イスラエルでは国内世論が人質の解放を強く要求しているため、ようやくハマスに対して停戦を提案しました。しかしハマス側は、イスラエルが先にガザ攻撃をやめた場合にのみ人質交渉に応じるとしているということです。
単に人質を相互に解放・交換するだけでは、その後に直ぐまたガザの大虐殺が遂行されるだけなので、ハマスが上記のように応じたのは当然のことです。
櫻井ジャーナルはそれだけではなく、地上戦では当初からイスラエル軍は死者が多く苦戦しているのではないかと見ていて、大国が動かない中で貧困国のイエメンではフーシ派がイスラエルへ向かう船舶に対する攻撃を開始したり、レバノンのヒズボラがイスラエルへの攻撃を始めているということです。
いずれにしても、イスラエルがハマスに停戦を提案したこと自体は望ましいことです。
併せて「耕助のブログ」の記事「米国が国連拒否権行使で犯した最も重大な間違い(賀茂川耕助氏)」を紹介します。
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ハマスとの戦闘で苦戦が伝えられているイスラエルが停戦を呼びかけ、拒否された
櫻井ジャーナル 2023.12.23
ハマスをはじめとするパレスチナ系武装グループが10月7日にイスラエルへ攻め込んだ後、イスラエル軍はガザの住民に対する大規模な攻撃を開始、すでに2万数千人が死亡、その約4割は子どもだとされている。ヨルダン川西岸でもパレスチナ人に対する激しい攻撃が続いているという。それに対しイスラエル軍とハマスとの戦闘に関する情報が乏しい。
ハマス側から流れてくる映像などを見るとイスラエル軍の死傷者は少なくないようで、破壊される戦車の映像もある。当初からイスラエル軍は苦戦していると言われていたが、その推測が正しかったのかもしれない。
こうした中、イスラエル政府はハマスに対して停戦を提案したが、拒否されたと伝えられている。ハマス側は、イスラエルが先にガザ攻撃をやめた場合にのみ人質交渉に応じるとしているようだ。
前の停戦の際にも言われたが、イスラエル側は戦況が良ければ停戦をせずに攻撃を続けるはず。ここにきて再び停戦を求めたということは、それだけ厳しい戦いを強いられている可能性が高い。
イスラエルのモーシェ・フェイグリン元議員はガザへの攻撃が始まった際、「ガザをドレスデンや広島のように破壊」すると宣言していた。彼は議員時代の2014年、ガザは未来永劫イスラエルの土地だと宣言、無差別攻撃で破壊し、住民を消し去ってユダヤ人が住むと主張していたが、実際、ガザはそうした光景になっている。
そうしたことでは満足できないのか、レバノンとの国境に近いメトゥラの入植地評議会のダヴィッド・アズーレイ議長はイスラエルのラジオ番組で、ガザをアウシュビッツのように完全に平らにし、パレスチナ人をレバノンの難民キャンプに強制移住させるべきだと訴えている。アウシュビッツのユダヤ人のようにガザで殺されているのはパレスチナ人であり、ナチスのように虐殺しているのはイスラエルだということをアズーレイは理解できていないようだ。
こうした大量殺戮をアメリカ政府は支援、イギリスもそうした行為を後押ししている。
それに対し、サウジアラビアを含む親米国家は口先ばかりだが、貧困国のイエメンではフーシ派がイスラエルへ向かう船舶に対する攻撃を開始。ヒズボラがペルシャ湾を封鎖する可能性も高まってきた。そのヒズボラはすでにレバノンでイスラエルへの攻撃を始めている。
アメリカは、イギリス、イタリア、バーレーン、カナダ、フランス、オランダ、ノルウェー、セーシェル、スペインを引き連れ、イエメン周辺の国際海域に国際艦隊を集結させたが、フーシ派が多くのドローンを使った攻撃を始めた場合、対処できない。
10月7日の攻撃をイスラエル、アメリカ、イギリスなどは知っていた可能性が高く、ハマスに攻撃させたと見られているが、その計画がすでに破綻しているように見える。
米国が国連拒否権行使で犯した最も重大な間違い(賀茂川耕助氏)
耕助のブログNo. 2010 2023年12月20日
What US Got Most Crucially Wrong in UN Veto
米国は、ガザでの殺戮の即時停止を求める安全保障理事会決議に再び拒否権を行使
した。要するに、現在進行中の大虐殺を支持したのだ。 by Joe Lauria
米国はまたしても、全世界の前で大量虐殺に賛成した。
今世紀最悪の犯罪に終止符を打つのに、米国ほど力を持つ政府はない。
それにもかかわらず、金曜日(⇒15日)の国連安全保障理事会で、ワシントンは即時停戦とイスラエルによる容赦ない虐殺の停止を要求する決議案に拒否権を発動した。米国がこの措置を阻止したのは、明確に殺戮の継続を望んでいるからだ。
10月7日のハマスの攻撃を非難しなかったから、決議案を拒否したのだと好き放題言うことはできる。しかし、世界的な非難を招いた投票に対するアメリカの正当化の核心は、この戦争の原因について故意に無知な発言である。
拒否権行使に関するアメリカの説明{1}の中で、ロバート・ウッド副大使は次のように述べた:
おそらく最も非現実的なのは、この決議案が無条件停戦を要求したことだ。私は今朝の発言で、これが非現実的であるだけでなく危険である理由を説明している。それは、ハマスをそのままにして、10月7日に行ったことを繰り返すことができるようにしておくことだからだ。
ハマスが破壊のイデオロギーに固執する限り、いかなる停戦もせいぜい一時的なものであり、和平ではない。そして、ハマスがガザを支配したままの停戦は、パレスチナの市民が自分たちのためによりよいものを築くチャンスを奪うことになる。
この説明はアメリカ政府のひねくれた思考を露呈している。ヨルダン川西岸地区の占領やガザ封鎖は、今回の戦争や過去の戦争の原因ではなく、ハマスの「破壊のイデオロギー」なのだという。それは何に由来するのか? 単なる邪悪なDNAか?
したがって、アメリカにとっての解決策は、占領を終わらせることではなく、ハマス壊滅のための虐殺を維持することなのだ。たとえイスラエルがハマスの戦闘員を殺したとしても。そしてその数は比較的少なく、イスラエルはハマスの戦闘員やトップ指揮官をほとんど殺しておらず、その代わりにガザの人々に対して殲滅戦争を行っている。
世界が不支持
このことは、ワシントンを含む世界中の首都で明らかである。アメリカの拒否権に対する世界中の反応は、人権の偉大な擁護者であるアメリカが、明確に大量虐殺を支持していると理解している。
拒否権は、国連憲章第99条を発動して安全保障理事会に行動を求めるという珍しい行動に出たアントニオ・グテーレス国連事務総長の顔に泥を塗るものだった。
グテーレス事務総長は安保理に対し、「イスラエル国防軍による絶え間ない砲撃の中、避難所も生きるための必需品もなく、絶望的な状況のため、近いうちに治安が完全に崩壊し、限定的な人道支援さえも不可能になるだろう」と書き送った。
これに対してアラブ首長国連邦は、ガザの「壊滅的な状況」に対して「重大な懸念」を表明する決議案を作成した。決議は、即時の人道的停戦、人質の即時かつ無条件の解放、人道的アクセスを要求した。
米国の同盟国フランスを含む13カ国が賛成票を投じ、英国は棄権、流血を終わらせることができる唯一の国である米国は拒否権を行使した。
アメリカへの怒りは瞬く間に広がった。
パレスチナのマフムード・アッバス大統領は、アメリカは拒否権によって戦争犯罪に「加担」することになると述べた。「大統領は、アメリカの立場を攻撃的で非道徳的であり、あらゆる人道上の原則と価値観に対する明白な違反であるとし、ガザ地区におけるパレスチナの子ども、女性、高齢者の流血に対するアメリカの責任を追及する」と、アッバス大統領は声明で述べた。
国境なき医師団(Medecins Sans Frontieres、MSF)USAのエグゼクティブ・ディレクターであるアヴリル・ブノワ(Avril Benoit)は、次のように述べた:
この決議案に拒否権を行使することで、米国は人道に反する一票を投じることになる。米国の拒否権は、自国が守ると公言している価値観とは対照的である。ガザで続く残虐行為に外交的な隠れ蓑を提供し続けることで、米国は、国際人道法が選択的に適用される可能性があることを示すことになる。米国の拒否権は、ガザでの殺戮に加担することになる。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは声明{4}でこう述べている:
ガザでパレスチナ市民を集団的に処罰するなどの残虐行為を行うイスラエルに、武器(および)外交的な隠れ蓑を提供し続けることで、米国は戦争犯罪に加担する危険を冒している。
このような批判を無視するには、特別な傲慢さが必要だ。
Links:
{1}https://usun.usmission.gov/explanation-of-vote-on-a-united-arab-emirates-drafted-un-security-council-resolution-on-the-situation-in-the-middle-east/
{2}https://www.nytimes.com/2023/12/09/world/middleeast/hamas-gaza-israel.html#:~:text=A%20Rare%20Image%3A%20The%20Israeli,of%20them%20had%20been%20killed.
{3}https://www.doctorswithoutborders.org/latest/msf-calls-us-veto-gaza-ceasefire-resolution-vote-against-humanity
{4} https://twitter.com/OmarSShakir/status/1733237281257886068
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。