2023年12月18日月曜日

パー券 収容人数5倍も 安倍派販売 不参加前提か 政治資金報告

 自民党最大派閥の清和政策研究会(安倍派)が開いた政治資金パーティーで、会場の収容人数を大幅に超える枚数のパーティー券を販売し、事実上の企業・団体献金を受けていた疑いが17日までに、明らかになりました。
 安倍派は、安倍晋三氏が首相を務めていた18年には、収容人数を3倍も超える7021人にパー券を売り、約2億802万円の収入を得ていました。単純計算で1万401枚を販売したことになり会場の収容人数を52倍も超過するパー券を売っていたと推測されます。
 政治資金規正法はパーティーを「対価を徴収して行われる催物」と位置づけているので、会場に入りきれない人数分の収入は献金にあたり、同法に違反する疑いがあります。
 しんぶん赤旗が報じました。
 併せてAERA dotの記事「『特捜部は資料をがっちり持っている』戦々恐々の自民関係者 岸田首相は“安倍派切り”で逃げ切り」を紹介します。
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パー券 収容人数5倍も 安倍派販売 不参加前提か 政治資金報告
 虚偽記載の疑い
                      しんぶん赤旗 2023年12月18日
 自民党最大派閥の清和政策研究会(安倍派)が開いた政治資金パーティーで、会場の収容人数を大幅に超える枚数のパーティー券を販売し、事実上の企業・団体献金を受けていた疑いが17日までに、明らかになりました。政治資金規正法はパーティーを「対価を徴収して行われる催物」と位置づけています。会場に入りきれない人数分の収入は献金にあたり、同法に違反する疑いがあります。(丹田智之)

 

            自民党安倍派の政治資金パーティー

 

 

開催年

購入者数

枚数(推計)

  

 

 

2017年

6784人

10049枚

 2億   98万円

 

 

2018年

7021人

10401枚

 2億  802万円

 

 

2019年

5177人

7669枚

1億5338万円

 

 

2020年

3464人

5131枚

 1億  262万円

 

 

2021年

3376人

5001枚

 1億     2万円

 

 

2022年

3200人

4740枚

9480万円

 

 

                           ※ 政治資金収支報告書をもとに作成

 

 総務省が公表した政治資金収支報告書によると、安倍派は東京プリンスホテル(東京都港区)で大規模な政治資金パーティーを開催。2017年から22年までの6年間は同ホテルの「鳳凰(ほうおう)の間」を利用し、パー券の販売で計8億5982万円を得ていました。
 パー券は1枚2万円です。複数枚を購入する企業・団体があるので、単純計算すると直近の22年は、3200人に4740枚のパー券を販売していた計算になります。
 同ホテルの公式サイトによると、鳳凰の間は最大の宴会場で、2000人が収容できます。収容人数を上回る使用は「お断りしている」(担当者)と説明します。ホテル内の複数の宴会場を使っても4740人を収容することはできません。
 安倍派は、安倍晋三氏(22年7月に死去)が首相を務めていた18年には、収容人数を3倍も超える7021人にパー券を売り、約2億802万円の収入を得ていました。単純計算で1万401枚を販売したことになります。会場の収容人数を52倍も超過するパー券を売っていたと推測されます。

 神戸学院大学の上脇博之教授(政治資金オンブズマン代表)は「大半が参加しないことを分かった上でパー券を売っていたとしか考えられない。収容人数を超えた分は政治資金収支報告書に寄付として記載するべきで、政治資金規正法違反の虚偽記載にあたる疑いがある」と指摘します。
 また、不参加分の収入を献金とみなした場合に「清和政策研究会は企業・団体献金を受け取れない『その他の政治団体』であり、違法献金にあたる」としています。

 本紙は安倍派の事務所に質問状を送りましたが、期限までに回答はありませんでした。


「特捜部は資料をがっちり持っている」戦々恐々の自民関係者 岸田首相は“安倍派切り”で逃げ切り
                      今西憲之 AERA dot. 2023/12/15
 自民党の裏金問題で東京地検特捜部の本格的な捜査が始まった。関係者によると、安倍派では5年間で5億円の裏金があったといい、議員のパーティー券販売枚数をまとめた「ランキング」資料もあったという。安倍派5人衆やキックバックが高額の議員、そして会長経験者……。検察の捜査はどこまで伸びるのか。安倍派幹部を「更迭」した岸田文雄首相は何を思う。
 12月のある日、東京・赤坂のホテルに、安倍派の国会議員秘書のX氏が入っていった。
 政治家のパーティーをはじめ、会合や会食も頻繁に行われるこのホテル。
 しかし、この日の用件はまったく違ったものだった。
 東京地検特捜部が、取り調べに配慮し特別に部屋を用意し、そこで事情聴取をしていたのだ。

議員秘書「どうあがいても負け」
 数時間後、ホテルから出てきたX氏を追いかけて声をかけると、X氏は口ごもりながら、
やっぱりばれるな。いや、特捜部はみっちり調べるよな。厳しいな
 と話した。取り調べの中身は話せないと言いながらも、
「特捜部は安倍派の政治資金、パーティーの資料をがっちりと押さえている。それを前に出されて『このキックバック、〇〇万円もらっているでしょう。何に使ったのか』と聞かれる。『うちは、議員が全部持っていっているからわからない』と反論しても特捜部は引き下がるわけがない。議員が飲み食いとかに使っていそうなのはわかっているから、それ以上の話をしました。特捜部があそこまでブツを持っていると降参です。これは取り調べを受けた別の秘書も同じように話しています。パーティー券のノルマを超えた分のキックバック、政治資金収支報告書に不記載という点では完全にアウト。どうあがいても負けですね」
 とXさんはそうぼやきながら、議員会館に戻っていった。
 東京地検特捜部は連日、安倍派を中心に国会議員の秘書をホテルや特捜部などに呼んで取り調べをしている
 安倍派の幹部を経験した国会議員によれば、
臨時国会が終わってたぶん45人から50人の派閥の事務担当者、議員の秘書が聞かれていると報告を受けている」
 と話す。
 Xさんは、取り調べの終わりに特捜部の検事から、
「国会が終わればすぐに議員に事情聴取をしますから、連絡がつくように」
 と言われたという。
 13日で臨時国会が終わり、年明け1月末の通常国会までは何もない。その間に集中して議員本人を取り調べるのが特捜部の方針とみられる。
安倍派だけで20人、30人は取り調べになる予定。拒否すれば強制的に、ということになるので、応じるしかないと思う」(捜査関係者)
 全国の地検から応援で30人ほどの検事が集結しているという。

年末年始は田舎には帰れない
 Xさんは、
「うちの議員もいつ調べられるかわかりません。年末年始は田舎に帰るのはやめました
 パーティー券のノルマ超えを政治資金収支報告書に記載せず、裏金にしていた安倍派。直近5年間で大野泰正参院議員が5千万円超、池田佳隆衆院議員と谷川弥一衆院議員が4千万円超、元五輪担当相の橋本聖子参院議員が約2千万円と巨額のキックバックを不記載にしていた疑いが出ている。
 安倍派5人衆の松野博一官房長官、高木毅国会対策委員長、世耕弘成参院幹事長がそれぞれ1千万円超、西村康稔経済産業相が約100万円などと報じられている。萩生田光一政調会長は数百万円とされる
 前出の安倍派の元幹部は、
「5人衆は連日、弁護士に相談したり、夜な夜な情報交換をしたりしています。最初は『更迭なんて受け入れられない』と強気だったが、あまりに特捜部の証拠や情報収集がしっかりしているので、今では『派閥が割れないように結束を』という弱気な声ばかりです。そんななかで、キックバックが5人衆で最も少ないとされる西村氏が『事務総長のとき、このようなキックバックはまずいと思ってやめようとしていた』と言って、ひんしゅくを買っていました。要は、法に触れかねないことをわかっていた裏返しになる」
 と話し、こう続けた。
「一部の議員がキックバック分を政治資金収支報告書で訂正すると言ったときも、5人衆から『認めることになる』と待ったがかかっていた。だが特捜部は、キックバック分を政治資金収支報告書に書くなと派閥で指示していたことを把握している。調べられた秘書もそれで調書を取られているのでしょうがないんですがね」
 昨年12月にパーティー収入などを政治資金収支報告書に記載せずに政治資金規正法違反の罪で有罪となった薗浦健太郎前衆院議員の場合は、不記載の金額は4900万円あまりにのぼった。
「そこがボーダーラインなので国会議員の立件はない、あっても1人か2人ではないか」
 という安倍派の衆院議員もいるが、Xさんのように、1千万円に届いていない議員の秘書もすでに特捜部の取り調べを受けている。1千万円未満はおとがめなし、の根拠はなく、仮にそうなっても検察審査会を経て起訴されることも想定される

検事正経験ある「ヤメ検」弁護士を手配
「キックバックは億単位で、5億円というところもある。5年間さかのぼると年間1億円。当然、これだけの現金を裏金にしてキックバックするには、責任者の了承が必要だ。議員個人もターゲットになるが、責任者となるのが派閥の事務総長と会長、そこがポイントになる」(捜査関係者)
 多額のキックバックを受けていた議員のほかにも事務総長や会長も念頭に入れている、という意味だ。
 派閥の会長だった細田博之氏や安倍晋三元首相はすでに他界している。現在の事務総長は高木氏、過去5年間でみれば西村氏、松野氏、下村博文元文部科学相もそのポジションにいた。
 安倍派では、検事総長候補だった検事正経験のある「ヤメ検」弁護士を手配し、事情聴取を受けると見込まれる議員にも個別に弁護士をつけはじめた。
ある自民党幹部はこう話した。
「岸田首相は、ここまで早く、詰めた捜査を特捜部がしてくるとは思っていなかった。官邸から上がってくる情報も危機感がなかったので、かなり面食らっています。直前まで広島でパーティーをやるつもりで、できれば自分も広島に帰りたい、と言っていたほどです。5人衆をはじめ安倍派の閣僚、党幹部のクビを慌てて切って、検察に『穏便に』『岸田派には来ないように』と秋波を送っているのでしょうが、遅すぎると感じます」

「◯◯君はよくやるなあ」と“お褒め”の言葉
 検察から「臨時国会が終わって予定はどうでしょうか」と呼び出しの打診を受けた安倍派の議員もいるようだが、特捜部はどこまでの立件を視野に入れているのだろうか?
「派閥では、パーティーの表と裏の集計やキックバックリストを作成していた時期があって、パー券をノルマ以上に売ったか、いくらキックバックしたか、を事務方が一覧にしていました。ランキング形式にしていたこともあったと記憶しています。細田さんが存命のときは上位にランクされていた池田氏らについて、『〇〇君はよくやるなぁ』と褒めていたそうです。ランキングも、すでに取り調べを受けた派閥の事務方が特捜部に渡したそうです。捜査が早いはずです。バッジ(議員)が2~3人飛ぶとか報道がありますが、強制捜査で家宅捜索が入るだけで安倍派も岸田政権も終わるのではないでしょか」(自民党幹部)
 Xデーはまもなくか?
            (AERA dot.編集部・今西憲之)