2023年12月2日土曜日

生活保護減額訴訟で国に賠償命令 名古屋高裁 初の判断(しんぶん赤旗)

 生活扶助制度」、国民の「生存権」を保証した日本国憲法
 25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
  2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び
 進に努めなければならない。
を具体化した制度で、憲法によって保障された国民の権利であり、国家の義務です。
 ところが国は13~15年に、生活保護費の基になる「生活扶助」の基準額を平均で6・5%、最大で10%引き下げました。この見直しで、厚労省は独自の物価指数を使い、直前の4年間に物価が478%下落したと算出しましたが、これは物価動向の指標となる総務省の消費者物価指数同時期でマイナス235%とした値のほぼ2倍でした(指数算出の対象項目に、生活保護世帯の支出が一般世帯よりはるかに少ないパソコンやテレビの購入費を残すなどもまし)。

 愛知県内の生活保護利用者13人が国や名古屋市など3市を相手取り生活保護基準引き下げ処分の取り消しを求めた「新生存権裁判」の控訴審判決が30日、名古屋高裁でありました。同高裁は一審判決を退け、引き下げ処分取り消しと、一連の訴訟では初めて、国にそれぞれ1万円の慰謝料を支払うよう国家賠償を命じました。

 生活保護費減額を違憲とした同種裁判では、これまでに地裁で22件の判決があり、受給者側の12勝10敗ですが、そのうち直近の10件では9勝1敗でした。また控訴審2件の判決では、大阪高裁の受給者側敗訴から一転、今回は原告の勝訴となり、1人当り1万円と僅少ですが国家賠償額も認められました。
 基準額は原則5年ごとに見直されるもので、その後は厚労省の指数は使われていません。今年の見直しでは物価高反映して減額は見送られ最大で11%増額となりました。
 しんぶん赤旗とNHKの記事を紹介します。
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生活保護減額 国に賠償命令 名古屋高裁 初の判断
                      しんぶん赤旗 2023年12月1日
 愛知県内の生活保護利用者13人が国や名古屋市など3市を相手取り生活保護基準引き下げ処分の取り消しを求めた「新生存権裁判」(いのちのとりで裁判)の控訴審判決が30日、名古屋高裁でありました。長谷川恭弘裁判長は原告が敗訴した一審判決を退け、引き下げ処分取り消しと、一連の訴訟では初めて、国にそれぞれ1万円の慰謝料を支払うよう国家賠償を命じました

 長谷川裁判長は、国が引き下げ(13~15年)の根拠とした厚労省の統計「生活扶助相当CPI(消費者物価指数)」について、「学術的な裏付けや論理的整合性を欠いた独自の指数」と断じ、「引き下げ処分は生活保護法に違反するだけでなく、厚労大臣に重大な過失がある」と判断。「受給者は余裕のない生活を強いられてきた」として国家賠償責任を認めました。
 控訴審判決は原告が逆転敗訴した大阪高裁(4月)に続き2件目。全国29地裁で同様の訴訟があり、国の賠償責任を認めたのは初めて
 算定基準となった08年~11年の「物価下落率」は、厚労省の統計では4・78%ですが、総務省が出す一般的な統計では2・35%であり、倍以上の差があります。
 原告は「恣意(しい)的な計算方法を用いて、物価指数が引き下げられた。『物価偽装』そのものだ」と主張し、憲法25条や生活保護法に違反すると訴えてきました。控訴審では国から反論はありませんでした。

 裁判所前で「完全勝訴」が掲げられると、喜びの声が沸きあがりました。報告集会で原告は「10年に及ぶたたかいだった。涙が出るほどうれしい」、「地裁判決でがくぜんとなり、今日までひどい思いをしてきた。やっと報われた。本当にありがとうございました」と謝意を述べました。
 内河惠一弁護団長は「慰謝料まで認められ、心を打つ人間らしい判決。この判決を現実にするため、たたかいを続けていく」と話しました。


生活保護費引き下げで国に賠償命令 名古屋高裁 全国初
                    NHK NEWS WEB 2023年11月30日
生活保護費を2013年から段階的に引き下げられ、最低限度に満たない生活状況を強いられているなどとして、愛知県内の受給者が国や自治体を訴えた裁判で、名古屋高等裁判所は引き下げを取り消すとともに、国に賠償を命じる判決を言い渡しました。原告の弁護団によりますと、同様の集団訴訟で国に賠償を命じた判決は初めてです。

生活保護の支給額について国は、当時の物価の下落などを反映する形で、2013年から2015年にかけて最大で10%引き下げました。
これについて、愛知県内の受給者13人が最低限度に満たない生活状況を強いられているなどとして、国に賠償を求めるとともに、自治体が行った支給額の引き下げを取り消すよう求め、3年前、1審の名古屋地方裁判所は「国の判断が違法だったとは言えない」として訴えを退けました。
30日の2審の判決で名古屋高等裁判所の長谷川恭弘裁判長は「国は支給額を引き下げる改定の際、学術的な裏付けや論理的な整合性を欠いた、厚生労働省独自の指数を用いて物価の下落率を算定するなどしており、厚生労働大臣の裁量権の範囲を逸脱していることは明らかで、生活保護法に違反し、違法だ」などと指摘しました。
そのうえで、「違法な改定を行った厚生労働大臣には重大な過失がある。過去に例のない大幅な生活扶助基準の引き下げで、影響は生活保護受給者にとって非常に重大であり、原告らはもともと余裕のある生活ではなかったところを、支給額の引き下げ以降、9年以上にわたり、さらに余裕のない生活を強いられ、引き下げを取り消しても精神的苦痛はなお残る」として、引き下げを取り消すとともに、国に対し、原告13人全員に慰謝料として1人当たり1万円の賠償を命じました
原告の弁護団によりますと、同様の集団訴訟は全国29か所で起こされていますが、国に賠償を命じた判決は初めてです。

原告女性「この判決を機に制度を元に戻して」
(中 略)
支援者たちから喜びの声
(中 略)
原告側「最高最良の判決」
判決のあと、原告と弁護団は名古屋市内で記者会見を開き、原告の1人、澤村彰さんは「長い戦いでした。今回の名古屋の高裁判断が出たことで、おかしいことはおかしいと言うことが広まることを願います。生活保護は最低限の生活をするためのものなので、これを機に国民の生活が豊かになっていってほしい」と話しました。
また、弁護団の事務局長を務める森弘典弁護士は「国家賠償が認められた判決はなかったので、最高最良の判決が出たと思っています。完勝だったと言えます」と話しました。

厚労省「詳細精査し適切に対応」
(中 略)
専門家「画期的な判決 今後大きな影響与えるのでは」
生活保護行政が専門で、立命館大学の桜井啓太准教授は「引き下げに至った行政行為自体を違法だと断じ、厚生労働大臣に重大な過失があったと指摘して、行政訴訟で認められることが非常に難しい国への賠償も認めた。画期的な判決だ」と評価しました。
そのうえで、「生活保護法3条に違反すると明確に指摘したことが大きい。過去最大の引き下げにより、憲法が保障する生存権、つまり最低限度の生活を維持できない状態になっているという判断で、今後の各地の判決にも大きな影響を与えるのではないか」と話していました。

これまでの判決では
同様の裁判は全国29か所の裁判所で起こされ、1審ではこれまでに22件の判決が言い渡されています。
このうち、12件で支給額の引き下げが取り消されましたが、国に賠償を命じる判決は出ていませんでした。
ことし4月には大阪高等裁判所で初めて2審の判決が言い渡されましたが、「支給額の引き下げの判断は不合理とは言えず、裁量権の逸脱や乱用は認められない」などとして訴えを退けていて、名古屋高等裁判所の判断が注目されていました。

生活保護 食費や光熱費などの「生活扶助」基準額見直しは
生活保護のうち、食費や光熱費などにあてられる「生活扶助」の基準額は5年に1度、見直しが行われています。
具体的には経済や社会保障の専門家が、生活扶助の水準と一般の低所得世帯の生活にかかる費用を比較するなどして、消費実態を調べたうえで基準の検証を行います。
そして、最終的には厚生労働大臣が経済の情勢などを踏まえ新たな基準額を決定します。
2013年度の見直しでは物価の下落が続いていたことなどを背景に、2015年度にかけて生活扶助の基準額が最大で10%減額されました。
これにともなって、予算の総額で670億円程度が3年間にわたって段階的に削減されました。

各地の裁判は
国が生活保護の支給額を2013年から段階的に引き下げたことをめぐっては、引き下げの取り消しを求める訴えが29の裁判所で合わせて30件起こされ、このうち、およそ半数は国に対する賠償も求めています。
一連の裁判では、基準額の引き下げが国の裁量の範囲を超えているかどうかなどが争われ、最初の判決となった名古屋地方裁判所は2020年6月、「国の判断が違法だったとはいえない」として、訴えを退けました。
一方、2件目の判決となった大阪地方裁判所は2021年2月、「裁量権の逸脱や乱用があり、生活保護法に違反する」と判断して原告の訴えを一部認め、支給額の引き下げを取り消しましたが、国に対する賠償は認めませんでした。
これまでに1審と2審で合わせて22件の判決が言い渡され、このうち、12件で引き下げが取り消されていますが、賠償を認めた司法判断はありませんでした

今回の裁判の主な争点
1つは、
▽今回の生活保護支給額の基準の改定を行った厚生労働大臣の判断に裁量権の逸脱や乱用があるかです。
国は物価下落により、生活保護受給世帯の可処分所得が実質的に増加したため、生活扶助基準の引き上げがなされているのと同じ状態だとして、生活保護の支給額を引き下げて是正を図る必要があったなどと主張していました。
30日の判決では「生活保護受給世帯での支出割合が高い日常生活で、基本的な費用である食料などの費用は上昇しており、国が主張するような状態にあったと評価できない。国は物価下落率を算定する際に学術的な裏付けのない独自の指数を用いるなどしていて、統計などの客観的な数値との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くものだ」などと指摘し、裁量権の逸脱や乱用は明らかで、生活保護法に違反し、違法だと判断しました。
さらに、
▽今回の基準の改定や支給額の引き下げが違法だと認められる場合、原告側が慰謝料として、国に求めた賠償が認められるかどうかも争点となりました。
原告の弁護団によりますと、同様の集団訴訟は全国29か所の裁判所で起こされていますが、支給額の引き下げが取り消されても、国に賠償を命じる判決はありませんでした。
これまでの判決では、「引き下げの取り消しで原告らの無念は晴れ、慰謝料を認めるまでの違法性はない」などと判断されたケースもあったということです。
30日の判決では「違法な改定を行った厚生労働大臣には重大な過失がある。過去に例のない大幅な生活扶助基準の引き下げで、影響は生活保護受給者にとって非常に重大であり、原告らはもともと余裕のある生活ではなかったところを、支給額の引き下げを受けて以降、9年以上にわたり、さらに余裕のない生活を強いられ引き下げを取り消しても精神的苦痛はなお残る。生活扶助は国民の健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を基礎とする制度で、本来、国はその向上と増進に努めなければならないものである」などとして、国に対し、原告13人全員に慰謝料として、1人当たり1万円の賠償を初めて命じました。