「耕助のブログ」に「ゼレンスキーの終焉?」が載りました。
EUはいま懸命にウクライナを救援すべく努力していますが、ロシアからの天然ガスの供給が途絶えたことが主要な理由になって経済状況は悪化する一方です。
プーチンと和解する可能性が残っているうちにウクライナ戦争を終結すべきだと考える人が多くなっているのは当然のことです。ところが「救国戦争のリーダー」を演じているゼレンスキーにはそんな考えはありません。
関係者の願いは この秋にもゼレンスキーが辞任して、24年の冒頭にウクライナ軍総司令官を解任されたヴァレリー・ザルズニイ将軍が代わって大統領に就くことです。米国はゼレンスキーの亡命先も準備してあり、もしもゼレンスキーが辞任を拒否すれば強制的に追放されるということです。
空中給油設備が完備されていなければ、飛び立った飛行機はいつかは着陸しなければならないということです。西側は2015年のミンスク合意を利用して周到に軍備を拡張し、ロシアを打倒しようとして始めたウクライナ戦争でしたが、思いもよらない結果になりました。
併せて櫻井ジャーナルの記事「露国を簡単に打ち負かせると信じたEUの好戦派は欧州を破滅させようとしている」を紹介します。
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ゼレンスキーの終焉?
耕助のブログNo. 2607 2025年7月29日
The End for Zelensky?
ワシントンはウクライナ大統領の退陣を望んでいる – それは実現するだろうか
by Seymour Hersh
2023年秋、ウクライナ軍総司令官のヴァレリー・ザルズニイ将軍は『エコノミスト』誌のインタビューでロシアとの戦争が「膠着状態」に陥ったと言った。その後、ゼレンスキーが彼を解任するまで3ヶ月を要した。ウクライナで最も人気のある公人であるこの将軍は1か月後に英国大使に任命され、目立たないながらも、その職務を立派に果たしている。
ザルズニイは現在、最も説得力のあるゼレンスキーの後継者と見られている。ワシントンの情報通の当局者によると、その職は数か月以内に彼のものになるかもしれないとのことだ。もしトランプ大統領が決定する場合、ゼレンスキーは亡命の候補リストに載っている。ゼレンスキーが辞任を拒否した場合、おそらくするだろうが、関係する米国当局者は、「彼は強制的に追放されるだろう。ボールは彼の側にある」と私に語った。ワシントンとウクライナには、ロシアとの空戦が激化している中で、ロシアのプーチン大統領と和解できる可能性が残っているうちに早急に終結すべきだと考える者が多くいる。
ゼレンスキーは今後の展開をわかっている兆候がある。彼は、国防相、首相、米国大使の 3 人の高官を異動または解任した。米国当局者は「ゼレンスキーは危険の兆候を認識し始めている」と私に語った。
同当局者は、キエフやその他の地域における政治的暴力について、今後の展開は、国民が他に選択肢のない状況に至る程度によって大きく左右されると付け加えた。ゼレンスキーが自発的に辞任することはないだろう。ここに、米国の内部での議論がある。賢明な立場は、ウクライナ人に自力で解決させ、CIA を巻き込んで事態を封じ込めるべきではないというものだ。これまでのところ良識が政策を動かしている。しかし、一部の匿名指導者は焦っており、事態の解決には 50 日以上かかるだろう。
これについてトランプがどのように考えているか私は知らない。大統領は今週初め、NATO のマルク・ルッテ事務総長と会談した後、記者団に対して、プーチン大統領は「多くの人々(過去の米国大統領数人を含む)をだました」が、「私はだまされなかった」と発言し、ロシアに対する姿勢を公に強硬にした。また、ウクライナに米国の武器をさらに送り、ロシアの奥深くまで攻撃できる能力を強化すると述べた。
トランプの発言に対するロシアの公式反応は、その深刻さを認識し、その一部はプーチン大統領個人に向けられたものであると認識した。他の当局者は、ロシアはキエフなどに対する攻撃のペースを引き続き強化する意向を明らかにした。
ニューヨーク・タイムズ紙の国際特派員、ポール・ソンは、ロシアはトランプの新たな強硬姿勢に「動揺していない」ようだと報じた。彼は、多くのロシアの評論家が「トランプが本当に方針を転換し、ウクライナ支援に完全にコミットしているかどうか疑問視している」と指摘した。私はここでの情報によると、トランプは昨年冬、ゼレンスキーがワシントンでの失敗に終わった国賓訪問に普段の戦闘服で出席したことにいまだに不満を抱いており、彼を「パジャマでホワイトハウスに来た」と表現している。
一方、プーチンが米国がゼレンスキーを退陣させたいと考えていることを知っていたかどうかは確認できなかったが、ザルズニイがロシア軍参謀総長でプーチンの側近であるワレリー・ゲラシモフと業務上の関係を保っていることを知った。ゲラシモフは私が以前に書いたように、ザルズニイが『エコノミスト』誌に戦争が膠着状態にあると明かすことを事前に知っていた数少ない人物の一人だ。
米国と英国の諜報機関が慎重に評価した推定値によると、2022 年初めにプーチン大統領が戦争を開始して以来、ロシアの死傷者数は 200 万人に達し、現在の公表数の 2 倍近くに達している。「プーチンは権力の喪失を恐れてはいないが、人気は低下している」と米国当局者は述べ、「ドナルド・トランプはゼレンスキーの支援者であり、ウクライナ戦争を継続できる唯一の人物だ。本当の権力者は誰なのか?ゼレンスキーではない。彼の唯一の命綱は米国だ。トランプは、「この無能な連中をどうやって止めさせるか」と悩んでいる。彼は自分だけが取引できると思っているのだ。
もしゼレンスキーが交代すれば、「勝った、と主張できるというのがプーチンへのメッセージだ」。
ワシントンでは、プーチンがゼレンスキーを軽蔑しており、事態がエスカレートする可能性があることを考慮して戦争を終わらせるための真剣な交渉を開始するためにウクライナに新しい指導者を擁立したいという新たな衝動が生まれていると聞いている。
プーチンは米国大統領選挙の結果を待っていたため、昨年の秋には、戦死者は月20人と過去最低となった。「トランプが勝利した時」、ロシアの指導部はウクライナとの新たな和平交渉が始まる前に「可能な限りの領土を制圧する」ための春の大攻勢を組織した。
結果は散々だった。攻勢は、ロシアが既に支配していたウクライナ領土からわずか120マイルしか前進しなかった。この進展は、高い犠牲者を伴いながら、ほとんど意味のないものだったと聞いている。「全てが農地で、要塞化された町や重要な通信施設はなかった」。月間の犠牲者は5月まで毎月380人だった。現在、総数は200万人である」。当局者は強調した。「最も重要なのはこの数字の表現だ。最精鋭の正規軍兵士は無知な農民に置き換えられた。優秀な中堅将校や下士官は全員死んだ。現代の装甲車両や戦闘車両も役に立たない。これは持続不可能だ」
米国当局者は続けた:
攻勢の失敗後、プーチンは『ロンドン大空襲』戦略に切り替えた。イギリス人はウィンストン・チャーチル下で粘り強く抵抗したが、キエフの住民はゼレンスキー下ではそうではなかった。
ウクライナ軍は現在、進軍する1平方マイルあたり60人の犠牲者を出している。数は持続可能だが、残っている部隊は主に、徴兵免除の拒否者で最近徴兵された者たちだ。
ヨーロッパの一部がウクライナ指導部の変更を強く拒否するかどうか尋ねられた米当局者は、
「ヨーロッパでゼレンスキーを支援するために田舎の生活やパリでの週末を犠牲にする者はいない。ヨーロッパ人は皆、従うだろう」と予測した。その当局者が軽蔑的に、ヨーロッパがウクライナ空軍に米国製F-16戦闘機を提供し、ルーマニアとデンマークで英語を学んでから操縦方法を訓練するよう主張したことを私に思い出させた。その戦闘機は完全に失敗だったと彼は言った:
ウクライナのパイロットたちは離陸の仕方は学んだが、着陸の仕方は知らないのだ。
https://seymourhersh.substack.com/p/the-end-for-zelensky
露国を簡単に打ち負かせると信じたEUの好戦派は欧州を破滅させようとしている
櫻井ジャーナル 2025.07.30
欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は7月27日にスコットランドでアメリカのドナルド・トランプ大統領と会談、アメリカに輸入される大半の欧州製品に15%の関税を課し、EU内で販売されるアメリカ製品に報復関税は課されないことで合意した。トランプによると、EUはアメリカへの総投資額を6000億ドル増加させ、軍事装備品を大量に発注し、さらに約7500億ドル相当のアメリカ産エネルギーを購入することも約束したという。
この合意に関し、トランプは「双方にとって素晴らしいものになる」と発言、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相も歓迎しているものの、関税ゼロを望んでいたEU内部の人びとからは屈辱的だとの声も上がっている。フランソワ・バイルー仏首相は7月27日を「暗黒の日」と呼んだ。ハンガリーのオルバーン・ビクトル首相はこの合意について、「誰の名において結ばれたのか?」と問いかけている。またロシアのセルゲイ・ラブロフ外相はこの合意について、ヨーロッパのさらなる産業空洞化と資本逃避につながると評価した。
ヨーロッパや日本では付加価値税(消費税)という仕組みを利用し、還付金という名目で大手輸出企業へ事実上の補助金を渡していることに対するアメリカ側の回答だという指摘もある。日本の場合、還付金(補助金)の原資は下請け企業の払った付加価値税(消費税)。この仕組みで利益を得るのは大手の輸出業者、例えば自動車会社で、税率が上がるほど還付金は大きくなる。そうした仕組みのないアメリカが報復しているというわけだ。こうした問題は元静岡大学教授の湖東京至や参議院議員の安藤裕らが取り上げ、広く知られるようになってきた。
アメリカ政府はロシアや中国に対しても高率の関税を課そうとしているが、これまでの経緯を見ると、効果はない。この2カ国が本気になれば、アメリカが崩壊してしまう。そうした経済構造が生み出された原因は、西側で推進された1970年代からの政策にある。この頃から製造業から金融へシフト、実態経済が衰えていった。
金融のベースは通貨で、それは数字で表現される。その数字が大きくなると裕福になったように見えるが、それだけでは意味がない。それでも人びとはその数字を崇める。そこで、カール・マルクスは『資本論』において通貨を呪物に準えた。資本主義は通貨という呪物を崇めるカルトだというわけだ。
西側の「先進国」は呪物を集めてきたが、生活に必要な物がない状況になっている。食糧やエネルギーの生産能力、生活に必要な様々なものを作る能力、教育する力などが西側諸国は衰えてきた。
そこでネオコンはソ連が消滅した直後の1992年2月、アメリカ国防総省のDPG(国防計画指針)草案という形で世界制覇計画を作成した。作成の中心は国防次官を務めていたポール・ウォルフォウィッツだったことから、このDPG草案は「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。
その段階で彼らはロシアを属国化したと確信、世界制覇に乗り出したのだ。第1のターゲットは潜在的ライバルの中国だが、西ヨーロッパやエネルギー資源のある西南アジア、穀倉地帯が広がり、資源も豊かな旧ソ連圏を支配しようとする。
こうした計画は簡単に達成できるとネオコンは考えていたようだが、ロシアは再独立に成功、しかもそのロシアは中国との関係を強化、影響力を「南」へ拡大させている。ネオコン、そしてネオコンに従属していたフォン・デア・ライエンのような人びともは窮地に陥った。
ウクライナをクーデターで制圧した段階でロシアを壊滅させるのは時間の問題だと信じたのかもしれないが、それによってロシア産の安い天然ガスが入手できずにヨーロッパの経済は崩壊、人びとの生活は厳しい状況だ。崩壊するはずだったロシアは経済力を向上させて中国という新たなマーケットを手に入れ、中国はロシアの安いエネルギーを入手できるようになった。
欧米諸国はウクライナでの戦争でロシアに敗北、中東では「無敵」のはずだったイスラエルがイランのミサイル攻撃で重要施設が破壊され、危機的な状況だ。現在、アゼルバイジャンをロシアやイランを攻撃する拠点にし、さらに中央アジアを制圧しよとしているが、ロシア、中国、イランなどが何もしないということはない。
ロシアを簡単に倒せると思い込み、戦争を始めたヨーロッパの好戦派はヨーロッパ全体を破壊しつつある。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。