2023年12月6日水曜日

「政治とカネ」本丸事件の表面化(植草一秀氏)

 自民党の最大派閥「安倍派」の政治資金パーティーをめぐり、収入の一部を議員側に戻し(キックバック)た分を議員らが収支報告書に記載していなかった疑いがある問題で、検察が調査に入ったとされています。同様な不正は安倍派に限らず二階派「志帥会」など多くの派閥で行われている可能性があり、国会が閉会すれば検察は議員に対し任意の事情聴取を始めるものと見られています。

 植草一秀氏は「政治とカネ」に関する腐敗の問題において、腐敗の根を断ち切る方法は存在するにも拘らず腐敗の根を断ち切ろうとしないから延々と続くのであるとして、それを断つための三つの具体的方策を示しました。
 その第一は、日本の議員報酬は法外に高く、政治家が儲かる商売であることが議員を目指す動機になっているとして、政治の仕事は本来は「奉仕」なので、奉仕に見合う報酬体系に変更するべきだと述べています。実に明快です。
 第二は企業団体献金を全面禁止することです。民主党が政権をとったのは09年8月の衆院選挙でした。ところがその前段で小沢一郎氏の政治資金管理団体が摘発されました。これは小沢氏の剛腕による政治改革を恐れた体制側が同氏を失脚させるために企んだもので、メディアに扇動された結果「朝野を挙げて」の「小沢バッシング」が巻き起こされました。
 最終的にこの事案は完全なえん罪」と確定しましたが、これによって小沢氏は首相にはなれず体制側の意図は達成されました。
 09年の総選挙で小沢氏は企業団体献金全面禁止を提案しましたが、民主党内部からも反対が出たため公約には出来ずに現在まで温存されてきました
 第三は、政治資金規正法第21条の2の2項の削除ですこれは政治家個人への寄附が禁止されているが、政党が行う政治家個人への寄附が例外として認める規定で、まさに上記のキックバックを可能にしてきたものです。植草氏の明快な主張を紹介します。
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「政治とカネ」本丸事件の表面化
             植草一秀の『知られざる真実』 2023年12月 3日
「政治とカネ」の問題が後を絶たないのは「政治とはカネ」が実相として存在するからだ。
腐敗の根を断ち切る方法は存在する。しかし、腐敗の根を断ち切ろうとしない。腐敗の根がしっかりと温存されている。腐敗の根が温存される限り、腐敗はなくならない。

腐敗の根を断ち切るための方策とは何か。
第一は議員の報酬を引き下げること。
第二は企業団体献金を全面禁止すること。
第三は政治資金規正法第21条の2の第2項を撤廃すること。
これを断行するべきだ。

日本の議員報酬は法外に高い。政治に金がかかると言われるが、金をかけなければ政治に関われないとする方式を改めるべきなのだ。
政治家になる理由が「カネのため」になっている。
政治家になるためにカネを注ぐが、それは、政治家になってカネを稼ぐため。
政治家を家業として継ぐのは政治家が儲かる商売であるからだ。
このような政治風土で良い政治が行われるわけがない。

これは市民の側にも責任がある。政治にカネを注ぐのは、その見返りを求めるからだ。
企業が多額の献金を行い、献金を受け入れた政治屋が当該企業に見返りの施策を実行する。
合法的な贈収賄の構造が存在する。
とりわけ、政権交代が存在しない状況の下では不正が発覚しない。

絶対権力は絶対に腐敗するのである。
政治家の報酬を大幅に引き下げるべきだ。「カネのために政治に関わる」インセンティブを引き下げる。
「政治に関わる」ことは社会に対して奉仕すること。政治の仕事は、本来は「奉仕」である。
「奉仕」に見合う報酬体系に変更するべきだ。

第二に企業団体献金を全面禁止する。
2009年に小沢一郎氏の政治資金管理団体が摘発された。
西松建設関連の二つの政治団体から受けた献金を事実通りに記載して報告したことが政治資金規正法違反とされた。
まったく同じ事務処理をした政治家資金管理団体が二桁の数で存在したが、小沢氏の資金管理団体だけが摘発の対象とされた
この事件の第2回公判で西松建設元取締役総務部長が二つの政治団体に実体があったことを証言して、この事案が完全なえん罪事案であったことが確定した。

小沢一郎氏は政治的策謀によって刑事事件に巻き込まれた。
このとき、小沢一郎氏が企業団体献金全面禁止を提案した。
2009年総選挙で民主党は企業団体献金全面禁止を政権公約に盛り込もうとしたが民主党内部の反対で公約化されなかった。公約化に強く反対したのは岡田克也氏である。
政党交付金制度が創設された際に企業団体献金を全面禁止することが検討されたが、あいまいに処理された。
結局、企業団体献金全面禁止が実現せず、現在に至っている。これを断行するべきだ。

第三の問題がある。
政治資金規正法第21条の2の2項。
政治家個人への寄附が禁止されているが、例外規定が定められている。
政党が行う政治家個人への寄附が例外として認められている。
この規定を活用して巨額の資金が政党から政治家個人に流れ、資金使途がまったく公開されていない。公然の「裏金」である
自民党、維新、国民民主党などが巨額の政治資金を闇に流している。

21条の2の第2項を削除する政治資金規正法改正を断行するべきだ。
国民民主党の玉木雄一郎氏は前原新党を批判する前に政治資金規正法第21条の2の2項撤廃を提言するべきだ。
いま問題になっている自民党の裏金問題は明白な政治資金規正法違反事案と言える。
巨大な政治犯罪事件事案に発展する蓋然性が高い。
検察がこの事案を適正に処理しなければ革命が起きてもやむを得ないだろう。
自民党は崩壊の局面に差しかかっている。

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