2013年6月8日土曜日

今秋にも秘密保全法の成立を目指す と

 菅官房長官は7日の記者会見で、特定秘密保全法案について、日本版NSC(国家安全保障会議)創設法案と合わせ、秋の臨時国会で成立させたい考えを示しました。
 秘密保全法は大変に問題のある法律で、民主政権時代にも「公にする国民の間に混乱を不当に生じさせ法案化作業に支障がある」からという驚くべき理由で内容を明らかにしませんでした。
 答申案等から推測される秘密保全法は、秘密保護の対象(1)防衛(2)外交(3)公共の安全と秩序維持 のうちから行政機関が任意に指定することができるといわれています。
 この(3)項により、行政にとって都合の悪いこと、例えば放射能情報、TPP交渉などがすべて秘密事項に指定出来ることになり、国民はそれらについて知ることが出来なくなります。しかも罰則規定が厳しくなるので、国民の知る権利、表現の自由、学問研究の自由は制限され、議論自体が出来なくなってしまいます
※ 2012年11月7日「秘密保全法案が動き出そうとしています

 1985年に国会に提出され「国家機密法」多くの国民の反対により廃案になりましたが、その後マスメディアの姿勢は大きく変わりすっかり政権寄りになりました。
 秘密保全法の法制化反対の運動は、国民の知る権利、表現の自由、学問研究の自由を守るためにも、今後広範に展開されて欲しいものです。

 以下に官房長官発言とNSC関連記事、そして昨年の日弁連反対決議を紹介します。
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秘密保全法、秋の成立目指す=菅官房長官
時事通信 2013/06/07
 菅義偉官房長官は7日午後の記者会見で、国家機密を漏えいした公務員らに厳罰を科す特定秘密保全法案について、外交・安全保障政策の司令塔となる日本版NSC(国家安全保障会議)創設法案と合わせ、秋の臨時国会での成立を目指す考えを示した。
 菅長官は「外国との情報共有は(秘密が)保全されるという前提の下で行われる。いまだに秘密保全法を整備していないのは非常に問題だ」と指摘。その上で、秘密保全法案の扱いに関し「NSC法案とそごを来さないよう取り組みたい」と述べ、NSC法案と同じタイミングで成立させるのが望ましいとの認識を示した。 
 秘密保全法案について政府は、参院選後に国会に提出する方針。菅長官は「国民の知る権利や取材の自由を十分尊重しながら(法案内容の)検討を進めている。速やかに取りまとめたい」と語った。

日本版NSC:設置関連法案、閣議決定
毎日新聞 2013年06月07日
 政府は7日午前の閣議で、外交・防衛政策の司令塔となる国家安全保障会議(日本版NSC)設置関連法案を決定した。首相(議長)と官房長官、外相、防衛相の4者会合で政策の基本方針を定期的に審議するほか、武力攻撃事態や周辺事態などに対処するため、関係閣僚による緊急事態会合を新設する。政府は7日、同法案を今国会に提出するが、26日に会期末を迎えるため、成立は秋の臨時国会以降になる見通し。

 関連法案は、現行の安全保障会議設置法や内閣法などを改正し、NSCの体制を整備する内容。第1次安倍内閣が2007年、国会に提出した設置法案(審議未了で廃案)に比べて情報集約機能を強化したのが特徴で、NSCは関係省庁に対し、国家安全保障に関する資料や情報の提供を求めることができる。
 国家安全保障担当の首相補佐官を常設し、官房副長官とともにNSC会合への出席を認める。出席者には事務方を含めて守秘義務を課す。守秘義務に反した場合の罰則規定については別途、秘密保全法案を作り、次期国会に提出する方向で準備している。
 また、NSCの事務局として内閣官房に国家安全保障局を設け、局長に特別職の国家公務員を起用する。同局にはNSCに寄せられる資料や情報を総合・整理する機能を持たせ、事実上、情報集約の中心的な役割を担う。【中田卓二】

秘密保全法制に反対する決議 (日弁連)

政府が国会への提出を目指す秘密保全法案は、「特別秘密」という曖昧広範な概念を設定し、それを取り扱う者を管理する適性評価制度を導入すること及び刑罰を強化すること等によってそれを保護しようとするものである。
しかし、同法案を中核とする秘密保全法制が、国民主権、民主主義及び知る権利をはじめとする国民の諸権利に重大かつ深刻な影響を与えることは明らかである。その具体的理由は、以下のとおりである。

まず、秘密保全法制検討のきっかけとなったといわれる尖閣諸島沖漁船衝突映像の流出は、国家秘密の流出というべき事案とは到底いえないものである。また、立法事実とされている他の事案については、発覚直後に原因の解明・分析が行われ、再発防止のための具体的な対策が立てられているため、刑罰強化、適性評価制度等について立法を必要とする理由を欠いているといわざるを得ない。
さらに、「特別秘密」の概念は曖昧広範で、しかも、それを作成・取得した行政機関が「特別秘密」の指定を行うため、特に政府の違法行為、国民への虚偽説明が判明するような情報が「特別秘密」として国民の目から恣意的に隠される危険性が非常に高い。その上、「特別秘密」の概念が不明確であるため、刑罰規定の構成要件も不明確であり、過失、独立教唆、煽動、共謀まで処罰されるのであるから、処罰範囲を想定することは著しく困難であり、罪刑法定主義に反するおそれがある。
一方で、取材及び報道の自由に対する影響も大きく、取材等により「特別秘密」を入手しようとする行為も「特定取得行為」、「漏えい」の教唆として処罰され得る。不明確な「特別秘密」の「漏えい」や取得の処罰規定は、とりわけ内部告発者、報道機関等の取材者に萎縮効果を与え、国民の知る権利を著しく損なう。
また、適性評価制度は、プライバシー等の機微情報を調査するところ、それに見合う効果も期待できず、プライバシーを侵害する可能性が高い。

秘密保全法制は、このように問題を有しており、国民的な議論が必要とされるにもかかわらず、検討過程は録音も議事録もなく、意図的な情報隠しがなされている。その提案過程及び法案検討過程は情報公開を徹底し、当該法制の立法の是非及び内容を誰もが検討し、適宜、的確な意見をいえるようにすべきである。今、我が国において速やかに実現されるべきは、情報公開の一層の推進と情報公開法の早期改正である。秘密保全法制は、あるべき情報公開の流れに反し、我が国の民主主義を著しく後退させるものであることが明らかである。
よって、当連合会は秘密保全法案の国会提出に反対し、ここに決議する。
2012年(平成24年)5月25日
日本弁護士連合会

(秘密保全法の問題点は上記の決議に続く「提案理由」で詳細に述べられていますが、長文のため割愛します。下記URLにアクセスしてご覧ください)