2023年12月6日水曜日

06- ウクライナでロシアが勝利した事実を隠しきれなくなったアメリカとNATO

 6日朝のNHK・TVは、ウクライナの反撃が失敗したことに関してのゼレンスキーと米国のそれぞれの見解を対比して放映しました。この種のニュースはSNS等ではよく知られていましたが、この時点でNHKが報じたのは最早衆知の事実だからという判断があったものと見られます。櫻井ジャーナルが掲題の記事を出しました。
 米国はウクライナとガザの2つの戦争で、ウクライナとイスラエルを援助しその後ろ盾になっています。
 第二次世界大戦後に建国されたイスラエルは軍事力(現在世界第4位)をベースに中東で好き勝手に振る舞い、遂にはパレスチナ人をガザに押し込んで「天井なき牢獄」にしたうえに目下はパレスチナ人を殲滅すべく猛攻撃を加えています。
 ウクライナではどうでしょうか。2014年にウクライナで暴力によるクーデター(オバマ政権下で当時5000億円を掛けてその準備をしバイデン副大統領が主導しました)が引き起こされました。
 ウクライナはソ連が崩壊した際にウクライナ人とロシア人(東部のドンバス=ドネツク・ルガンスク)の混成国家として成立しました。その後は一貫して両民族の融和政策が取られてきたのですが、「クーデター政権」は突如としてドンバス地方を軍事的に制圧する挙に出ました。
 しかしその無謀な暴挙に対し国軍の7割がドンバス側についたため、目的を達することが出来ませんでした。そこでNATO側は偽りのミンスク条約2を結び事実上ドンバスの自立を認めたのですが、実は8年を掛けて入念に再度の攻撃を準備し22年3月にドンバスを攻撃する予定でした。ロシア軍がウクライナに侵入したのはその直前で、以後の経過はご存知の通りです。
 もしもロシアが侵入せずに傍観していたなら、民族浄化というガザと似たようなことが起きた可能性があります。
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ウクライナでロシアが勝利した事実を隠しきれなくなったアメリカとNATO
                          櫻井ジャーナル 2023.12.06
 NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は12月2日にドイツの放送局ARDの番組で、ウクライナの戦線からの「悪い知らせ」に備えるべきだと語った​が、すでに悪い知らせは伝えられている。例えば、イギリスのベン・ウォレス前国防相は10月1日にテレグラフ紙に寄稿した記事の中で、ウクライナ兵の平均年齢は40歳を超えていると指摘した。それだけ死傷者が多いということだ。
 ウォレスはもっと多くの若者を前線へ送り出せと要求している。これまで徴兵を免除されていた学生や研究者などを投入しろということだろう。「学徒動員」や「少年兵」を前線へ送り出せというわけだ。前線では妊婦のウクライナ兵も見つかっている。
 ニューヨーク・タイムズ紙は今年8月、記事の中でウクライナ兵とロシア兵約50万人が戦死したと書いていたが、ウクライナ軍の戦死者だけで少なくとも50万人、ロシア側の推計戦死者はその1割、つまり5万人程度だと見られていた。
 ところが、ウクライナのテレビ局「1+1」は先日、自国軍の戦死者と行方不明者の合計を112万6652人だと画面に表示、話題になった。局はすぐに間違いだと訂正したが、隠していた本当のデータを流してしまったと推測する人もいる

 ウクライナ軍は昨年初頭からドンバスへの大規模な攻撃を準備していると噂されていた。ドンバス周辺に部隊を集結させ、ドンバスの市民を狙った砲撃が激しくなったからだ。
 そうした中、昨年2月24日にロシア軍がドンバス周辺に集結していたウクライナ軍をミサイルで壊滅させ、航空基地、レーダー施設、あるいは生物兵器の研究開発施設を破壊し始める。これでロシア軍とウクライナ軍の戦いはロシア軍の勝利は確定的だった。
 そこでイスラエルの首相だったナフタリ・ベネットを仲介役として停戦交渉を開始、双方とも妥協して停戦は実現しそうだった。ベネットは2022年3月5日にモスクワへ飛び、プーチンと数時間にわたって話し合い、ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつける。その足でベネットはドイツへ向かい、シュルツと会うのだが、その3月5日、ウクライナの治安機関SBUがキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフを射殺している。現在のSBUはCIAの下部機関だ。

 停戦交渉はトルコ政府の仲介でも行われた。アフリカ各国のリーダーで構成される代表団がロシアのサンクトペテルブルクを訪問、ウラジミル・プーチン大統領と6月17日に会談しているが、その際、プーチン大統領は「ウクライナの永世中立性と安全保障に関する条約」と題する草案を示している。その文書にはウクライナ代表団の署名があった。つまりウクライナ政府も停戦に合意していたのだ。
 停戦交渉の進展でロシア軍はウクライナ政府との約束通りにキエフ周辺から撤退を開始、3月30日にはブチャから撤退を完了した。31日にはブチャのアナトリー・フェドルク市長がフェイスブックで喜びを伝えているが、虐殺の話は出ていない。
 ロシア軍が撤退した後、ウクライナの親衛隊が現地に入るが、その後に西側の有力メディアはロシア軍が住民を虐殺したとする宣伝を始めて停戦交渉を壊した
 その間、4月9日にイギリスのボリス・ジョンソン首相がキエフへ乗り込んで停戦交渉の中止と戦争の継続を命令、4月21日にはウクライナ南部のミコライフ州のビタリー・キム知事が「ウクライナ24テレビ」の番組で「全ての裏切り者を処刑する」と国民を脅し、4月30日になるとナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対してウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めた。
 この情報を裏付ける証言を「1+1」が11月24日に放送している。与党の有力議員でトルコを仲介役とした停戦交渉でウクライナ側の中心にいたデビッド・アラカミア議員は、ボリス・ジョンソンが停戦交渉を挫折させる上で重要な役割を果たしたと語っているのだ。

 ゼレンスキー政権が始めたロシアと停戦交渉を潰したのはイギリス政府とその黒幕だが、カネと武器にドップリ使ったゼレンスキーは勝利の妄想から抜け出せなくなった。
 ウクライナのバレリー・ザルジニー最高司令官はイギリスの有力誌エコノミストは11月1日付けに記事を投稿、ゼレンスキー派とザルジニー派の対立が明確になった。ウクライナ人が死に絶えるまで戦おうとしているゼレンスキーに対し、ザルジニーは戦闘をやめようとしていると見られている。
 そうした対立が表面化した後の11月6日、ザルジニーの補佐官を務めていたゲンナジー・チェスチャコフ少佐が自宅で死亡した。「贈り物の箱」に入っていた手榴弾が爆発したと言われている。
 この事件の真相は不明だが、黒幕と噂されているひとりがキリロ・ブダノフ情報長官。その妻、マリアナ・ブダノワが何者かに毒を盛られたと伝えられている。毒物は「ヒ素と水銀」だとする証言もある。状況が明確でなく、フェイクだとする説もある。

 ウクライナの内戦は2014年2月、バラク・オバマ政権が仕掛けたクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権が倒されたところから始まる。ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部では住民がクーデター政権を拒否、クリミアはロシアの保護下に入り、ドンバス(ドネツクやルガンスク)では戦闘が始まったのだ。
 ところが、ウクライナの軍や治安機関では約7割がネオ・ナチ体制を嫌って離反、その一部はドンバス軍へ合流したと言われている。そこでアメリカ/NATOはCIAやFBIのメンバーのほか傭兵を送り込み、内務省の下にはネオ・ナチを主体とする親衛隊を創設、それと並行して武器を供給、兵士を訓練しはじめた。
 ネオ・ナチを中心に編成されたアゾフ特殊作戦分遣隊(アゾフ大隊)が拠点にしていたマリウポリ、あるいは岩塩の採掘場があるソレダルにはソ連時代に建設された地下施設、つまり地下要塞が存在、それを利用してアメリカ/NATOは8年かけて要塞線を築いた
 アメリカ/NATOはロシアを挑発、要塞線の内側へ誘い込もうとしたようだが、地上軍を突入させるようなことはなかった。航空兵力、ミサイル、ドローンなどで攻撃、地上戦は地元軍や傭兵部隊に任せた。
 ウクライナ軍は(22年)6月4日からアメリカ/NATOの命令で「反転攻勢」を始めたが、ロシア軍が築いた「スロビキン防衛線」を突破できず、多くの死傷者を出した。この防衛線は歩兵塹壕、戦車対策の「竜の歯」、土手、地雷原などを組み合わせたもので、数百キロに及ぶ。その防衛線に向かってウクライナ軍は「バンザイ突撃」を繰り返した

 その無謀な攻撃でウクライナ軍は疲弊。ロシア軍はその疲弊したウクライナ軍に対する本格的な攻撃を始めると見る人は少なくない。ストルテンベルグ事務総長が警告したように、アメリカ/NATOにとって「悪い知らせ」が伝えられることになりそうだ。ウクライナ軍の要塞線が突破されたなら、ドニエプル川の東岸やオデッサのあたりまでロシア軍に制圧される可能性がある。