2025年7月21日月曜日

極右の奔流が推し進める投票後の政界再編-自民分裂と石破・公明・立憲の大連立

 世に倦む日々氏が掲題の記事を出しました。
 石破首相が演説で、「(トランプ大統領に)なめられてたまるか」、「米国依存から自立しなければいけない」と述べたことを同氏は高く評価し、「この2030年を振り返って  この言葉を、正面から国民に向かって訴えた総理大臣はいなかった。そんな発言を少しでもしたら、CIAがマスコミを使って袋叩きを始め、ネットで誹謗中傷攻勢をかけ、支持率を落としてレイムダックにして始末するからであるアメリカは絶対に許さない」と述べます。
 そして「おそらく、石破茂は、自民党独自の情勢調査で 7/20 の結果を悟り、元の党内野党の論客政治家に戻って、本心からのメッセージを総理大臣の立場で残したのだろうと想像する」と述べ、並々ならぬ覚悟がないと口には出来ない筈だとしました。

 事実今度の参院選で自民党は大敗北を喫しました。が、石破氏は首相続投を宣言しました。その点では 世に倦む日々氏の目論見は外れました。逆に石破氏が敢然と首相を続けると宣言した点で、「彼の覚悟のほど」を見直す必要が出てきました。

 世に倦む日々氏は、冒頭の石破氏の発言について「マスコミはこの発言について議論せず、選挙の情勢報道という形で石破茂を叩き潰した。 日本のマスコミがすべてCIAの手先の情報機関だから、こういう政治になるのだ」と続け、「スパイ防止法だの、尊厳死法制化だの、軍事費GDP比3.5%だのの政治が日常になるかと思うと眩暈がする。厳しく苛酷な戦後80年の夏だ」.と記事を結びます。

 メディアの堕落もあって日本の政治はこの先悪くなる一方ですが、石破首相が「米国依存からの自立」を目指すことを期待したいと思います。
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極右の奔流が推し進める投票後の政界再編 - 自民分裂と石破・公明・立憲の大連立
                       世に倦む日日 2025年7月16日
参院選は終盤戦に入り、自民党と公明党の苦戦がマスコミ報道で伝えられている。朝日毎日読売も、民放テレビも、参政党の大躍進と自公の過半数割れを予測する情勢記事を出し、その「結果」が確実視され、投票日直前の空気を支配している。前回、今週(7/13-19)のワイドショーでは、政治記者が石破茂の退陣に焦点を当てた政局トークを始めるだろうと予想したが、案の定、田崎史郎が 7/14 昼に口火を切る動きに出た。7/20 を機にすぐに総裁選が始まり、8/8 までに新総裁が決まり、国会での首班指名をめぐって真夏の政局となるだろうとコメントしている。見通しの披露ではあるけれど、選挙への介入であり、石破おろしの作為的発言であり、既成事実化の政治である。自民党の議員や県連に向けて、総裁選の準備を始めよと号令したのと同じだ。田崎史郎は、麻生太郎や岸田文雄や菅義偉と繋がっていて、彼らの意向を伝える代理人であり、自民党の支持者や関係者はそう受け取る

マスコミの情勢報道で、10議席以上の大躍進を保証され認定された神谷宗弊は、7/13、支持者を前に「次の解散・総選挙で、一気に与党入りを目指して頑張りましょう」と演説、次の衆院選で与党入りを狙う野心と目標を明らかにした。7/14 には神谷宗弊がXのポストで企図する連立政権のイメージを吐露し、「ヨーロッパのような小政党の連立与党」を構想している旨を表明、現在の自公政権(石破政権)に参加する意思はないと述べた。7/20 の後、マスコミからこの真意について聴かれ、関心が集中するだろうが、話の内容は分かりやすいと言える。神谷宗弊は極右の連立政権を作って一角を占めたいのであり、連立を組む相手として、維新、保守党、国民民主党、自民党右派を想定しているのだ。自民党新総裁に高市早苗が就き、ハト派の石破茂や林芳正を切って追い出した場合は、公明党も切り捨てさせて、新しい極右自民党と連立を組む政界再編をしたいという本音なのだろう

仮に今回の参院選で自民党が大敗したとして、政局はどうなるだろうか。順当に考えれば高市早苗が新総裁だが、昨年秋の総裁選では石破茂の票が高市早苗を上回る意外な結果に出た。裏金問題で逆風の自民党が、誰を総裁に据えたら選挙での敗北を少なくできるか考え、悩んだ挙句選んだのが石破茂だった。脱安倍という世論の環境も影響していた。そうしてハト派に旋回した自民党に対して、安倍晋三を強く支持してきた無党派右翼が拒否感を示し、極右の参政党やネオリベの国民民主に票を入れようとしているのが、今回の参院選の地殻変動ではないかと観察する。無論、自民党と長年パートナーを組んできた公明党は、高市早苗より石破茂の方を歓迎だろう。ここで頭の体操として問いを提起したいのは、自民党の新総裁がタカ派の高市早苗になったとして、自民党は解散総選挙して勝てるかという問題だ。参政党に流れた数百万の極右票が、高市自民党に戻って来るだろうかという設問だ

7/20 の後、極右は勝利感で興奮状態になっている。ハイテンションのモメンタムで衆院選に突入したいだろうし、小選挙区で自民現職や立憲民主の候補を倒して陶酔する図に邁進したいだろう。神谷宗弊には、霞が関や経団連やマスコミの幹部が数珠つなぎで挨拶の列を作り、門前市をなす景観となるに違いなく、外国マスコミの取材も殺到して世界の話題となるだろう。参政党に投票した無党派右翼は、衆院選でも参政党に入れようとするはずで、心は自民党から離れていると考えてよい。仮に高市早苗を立てても、安倍晋三とトランプに首ったけの無党派右翼は、自民党支持には回帰しないと思われる。自民党は世襲制の政党だ。世襲以外の者は、官僚でもないかぎり自民党の政治家にはなれない。血筋や学歴・職歴でハンディがある者は、参政党なら政治家になるチャンスがあると考えるだろう。そうしたダイナミズムが、日本の政治を突き動かす奔流になる可能性がある(中身は猛毒で破壊的だが)

派閥を解散した今の自民党には、派閥の求心力がなく、派閥を作って子分を飼い集める有力な領袖もいない。衆院の現職議員たちは、自分が生き残るためどうするかを考えなくてはならず、小選挙区で参政党新人と戦って勝つ方策を捻り出さないといけない。7/20 の後、マスコミは、いま解散総選挙があったら各党の議席はどうなるかの試算を出し、自民党は戦々恐々となるに違いない。それ以上に深刻な事態に陥るのが公明党で、党の生き残りを賭けた新戦略を大胆に案出する必要に迫られる。そこで可能性として浮上するのが、公明党をブリッジにしてのハト派自民党と立憲民主党との大連立であり、3党の政策協定と衆院選での選挙協力である。「ハト派自民党」という表象を仮設したが、これは石破茂を中心とした一団を想定していて、昨年の総裁選で石破茂に投票した地方の自民党組織を基盤としたイメージである。かなり強引な予想図だが、この勢力が組み上がれば小選挙区で参政党に勝てる

この結合が形成される局面というのは、自民党の左右分裂を意味するもので、高市早苗とか小林鷹之とか萩生田光一とか麻生太郎とかは右派を構成し、現有勢力としては大きな集団となる。この安倍晋三のDNAを紐帯とする「タカ派自民党」だが、従来票を入れてくれた「常連客」の無党派右翼は参政党に流れる形勢にあり、集票基盤を削られて細る状況になる。支持団体のうち、農協とか医師会は大連立するハト派の方に流れ、経団連はどっちつかずになるだろう。国民民主党は、連合は大連立に入るよう促すだろうが、玉木雄一郎の習性と思想からして、タカ派と組む方を選ぶ公算が高く、タカ派自民党、参政党、国民民主党、維新が組む極右連合の中心に位置しようとするのではないか。この極右連合は、イデオロギー的・政策的には難なく連携し得るが、鼻息の荒い参政党の支持者は埋没を嫌がるはずで、連立の一角に丸く収まるのではなく、単独で勢力を張って影響力を行使する方を選ぶだろう

7/20 の結果がどうなるか、その後の政局がどうなるかは、現時点で不明だけれど、もし石破茂が退陣という進行になれば、それは非常に残念なことだと思う。例えば、明らかに石破茂は日中関係を改善する方向に動いていた。日本産牛肉の輸出が再開になったのも石破茂の功績である。戦後80年の機に訪中し、北京で田中角栄の弟子として歓迎を受け、有意義な首脳会談を実現する成果を得ただろう。「戦争検証」の取り組みも私は期待していた。地方創生をベースにした経済成長というコンセプトも、私の持論に近く、具体的にどう施策を組むか関心があった。弱者への目線があった。防災庁の設置にも期待していた。石破茂なら、これまでの「自助・共助・公助」の自己責任路線を止めて、政府の災害対応機能を拡充するだろうと注目していた。体育館に詰め込んで雑魚寝を強いる、プライバシーも何もない現在の方式や水準ではなく、イタリアや台湾のようなまともな避難設備が標準になると思っていた

アメリカが要求する防衛費GDP比3.5%にしても、おそらく、石破茂なら簡単には応じず抵抗しただろうし、玉木雄一郎や高市早苗の対応とは違っていただろう。石破茂にとって不運だったのは、トランプ関税という災難に急に襲われた点だったが、粘り強くアメリカの要求に屈せず、持久戦で押し返し続けた。こんなことは、岸田文雄や高市早苗や玉木雄一郎では到底できなかったことだ。トランプはすっかり誤算となり、他諸国との交渉も停滞を余儀なくされた。トランプの計算では、早々に日本が折れて妥結する目論見で、それを前提にし雛形にして、韓国やEUやインドやカナダやメキシコを譲歩させ、狙いどおりの関税率に持って行く魂胆だったのだろう。日本首相が石破茂でなかったら、実際にそうなっていたはずだ。トランプは媚びへつらわない石破茂が嫌いであり、同時に苦手な相手なのである。今回、トランプ関税での石破茂の不屈一徹に対して、日本のマスコミが野党と一緒になって誹謗の集中攻撃を加えたのは、石破失脚を狙ったCIAの差配に違いない

私の観点から、石破茂のミスは、食料品税率ゼロに舵を切らなかった点だ。公明党があれほど必死に懇請したのだから、2年期限で参院選の公約に採用してよかった。立憲民主党と合わせることで、選挙の争点から消費税を消せばよかった。高市早苗も食料品税率ゼロを提唱していたのだから、自民党としてその政策を公約にして何も問題なかったはずだ。中途半端な「2万円給付金」のお茶濁しに逃げたから、有権者の失望を買い、マスコミに嘲笑され、選挙で足をすくわれる顛末に至ったのである。消費税は選挙の重要な争点だった。「小さな政府」方針から遠いはずの石破茂が、なぜ頑迷に食料品減税を拒否し抜き、財務官僚の言いなりになって緊縮路線に従ったのかは疑問であり、勿体ないことをしたと思う。選挙に負けて政権を失っても財務官僚は責任をとらない。この程度の出費で政権維持を買えるのなら安いものだという政治家の判断が、議員歴40年の石破茂にどうしてできなかったのか

石破茂が、演説で「なめられてたまるか」と言い放ったのは 7/9 だった。その翌日の 7/10 夜、プライムニュースに出演して「米国依存から自立しなければいけない」と続けた。その後、特にこの問題はマスコミで議論されてないが、石破茂はよく言ったと思う。この20年30年を振り返って、日本の指導者が最も言わなくてはいけないこの言葉を、正面から国民に向かって訴えた総理大臣はいなかった。そんな発言を少しでもしたら、CIAがマスコミを使って袋叩きを始め、ネットで誹謗中傷攻勢をかけ、党内で孤立させ、支持率を落としてレイムダックにして始末するからであるアメリカは絶対に許さない。おそらく、石破茂は、自民党独自の情勢調査で 7/20 の「結果」を悟り、元の「党内野党」の論客政治家に戻って、本心からのメッセージを総理大臣の立場で残したのだろうと想像する。この発言は残る。マスコミはこの発言について議論せず、選挙の情勢報道という形で石破茂を叩き潰した

日本のマスコミがすべてCIAの手先の情報機関だから、こういう政治になるのだ。親米リバタリアン極右が大躍進する情勢に恐怖と戦慄を覚え、憂鬱感を深める。スパイ防止法だの、尊厳死法制化だの、軍事費GDP比3.5%だのの政治が日常になるかと思うと眩暈がする。厳しく苛酷な戦後80年の夏だ.。