を紹介します。
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<参議院考> 改憲勢力発議目指すなら 改選8割超獲得必要
東京新聞  2013年6月28日
 改憲の是非が問われる今回の参院選。与党の自民、公明両党が参院で過半数を確保し「ねじれ」を解消できるかという勝敗ライン以上に、自民、みんな、日本維新の会の三党からなる「改憲勢力」の議席数が重大な焦点になる。

 参院選で候補を擁立しない新党改革の非改選議員を加え、三党が参院で改憲発議に必要な「三分の二」以上の勢力を占めるには、改選議席(百二十一)の八割以上の百議席を獲得しなければいけない。だが、改選議席の三分の二なら八十一議席。改憲勢力が今回の参院選で八十一を確保すれば、三年後の改選で全体の三分の二を取るハードルはグッと低くなり、改憲派が勢いづきかねない。
 改憲勢力が三分の二に達しなくても、一定の議席数を確保すれば、安倍晋三首相が改憲の発議要件を定めた九六条の緩和を目指し、動きを具体化させる可能性がある。

 改憲勢力以外でも、民主党内には九六条の改憲発議要件の緩和に賛成する議員は少なくない公明党も国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の三原則以外では改憲に一定の理解を示し始めているためだ。
 首相は「選挙後に多数派を取るよう努力していく。民主党の中にも条文によっては賛成している(勢力がいる)」と強調。公明党の考えについて、今後は議論していくことも表明している。
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参議院考 憲法の命運握る
 「『三分の二』を一回の参院選で取るのは不可能だ」
 改憲を目指す首相の安倍晋三は十六日、訪問先のポーランドで、夏の参院選で改憲の発議に必要な三分の二以上の議席を「改憲勢力」で獲得する可能性はないと断言した
 「改憲勢力」とは、改憲に前向きな自民、日本維新の会、みんなの三党と新党改革。衆院では三分の二を超えている。
 だが、安倍は参院選を戦う前から三分の二は不可能と言った。衆院にはない「三年ごとの半数改選」という参院独自の仕組みがあり、一気に勢力を伸ばすのは難しいからだ。
 半数改選は憲法に明記されている。衆院選は一回の選挙で、全議席が時の民意を反映する。前後で政権の枠組みが大きく変わることもある。逆に、憲法は参院に「激変緩和」の機能を与えた。
 消費税導入が争点となった一九八九年参院選。消費税廃止を掲げた社会党が躍進し、自民党は結党以来初めて参院で過半数を割った。首相の宇野宗佑は退陣に追い込まれた。
 この選挙で社会党から初当選した元民主党参院議員会長の角田義一(76)は「参院選には、その時の国の課題に対する国民投票的な要素がある」と語る。
 ただ、政権選択の衆院選と違うため、自民党は政権にとどまり、政策の大転換にはつながらなかった。参院では、野党提出の消費税廃止法案が可決されたが、衆院で審議されず廃案になった。
 参院の半数改選は一定程度の「猶予」を政治に与えているとみることができる。
 だが、今回の参院選では「猶予」を奪われかねない争点がある。憲法だ。
 原発や消費税増税、環太平洋連携協定(TPP)参加問題は、立法が必要になっても、与党が衆院で再可決できる三分の二を持っているため、極論すれば参院選の結果にかかわらず与党の思い通りになる。対する憲法は、護憲勢力が三分の一を堅持すれば改憲を阻止できるが、改憲勢力が三分の二を確保すれば、初めて衆参両院で改憲派が発議要件である「総議員の三分の二以上の賛成」に達してしまう。
 改憲勢力が参院選で、非改選議席と合わせて一回で三分の二を取るには改選百二十一のうち百議席が必要。安倍は不可能と言うが、自民党は先の東京都議選で候補者全員が当選する圧勝劇を演じた。参院選で再現がないとは限らない。
 半数改選の「猶予」を考えれば、改選の三分の二である「八十一」という数字も意味を持ってくる。今回八十一以上を獲得すれば、三年後に全議席の三分の二を取るハードルは下がるからだ。
 安倍の祖父である岸信介は一九五八年、保守合同による自民党誕生後の衆院選で、首相として初めて改憲を争点に掲げた。結果は過半数をはるかに超える圧勝だったものの、三分の二には届かず、改憲は遠のいた。

 安倍は祖父の背中を追い、三年後も視野に改憲に突き進もうとしている。 (宮尾幹成、敬称略)