2023年12月4日月曜日

ガザでの虐殺を止める努力を強めるべきだとする訴えを小馬鹿にしたバイデン

 櫻井ジャーナルが掲題の記事を出しました。
 米国がイスラエルに事ごとにべったりになっている背景が述べられています。
 この記事では触れられていませんが、米国民の中でイスラエルのガザ攻撃を無条件に支持している勢力はキリスト教の福音主義(聖書原理主義)です(人口比20~30%)。

 「耕助のブログ」は、ネタニヤフが、ガザでの虐殺に関連して旧約聖書サムエル記上15章3節に言及し、パレスチナ人をそこで抹殺されるアマレク人に譬えたことを伝えています。
 ⇒(11月23日)ハマスはテロ組織ではないーハマスの概念定義をめぐる言説工作と情報戦
 櫻井ジャーナルも福音主義との関係については繰り返し述べているので、それがベースにあるのは明らかなのですが、ここでは新たな要素として以下の点を挙げています。

 ガザ沖海底の膨大な天然ガスと石油に関するイスラエル支配権の擁護、中国の「一帯一路」に対抗する「IMEC(インド・中東・欧州経済回廊)プロジェクト」とスエズ運河に対抗する「ベン・グリオン運河計画」(この2点は米国の構想)を推進させる上で、バイデンは米国の私的権力の利権を守るためにはイスラエルを支えなければならないと考えていると述べています。
 その一方でネタニヤフはパレスチナ人を殲滅するまで虐殺を続けると明言しています。
 米国がトンキン湾事件を捏造して開始されたベトナム侵略戦争でも、ソンミ村で数百人の大虐殺が行われ、数十年を経た現在でも強烈に記憶されています。ガザでは、ネタニヤフの野望とバイデンの利権絡みの賛同に基づいて、それが連日連夜繰り返されているのです。

 併せて櫻井ジャーナルの記事「世界の人びとが厳しい目を向けているイスラエルではカルト政治家が虐殺を進める」を紹介します。
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ガザでの虐殺を止める努力を強めるべきだとする訴えを小馬鹿にしたバイデン
                         櫻井ジャーナル 2023.12.03
 インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は11月13日にアメリカを訪問、ホワイトハウスでジョー・バイデンと会談した。その際、ウィドドはバイデンに対し、ガザでの残虐行為を止めるため、アメリカは努力するように訴えたのだが、バイデンはそれを無視、相手を小馬鹿にした態度を示した。重要な気候の話をしたとして、「寒い」と口にしたと語ったのだ。
 ガザにはインドネシアの資金で建設された病院があるが、11月20日にイスラエル軍はその病院を砲撃、2階に命中し、12名以上が殺されたとされている。
 イスラエル軍はハマスの地下施設があるという口実で病院もターゲットにしてきた。アル・シファ病院も破壊された病院のひとつだが、エルサレム・ポスト紙が11月14日に掲載した記事などによると、ハマスの地下司令部はそこから85キロメートル離れた場所にあったその情報を知りながら病院を破壊、患者や避難民を殺傷したのだ。

 イスラエル軍はガザでハマスと戦っているのではなく、イスラエル建国時と同じように、パレスチナ人を虐殺し、恐怖に駆られた人びとが逃げ出すように仕向けていると考えられている。それをわかっているエジプトは国境を開けず、ヨルダンも警戒している。イスラエルは「パレスチナ問題」をそうしたアラブ諸国へ押し付けようとしているとも言われている。
 本ブログでは繰り返し書いてきたが、「イスラエル建国」ではイギリスが重要な役割を果たした。その第一歩はイギリスの外相を務めていたアーサー・バルフォアが1917年11月2日にウォルター・ロスチャイルドへ出した書簡だが、建国の大きな目的のひとつはスエズ運河の安定的な支配だったと考えられている。
 ユーラシア大陸の周辺部を海軍力で支配、内陸国を締め上げるという戦略を成立させる上でスエズ運河は重要な意味を持った。運河によって地中海と紅海を艦船が行き来できることはイギリス海軍にとってだけでなく、物資の輸送においても重要だった。イスラエルと同様、サウジアラビアもイギリスが作り上げた国だ。
 1920年代に入るとパレスチナでアラブ系住民の反発が強まり、デイビッド・ロイド・ジョージ政権で植民地大臣に就任したウィンストン・チャーチルはパレスチナへ送り込む警官隊の創設するという案に賛成、アイルランドの独立戦争で投入された「ブラック・アンド・タンズ」のメンバーを採用することになった。
 この組織はRIC(アイルランド王立警察)を支援、IRA(アイルランド共和国軍)を制圧するために設立された。隊員の多くは第1次世界大戦に従軍した後に失業した元イギリス兵だ。違法な殺人、放火、略奪など残虐さで有名になった。イギリス政府はその働きを評価、パレスチナへ投入、そこでアイルランドと同じことを行うことになる。
 ドイツでナチスが実権を握ると、シオニストはドイツのユダヤ人に目を付ける。そしてシオニストはナチス政権との間でユダヤ系ドイツ人をパレスチナへ移住させることで合意した。「ハーバラ合意」だ。
 その後、イギリスの戦略はアメリカに引き継がれた。イスラエルはアメリカを拠点とする私的権力の利権を守る上で重要な存在になったということだ。それをバイデンは上院議員時代の1986年6月に議会で訴えている。
 そのスエズ運河は現在、エジプト領の中にある。そこでアカバ湾と地中海をつなぐ「ベン・グリオン運河」が計画された。その出口がガザの北側。また地中海の東部、エジプトからギリシャにかけての海域で天然ガスや石油が発見されていることも重要なファクターだ。

 1995年9月、イスラエルのイツァク・ラビン首相とPLOのヤセル・アラファト議長が「オスロ2合意(ヨルダン川西岸地区とガザ地区に関する暫定合意)」に調印、それによってパレスチナ自治政府に海岸から20海里までの海域の海洋管轄権を与えた。
 パレスチナ自治政府は1999年にブリティッシュ・ガスと25年間のガス探査契約を結ぶのだが、その年に大規模なガス田が発見された。ところがパレスチナ人はその天然ガスから何の利益も得ていない。その一方で、イスラエルは2007年以降、パレスチナ人に対する弾圧の度合いを格段に強める。そしてイスラエルはガザ沖の天然ガスの支配権を確立する
 2010年、イスラエル北部で推定埋蔵量約4500億立方メートルの大規模なガス田を発見したとノーブル・エナジーが発表。USGS(アメリカ地質調査所)の推定によると、エジプトからギリシャにかけての海域には9兆8000億立方メートルの天然ガスと34億バーレルの原油が眠っている。ビル・クリントン元米大統領はノーブル・エナジーのロビイストだった。このエネルギー資源をキプロス経由でヨーロッパへ運ぶという計画がある
 ノーブル・エナジーはヒラリー・クリントンに選挙資金を提供していた。そのヒラリーをジョージ・ソロスが操っていることは2016年に漏れた電子メールで明らかにされたが、そのソロスはロスチャイルド金融資本と結びついている。

 ロシアは今年9月10日から13日にかけてウラジオストクでEEF(東方経済フォーラム)を開催したが、その直前の9月8日、ニューデリーでG20サミットが開かれた。その席上、インドのナレンドラ・モディ首相はIMEC(インド・中東・欧州経済回廊)プロジェクトを発表している。
 IMECはインド、UAE(アラブ首長国連邦)、サウジアラビア、イスラエルを結び、さらにギリシャからEUへ伸びるルート。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相によると、アメリカがイスラエルにこの計画を持ちかけたという。この回廊は地中海につながるが、その出口がガザに接している
 ロシアと中国は2015年、BRI(一帯一路)とユーラシア経済連合(アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスタン、ロシア)を連結し、多極的な関係を築くと宣言しているが、この構想に対抗することがIMECの目的だ。
 インドは以前からイスラエルやサウジアラビアとの関係を強化、サウジアラビアもイスラエルに接近していた。アメリカの属国と化したヨーロッパを繋ぎ止めるため、ヨーロッパと西アジアをつなぐわけだ。その中核になるのがイスラエルにほかならない。
 アメリカ政府のエネルギー安全保障顧問を務めるアモス・ホクスタインは11月20日にイスラエルを訪問、ヒズボラの問題だけでなく、地中海東岸の天然ガス田について話し合ったと伝えれている。アメリカにはベン・グリオン運河計画やIMECプロジェクトもあり、ガザの状況がこうした利権を壊さないよう画策しているのだろうが、バイデン大統領はアメリカの私的権力の利権を守るためにはイスラエルを支えなければならないと考えている人物だ。
 バイデンが仕えるアメリカやイスラエルの支配層にとってガザのパレスチナ人は目障りな存在。そこでガザから彼らを消し去ろうとしてきたが、今回のガザ攻撃は特に酷い。


世界の人びとが厳しい目を向けているイスラエルではカルト政治家が虐殺を進める 
                          櫻井ジャーナル 2023.12.04
 ガザはアメリカの私的権力にとって重要な場所になった。まず、地中海の東部、エジプトからギリシャにかけての海域で9兆8000億立方メートルの天然ガスと34億バーレルの原油が発見された。ガザ沖にも天然ガスは存在、そこからキプロスを経由してイタリアへパイプラインで輸送する計画がある。そのライバルになるロシアの天然ガスを運ぶパイプラインはすでにアメリカが止めたり破壊した。
 9月8日にニューデリーで開かれたG20サミットの席上、インドのナレンドラ・モディ首相が発表したIMEC(インド・中東・欧州経済回廊)プロジェクトはインド、UAE(アラブ首長国連邦)、サウジアラビア、イスラエルを結び、さらにギリシャからEUへ伸びる輸送ルートで、中国のBRI(一帯一路)に対抗する目的で計画された。後ろ盾はアメリカだ。そのIMECはガザの北で地中海につながる。
 19世紀以来、アングロ・サクソンの世界支配プロジェクトで重要な役割を果たしてきたスエズ運河は現在、エジプト領の中。エジプトの影響力を弱めるため、「ベン・グリオン運河」が計画されている。この運河はアカバ湾のエーラト港からヨルダンとの国境沿いを進み、ガザの北側から地中海へ出る。

 アメリカの戦略上、重要な場所になったガザにイスラエルは強制収容所を築き、中東を不安定化させている。そこでガザやヨルダン川西岸からパレスチナ人を排除しようとしてきた。この手法はイスラエルを「建国」する際やアメリカを「建国」する際にも使われた。今回のガザに対する攻撃も民族浄化作戦にほかならない
 日米欧や中東の「王国」を支配している人びとはイスラエルの残虐行為を容認しているが、全体で見るとイスラエルを見る目は厳しくなっている。サウジアラビアなど「親米」とされてきた国でも国民の怒りを無視できず、ガザでの虐殺を非難するポーズはとっている。
 イスラエル軍がガザで虐殺を続けている別の理由もある。イスラエルはナチスと同じようにカルト色が濃く、その信仰が影響している。
 10月7日にハマスの戦闘部隊がイスラエルへ攻め込んだ直後、イスラエルの首相を務めているベンヤミン・ネタニヤフは「われわれの聖書(キリスト教における「旧約聖書」と重なる)」を持ち出し、パレスチナ人虐殺を正当化した。
 聖書の中でユダヤ人と敵だとされている「アマレク人」を持ち出し、「アマレク人があなたたちにしたことを思い出しなさい」(申命記25章17節から19節)という部分を引用、この「アマレク人」をイスラエルが敵視している勢力に重ねて見せたのだ。「アマレク人」を家畜ともども殺した後、イスラエルの民」は「天の下からアマレクの記憶を消し去る」ことを神に命じられたという。
 そしてサムエル記上15章3節の話を彼は持ち出す。そこには「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」ということが書かれている。これこそがガザでイスラエルによって行われていることだというのだ
 ネタニヤフによると「われわれは光の民であり、彼らは闇の民だ」としたうえで、イザヤの預言を理解しなければならないと主張する。「われわれ」とはイスラエル人、「彼ら」とはパレスチナ人、イスラム教徒、あるいはイスラエル以外の人びとを指しているのだろう。

 また、ギラド・エルダン国連大使は10月8日に安全保障理事会で「これはイスラエルの9/11だ」と演説​、ヨアブ・ギャラント国防相はパレスチナ人を「獣」だと表現した。
 インターネットには、95歳になるイスラエル陸軍の退役兵、エズラ・ヤチンがユダヤ人に対してパレスチナ人を殺して彼らの記憶を消し去れと呼びかけている映像が流れている。
 イスラエルの神憑った人びとはナイル川とユーフラテス川に挟まれた地域、つまりパレスチナのほかレバノン、ヨルダン、クウェート、シリア、さらにイラクの大半、エジプトやサウジアラビアの一部を「約束の地」だと主張している。「大イスラエル構想」とも呼ばれている。
 アメリカやイスラエルの「建国」は神憑っているアメリカの場合、1617年にマサチューセッツ湾へ到達したジョン・ウィンスロップは自分たちを「神から選ばれた民」だと主張、神との契約に基づいてマサチューセッツ植民地を建設すると語っている。
 この感覚はその後も生き続け、アメリカ軍を「神の軍隊」だと考える人が1960年代にもいたが、ベトナム戦争で「神の軍隊」のはずであるアメリカ軍が勝てない。1967年にベトナム戦争は泥沼化していた。その事実が明らかになるのは1968年1月31日に南ベトナムの主要都市を一斉に攻撃した「テト攻勢」からだ。
 マーチン・ルーサー・キング牧師は1967年4月4日にニューヨークのリバーサイド教会で開かれた「ベトナムを憂慮する牧師と信徒」で「沈黙が背信である時が来ている」という主催者の訴えに賛意を示し、「なぜ私はベトナムにおける戦争に反対するのか」という話をしている。牧師が暗殺されたのは1年後の4月4日だ。1968年にはキング牧師と親しかったロバート・ケネディは大統領選挙の最中、6月5日の銃撃され、翌日に死亡した。

 1967年6月5日にはイスラエル軍がエジプト、シリア、ヨルダンを奇襲攻撃して第3次中東戦争が始まった。6月8日にアメリカは情報収集船の「リバティ」を地中海の東部、イスラエルの沖へ派遣、そのリバティをイスラエル軍は攻撃する。偵察飛行を繰り返した後の攻撃で、アメリカ軍の艦船だということを知った上での攻撃だ。
            (中 略)
 リバティが攻撃されている際、イスラエル軍の交信内容をアメリカの情報機関は傍受、記録していた。その中でイスラエル軍のパイロットは目標がアメリカ軍の艦船だと報告、それに対して地上の司令部は命令通りに攻撃するように命令している。イスラエル軍はアメリカの艦船だと知った上で攻撃していることをアメリカの情報機関は知っていた。
 その交信を記録したテープをアメリカの電子情報機関NSAは大量に廃棄したという。複数の大統領へのブリーフィングを担当した経験を持つCIAの元分析官、レイ・マクガバンもこうした隠蔽工作があったと確認している。

 当時、アメリカ政府の内部で秘密工作を統括する中枢は「303委員会」と呼ばれていた。1967年4月、そこで「フロントレット615」という計画が説明されたという。リバティを潜水艦と一緒に地中海の東岸、イスラエル沖へ派遣するというもので、実際、後にリバティや潜水艦は派遣された。
 この計画には「サイアナイド作戦」が含まれていた。リバティを沈没させ、その責任をエジプト、あるいはソ連に押しつけて戦争を始めようとしたという推測がある。いわゆる偽旗作戦だ。エジプトが狙われていた可能性が高いだろう。アメリカの偵察船をイスラエルに攻撃させ、船を沈没させて乗員を皆殺しにしようとしたのはジョンセン政権だった可能性があるのだ。
 イスラエルが攻撃に踏み切った目的、戦争の実態、リバティを攻撃した本当の理由などを知ることのできる資料が2017年には明らかにされるはずだったが、10年7月にベンヤミン・ネタニヤフ首相は情報公開の時期を20年間遅らせることを決めている
 第3次中東戦争の結果、約43万9000人の新たなパレスチナ難民がヨルダン川東岸へ移動しているが、この時にゲリラ戦でイスラエル軍を苦しめたのがファタハであり、ファタハを率いていたのがヤセル・アラファトである。このアラファトを弱体化させるため、イスラエルはハマスを創設した。
 第3次中東戦争以降、アメリカのキリスト教福音主義者(聖書根本主義者)はイスラエル軍を新たな「神の軍隊」とみなすようになり、リクードの後ろ盾になった。ネタニヤフはリクードの政治家だ。