財政破綻寸前の貧困大国といわれるアメリカの全米市長会議は24日、「核兵器を廃絶し、軍事費を削減して貧困の是正を」とする決議を採択し、大統領に要求することになりました。まことに合理的な要求です。
名実ともに超大国であったアメリカはまず長引くベトナム戦争の過程でドルを大幅に消費したために、ドルが「金兌換券」であることを維持できなくなりました。
ドルが文字どおりの「紙幣」になった後、レーガノミックスとそれ以降の新自由主義によって中間層は崩壊し、貧困層と富裕層の二極化が進みました。
そして社会保障政策も削減されました。
いまではアメリカは貧困大国といわれ、あまりにも高騰した医療費のために貧乏人は正規の医療を受けることができずに命を落とし、大学を出ても中々就職できない若者は、学資ローンを返済するために軍隊に入隊するしかなくなりました。
貧困をベースにした入隊システムの構築といわれるものです。
第二次世界大戦後の「超大国 アメリカ」の面影はいまはありません。
アメリカが凋落した原因は一にかかって軍事費の膨大化です。減らされたとはいえ昨年度の軍事費は実に68兆円(簡便のために1ドル100円で換算)で、今後も5年間で核兵器の研究・製造・維持の予算を23%増やすということです。これではいくらなんでも財政は破綻します。
その一方で「予算の自動削減」のシステムにより、住宅・教育などの事業や低・中所得層への援助は削られ、貧困化はさらに増大します。
ところでこれから国防軍を持とうと盛んに主張する安倍首相には、そうしたアメリカの没落の跡を辿ろうとしていることの自覚はあるのでしょうか。
何か物に憑かれたようになっている安倍氏にはその自覚はないにしても、、それが破滅への道であることは明らかです。
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核兵器廃絶、軍事費削減し貧困是正を
全米市長会議が決議 大統領に要求
しんぶん赤旗 2013年6月26日
【ラスベガス=山崎伸治】米国で人口3万人以上の都市の市長が参加する「全米市長会議」は24日、当地で開いた第81回年次総会で、全世界の核兵器を廃絶し、軍事費を国民の必要とする分野に回すために指導性を発揮するようオバマ米大統領に求める決議を採択しました。
決議案はオハイオ州アクロンのプラスケリック市長(平和市長会議副議長)が30人の市長の賛同を得て提出。同趣旨の決議は2010年以来、毎年採択されています。
今年の決議は、国連総会が今年9月に初めて核軍縮問題の首脳級会合を開くこと、3月にオスロで核兵器の非人道性に関する国際会議が開かれたことなど、核軍縮をめぐる国際的な動きを評価。これに背を向ける米国など核兵器保有5大国を批判しています。
米国が12年に6820億ドルの軍事費を使い、今後5年間で核兵器の研究・製造・維持の予算を23%増やす一方、国内では「予算の自動削減」で住宅・教育などの事業や低・中所得層への援助が削られていると指摘しています。
その上で(1)オバマ大統領が9月の国連総会で「核のない世界」実現の決意を再表明する(2)米政府が多国間核軍縮交渉開始に向けた国連の作業部会(8月)、核兵器の非人道性に関する国際会議(14年、メキシコ)に参加する(3)核兵器改良の予算を大幅に削減する(4)軍事費を削減し、国内の貧困と格差の是正に回す―ことなどを決議しています。
核廃絶・軍事予算削減に関する全米市長会議の決議 (要旨)
【ラスベガス=山崎伸治】全米市長会議が24日、年次総会で採択した核廃絶・軍事予算削減に関する決議の要旨は次の通り。
オバマ米大統領は2009年4月、プラハで「核兵器のない世界を追求する意志を表明する」と宣言した。
国連総会は「核兵器のない世界」に向けた多国間核軍縮交渉を提案する作業部会を設置し、今年9月26日に国連総会として初めて核軍縮を主題に首脳級会合を予定している。
ノルウェー政府が今年3月にオスロで開いた核兵器の非人道性に関する会議には127カ国と国連、赤十字国際委員会、平和市長会議が参加した。
全米市長会議は、国連の作業部会にも、オスロ会議にも、米国など国連安全保障理事会の5常任理事国が参加していないことに深い憂慮を表明する。
推定で1万7300発の核兵器が存在し、その94%は米国とロシアが保有している。核兵器の先制使用の脅迫は、両国の国家安全保障政策の中心であり、中東や南東アジア、朝鮮半島での核をめぐる緊張は、核戦争の可能性が現在もあることを想起させる。
オバマ政権は2014会計年度予算で、エネルギー省の核兵器事業に過去最高の78億7000万ドルを要求した。国防総省は核兵器運搬手段の維持・改良に120億ドルの追加を要求した。同政権の予算要求では核兵器の研究・製造・維持の予算が今後5年間に23%増となっている。
米国は12年に6820億ドルを軍事費に使った。米国は長い不況から抜けようとしていたが、今年3月に発動した予算の自動削減で都市の経済回復が危ぶまれている。開発支援や住宅・教育支援が削られ、地方自治体や非営利団体は職員を解雇したり、低・中所得層のための事業を縮小したりしている。
全米市長会議はオバマ大統領に対し、今年9月の国連総会の首脳級会合で「核のない世界」に向けた決意を再表明し、国連事務総長の「5項目提案」を支持するよう求める。
米政府に対し、8月に開かれる国連の作業部会、14年にメキシコで開かれる核兵器の非人道性に関する国際会議に参加するよう求める。
大統領と議会に対し、核兵器改良の予算を削減し、それを都市が緊急に必要としているものに充てるよう求める。
軍事費を削減し、国内の貧困と格差の是正、社会的なセーフティーネットの修復、雇用の創出、インフラ整備、地方自治体への支援を行うよう求める。