植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
「自滅の刃」は同名の映画(「自滅の刃ー無限ループ編」)が大好評を博していることに因んだものです。
3年前の参院選より投票率が6ポイント上がった中で今回自民党が大敗し(自公で47議席)参院でも少数与党になりました。国民の経済的困窮に鈍感な自民党が国民の大反発を招いた結果ですが、これは消費税減税を絶対に認めない財務省が、自民が敗北してもそれを機に「自公と立民による大連立が実現すれば、消費税の増税に向かえるので構わない」と考えたのだろうと見られています。
自公併せて50議席を達成できなかった石破首相は、本来であれば辞任しなければなりませんが、石破氏は比較第一党の党首の責任は重いとして、引き続き首相に任に就くと明言しました。
植草氏は今後の政権のかたちについて、消去法から「自公プラスゆ党」か「自公立」の連立が考えられるが、自公は「維新」か「国民」との連立を指向する可能性が高いと見ています(立民も本音は大連立で与党入りしたいのですが、次の総選挙への悪影響を懸念すると踏み切れない)。
植草氏は、「今回参院選は応仁の乱。今回参院選を契機に政局流動化=政局戦国時代を迎えることになる。政治の不安定化は避けられない」としています。
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自滅の刃で自民が自滅
植草一秀の「知られざる真実」 2025年7月21日
『自滅の刃(やいば)-無限ループ編-』が公開され初週末興行収入記録を塗り替えた。
自民党が自滅ループで突き抜けた参院選だった。
裏金金権腐敗事件 選挙買収2万円給付 そして極めつけは「運がいいことに能登で地震があった」発言。
税収が激増しているため、自然増収分を国民に還元しなければ財政活動が景気に急ブレーキになる。ところが、減税を全否定。これでは人心は離れるばかり。
石破氏は、首相になる前は自民党において党内野党の役割を果たしたから国民の受けが悪くなかった。ところが、自民党総裁=首相になってからは保身まっしぐら。
今回参院選で争う125議席のうち自公で50議席獲得を勝敗ラインに定めた。
低すぎる勝敗ライン。自公の非改選議席は75。参院過半数は125だから、非改選75に対して新たに自公が50議席を獲得すれば参院過半数を維持できる。
しかし、仮に獲得議席が50の場合、3年後の参院選では自公で75議席獲得しなければ参院過半数を維持できない。目標としてあり得ない低いハードルを設定した。
このハードルをクリアできなければ責任問題に発展するのは自明。
ところが、自公過半数割れの見通しが濃厚になるなかで石破首相は首相続投の意向を表明。
政治家の出処進退は自分自身で決めるもの。勝敗ラインを低すぎる自公で50と定めたのであるから、これを割り込めば引責辞任は免れない。
続投を表明しても異論が噴出し、首相辞任に追い込まれることは明白だ。引き際の美学を示せないことはあまりにも(鬼舞辻)無惨。自公は衆参両院で過半数割れとなり、政権基盤は極めて弱くなる。野党が連携すれば内閣不信任案を可決することが可能。また、参院では国務大臣に対する問責決議案を可決できる。
連立政権を組み換えなければ政権を安定的に運営できない。
今後の政権のかたちについては次の四つのケースを想定できる。
1.自公少数与党
2.自公プラスゆ党
3.ゆ党連立政権
4.自公立大連立
3のゆ党連立内閣には共産、れいわ、社民の野党は加わらない。
だが、立民、国民、維新、参政、保守、NHKの連立内閣は想定し難い。
船頭多くして船山に登ることになる。
自公の少数与党が継続され、個別事案ごとに野党がパーシャル連合を形成する可能性はある。
しかし、少数与党ではいつでも政権運営は行き詰まるから、長期間にわたり少数与党が継続される可能性は低い。
消去法で残るのは、2の「自公プラスゆ党」の連立か、4の「自公立大連立」。
ゆ党には、国民、参政、維新、保守、NHKなどがある。
どの勢力も本音は与党入りして利権獲得を目指したい。しかし、次の総選挙への悪影響を懸念する。
立民も本音は大連立で与党入りしたい。しかし、これも次の総選挙への悪影響を懸念する。
結局、国民、維新、参政のいずれかまたは複数党が連立政権に加わる選択を示すことになるのではないか。
ただし、参政は衆院勢力が小さいため、連立に加わっても衆院過半数を形成できないから、参政単独での連立入りは想定しにくい。自公は維新か国民との連立を指向する可能性が高い。
他方、財務省は自公と立民による大連立を成立させて消費税増税に誘導する考えを有していると見られる。
参院選後、日本政治は流動化局面を迎える。
今回参院選は応仁の乱。今回参院選を契機に政局流動化=政局戦国時代を迎えることになる。
政治の不安定化は避けられない。
(後 略)
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。