国連安保理では、米英を除いてガザに悲劇を止めさせようとする真剣で合理的な議論が行われ(⇒国連安保理公開会合 ガザ停戦を求める声 イスラエル入植地拡大批判も)、アラブ首長国連邦(UAE)が提出した「人道支援拡大を目指す決議案」の採決が20日(日本時間)の午後に予定されていました。
ところがイスラエルを擁護する米国が
▽「敵対行為の停止」という表現や
▽すべての支援物資の監視を国連が行うとすること
に難色を示し採決の延期を求め、22日に、アメリカがUAEとまとめた新たな修正決議案を示すと、今度は逆に各国から本国との調整が必要だと反発が相次ぎました。
結局23日(同前)未明に緊急会合が開かれ、冒頭ロシアは決議案のさらなる修正を求めましたが米国が拒否権を行使して否決されたのちに、修正案が米ロが棄権する中でようやく採択されました。
米国の横やりで大いに歪められた決議についてハマスは、「不十分で、イスラエル軍という『テロ製造機』が作り出したガザ地区の壊滅的な状況に必要なことを満たしていない。とりわけガザ地区のパレスチナ人に対する大量虐殺のような戦争を止めるための国際的な決意が含まれていない」とした上で、米国がイスラエルのために決議を骨抜きにしたと批判しました。極めて当然の主張です。
NHKの記事を紹介します。
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国連安保理 ガザ地区への人道支援拡大決議案を採択 米ロが棄権
NHK NEWS WEB 2023年12月23日
国連安全保障理事会でパレスチナのガザ地区への人道支援を拡大するための決議案の採決が行われ、15か国のうち日本やイギリス、フランスなど13か国が賛成、アメリカとロシアが棄権し、決議案は採択されました。イスラエル軍とイスラム組織ハマスの軍事衝突が始まって以降、国連安保理で事態打開を目指す決議が採択されたのは2回目です。
国連安保理では22日、日本時間の23日未明に緊急会合が開かれました。
安保理では、ガザ地区への人道支援を拡大するための決議案をめぐり、各国が鋭く対立して採決が4日連続で延期される異例の事態となっていましたが、UAE=アラブ首長国連邦とアメリカが決議案をとりまとめ、提出しました。
決議案は、急速に悪化しているガザ地区の人道状況に深い懸念を示した上で、人道支援を大規模に増やすために敵対行為の停止に向けた条件をつくるよう求めているほか、ガザ地区に搬入される支援物資の監視や調整などを行う国連調整官を任命するよう求めています。
会合でははじめに、ロシアが決議案のさらなる修正を求め、採決が行われましたが、アメリカが拒否権を行使してロシアの提案は否決されました。
その後、決議案の採決が行われ、15か国のうち日本やイギリス、フランスや中国など13か国が賛成、アメリカとロシアが棄権し、決議案は採択されました。
イスラエル軍とイスラム組織ハマスの軍事衝突が始まって以降、国連安保理で事態打開を目指す決議が採択されたのは、11月15日に続き2回目で、ガザ地区で民間人の犠牲が増え続けるなか、安保理として人道状況の改善に取り組むようイスラエルに迫った形です。一方、決議が採択された後、イスラエルの国連次席大使は「安保理はまずテロ組織の脅威を取り除くことに取り組むべきだ。ハマスの能力を排除するというわれわれの使命は変わらない」などと主張していて、今回の決議が事態の打開につながるかどうかは不透明です。
アメリカ国連大使 採択歓迎もイスラエル擁護の姿勢
アメリカは、決議案の修正が必要だとして採決の延期を繰り返し求めながらUAEとの間で決議案をとりまとめ、採決では、拒否権を行使せず、棄権にまわりました。
拒否権を行使しないことで採択を容認した形です。
決議が採択されたあと、トーマスグリーンフィールド国連大使は「この人道危機について安保理が一致して発信したことは喜ばしいが、ハマスのテロ攻撃を非難できなかったことには、アメリカは深く失望している。ハマスは恒久的な和平に関心がない。だからこそ、国民をテロ行為から守るイスラエルの権利をアメリカは支持する」と述べ、決議の採択を歓迎しながらも、イスラエルを擁護する姿勢を改めて示しました。
イスラエル「決議を実行に移すよう呼びかける」
国連安全保障理事会でパレスチナのガザ地区への人道支援を拡大するための決議案が採択されたことを受けてイスラエル軍のハガリ報道官は22日、記者会見で「決議はハマスに捕らえられた人質について、無条件かつ即時の解放や必要な医療を提供するための人道的なアクセスを認めることを要求している。私たちは国際社会や国際機関に対し、この決議を実行に移すよう呼びかける」と述べました。
ハマス「不十分だ 戦争止めるための決意含まれていない」
一方、イスラム組織ハマスは決議について「不十分で、イスラエル軍という『テロ製造機』が作り出したガザ地区の壊滅的な状況に必要なことを満たしていない。とりわけガザ地区のパレスチナ人に対する大量虐殺のような戦争を止めるための国際的な決意が含まれていない」としたうえでアメリカがイスラエルのために決議を骨抜きにしたと批判しました。
外務省談話「人質解放や人道支援拡大に資すると期待」
外務省の小林外務報道官は、談話を発表しました。
この中では「国連安全保障理事会でパレスチナのガザ地区への人道支援を拡大するための決議が採択されたことを歓迎する。わが国は、決議が人質の即時・無条件の解放や人道支援の拡大に資することが期待されることなどを総合的に判断し、賛成票を投じた。すべての当事者が決議に基づき誠実に行動することを強く要請するとともに、人道状況の改善につながることを期待する」としています。
その上で「わが国は引き続き関係国や関係機関と緊密に意思疎通を行い、事態の早期沈静化に向けた外交努力を粘り強く積極的に続ける」としています。