2025年7月31日木曜日

ユダヤ教指導者400人が非難 「イスラエルは飢餓を戦争利用」(しんぶん赤旗)

 しんぶん赤旗に掲題の記事が載りました。
 世界各地のラビ(ユダヤ教指導者400人以上が28日、イスラエルがガザ地区で「飢餓を戦争の手段として使用している」と非難する公開書簡を発表しました
 ネタニヤフは、パレスチナ人をアマレク人古代パレスチナの遊牧民族)に譬えて、度々3600年ほど前の故事?を引いて「アマレク人を絶滅させなければならない」と強調しましたが、ラビたちは書簡の中で、イスラエルが行っている政策ユダヤ教の根幹を揺るがすものである、「(古代の)イスラエルの預言者たちの時代から続く、生命の尊厳や正義を重んじる教えが危機にさらされていると述べ、それを全否定しました。さすがに指導層の説くところは合理的にす(そもそもアマレク人は聖書上も既に絶滅した民族で、それを現在に蘇らせるというのは余りにも不合理です)。

 またイスラエルの有力な人権団体ベツェレムは28日、イスラエルによるガザ住民への攻撃と封鎖について、「国家によって組織的に行われたジェノサイド(集団殺害)が進行している」と明言する報告書を発表しました
 合せて4つの記事を紹介します。
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ユダヤ教指導者400人が非難「イスラエルは飢餓を戦争利用」
                        しんぶん赤旗2025年7月30日
【カイロ米沢博史】世界各地のラビ(ユダヤ教指導者400人以上が28日、イスラエルがパレスチナ・ガザ地区で「飢餓を戦争の手段として使用している」と非難する公開書簡を発表しました。
 イスラエルのヘブライ語無料紙「イスラエル・ハヨム」によると、この書簡は、ジョナサン・ウィッテンバーグ師(英ロンドン)、アーサー・グリーン師(米ボストン)、アリエル・ポラック師(イスラエル・テルアビブ)らが共同で執筆したもので、署名には欧米やイスラエルなど世界各地のラビが加わっています。
 書簡はイスラエル政府に対し、国際的な監視の下でのガザ地区への大規模な人道支援の許可人質の解放に向けた「あらゆる手段」の活用、さらにヨルダン川西岸地区での入植者による「攻撃的かつ犯罪的な暴力の即時停止」を求めています
 ラビたちは書簡の中で、イスラエルが行っている政策がユダヤ教の根幹を揺るがすものであると警告し、「(古代の)イスラエルの預言者たちの時代から続く、生命の尊厳や正義を重んじる教えが危機にさらされている」と訴えました。
 さらに、ガザ地区で「多数の女性や子ども、高齢者を含む民間人の大量殺害や、戦争手段としての飢餓の利用は容認できない」としたうえで、「人道支援への厳しい制限や、食料・水・医薬品の欠乏で民間人を苦しめることは、トーラー(ユダヤ教の律法)の価値観に明確に反する」と強調しています。


イスラエルの人権団体 「ジェノサイド」と明言
                        しんぶん赤旗2025年7月30日
【カイロ=米沢博史イスラエルの有力な人権団体ベツェレムは28日、イスラエルによるパレスチナ・ガザ地区への攻撃と封鎖について、「国家によって組織的に行われたジェノサイド(集団殺害)が進行している」と明言する報告書を発表しました。イスラエル紙ハーレツやタイムズ・オブ・イスラエルは、イスラエルの主要な人権団体が「ジェノサイド」と非難たのは初めてと報じまた。
「われわれのジェノサド」と題したこの報告書は、ガザにおける無差別攻撃、生活インフラの破壊、麹移動、飢餓政策、国連機関への攻撃といった一連の措置は、パレスチナ人社会集団破壊を意図するものであり、国際法上のジェサイドを実行していると非難しました。
 また、ヨルダン川西岸地区での暴力の拡大やイスラエル国内における差別政策も、同じ「パレスチナ人の人間性を否定する」論理に根差していると指摘。これらの重大な人権侵害が国際社会による実効的な対応の欠如によって支えられていると批判し、欧米諸国がイスラエルの「自衛権」の名のもとに武器を供与し、ジェノサイドを可能にしてきた責任にも言及しました。
 英文で88ページにわたるこの詳細な報告書は最後に、「ガザにおける破壊と倫理の崩壊に対抗するには、犯罪を正面から認識し、国内外で責任追及に真剣にとりくむ行動が必要」と強調。イスラエル社会と国際社会の双方に対して、直ちにジェノサイドを止める措置をとるよう呼びかけています。


24時間で餓死14人 ガザ地区
                        しんぶん赤旗2025年7月30日
【カイロ=時事】ロイター通信によるとパレスチナ・ガザ地区の保健当局は28日、過去24時間で飢餓や栄養失調で少なくとも14人が死亡したと発表しました。飢えによる死者数は202310月以降、累計1477人で、うち88人が子どもといいます。
 世界食糧計画(WFP)は、ガザの周辺地域には17万トン分の食料が留め置かれていると指摘。仮にイスラエルがガザヘの搬入を許可すれば、ガザの全住民が3ヵ月間暮らせる量と説明しました。


イスラエル極右2閣僚入国禁止 オランダ政府
                        しんぶん赤旗2025年7月30日
【アムステルダム=ロイター】オランダ政府は、イスラエル大使を呼び出し、パレスチナ・ガザ地区での「耐えがたく、弁護しがたい」状況を非難するとともに、イスラエルの極右閣僚2人の入国禁止を言い渡しました。28日に発表された書簡で明らかにしました。
 オランダは、ベングビール、スモトリッチ両閣僚が、パレスチナ人に対する暴力を繰り返し扇動し、ガザの「民族浄化」を呼びかけているとして、オランダヘの入国を禁止しました。
 先月、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、ノルウェーも同様の措置を発表しています。

ホワイト・エンパイアは人々を餓死させている(賀茂川耕助氏)

 海外の記事を紹介する「耕助のブログ」に掲題の記事が載りました(エンパイア⇒帝国)。
 記事は、「2021年に米国とイスラエルの2か国だけが食料を人権として認める決議に反対」したことを「今ならその理由がわかるだろう」として、「多数の住民を餓死させる戦術は植民地政策の歴史において何度も繰り返されてきた。ベンガルで数百万人、アメリカ大陸で数百万人、アフリカで数百万人を餓死させた」と述べます。いぜれも信じられない数字です。
 そうした歴史があったのであればなお更、いま西側諸国の容認の下でイスラエルがガザの住民に対して行っている「狂気の行為」は絶対に認められません。
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ホワイト・エンパイアは人々を餓死させている
                  耕助のブログNo. 2608 2025年7月30日
    The White Empire Is Starving People To Death
                      by Indrajit Samarajiva
人々が飢えに苦しむ中、恵まれた場所にいる私が気分ちよく文章を書くことは難しい。最も腹立たしいのはこれがすべて意図的な行為であるということだ。2021年、米国と「イスラエル」の2か国だけが食料を人権として認める決議に反対した。今ならその理由がわかるだろう。これは、私たちが目撃している長期にわたるジェノサイドの意図を示すもう一つの証拠に過ぎない
ホワイト・エンパイア(『イスラエル』、米国、イギリス、どれも同じ)は食料を武器として使い、武装解除はしない。彼らは単に爆撃するだけでは満足せず、人々を餓死させたいのだ。これは植民地政策の歴史において何度も繰り返されてきた。ベンガルで数百万人、アメリカ大陸で数百万人、アフリカで数百万人を餓死させた。偽りの利益が頭をもたげるところには飢饉が待ち構えている。四騎士図の飢饉は天秤を携えて現れる。それは利益になるからだ。これがホワイト・エンパイアが築いたジェノサイド的暴力であり、『イスラエル』はその最終のアバター(神の意志により)なのだ。彼らはガザを絶滅収容所に変えたが、彼らのメディアは依然としてそれを「やむを得ない事情」だと言う。歴史は彼らを免罪しないだろう。しかし歴史は今の誰の糧にもならないだろう。

ジェノサイドは殺人よりも悪い。なぜならより高い次元で人を殺すからだ。文化的に人を殺すのだ。人に食料を与えることは人間の文化の根底にあるが、資本主義文化ではそうではない。資本主義文化では食料は単に買うもののひとつに過ぎない。私がタミル語(妻の言語)で最初に覚えた言葉のひとつは「食事しましたか?」だった。これは基本的な挨拶であり、相手が食べていないならあなたは何かしなければいけない。人々、特に子供たちに食料を与えることは命そのものである。その権利を否定することは彼らを内側から深く殺すことだ。親として、子供たちが「お腹が空いた」と言えば家中の全員が急いでそれを満たそうとする。もし彼らに食料を与えられなければ、泣きたい気持ちになるだろう。これがジェノサイドである。彼らは単にあなたを殺すだけではない。彼らは命に対する文化的な力を奪っているのだ。

ニュースの見出しにはならないが期限は迫っている。「イスラエル」は数ヶ月以上にわたり食料を遮断しており、人々は衰弱し、倒れ、死んでいるほぼ全員が回復不可能な栄養失調の状態に近づいている。すべての子供たちは、トラウマは言うまでもなく、何らかの形で一生、発育不全に陥っている。これは明らかに計画され、戦略的に実行され、タイミングを計って行われている。彼らはカレンダーの日付を数え、パレスチナ人の人生から年、世紀を吸い取ろうとしている。イスラエルの退役将軍ギオラ・アイランドが述べたように、「だからイスラエルは 相手側にその生存を延長するいかなる能力も提供してはならない」。そして「ガザ地区南部の深刻な疫病は勝利を近づけ、IDF⇒イスラエル軍)兵士の犠牲者を減らすだろう」。これが「将軍の計画」と呼ばれ、帝国の全面的な支援を受けて実行されている。当然である。これがアメリカが「征服」され、ヨーロッパが貧困から脱した方法だからだ。これが植民地政策の基本なのだ

飲み物とスナックを手にした快適な場所にいる人々が人間の体が機能停止に至るまでの時間を議論し、その計画を実行している。文字通りの期限が設定されいる。彼らはこれらの人々を死なせようとしている。これは単なる「イスラエル」ではない。イスラエルというのは人工的なくくりであり、これがホワイト・エンパイアなのだ。イギリスが監視の飛行機を飛ばし、米国とドイツが武器を供給し、フランスは便乗し、エジプトは国境を封鎖し、他のアラブの指導者たちはこの世の屈辱と来世を交換している。私は通常、アブ・ウバイダ(アル・カッサム/ハマス)の言葉に慰めを求めるが、今は彼でさえ最後のメッセージで悲しげに語っている。彼は言った。
私たちは歴史にこう言う。すべての苦悩と痛みを込めて、そして私たちの民族の息子たち、娘たちの前で。このイスラムとアラブの民族の指導者たちよ、そのエリートたち、主要政党たちよ、学者たちよ——あなたたちは全能の神の前で私たちの敵だ。あなたたちは孤児となった子供たち、悲しむ母親たち、避難民、ホームレス、負傷者、破壊された者、飢えた者たちの敵だ。あなたの首にはあなたの沈黙によって裏切られた数万人の無辜の血がのしかかっている。

今日、ガザの保健省は、「前例のない数の飢えた人々が、あらゆる年齢層で、深刻な疲労と衰弱状態で救急部門に運び込まれている。身体が衰弱した数百人が飢餓と身体の耐力限界により、確実な死に直面するだろう」と警告している。正直、読むことも、書くことも耐えられないが、これが現実だ。神に誓って、私も心の中で死んでいる(臆病者は何度も死ぬ)。ショッピングモールを見回すと瓦礫が見え、私の子どもたちに目をやると飢えているのが見え、この痛みを感じながら幸せな瞬間を過ごしている。私たちは生き続けている。しかし何をしているのか?人々が死んでいく。単に死んでいくだけでなく、殺されている。単に殺されているだけでなく大量虐殺されている。

証言は無意味だ。実際に何かをしているのは武器を握っている者だけだ。大量虐殺は武装介入でしか止められない。手をこまねいていても何も変わらない。これは最もひどいジェノサイドなのに、真の権力を持つ者たちは何もしない。最も不自由な人々(パレスチナ、イエメン、イラン、ヒズボラ)だけが自分のできることをやっているのに、快適な生活を送っている者たちはその快適さを少しも手放そうとはしない。金持ちが天国に入るよりも、ラクダが針の穴を通るほうがまだ容易だ。国も同じだ。私としてはすべて地獄に落ちればいいと思っている。すべての国(『イスラエル』を除く。ユダヤ人は完全に大量虐殺に走っている)で、この苦痛を止めたいという圧倒的な願望がある。しかしその願望を圧倒する何かがある。脅迫と白人優越主義の組み合わせ(これは彼らの初めての大量虐殺ではない)だ。だから私たちは無力にも眺めている。彼らは私たちに眺めさせたいのだ。

グスタボ・ペトロが、ホワイト・エンパイアを名指しはせずに非難したように、「EU、イギリス、そして特に米国——彼らは皆、人々への爆撃を支持している。なぜなら彼らは人類全体に教訓を授けたいからだ。彼らは私たちにこう言っている。「我々の軍事力を見ろ。パレスチナに起こることは、私たちの許可なしに変化を試みるなら、あなたたちにも起こるだろう

これが、彼らの終わりだ。インシャラー。彼らは未来を止めるために子供たちを殺している。長期的に見れば成功しないが、短期的に人々は死んでいる。それでも未来は来る。しかし死ななくてもよかった100万人もの人々が生け贄として犠牲になった。彼らは未来を殺すことはできないが、今この瞬間、子供たちを殺すことはできる。老人や大人、そして土地自体も例外ではない。彼らの魂も、彼らにとっては何の価値もないものだろう。魂を売って世界を手にしたところで、何の得があるか?実は一時的には多くのものを得るかもしれないが、それは長くは続かない。いつも自分にそう言っている。歴史の視点から見れば、レジスタンス(抵抗勢力)は確実に勝利し、帝国はゆっくりと滅んでいく。でも一粒の米も空腹の子どもの口に入れることができない今、それがどんな意味があるというのか?そんな子どもに、彼らが決して知ることのない未来について何と言えばいいのだろうか?私はよくそのことを考え、悲しみに暮れる。

わからない。知りたくもない。でも知っている。これが私たちが知っている世界の終わりの人生だ。それは常に死にかけており、内側から死んでいく。そして人々が苦悩し、より良い人間たちが命を懸けて戦う中、私はこれを書いている。私は現在の苦悩を悲しむことさえできないから、歴史に逃げ込むのだと思う。しかし、時々それは忍び寄ってくる。海の向こうから魂の叫びが聞こえ、それが私の魂を傷つけると誓う。
https://indi.ca/the-white-empire-is-starving-people-to-death 


ゼレンスキーの終焉?
                  耕助のブログNo. 2607 2025年7月29日
  The End for Zelensky?
    ワシントンはウクライナ大統領の退陣を望んでいる – それは実現するだろうか
                              by Seymour Hersh
2023年秋、ウクライナ軍総司令官のヴァレリー・ザルズニイ将軍は『エコノミスト』誌のインタビューでロシアとの戦争が「膠着状態」に陥ったと言った。その後、ゼレンスキーが彼を解任するまで3ヶ月を要した。ウクライナで最も人気のある公人であるこの将軍は1か月後に英国大使に任命され、目立たないながらも、その職務を立派に果たしている。
ザルズニイは現在、最も説得力のあるゼレンスキーの後継者と見られている。ワシントンの情報通の当局者によると、その職は数か月以内に彼のものになるかもしれないとのことだ。もしトランプ大統領が決定する場合、ゼレンスキーは亡命の候補リストに載っている。ゼレンスキーが辞任を拒否した場合、おそらくするだろうが、関係する米国当局者は、「彼は強制的に追放されるだろう。ボールは彼の側にある」と私に語った。ワシントンとウクライナには、ロシアとの空戦が激化している中で、ロシアのプーチン大統領と和解できる可能性が残っているうちに早急に終結すべきだと考える者が多くいる。
ゼレンスキーは今後の展開をわかっている兆候がある。彼は、国防相、首相、米国大使の 3 人の高官を異動または解任した。米国当局者は「ゼレンスキーは危険の兆候を認識し始めている」と私に語った。
同当局者は、キエフやその他の地域における政治的暴力について、今後の展開は、国民が他に選択肢のない状況に至る程度によって大きく左右されると付け加えた。ゼレンスキーが自発的に辞任することはないだろう。ここに、米国の内部での議論がある。賢明な立場は、ウクライナ人に自力で解決させ、CIA を巻き込んで事態を封じ込めるべきではないというものだ。これまでのところ良識が政策を動かしている。しかし、一部の匿名指導者は焦っており、事態の解決には 50 日以上かかるだろう。
これについてトランプがどのように考えているか私は知らない。大統領は今週初め、NATO のマルク・ルッテ事務総長と会談した後、記者団に対して、プーチン大統領は「多くの人々(過去の米国大統領数人を含む)をだました」が、「私はだまされなかった」と発言し、ロシアに対する姿勢を公に強硬にした。また、ウクライナに米国の武器をさらに送り、ロシアの奥深くまで攻撃できる能力を強化すると述べた。
トランプの発言に対するロシアの公式反応は、その深刻さを認識し、その一部はプーチン大統領個人に向けられたものであると認識した。他の当局者は、ロシアはキエフなどに対する攻撃のペースを引き続き強化する意向を明らかにした。
ニューヨーク・タイムズ紙の国際特派員、ポール・ソンは、ロシアはトランプの新たな強硬姿勢に「動揺していない」ようだと報じた。彼は、多くのロシアの評論家が「トランプが本当に方針を転換し、ウクライナ支援に完全にコミットしているかどうか疑問視している」と指摘した。私はここでの情報によると、トランプは昨年冬、ゼレンスキーがワシントンでの失敗に終わった国賓訪問に普段の戦闘服で出席したことにいまだに不満を抱いており、彼を「パジャマでホワイトハウスに来た」と表現している。
一方、プーチンが米国がゼレンスキーを退陣させたいと考えていることを知っていたかどうかは確認できなかったが、ザルズニイがロシア軍参謀総長でプーチンの側近であるワレリー・ゲラシモフと業務上の関係を保っていることを知った。ゲラシモフは私が以前に書いたように、ザルズニイが『エコノミスト』誌に戦争が膠着状態にあると明かすことを事前に知っていた数少ない人物の一人だ。
米国と英国の諜報機関が慎重に評価した推定値によると、2022 年初めにプーチン大統領が戦争を開始して以来、ロシアの死傷者数は 200 万人に達し、現在の公表数の 2 倍近くに達している。「プーチンは権力の喪失を恐れてはいないが、人気は低下している」と米国当局者は述べ、「ドナルド・トランプはゼレンスキーの支援者であり、ウクライナ戦争を継続できる唯一の人物だ。本当の権力者は誰なのか?ゼレンスキーではない。彼の唯一の命綱は米国だ。トランプは、「この無能な連中をどうやって止めさせるか」と悩んでいる。彼は自分だけが取引できると思っているのだ。
もしゼレンスキーが交代すれば、「勝った、と主張できるというのがプーチンへのメッセージだ」。
ワシントンでは、プーチンがゼレンスキーを軽蔑しており、事態がエスカレートする可能性があることを考慮して戦争を終わらせるための真剣な交渉を開始するためにウクライナに新しい指導者を擁立したいという新たな衝動が生まれていると聞いている。
               (後 略)
https://seymourhersh.substack.com/p/the-end-for-zelensky

右と左を分ける3本の対立軸 - 極右台頭への批判も警戒もない牧原出と中北浩爾

 世に倦む日々氏が掲題の記事を載せました。
 同氏は、日本のメディアや評論家が「参政党」を極右と認定せず、「その危険性を明確に指摘しないどころか、逆に国民党を含めて右翼二党のお神輿担ぎをしている」と批判します。
 そして「右派と左派、右翼と左翼の対立は、現代政治において基礎的で根本的な問題」であり、「この対立軸をめぐって政党が分かれ、国民の支持を直接争うのが選挙戦である」として、「大雑把に、右側に参政・自民・国民が、左側に共産・れいわが、その中間に公明と立憲が位置する配置と構図となる。このイデオロギーと基本政策の対立軸を正視して意味を把握しないと、政治は何も理解することができない」、「政党の名前が変わっても、新たな意匠や標語で出現しても、政党は必ずこの配置図の中に収まるところとなる」として、具体的に3本の軸を呈示しました。
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右と左を分ける3本の対立軸 - 極右台頭への批判も警戒もない牧原出と中北浩爾
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参院選の結果が出て一週間以上が経った。相変わらずマスコミは参政党を極右と呼ばない。そして予想どおり、参政党を「普通の野党」として認めて持ち上げ、その政策や政見を異端視したり危険視したりする態度で扱わない。一緒に躍進した国民民主党と同じ表象で捉え、改革保守”とか新興保守”という造語で範疇化し、ポジティブな意味を被せて報道、二党を同じバスケットに入れて総括している。10代20代の若者から支持を集めた国民民主党を称揚し、30代40代の現役世代の票を掘り起こした参政党に脚光を浴びせ、二党の勝利と成功を言祝いでいる。その民意"を積極的に評価する姿勢だ。さらにその裏返しで、得票と議席を大幅に失った共産党や公明党を、時代遅れ高齢者政党"だと嘲り、若者から見放された組織依存政党の末路だと切り捨てている。海外の視線や論調とは全く違うが、それは意に介してない。国民民主党と参政党が現代の正義だと言わんばかりだ

安倍晋三に心酔し、安倍政治の片棒を担ぎ、安倍晋三のおかげでマスコミや大学等の業界で出世した者たちが、我が世の春が戻って来たとばかり有頂天になって狂騒している。国民民主党と参政党は、安倍政治のシンボルらしく、そのため、この2年ほど不調で冷や飯だった安倍政治系の界隈が沸き立ち、右翼ネオリベ路線の復活と再興に気分を高揚させている。不愉快で苛立たしい。前回の記事でも書いたが、私は、参政党を極右として正しく認識し分類し整理し定置すべしという立場であり、その視点を補強説明すべく、以下に教科書的な基本論を並べてみたい。本来、こうした地味な解説は、マスコミに出演する政治学の教授がギャラ仕事で担当すべき任務だろう。が、牧原出も、中北浩爾も、参政党を極右と認定せず、その危険性を明確に指摘しない。玉木国民民主の欺瞞性や有毒性を批判する視座を視聴者に提供しない。逆に、右翼二党のお神輿担ぎをする神主の如き役割を演じている

右派と左派、右翼と左翼の対立は、現代政治において基礎的で根本的な問題であり、この対立軸をめぐって政党が分かれ、国民の支持を直接争うのが選挙戦である。大雑把に、右側に参政・自民・国民が、左側に共産・れいわが、その中間に公明と立憲が位置する配置と構図となる。このイデオロギーと基本政策の対立軸を正視して意味を把握しないと、政治は何も理解することができない。政党の名前が変わっても、新たな意匠や標語で出現しても、政党は必ずこの配置図の中に収まるところとなる。次に、右と左を分ける対立軸は3本ある。第1の軸は経済政策の軸であり、第2の軸は歴史認識と国家観の軸であり、第3の軸はジェンダーとマイノリティとDEI、すなわちアイデンティティポリティックスの軸である。3本の軸は次元が違う。できれば、この3本の軸を3次元座標の図に表示してイメージ図を描画すると分かりやすいが、それは別の機会の宿題にして、今回は文字だけで説明を並べる

1.新自由主義(資本主義)か、公共主義(社会主義)か
右派が資本主義で、左派が社会主義だ。この対立は古典的だが、どれほど時間が経っても古くならない。政治を半世紀眺めた感想として、社会主義の政策や政党はどんどん弱く、資本主義の政策や政党はどんどん強くなっている。資本主義がケインズ的な、すなわち嘗ての宏池会経世会的な修正と抑制を受けず、どんどんラディカルな純度と強度を増し、竹中平蔵的な新自由主義の猛毒性を増している。そのことによって日本の社会は甚だしく貧富の差が広がった構造になり、自己責任の原理が貫徹し、若者も高齢者も多くの国民が希望と意欲を失って疎外され、倫理を枯らして病んだ状態に荒廃している。救済の道筋が見出せないため、人々は倒錯して新NISAの証券投機に向かうなど、内面を自ら新自由主義化させ、マスコミに感化されてトランプを信奉し、SNSに誘導されてリバタリアンに恭順する生き方に染まっている。人格を資本主義化させ、人を傷つけ人に傷つけられて毎日を生きている

この第1の軸で分けたとき、維新、国民、自民が右派となり、共産とれいわが左派で、公明はこの30年間政策は右派だが原点は中道だ。立憲は党内に右派と左派の二つがある。参政は中道的な素振りをしているが、ベールを脱いだ内実は維新・国民と同じ右派でトランプ流リバタリアンだろう。一瞥して、維新が最も新自由主義が露骨で、バックに竹中平蔵が付いている事実を公言している。国民民主も、終末期医療の見直しを公約し、尊厳死法制化を提言している。国民民主の消費税率5%という政策は、選挙のときだけ掲げる看板で、選挙で掲げてないと恰好がつかないだから掲げるだけで、本気で実現する意思はない。維新の食料品税率ゼロも同じだし、立憲民主の食料品税率ゼロも、今度の参院選で集票狙いで急に言い出した話であり、どこまで本気かは疑わしい。どちらも、単に議論の材料にし、選挙の釣り餌にするために出していて、野党の消費減税策を一本化させないための奸策の臭いが漂う

社会主義の理念や政治はどんどん退潮傾向にある、というのは一面の真実だが、資本主義が生き続ける限り、それを修正・改良・改造・転換しようとする営みや試みも消えず、資本主義(新自由主義)の矛盾を解決し超克しようという政策や政治の模索が絶えることはない。先進諸国の多くの政党が採用し準拠したピケティの格差是正論もその一つだし、公共政府の金融と財政の役割を大きくし、雇用創出と社会保障をカバーしようとするケルトンのMMT現代貨幣理論もその一つであると言える。左派だ。それに対して市場原理を重視し、資本の無制限の自由をどこまでも優先し、富裕層の所得減税を言い、庶民層の負担増を求め、それこそがあるべき社会の理想像だとする教義があり、右派の政策が推進される。その政策を合理化するプロパガンダがマスコミで撒かれる。この30年間、竹中平蔵とダボス会議がそれを担い、遂にE.マスクのリバタリアン思想の狂気的窮極まで発展した。価値観は常にぶつかり続け、政治の対立を媒介する

2.平和憲法(戦後民主主義)の国家観を肯定するか否定するか
憲法9条の理念と構想を肯定し追求するのが左派で、それを否定し無価値化するのが右派である。説明も不要なほど単純な政治の事実だ。きわめて重要で根本的な対立軸であり、戦後の80年はその対立の歴史だった。現在、共産と社民が左派で、立憲の一部にも左派の要素が残っている。れいわも左派的だが、あまり強調していない。公明は原点は左派だったが、与党となって以降の政策は右派であり、大きく転向して改憲の策動に加担するようになった。その他の政党は、参政、維新、自民、国民、等々、悉く右派の範疇に属する。この第2の対立軸は、先の戦争に対する歴史認識と直結していて、先の戦争を侵略戦争として否定し反省するか、それとも正義の戦争として容認するかという価値判断で大きく分かれるところとなる。30年前、1995年の村山談話の頃から、『ゴーマニズム宣言』やら「新しい歴史教科書をつくる会」の動きが興隆し、勢力を増し続け、当時は反動だった右派の価値観が主流となり支配的となった

ちなみに、上皇と上皇后のスタンスは、その過去の発言や行動からして明らかに左派に位置し立脚していて、平和憲法の原理原則を擁護し、戦後民主主義に積極的にコミットする地平にある二人の姿はまさに日本国憲法を体現しており、日本国憲法の前文と全条文に倫理的に誠実に純白に向き合い、日本国憲法の崇高な価値を日本国民に教える指導性となっている。さぞかし日本の現状を悲観し憂慮しているだろうと想像する。この第2の対立軸は、アメリカに対する関係を規定し、日米同盟・日米地位協定に対する姿勢を拘束する軸にもなっていて、日米同盟に最高価値を見い出し、アメリカへの追従を国家の絶対不可侵の原則とするのが右派である。逆に、対米自立を唱え、日米同盟を相対化し、中立の外交安保をめざすのが左派となる。戦後の冷戦から右派と左派の対立が始まり、厳しくなり、ソ連崩壊で一度は緩和・止揚の方向に向かうかに見えたが、右派が、さらにアメリカが、北朝鮮と中国を活用することで冷戦構造を再現し強化した

ここで注意を促したいのは、石破茂の第2の対立軸に鑑みての政策態度であり、私が今の石破おろしの局面で石破茂を支持するのは、対米自立を特徴とした左派的側面が濃厚だからに他ならない。それは、中国との国交正常化を実現した田中角栄の姿と重なるし、田中角栄に繋がった石橋湛山を想起させる。後藤田正晴や海部俊樹や宮澤喜一や加藤紘一が元気だった頃、過去の自民党の中には、明らかに左派的なハト派の要素と成分があり、右派と左派の両方が内部に緊張しつつ共存していた。以上、第1の軸と第2の軸の二つが大きな対立軸としてあり、右派と左派の二つが、中間派を含めてアナログ的に分かれるという点は、日本の政治の前提的事実として了解いただけるだろうし、この対立軸を棚上げにしたり核心に据えない議論は、すべて本質を見落とした無意味な駄弁であり、アクロバティックな自己欺瞞の詭弁の類だと言っていい。そして、第1の軸の右派は第2の軸でも右派であり、第1の軸の左派は第2の軸でも左派となる

3.ジェンダー・マイノリティ・多様性の対立軸
第3の軸はアイデンティティポリティックス⇒共通の政治的目標に向かうための結束)の問題系である。今世紀になって大きく浮上した新しいアジェンダであり政治の対立軸だ。今回の参院選では、外国人問題と選択的夫婦別姓が争点となった。この対立軸で分類したとき、明確な右派は参政党だけであり、自民党の中には両派があり、維新は曖昧で、残りの政党は、公明も国民も立憲も共産もれいわも左派の立場に属する。30年前の日本を振り返れば、この問題は大きな政治的争点にはならなかったし、圧倒的多数が保守的な立場と認識だった。時間の経過と共に価値観が大きく変わり、上野千鶴子が社会思想の正統の頂点に立つ時代状況になっている。アカデミーの内部から変わり始め、アカデミーの左派がこの思想と運動に新天地を見い出し、教育を変え、行政を変え、全体を変えて行った。90年代に勃興した総動員体制批判・国民主義批判の脱構築の思潮と流行が原動力となっている。この対立軸では常に左派がアドバンテージを持ち、アプリオリに保守派に優越し圧倒する

この対立軸において保守派は異端であり、エンドース⇒裏書保証)する学者や論者はいない。左派が正統で優勢となる理由と背景を探ると、WEF(ダボス会議)がジェンダーとマイノリティの政策を積極的に奉戴し推進している事実がある。私の視角から分析すれば、アイデンティティポリティックスの思想は、個人の自己決定権を最重視し神聖視する自由主義に由来し、そこから派生し拡延したもので、新自由主義と親和的に結合し、新自由主義を補完する機能のものだ。労働力商品の価値を切り下げたい動機を持つ資本にとって、女性を労働市場に駆り出し、移民を労働市場に取り込む上で、この思想は都合のいい装置だろう。専業主婦が社会から消えることは、働く夫たる労働者の賃金を半分にできることを意味する。労働力商品の単価を半額にでき、剰余価値を膨らませられる。こうした意見を述べると、すぐに左派から誹謗中傷が飛び、おまえは参政党かと袋叩きの目に遭うが、多様性の主義主張がWEFと経団連に支持され容易に正統の地位を得た秘密はここにある

参政党が伸びた要因として、第3の対立軸で強烈なアンチテーゼ(反グローバリズム=反SDGs)を打ち上げた点を見逃せない。マスコミによる選択的夫婦別姓の世論調査を見ても、法制度化に慎重な声が意外に多い事実に気づく。マスコミでは例外なく賛成論をシャワーし、慎重派など一人もおらず、毎日のようにテレビでジェンダー論者が扇動しているのに、世間の実態は法制化に消極的なままだ。世論に影響を与えている契機として、アメリカのトランプが第3の軸の価値観における右派の旗振り役を演じていて、ジェンダーやマイノリティの主義主張にカウンターをかましている点が挙げられるだろう。神谷宗幣もトランプに傾倒している。それゆえ、日本の政治社会では異端であっても、アメリカのMAGAが自分と同じ立地であり、これこそ将来の主流だという自信に繋がっている。トランプの映像は毎日テレビに出る。半植民地と化した日本において、アメリカ大統領は無謬の神聖君主の扱いだから、トランプの言説が洪水的に宣伝され、国民はそれに洗脳される

以上、日本政治の基本的な3本の対立軸を再確認した。参院選の結果は、こうしたベーシックな概念と表象を元に性格づけ、変化を整理し真相を分析して問題提起しなくてはいけない。牧原出の「第三極」論など浅薄なお茶濁しだろう。そもそも、国民民主党と参政党が「第三極」なら、「第二極」はどこに実在するのだろうか。意味不明の議論だ。海外マスコミが極右政党を極右政党と呼ぶのには意味があり、right⇒右翼) ultra-right や far-right⇒極右)となるには両者の範疇を区別する具体的根拠がある。それは第二次世界大戦の歴史に関わり、ファシズムに対する歴史認識に関わっている。この問題についても基礎的な中身を検証する必要があり、また欧州の政治意識の変容を確認する必要があるし、関連して、最近のドイツ政治に顕著な「保守の極右化=極右の保守化」について目を配る必要があるが、稿が長くなるので省略したい。まともな政治学者が、基本に即して正しい考察を提供することを願う。左派野党がなぜ伸びかったのかという問題も検討したいが、それも次回以降に論じよう

31- ゼレンスキーの終焉?/露国を簡単に打ち負かせると信じたEUの好戦派は欧州を破滅させようとしている

「耕助のブログ」に「ゼレンスキーの終焉?」が載りました。
 EUはいま懸命にウクライナを救援すべく努力していますが、ロシアからの天然ガスの供給が途絶えたことが主要な理由になって経済状況は悪化する一方です。
 プーチン和解する可能性が残っているうちにウクライナ戦争を終結すべきだと考える人が多くなっているのは当然のことでところが「救国戦争のリーダー」を演じているゼレンスキーにはそんな考えはありません。
 関係者の願いは この秋にもゼレンスキーが辞任して、24年の冒頭にウクライナ軍総司令官を解任されたヴァレリー・ザルズニイ将軍が代わって大統領に就くことです。米国はゼレンスキーの亡命先も準備してあり、もしもゼレンスキーが辞任を拒否すれば強制的に追放されるということです。
 空中給油設備が完備されていなければ、飛び立った飛行機はいつかは着陸しなければならないということです。西側は2015年のミンスク合意を利用して周到に軍備を拡張し、ロシアを打倒しようとして始めたウクライナ戦争でしたが、思いもよらない結果になりました。

 併せて櫻井ジャーナルの記事「露国を簡単に打ち負かせると信じたEUの好戦派は欧州を破滅させようとしている」を紹介します。
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ゼレンスキーの終焉?
                  耕助のブログNo. 2607 2025年7月29日
  The End for Zelensky?
    ワシントンはウクライナ大統領の退陣を望んでいる – それは実現するだろうか
                              by Seymour Hersh
2023年秋、ウクライナ軍総司令官のヴァレリー・ザルズニイ将軍は『エコノミスト』誌のインタビューでロシアとの戦争が「膠着状態」に陥ったと言った。その後、ゼレンスキーが彼を解任するまで3ヶ月を要した。ウクライナで最も人気のある公人であるこの将軍は1か月後に英国大使に任命され、目立たないながらも、その職務を立派に果たしている。
ザルズニイは現在、最も説得力のあるゼレンスキーの後継者と見られている。ワシントンの情報通の当局者によると、その職は数か月以内に彼のものになるかもしれないとのことだ。もしトランプ大統領が決定する場合、ゼレンスキーは亡命の候補リストに載っている。ゼレンスキーが辞任を拒否した場合、おそらくするだろうが、関係する米国当局者は、「彼は強制的に追放されるだろう。ボールは彼の側にある」と私に語った。ワシントンとウクライナには、ロシアとの空戦が激化している中で、ロシアのプーチン大統領と和解できる可能性が残っているうちに早急に終結すべきだと考える者が多くいる。

ゼレンスキーは今後の展開をわかっている兆候がある。彼は、国防相、首相、米国大使の 3 人の高官を異動または解任した。米国当局者は「ゼレンスキーは危険の兆候を認識し始めている」と私に語った。
同当局者は、キエフやその他の地域における政治的暴力について、今後の展開は、国民が他に選択肢のない状況に至る程度によって大きく左右されると付け加えた。ゼレンスキーが自発的に辞任することはないだろう。ここに、米国の内部での議論がある。賢明な立場は、ウクライナ人に自力で解決させ、CIA を巻き込んで事態を封じ込めるべきではないというものだ。これまでのところ良識が政策を動かしている。しかし、一部の匿名指導者は焦っており、事態の解決には 50 日以上かかるだろう。
これについてトランプがどのように考えているか私は知らない。大統領は今週初め、NATO のマルク・ルッテ事務総長と会談した後、記者団に対して、プーチン大統領は「多くの人々(過去の米国大統領数人を含む)をだました」が、「私はだまされなかった」と発言し、ロシアに対する姿勢を公に強硬にした。また、ウクライナに米国の武器をさらに送り、ロシアの奥深くまで攻撃できる能力を強化すると述べた。
トランプの発言に対するロシアの公式反応は、その深刻さを認識し、その一部はプーチン大統領個人に向けられたものであると認識した。他の当局者は、ロシアはキエフなどに対する攻撃のペースを引き続き強化する意向を明らかにした。
ニューヨーク・タイムズ紙の国際特派員、ポール・ソンは、ロシアはトランプの新たな強硬姿勢に「動揺していない」ようだと報じた。彼は、多くのロシアの評論家が「トランプが本当に方針を転換し、ウクライナ支援に完全にコミットしているかどうか疑問視している」と指摘した。私はここでの情報によると、トランプは昨年冬、ゼレンスキーがワシントンでの失敗に終わった国賓訪問に普段の戦闘服で出席したことにいまだに不満を抱いており、彼を「パジャマでホワイトハウスに来た」と表現している。
一方、プーチンが米国がゼレンスキーを退陣させたいと考えていることを知っていたかどうかは確認できなかったが、ザルズニイがロシア軍参謀総長でプーチンの側近であるワレリー・ゲラシモフと業務上の関係を保っていることを知った。ゲラシモフは私が以前に書いたように、ザルズニイが『エコノミスト』誌に戦争が膠着状態にあると明かすことを事前に知っていた数少ない人物の一人だ。

米国と英国の諜報機関が慎重に評価した推定値によると、2022 年初めにプーチン大統領が戦争を開始して以来、ロシアの死傷者数は 200 万人に達し、現在の公表数の 2 倍近くに達している。「プーチンは権力の喪失を恐れてはいないが、人気は低下している」と米国当局者は述べ、「ドナルド・トランプはゼレンスキーの支援者であり、ウクライナ戦争を継続できる唯一の人物だ。本当の権力者は誰なのか?ゼレンスキーではない。彼の唯一の命綱は米国だ。トランプは、「この無能な連中をどうやって止めさせるか」と悩んでいる。彼は自分だけが取引できると思っているのだ。
もしゼレンスキーが交代すれば、「勝った、と主張できるというのがプーチンへのメッセージだ」。

ワシントンでは、プーチンがゼレンスキーを軽蔑しており、事態がエスカレートする可能性があることを考慮して戦争を終わらせるための真剣な交渉を開始するためにウクライナに新しい指導者を擁立したいという新たな衝動が生まれていると聞いている。
プーチンは米国大統領選挙の結果を待っていたため、昨年の秋には、戦死者は月20人と過去最低となった。「トランプが勝利した時」、ロシアの指導部はウクライナとの新たな和平交渉が始まる前に「可能な限りの領土を制圧する」ための春の大攻勢を組織した。
結果は散々だった。攻勢は、ロシアが既に支配していたウクライナ領土からわずか120マイルしか前進しなかった。この進展は、高い犠牲者を伴いながら、ほとんど意味のないものだったと聞いている。「全てが農地で、要塞化された町や重要な通信施設はなかった」。月間の犠牲者は5月まで毎月380人だった。現在、総数は200万人である」。当局者は強調した。「最も重要なのはこの数字の表現だ。最精鋭の正規軍兵士は無知な農民に置き換えられた。優秀な中堅将校や下士官は全員死んだ。現代の装甲車両や戦闘車両も役に立たない。これは持続不可能だ」
米国当局者は続けた:
 攻勢の失敗後、プーチンは『ロンドン大空襲』戦略に切り替えた。イギリス人はウィンストン・チャーチル下で粘り強く抵抗したが、キエフの住民はゼレンスキー下ではそうではなかった。
 ウクライナ軍は現在、進軍する1平方マイルあたり60人の犠牲者を出している。数は持続可能だが、残っている部隊は主に、徴兵免除の拒否者で最近徴兵された者たちだ。

ヨーロッパの一部がウクライナ指導部の変更を強く拒否するかどうか尋ねられた米当局者は、
ヨーロッパでゼレンスキーを支援するために田舎の生活やパリでの週末を犠牲にする者はいない。ヨーロッパ人は皆、従うだろう」と予測した。その当局者が軽蔑的に、ヨーロッパがウクライナ空軍に米国製F-16戦闘機を提供し、ルーマニアとデンマークで英語を学んでから操縦方法を訓練するよう主張したことを私に思い出させた。その戦闘機は完全に失敗だったと彼は言った
ウクライナのパイロットたちは離陸の仕方は学んだが、着陸の仕方は知らないのだ。
https://seymourhersh.substack.com/p/the-end-for-zelensky


露国を簡単に打ち負かせると信じたEUの好戦派は欧州を破滅させようとしている
                         櫻井ジャーナル 2025.07.30
 欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は7月27日にスコットランドでアメリカのドナルド・トランプ大統領と会談、アメリカに輸入される大半の欧州製品に15%の関税を課し、EU内で販売されるアメリカ製品に報復関税は課されないことで合意した。トランプによると、EUはアメリカへの総投資額を6000億ドル増加させ、軍事装備品を大量に発注し、さらに約7500億ドル相当のアメリカ産エネルギーを購入することも約束したという。
 この合意に関し、トランプは「双方にとって素晴らしいものになる」と発言、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相も歓迎しているものの、関税ゼロを望んでいたEU内部の人びとからは屈辱的だとの声も上がっている。フランソワ・バイルー仏首相は7月27日を「暗黒の日」と呼んだ。ハンガリーのオルバーン・ビクトル首相はこの合意について、「誰の名において結ばれたのか?」と問いかけている。またロシアのセルゲイ・ラブロフ外相はこの合意について、ヨーロッパのさらなる産業空洞化と資本逃避につながると評価した。

 ヨーロッパや日本では付加価値税(消費税)という仕組みを利用し、還付金という名目で大手輸出企業へ事実上の補助金を渡していることに対するアメリカ側の回答だという指摘もある。日本の場合、還付金(補助金)の原資は下請け企業の払った付加価値税(消費税)。この仕組みで利益を得るのは大手の輸出業者、例えば自動車会社で、税率が上がるほど還付金は大きくなる。そうした仕組みのないアメリカが報復しているというわけだ。こうした問題は元静岡大学教授の湖東京至や参議院議員の安藤裕らが取り上げ、広く知られるようになってきた

 アメリカ政府はロシアや中国に対しても高率の関税を課そうとしているが、これまでの経緯を見ると、効果はない。この2カ国が本気になれば、アメリカが崩壊してしまう。そうした経済構造が生み出された原因は、西側で推進された1970年代からの政策にある。この頃から製造業から金融へシフト、実態経済が衰えていった
 金融のベースは通貨で、それは数字で表現される。その数字が大きくなると裕福になったように見えるが、それだけでは意味がない。それでも人びとはその数字を崇める。そこで、カール・マルクスは『資本論』において通貨を呪物に準えた。資本主義は通貨という呪物を崇めるカルトだというわけだ。
 西側の「先進国」は呪物を集めてきたが、生活に必要な物がない状況になっている。食糧やエネルギーの生産能力、生活に必要な様々なものを作る能力、教育する力などが西側諸国は衰えてきた

 そこでネオコンはソ連が消滅した直後の1992年2月、アメリカ国防総省のDPG(国防計画指針)草案という形で世界制覇計画を作成した。作成の中心は国防次官を務めていたポール・ウォルフォウィッツだったことから、このDPG草案は「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。
 その段階で彼らはロシアを属国化したと確信、世界制覇に乗り出したのだ。第1のターゲットは潜在的ライバルの中国だが、西ヨーロッパやエネルギー資源のある西南アジア、穀倉地帯が広がり、資源も豊かな旧ソ連圏を支配しようとする。
 こうした計画は簡単に達成できるとネオコンは考えていたようだが、ロシアは再独立に成功、しかもそのロシアは中国との関係を強化、影響力を「南」へ拡大させている。ネオコン、そしてネオコンに従属していたフォン・デア・ライエンのような人びともは窮地に陥った。

 ウクライナをクーデターで制圧した段階でロシアを壊滅させるのは時間の問題だと信じたのかもしれないが、それによってロシア産の安い天然ガスが入手できずにヨーロッパの経済は崩壊、人びとの生活は厳しい状況だ。崩壊するはずだったロシアは経済力を向上させて中国という新たなマーケットを手に入れ、中国はロシアの安いエネルギーを入手できるようになった。
 欧米諸国はウクライナでの戦争でロシアに敗北、中東では「無敵」のはずだったイスラエルがイランのミサイル攻撃で重要施設が破壊され、危機的な状況だ。現在、アゼルバイジャンをロシアやイランを攻撃する拠点にし、さらに中央アジアを制圧しよとしているが、ロシア、中国、イランなどが何もしないということはない。
 ロシアを簡単に倒せると思い込み、戦争を始めたヨーロッパの好戦派はヨーロッパ全体を破壊しつつある。