2023年12月18日月曜日

ウクライナ戦争は終わった/ウクライナの敗戦を認め立て直そうとする英、敗戦を否定する米

「耕助のブログ」に「ウクライナ戦争は終わった」と題する記事が載りました。
 ウクライナの反転攻勢は、当初予定されていた今春早々よりもかなり遅れて始まりましたが失敗しました。今この責任を巡ってウクライナと米国の間で責任のなすり合いをしているということです。
 ウクライナ軍総司令官のザルズニーは明らかにこの戦争は負けて終わったと判断し、今こそ平和を追求する政治の時だと考えているのに対して、ゼレンスキーはザルジニーを解任しようとしています。英国は逆に、ゼレンスキーを解任してザルズニーを大統領に据えようとしているので、簡単に引き下がることはしません。
 ブログ「櫻井ジャーナル」は「ウクライナでの敗北を認めて立て直そうとする英国、敗北を認められない米国」という記事を出しました。
 同ブログは、ウクライナ戦闘の発端はバラク・オバマ政権が13年11月から14年2月にかけてウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターを仕掛け、ビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したところから始まるとして、ヤヌコビッチの支持基盤でロシア文化圏の東部や南部で住民がクーデター政権を拒否し、クリミアはロシアの保護下に入りました。
 クーデター政権は直後から軍隊をロシア系住民の生活圏であるドンバス地方(ドネツクやルガンスク)に差し向け殲滅を図りましたが、国防軍の多くがドンバス側の防衛に回ったので逆にクーデター政権側が劣勢になりました。
 そこで英独仏などが仲介して、ドンバス地方の自治権を認める「ミンスク合意」を行って内戦を終わらせました。しかし政権側はその後も自治権を認めることなく、7年間を掛けて密かに軍備を整えて、22年3月に再度ドンバス地方に軍隊を侵入させるべく準備万端を整えたのですが、その直前の22年2月にロシアがドンバスのロシア系住民の保護のための「特別軍事行動」をとったのでした。
 それによって早々にロシア軍の勝利確定的になったので、イスラエルの首相だったナフタリ・ベネット仲介役として停戦交渉を開始、双方とも妥協して停戦は実現しそうになったのですが、ウクライナ敗北の停戦を認めたくない米英は「ブチャでの虐殺」を大宣伝し、停戦合意をひっくり返したのでした。
 西側はブチャでの虐殺はロシアの仕業としましたが、実際はロシア軍撤退後に同地区に入ったウクライナ親衛隊によって、親ロシア派住民が虐殺された可能性の方が高いとされています。
 現在も米国はウクライナの敗北を認めないのに対して、英国はウクライナの敗北を認めていて、上記ザルズニー総司令官を大統領にして事後処理をさせようとしています。
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ウクライナ戦争は終わった
                 耕助のブログNo. 2007 2023年12月17日
   The War In Ukraine Is Done    by b
ウクライナにおける「反転攻勢」の失敗について、ワシントン・ポスト紙は2部構成の長い記事を掲載した。この記事は、この混乱全体を計画した米国とイギリス、そしてそれを実行したウクライナに等しく責任を負わせている。

最初の部分の箇条書き:米国とウクライナの誤算、分裂があった攻撃計画
https://www.washingtonpost.com/world/2023/12/04/ukraine-counteroffensive-us-planning-russia-war/ 

反攻と最初の結果を作った主な要素は以下の通り:
* ウクライナ、米国、イギリスの軍事将校は作戦計画を立てるために8回の大規模な卓上戦争ゲームを行った。しかしウクライナの軍隊を短期間で西洋式の戦闘部隊に変えることができるのか、特にキエフに近代的な軍隊に不可欠な空軍力を与えることなくできるのかということについて、米国は程度を見誤った
  * 米国とウクライナの政府関係者は、戦略、戦術、タイミングをめぐって激しく対立した。米国防総省は、ロシアが戦線を強化し続けるのを防ぐため、4月中旬に攻撃を開始することを望んだ。ウクライナ側は躊躇し、武器や訓練を追加しなければ準備が整わないと主張した。 
 * 米軍関係者はウクライナの兵力と武器があれば、機甲化した正面攻撃は可能だと確信していた。シミュレーションでは、キエフ軍は最良で60日から90日でアゾフ海に到達し、南部のロシア軍を切り離すことができると結論づけた。
 * 米国は、この南部のロシア軍への集中攻撃を提唱したが、ウクライナの指導部は、自軍は600マイルの前線に沿って3か所、南はアゾフ海のメリトポリとベルディアンスク、東はロシアに包囲されたバフムートに向かって攻撃しなければならないと考えていた。
 * 米国の情報機関の見方は米軍よりも厳しかった。ロシアが冬から春にかけて構築した強固な多層防御を考えれば、攻撃が成功する可能性は五分五分だと見ていた
 * ウクライナと西側諸国の多くの人はロシアの能力を過小評価していた:戦場での災難からの回復能力と長年の強み(人員、地雷、そして他の多くの国にはほとんどない規模の犠牲を厭わないこと)
 * 攻撃開始が近づくにつれ、ウクライナ軍関係者は壊滅的な損害を被ることを恐れた。一方で米国側は、決定的な攻撃がなければ最終的に犠牲者はもっと多くなると考えていた

 そして後編: ウクライナでは、反攻が停滞する中で徐々に戦争は続いている
https://www.washingtonpost.com/world/2023/12/04/ukraine-counteroffensive-stalled-russia-war-defenses/ 

この作戦に関する記事から得られた主な結果は以下の通りである:
 * 西側の最新兵器を装備した反攻を率いる旅団の70%が、戦闘経験のないまま戦闘に参加した。 
 * 戦場でのウクライナの挫折は、ロシアの防衛線を深く切り開く最善の方法をめぐり米国との対立につながった
 * ヨーロッパの米軍司令官は、作戦の初期において、米国が戦場の決定を疑問視したことによる緊張感の中、数週間にわたりウクライナの最高司令官と連絡が取れなかった。 
 * 両方の側が相手のミスや誤算を責めた。米軍関係者は、ウクライナは地雷原の密度を把握するための地上偵察など、基本的な軍事戦術が不足していたと結論づけた。ウクライナ政府関係者は、米国側は攻撃用ドローンやその他のテクノロジーがいかに戦場を一変させたかを理解していないようだと言った。
  * ウクライナは2023年だけでも数千人の死傷者と数十億ドルの西側の軍事援助を犠牲にして、約200平方キロメートルの領土しか奪還していない。

これらすべての点がその役割を果たした。

私の個人的なもの:
 ウクライナもその支持者も、ロシアの能力を組織的に過小評価していた。(そして今もそうだ) 
 * 衛星による偵察では、ロシアの防衛態勢はクルスクの戦いのレベルだった。
 クルスクの戦い(第二次世界大戦中の1943年、ソ連の都市クルスク周辺をめぐり、ナチス・ドイツとソ連軍との間で行われた戦闘)
 クルスクの戦いではドイツ国防軍は長すぎる準備の末、ロシアの戦線を突破することができなかった。1943年からの懲りない教訓:このような防衛線を見たら、他のことをやってみよう。
 * 戦闘シミュレーションや卓上戦争ゲームには各陣営の「モラル・ファクター(道徳的要因」」が設定されている。米英が明らかに行ったように、自陣のモラルを10、敵陣のモラルを0に設定すれば、毎回勝つことができるが、現実とはなんの関係もない
 * 航空支援は役に立たなかっただろう。ロシアの防空は強すぎて対抗できない。
 * 戦闘経験のない、ほとんど訓練を受けていない経験不足の旅団を使う決定は重大な誤りだった。
 * 発煙手榴弾を使わず、一般的に欺瞞の手段を用いたことは、まったく合理的ではなかった。
 * 新たな兵士の半数(より経験豊富な部隊)を、すでに敗北しているゼレンスキーのバフムートの戦いに参加させたのは大きな政治的ミスだった。

これらすべてが合わさり、いわゆる「反転攻勢」は一度も実現のチャンスがなかった現在の口論は、失敗の責任を相手側に転嫁しようとする試みにすぎない

ウクライナのザルズニー総司令官はこの戦いから学んだ。彼は今、やや現実的な数字を出して米国に勝利の可能性がいかに小さいかを理解させている
ザルズニー総司令官は米国防総省長官に1700万発の弾薬を要請した。 https://www.pravda.com.ua/eng/news/2023/12/4/7431543/ 
ロイド・オースティン米国防長官はキエフ訪問中に、ウクライナには1,700万発の弾薬が必要であり、ウクライナの解放には3,500億~4,000億ドル相当の資産と人員が必要であることを知らされた。
 … 
国防軍幹部の言葉:オースティンは1700万発の弾薬が必要だと聞かされた。控えめに言っても、彼は唖然とした。なぜなら、全世界でそれだけの弾薬を集めることはできないからだ。
ウクライナ軍には1700万発の弾薬を発射するのに必要な1万本の銃身がない。またその架空の銃に給弾する人員もいない。
ザルズニーは明らかに、戦争は負けて終わったと考えている。そして、今こそ平和を追求する政治の時だと考えている:
さらに、ある情報筋によれば、オースティンはザルズニーが大統領府からの干渉について米国の将軍たちに内々に不満を漏らしていたとも語っている[……]: 「オースティンは、ザルズニーが大統領府や大統領府の妨害について、いつも将軍たちに不満を漏らしていると内々に話していた」。明らかに大統領もそのような会話を知っていた。そして、それは信頼につながるものではない。「しかし、大統領府はザルジニの解任が彼の政治的キャリアを促進すると考えている。」

バイデン政権は、そろそろこの事態を収束させる時期に来ている。いつものようにやればいい。勝利を宣言し、その場を去り、忘れるのだ。
ギルバート・ドクトロウがその方法について考察している:「シーモア・ハーシュ、アナトール・リーベン、そしてワシントンD.C.が「勝利」を主張しながらウクライナでの敵対行為を終わらせようとする必死の策略」

https://gilbertdoctorow.com/2023/12/03/seymour-hersh-anatol-lieven-and-the-desperate-dc-gambit-to-end-hostilities-in-ukraine-while-claiming-victory/ 
その後何が起ころうと、それは脚注のために残されるだろう。

https://www.moonofalabama.org/2023/12/the-war-in-ukraine-is-done.html 


ウクライナでの敗北を認めて立て直そうとする英国、敗北を認められない米国
                         櫻井ジャーナル 2023.12.15
ウクライナ軍はロシア軍との戦闘で来年末まで持ちこたえられれば、2025年には戦場で主導権を握れると主張する有力メディアがアメリカに出現した。「神風が吹く」という類の主張だ。
 この戦闘はバラク・オバマ政権が2013年11月から14年2月にかけてウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターを仕掛け、ビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したところから始まるヤヌコビッチの支持基盤でロシア文化圏の東部や南部で住民がクーデター政権を拒否、クリミアはロシアの保護下に入り、ドンバス(ドネツクやルガンスク)では内戦が始まったのだ
 それから8年かけてアメリカ/NATOはクーデター体制の戦力を増強するために武器を供給、兵士を訓練、さらにドンバスの周辺に要塞線を構築している。
 この地域にはソ連時代から地下要塞が作られていた。ソレダルには岩塩の採掘場を利用した全長200キロメートルという地下要塞があり、アゾフ特殊作戦分遣隊(アゾフ大隊)が拠点にしていたマリウポリにも地下要塞が整備された。

 ドンバスを攻撃する準備ができたという判断から2022年の初頭からウォロディミル・ゼレンスキー政権は動き始めるが、ドンバス周辺に集結していたウクライナ軍の部隊をロシア軍は昨年2月24日にミサイルで壊滅させ、航空基地、レーダー施設、あるいは生物兵器の研究開発施設を破壊し始める。これでロシア軍の勝利は確定的だった
 そこでイスラエルの首相だったナフタリ・ベネットを仲介役として停戦交渉を開始、双方とも妥協して停戦は実現しそうだった。ベネットは2022年3月5日にモスクワへ飛び、プーチンと数時間にわたって話し合い、ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつける。その足でベネットはドイツへ向かい、シュルツと会うのだが、その3月5日、ウクライナの治安機関SBUがキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフを射殺している。現在のSBUはCIAの下部機関だ。
 停戦交渉はトルコ政府の仲介でも行われた。アフリカ各国のリーダーで構成される代表団がロシアのサンクトペテルブルクを訪問、ウラジミル・プーチン大統領と6月17日に会談しているが、その際、プーチン大統領は「ウクライナの永世中立性と安全保障に関する条約」と題する草案を示している。その文書にはウクライナ代表団の署名があった。つまりウクライナ政府も停戦に合意していたのだ。
 こうした停戦合意を壊す上で重要な意味を持つ出来事がブチャでの虐殺問題。
 停戦交渉の進展でロシア軍はウクライナ政府との約束通りにキエフ周辺から撤退を開始、3月30日にはブチャから撤退を完了し、31日にはブチャのアナトリー・フェドルク市長がフェイスブックで喜びを伝えているが、虐殺の話は出ていない
 ロシア軍が撤退した後、ウクライナの親衛隊が現地に入るが、その後に西側の有力メディアはロシア軍が住民を虐殺したとする宣伝を始めて停戦交渉を壊した
 その間、4月9日にイギリスのボリス・ジョンソン首相がキエフへ乗り込んで停戦交渉の中止と戦争の継続を命令、4月21日にはウクライナ南部のミコライフ州のビタリー・キム知事が「ウクライナ24テレビ」の番組で「全ての裏切り者を処刑する」と国民を脅し、4月30日になるとナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対してウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めた。
 この情報を裏付ける証言を「1+1」が11月24日に放送している。与党の有力議員でトルコを仲介役とした停戦交渉でウクライナ側の中心にいたデビッド・アラカミア議員は、ボリス・ジョンソンが停戦交渉を挫折させる上で重要な役割を果たしたと語っているのだ。
 ここからロシア軍が戦う相手はアメリカ/NATOになった。西側は武器を大量に供給するだけでなく軍事情報も提供し、指揮もアメリカ/NATOが行うようになったと言われているが、戦況は変化しなかった。ウクライナ側は多くの兵士が死傷、武器弾薬は底をつく。それに対してロシア軍はミサイルや航空機による攻撃が主体で、その兵器の性能が良いこともあり、損害は大きくないと見られている。
 ウクライナのテレビ局「1+1」は先日、自国軍の戦死者と行方不明者の合計を112万6652人だと画面に表示、局はすぐに間違いだと訂正したが、隠していた本当のデータを流してしまったと推測する人もいる。これまで「少なくとも50万人」と言われていたが、それを大きく上回るだろうと見られていたからだ。
 西側ではロシア軍が多大な損失を被って士気が極度に低下し、ミサイル、砲弾、燃料などが不足しつつあると宣伝されたが、ロシア軍の攻撃はそうした西側の主張を否定している。現在、ロシアの武器生産力は西側の数倍だと見られている。
 アメリカと違い、イギリスは事実を受け入れて体勢を立て直そうとしている。イギリスはゼレンスキーを処分し、バレリー・ザルジニー最高司令官にすげ替えようとしている。イギリスの​有力誌エコノミストは11月1日、ザルジニーの記事を掲載した。ザルジニーは戦闘をやめようとしていると見られている
 それに対し、ゼレンスキーはザルジニーに対し、「自由意志」による辞任、あるいは健康問題などによる辞任を要求したが、ザルジニーは拒否したようだ。ウクライナをめぐり、イギリスのMI6とアメリカのCIAが対立しているという見方もある。