マスコミに載らない海外記事に掲題の記事が載りました。
著者は中国・イランに別に好意的ではありませんが、それ以上に米国の姿勢には全く取り柄がないことを認めています。
そして昨今の米国の狂態は、米国による1極支配が終わりを告げているものと見做しています。
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中国、イラン、アメリカ:複雑な権力ゲーム
マスコミに載らない海外記事 2026年4月27日
ロレンツォ・マリア・パチーニ 2026年4月18日
Strategic Culture Foundation
ワシントンの視点からすれば、テヘラン(⇒イランの首都)と北京の同盟は戦略的な悪夢だ。
紛争の戦略的状況
アメリカによる対イラン戦争は、単なる地域危機を遙かに超えたもので、アメリカの世界的覇権に内在する根強い不安定性を明らかに示している。国際法や主権や多国間外交を軽視して、アメリカは強制力を支配手段として正当とみなす姿勢を改めて示している。趙明浩が指摘している通り、ワシントンの武力行使は秩序を回復させるどころか、台頭しつつある世界体制を特徴づける亀裂を悪化させるだけだ。
2026年2月28日に開始されたアメリカ主導の対イラン軍事作戦は、当初は標的を絞った一連の攻撃として始まったが、今や中東全域、ひいてはそれ以外の地域における地政学的境界線を塗り替える地域紛争へ拡大している。当初はイランの核・ミサイル能力を無力化することを目的とする戦術的動きと思われたものが、世界の勢力均衡を再構築するための本格的な戦略的取り組みに発展したのだ。
北京にとって、この戦争は国家の中核的利益に対する直接攻撃を意味する。中国は中東においてエネルギー、インフラ、輸送分野で緊密な協力関係のネットワークを構築しており、その多くは重要拠点としてイランに依存している。中国の原油輸入量の約53%はこの地域から供給され、30%以上がホルムズ海峡を経由している。従って、長期にわたる混乱は、中国の経済安定とエネルギー安全保障に対する体系的脅威になる。
一方、ワシントンの幹部戦略家連中は、今回の作戦を、いわゆる「混沌の枢軸」、つまり、ロシア、イラン、北朝鮮、ベネズエラの非公式連携を打破する機会と捉えている。これらの国々は全て、アメリカの制裁と圧力にさらされており、外交的・経済的保護者として中国への依存度を高めている。アメリカの狙いは明らかだ。中国のグローバル資源供給網を弱体化させ、北京に対外的な影響力を再調整させることにある。
台頭する中・イラン枢軸が新段階に達する
この紛争が世界に及ぼす影響を理解するには、過去10年間で強固な戦略的連携に発展した中・イラン関係を検証する必要がある。2021年、北京とテヘランは25年間の包括的協力協定に署名し、イランのエネルギー、インフラ、技術分野への約4000億ドルに上る中国投資の枠組みを定めた。この協定は、しばしば欧米専門家によって過小評価されてきたが、一帯一路構想(BRI)におけるイランの役割を再定義するものだ。
ペルシャ湾と中央アジアにまたがるイランの地政学的位置は、一帯一路構想の「西アジア回廊」において不可欠な要素になっている。中国は、テヘラン・マシュハド高速鉄道、チャバハール港拡張、ファーウェイやZTEとのデジタル・インフラ提携といったプロジェクトを通じて、イランを自国の大陸横断物流網に組み込もうとしてきた。同時に、イランを欧米諸国の制裁から守るため、アメリカが支配するSWIFTネットワークの代替として、北京は人民元建ての国際銀行間決済システム(CIPS)を活用して、テヘランの金融準備金を積み立ててきた。
制裁にもかかわらず、両国間貿易は増加している。2025年には二国間貿易額が300億ドルを超え、2026年には更に20%増加すると予測されている。この数字は、中国をイランの主要貿易相手国にし、制裁に苦しむイラン経済の生命線にしている。中国石油化工(Sinopec)や中国石油天然ガス集団(CNPC)などの中国企業は、ヤダバランや南アザデガンといったイランの広大な油田に積極的に出資しており、戦時下でも原油の東方への安定供給を確保している。
ワシントンにとって、こうした動きは世界的覇権争いの核心を突くものだ。イランと中国の関係は、アメリカ中心の自由主義秩序に代わる多極的選択肢を象徴している。経済統合、技術交流と、アメリカの圧力に対する相互外交支援を融合させたモデルだ。ワシントンはテヘランを標的にして、事実上、北京の長期的なユーラシア戦略に対する代理戦争を仕掛けているのだ。
エネルギーは、常に中・イラン協力の決定的側面だった。中国はイラン最大の石油購入国であるだけでなく、イランの精製能力と輸送経路への最大投資国でもある。イラン産原油は、制裁を回避するために「マレーシア」や「オマーン」の船積みラベルを偽装して、1日あたり約80万バレルが中国の製油所に送られ続けている。だが、紛争とホルムズ海峡におけるアメリカの海上封鎖は、この繊細なシステムを脅かしている。
北京の対応は二段階に分かれている。第一に、ホルムズ海峡に代わる陸上経路として、パキスタンのグワーダル港や中国・パキスタン経済回廊(CPEC)への大規模投資など、海上経路の多様化に向けた取り組みを加速させている。第二に、中国の戦略家たちは「軍民両用」インフラという名目で、一帯一路構想における資産の一部を軍事化しようと働きかけ、主要エネルギー輸送経路を強化している。ジブチからコロンボに至るインド洋全域の港湾、パイプライン、輸送拠点は、今や民間・軍事の両目的に利用される可能性がある。
一方、地域における要としてのイランの役割は依然揺るぎない。テヘランはエネルギー供給だけでなく、情報協力、地域への出入り、技術協力もしている。両国は衛星システム、AIベースの監視プラットフォーム、サイバー・レジリエンス(⇒サイバー攻撃の被害を最小化し迅速に回復する能力)といった分野で共同事業を立ち上げており、これらは全て、アメリカ情報機関がハイブリッド戦争の次のフロンティアと見なしている分野だ。
アメリカの戦略的懸念
ワシントンは、この中・イラン間協力関係が単なる地政学的協力にとどまらず、米ドル体制、強制手段としての制裁や世界の主要貿易拠点における戦略的独占に対する直接的挑戦だと認識している。アメリカ財務省のデータによれば、2025年にはイランの対外貿易の約50%がドル以外の通貨、主に人民元とルーブルで決済された。こうした脱ドル化の取り組みは、実験的ではあるものの、世界の金融構造における根本的変化を示しており、アメリカの経済的影響力を脅かすものだ。
更に、米軍は中国のペルシャ湾への関与が長期的に及ぼす影響を懸念している。イラン南部沿岸の衛星追跡施設や、ジャースク近郊における人民解放軍海軍整備区域の拡大疑惑など、北京の兵站拠点は、中東における中国の恒久的駐留への道を開くものだ。この海域で揺るぎない支配を享受してきたワシントンにとって、この傾向は自国の海洋覇権の衰退を加速させるものになる。
アメリカ国内で、トランプ大統領の対イラン戦争は世論を二分する政治危機へと発展した。「アメリカを再び偉大にする」運動内部では不満が高まっており、トランプ大統領の伝統的支持者の多くは、海外での軍事介入再開の決定に裏切られたと感じている。インフレ圧力は急上昇し、連邦準備制度理事会(FRB)の利下げは行き詰まり、原油価格は1バレル130ドルを超えた。戦争の代償は、消費者物価の上昇とエネルギー不安という形で、アメリカの家庭に重くのしかかっている。
国際的には、アメリカ同盟諸国の幻滅が深まっている。フランス、スペイン、そしてイギリスでさえ、戦争の合法性に疑問を呈し、全面的兵站支援を拒否している。大西洋の対岸、ヨーロッパでは、新たな難民の波とエネルギー価格の変動への対応に追われ、湾岸諸国は、ワシントンの予測不可能な外交に益々不満を募らせている。アメリカは益々孤立を深めており、地域的敵対勢力だけでなく、自らの過剰な帝国主義的拡大という認識にも苦慮している。
旧来のグローバル体制が直面する戦争問題
北京の目には、イラン紛争は単にアメリカの介入主義の新たなサイクルを反映しているのではなく、多極化への構造的転換の始まりを示すものと映っている。アメリカがイランに向けて発射するミサイルは全て、西側諸国の衰退という中国の主張を強化し「運命共同体」という中国の呼びかけに重みを与える。だが、この転換自体が多くのリスクを伴う。世界貿易経路の混乱、エネルギー市場の不安定化、核不拡散体制の弱体化は、中東を遙かに超えた連鎖反応を引き起こす可能性がある。
実際、国際原子力機関(IAEA)のイラン監視能力の低下は危険な前例になる。テヘランが合意の遵守を完全に放棄すれば、平壌からアンカラに至るまで、他の国々も核抑止戦略を追求するようになるだろう。そのようなシナリオでは、中国自身も安全保障上のジレンマに直面することになる。周辺地域に潜在的な「核の森」が出現し、北京は地政学的野心と核拡散の衝撃に対する脆弱性との間で折り合いをつけざるを得なくなる。 この紛争は、戦争の新たな側面も明らかにしている。ワシントンが大手民間企業と協力してAIベースにした標的システムや自律型兵器に依存していることは重大な倫理的懸念を引き起こしている。イランの学校へのミサイル攻撃で160人以上の子どもが犠牲になった事件など、アルゴリズムの誤判断により民間人が犠牲になった報告は、グローバル・サウス諸国で激しい怒りを巻き起こしている。戦争における人間と機械の意思決定の境界線は曖昧になりつつあり、人道的大惨事に道徳的曖昧さが加わっている。
2026年、アメリカによるイランへの戦争は、国際秩序の断層を露呈させた。ワシントンは威圧により覇権を維持しようとする一方、北京とテヘランは、連結性や主権や欧米諸国による支配への抵抗を基盤とした代替構想を構築している。しかし、権力が拡大するにつれ、不安定性も拡大する。中国とイランの協力関係は、変革をもたらす可能性を秘めてはいるものの、世界体制を対立する陣営に分断し、それぞれが協力ではなく、排除によって安全保障を追求する事態を加速させる可能性もある。
ワシントンの視点からすれば、テヘランと北京の同盟は戦略上の悪夢だ。制裁を弱体化させ、海洋支配に挑戦し、非対称的な脅威を増大させるからだ。北京にとって、この対立は、アメリカ覇権が依然不安定で、多極化に屈するのを拒んでいることを裏付けるものとなる。そして世界全体にとっては、この対立は一極支配の安穏な時代が終わったことを示している。これから始まるのは、新世紀のルールを定めるための激動の闘争だ。それはアメリカの秩序ではなく、対立や不確実性や益々不安定化する相互依存関係によって特徴づけられる世紀になるだろう。
記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/04/18/china-iran-usa-a-complex-game-of-power/
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。