FB = フェイスブック
毎日新聞が20日付で、安倍首相が元官僚の田中均氏を名指しで批判した一件と、高市氏が「福島原発事故で、死亡者が出ている状況ではない」などと講演で語ったことについて批判する社説を掲げました。高市氏は首相と価値観が一致しているために政調会長に抜擢されたといわれています。
朝日新聞も首相がFBで田中氏に対して反論したことについて18日付の社説で批判しました。
この程度の比較的些細な事柄ではマスメディアもさすがに首相を批判しますが、こと官僚が絡む基本方針的なものになると、マスメディアは権力側を一切批判しません。
この程度の比較的些細な事柄ではマスメディアもさすがに首相を批判しますが、こと官僚が絡む基本方針的なものになると、マスメディアは権力側を一切批判しません。
「社会の木鐸」であるならば、天下国家の正しいあり方について堂々と論じ政府を批判しなければならない筈ですが・・・
それにしても安倍政権が誕生して以降のメディアの沈黙はまことに不自然です。戦時中、政権に盲目的に従った大政翼賛会的な姿勢を終戦後に自己批判した、あの新聞の声明は一体何だったのでしょうか。「進駐軍」の前ではそうしたポーズを取ることが有利だと判断したからだったのか? このところの新聞界(実際にはTV界をも支配)の挙動を見ているとそんな気になります。
安倍首相の批判者に対する異常な対応については、既に本ブログや、「原発をなくす湯沢の会」のブログ( http://yuzawagenpatu.blogspot.jp/)でも取り上げましたが、比較的些細なこととはいえマスメディアが首相を批判する社説を掲げるのは珍しいことなので、もういちど取り上げることにします。
高市氏の「死亡者が出ていない」の発言に対しては、福島民友ニュースが「謝罪ではすまない。被災地の苦しい思いを知らない政治家には辞めてもらいたい」という県民の怒りの声を伝えています。いかにも考えが浅く言葉も軽い政治家たちがのさばり、碌に出処進退も弁えていないという実情には寒々とするものがあります。
以下に毎日新聞の社説と福島民友ニュースの記事を紹介します。
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【社説】 首相らの言葉 著しく思慮欠く罪深さ
毎日新聞 2013年06月20日
どうしてここまで思慮に欠ける言葉が政治家から飛び出すのだろう。最近、その傾向は一段と顕著になっていると思われる。
まず指摘しなくてはならないのは安倍晋三首相がインターネットの「フェイスブック」で、2002年の小泉純一郎首相(当時)の訪朝にかかわった田中均元外務審議官を名指しで批判した一件である。
きっかけは田中氏が毎日新聞のインタビューで「国際会議などで日本が極端な右傾化をしているという声が聞こえる」と懸念を示したことだ。これに対し、安倍首相は自らのフェイスブックで、なぜか右傾化問題には直接触れずに、官房副長官だった11年前、拉致被害者5人を北朝鮮側の要求に沿って北朝鮮に戻すべきだとする田中氏の主張を自らが覆したとの話を持ち出して、当時の田中氏の主張について「外交官として決定的な判断ミス」と批判した。
当時、政権内で激しい対立があったのは事実だ。しかし、首相が「彼に外交を語る資格はない」と元官僚をばっさりと切り捨てるのは、やはり個人攻撃というべきで最高権力者の発言として自制心を欠いている。
小泉訪朝後、田中氏は「売国奴」呼ばわりされ、自宅に爆発物が仕掛けられる事件も起きた。単純に敵と味方に色分けし、敵と見なせば激しくののしるような言葉がネット上ではますます横行している。今回の首相の発言がこうしたネットなどでの傾向をさらに助長しないか心配だ。
自民党の若手、小泉進次郎氏が「首相は何をやっても批判はある。宿命と思いながら結果を出すことに専念した方がいい」と首相をいさめている。その通りだ。異論に対して即座にネットで一方的に攻撃されるのでは、今後、首相に誰も意見が言えなくなる。批判を受け止める度量を持つのが真に強い指導者のはずだ。
19日になって謝罪したものの、高市早苗自民党政調会長が「福島第1原発で事故が起きたが、死亡者が出ている状況ではない。安全性を確保しながら(原発を)活用するしかない」と講演で語った発言も驚く。
東日本大震災を契機に体調不良などで亡くなり、自治体が「震災関連死」と認定した人は福島県が圧倒的に多い。ふるさとを追われ、人生が大きく変わってしまった人たちは数知れない。そんな被災者たちがどんな思いで発言を受け止めるか。高市氏はまったく考えもせずに軽々しく口にしたとしか思えない。
攻撃的な言葉を歓迎する風潮が今の社会にある。本音をあけすけに語るのが大事だという人も多い。だが人には、とりわけ政治家には越えてはいけない一線がある。中でも他者を思いやるのは最低限のルールだ。
高市氏が発言撤回、陳謝 県民「謝罪で済まない」
福島民友ニュース 2013年6月20日
自民党の高市早苗政調会長は19日、東京電力福島第1原発事故で死者が出ていないとして原発再稼働に意欲を示した自身の発言について「全てを撤回し、おわび申し上げる」と陳謝した。
被災者は厄介者か 謝罪では済まない/県民の声
自民党の高市早苗政調会長が東京電力福島第1原発事故で死者が出ていないと発言した問題で、19日の発言撤回、陳謝を受けてもなお、原発事故の影響に苦しむ県民の憤りは収まらなかった。
郡山市の仮設住宅に避難する双葉町の小川貴永さん(42)は「震災関連死が交通事故より高い確率で相次いでいる現実に対し、あまりに非人道的な発言。国民の安全や命より、経済効率を優先する国の姿勢が見えた」と断じた。その上で「原発事故の原因究明もないまま、国内原発の再稼働を探り、海外に原発を売るため、国にとっては原発事故の被災者がもはや厄介者ということなのか」と政府・与党の対応に疑念を抱いた様子だ。
自宅の避難指示が解けず、仮設住宅で暮らす川内村の小野悦子さん(71)は「自宅を目の前にして今も帰れない人たちもいる。あまりにも配慮に欠けた発言ではなかったか」と話した。
また政治家の資質を問う意見も。いわき市の管野博さん(57)は「政治家の発言の重みを知っているのか。謝れば済む問題ではない」と指摘。会津若松市の仮設住宅に避難する大熊町の高瀬重子さん(65)は「双葉病院の患者は原発事故の避難の中で50人も亡くなった。被災地の苦しい思いを知らない政治家には辞めてもらいたい」と語気を強めた。