27日、東京湯島家電会館でシンポジウム:「財務省解体と消費税ゼロを問う」が開催されました。
登壇者(3人)の一人だった植草一秀氏がご自身の発言の概要を紹介しました。
植草氏の提示したテーマは大きく分けて「財務省問題」と「政治哲学」の二つでした。
「財務省」の罪深さについては、植草氏がこれまでも繰り返し強調して来たところです。
「政治哲学」については、資本主義の発展が貧富の格差拡大をもたらしましたが同時にそのひずみを「政治的に是正する」試みである「生存権の保障」が20世紀に広がりました。
しかし1980年ころから新自由主義の思潮が幅を利かすようになり、「富者の獲得した所得資産は侵されない」との考え方が強調されるようになりました。努力の足りない人たちが貧者になったという極めつけから、「自己責任論」が強調されるようになりました。それを強調し定着させたのが小泉・竹中政権でした。
かつて日本人で最もノーベル経済学賞受賞に近い人と見做されていた故 宇沢弘文氏は、勃興しつつあった新自由主義を痛烈に批判したことで知られています。日本でも早々に新自由主義批判論が出されその手法は理論的に否定されましたが、政治手法としては定着してしまい安倍政権を経て現在に至っています。
植草氏は「政治哲学」として二つの代表的な立場:「リバタリアニズム」と「リベラリズム」のどちらに正義があるのかを考察しなければならないとしています。
併せて同氏のブログ記事:「警察検察はこうして冤罪を創る」を紹介します。
かつて国連の司法委員会から「日本の司法は中世のもの」と批判されました。それは現在も全く変わっていません。
「自白するまでは無期限に留置場に留置する」という「人質司法」と呼ばれる手法は、これほどの人権侵害もありません。それが法務省の黙認の下に検察が常用している手法です。
一家の主要な働き手であれば、「家族の生存の維持のために、検察が目指す『偽りの自白』に応じて、早く社会に復帰せざるを得ない」状況を、目的意識的に作り出しているわけです。
かつて小泉・竹中政権下で「検察「のデッチ上げに苦しめられた植草氏は、検察の取り調べの「民主化」について具体的に提案しています。
法の番人を自認するのであれば、法務省・検察は一刻も早く是正すべきです。
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財務省解体と消費税ゼロを問う
植草一秀の「知られざる真実」 2025年7月27日
「財務省解体と消費税ゼロを問う」シンポジウムが7月27日(日)に東京湯島家電会館で開催された。https://isfweb.org/post-58186/
主催は独立言論フォーラム=ISF。財務省問題、消費税問題について、意義深い意見交換をさせていただいた。
私が提示した課題は大きく分けて二つある。
一つは財務省問題。
私はかつて国家公務員として財務省で勤務した経験を有する。その際に、現在の消費税の前身と言える売上税導入が図られた。売上税導入は失敗に終わったが、そのリベンジ版として提案されたのがいまの消費税。売上税導入失敗の教訓が生かされて消費税が導入された。
この消費税が膨張して、いまや最大の税収費目になっている。消費税問題をどう捉えるか
そして、この消費税大増税を推進してきた財務省の正体を明らかにする。
さらに、財務省をどのように改革すべきか。これが第一のテーマ。
第二は政治哲学の問題。
資本主義の発展は貧富の格差拡大をもたらした。必然の結果。労働者が搾取され資本家に巨大な所得と富がもたらされる。このひずみを是正する試みが20世紀に広がった。
社会のすべての構成員が十分に豊かな生活を営む権利を有することが確認された。
基本的人権として生存権が認められた。これが20世紀の価値創造である。
ところが、1980年ころから、この考え方に対する修正圧力が強まった。
新自由主義と呼ばれる思潮だ。自由主義の根源のひとつは財産権の保障。
自分が獲得した所得、資産は侵されない。私有財産の神聖化が自由主義の原点である。
20世紀に誕生した〈生存権〉の保障は〈所得再分配〉によってもたらされる。
〈所得再分配〉を実現するには強制力によって経済力の大きな者からの拠出を得なければならない。能力に応じた負担を求めて財源を確保し、この財源によって所得再分配を行う。
所得再分配によって社会を構成するすべての個人に対して生存権が保障されることになる。
その是非が改めて問われている。
政治哲学として二つの代表的な立場がある。
リバタリアニズムとリベラリズム。
リバタリアニズムは超自然主義とも称される。国家権力の介入を最小限にするべきとの考え方。
財産権の尊重を重視する。経済活動の基本は自由競争であり、結果としての弱肉強食を容認する。所得再分配のための財産権侵害を認めない。
これに対するのがリベラリズム。
経済活動を行う初期条件には大きな差異がある。
恵まれた状況で生を受ける者と恵まれない状況で生を受ける者とがいる。
生を受ける前に、生を受ける状況は分からない。
「無知のベール」をかぶって人はこの世に生を受ける。
自分がどのような境遇で生を受けるのかは生を受ける前に不明である。
このことを踏まえれば、境遇の悪い状況で生を受けた者を政府が支援することは正当と言えるのではないか。リベラリズムはこの哲学をベースに置く。
とりわけ重要であるのは1980年以降に少数の大資本に所得と富が集中する状況が加速したこと。リバタリアニズムとリベラリズムのどちらに正義があるのか。
このことを考察するのが第二のテーマである。
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警察検察はこうして冤罪を創る
植草一秀の「知られざる真実」 2025年7月25日
霞ヶ関を本拠地とする2つのカルト。ザイム真理教とホウム真理教。
ザイム真理教については森永卓郎氏が広く世間にその存在を浸透させた。
拙著『財務省と日銀 日本を衰退させたカルトの正体』http://x.gd/nvmU9
森永氏への追悼の気持ちを込めてその続編という心境で執筆した。
財務省の正体を明らかにしている。
日本をダメにした元凶がもう一つある。ホウム真理教。
検察を取り仕切る法務省を頂点とするカルト。
日本の警察・検察・裁判所制度の前近代性が問題である。
日本の警察・検察・裁判所制度、とりわけ刑事司法に三つの重大な問題がある。
第一は警察、検察に不当に巨大な裁量権が付与されていること。
第二は基本的人権が侵害されていること。
第三は裁判所が政治権力の支配下に置かれていること。
警察・検察の不当に巨大な裁量権とは「犯罪が存在するのに犯人を無罪放免にする裁量権」
と「犯罪が存在しないのに無実の市民を犯罪者に仕立て上げる裁量権」。
刑事訴訟法248条が諸悪の根源。
第二百四十八条 犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。
犯罪が存在しても、検察の一存で犯人を無罪放免にできる。
逆に、警察・検察は無実の市民を犯罪者に仕立て上げる裁量権を有している。
何がこの不正を可能にしているのか。それは刑事取り調べが可視化されていないことにある。
取り調べは〈密室〉で行われる。この〈密室〉で犯罪が捏造される。
犯罪を捏造するのは〈政治目的〉による。政治的な敵対者を犯罪者に仕立て上げるのだ。
欧米では”Character Assassination”と表現される。〈人物破壊工作〉である。
警察・検察は〈被害者〉、〈目撃者〉の証言を捏造できる。
すべては〈ブラックボックス〉で創作される。被害者とされる人物が警察に何をどのように供述したのか。目撃者とされる人物が警察に何をどのように供述したのか。
これが完全に〈ブラックボックス〉
警察・検察は密室で被害者、目撃者の供述を〈創作〉する。
被害者、目撃者は法廷で証言するが、その前に入念な〈舞台稽古〉が実施される。
反対尋問があるから〈想定問答〉も入念に用意される。
警察・検察が脚本・演出を仕切り、被害者、目撃者が完全な稽古を積んで法廷で証言すると検察支配下にある裁判所は検察の主張を全面的に採用する。
こうして〈政治目的〉の〈冤罪〉が創作される。
これを防ぐ最重要の方策は〈完全可視化〉である。
「警察官にカメラ装着、8月試行 13都道府県、職質など録画」https://x.gd/LsH2v
という記事が配信されている(共同通信)。
「警察庁は24日、ハンズフリーで撮影できる「ウエアラブルカメラ」を警察官が装着し、街頭活動を録画する試験運用を8月下旬から13都道府県警で順次開始すると発表した。カメラは地域、交通、警備の3部門に計約70台配備。職務質問や交通の取り締まり、イベントなどの雑踏警備で使用する。職務の適切性の検証や、警備の指揮に役立て、違反行為や事故の様子が記録されていた場合は証拠としても活用する。」
こんなことよりもはるかに重要なことがある。それは、刑事事件への適用。
被疑者、被害者、目撃者など、すべての刑事事件関係者と警察・検察の接触場面のすべてを100%録音・録画して可視化すること。
これを実行すると〈密室〉での〈犯罪捏造〉が不可能になる。警察・検察による〈冤罪捏造〉という〈重大犯罪〉を防ぐためには上記の〈完全可視化〉が必要不可欠。
街頭活動ではなく、刑事事件関係者と接触するすべての警察官・検察官に「ウエアラブルカメラ・音声レコーダー」の装着を完全に義務付けるべきだ。
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「財務省解体と消費税ゼロを問う」シンポジウムが7月27日(日)に東京湯島家電会館で開催されます。
https://isfweb.org/post-58186/
日本財政の闇に光を当てて、取られるべき施策を検証する必要があります。
シンポへのお早目の参加申し込みお願いいたします。
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「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。