2026年4月20日月曜日

米軍海上封鎖で再び暗雲広がる/イラン情勢急転二つの背景/自民党大会責任負うのは党首(植草一秀氏)

 植草一秀氏の直近3つのブログを紹介します(順序は発行日の降順になっています。
 イラン情勢に関する2つの記事は、イランと米国の停戦に向けての両者の姿勢について簡潔に述べられています。
 米国は最早停戦に向かうしかないのですが、そのためにはトランプには立場上 米国が勝利を収めたという「虚偽の宣言」がどうしても必要という事情があります。SNSが発達した現在そんなゴマカシが通用するとは思えませんが、トランプがそう思い込んでいる以上、どうして収束させるのかを注目するしかありません。
 3つ目の記事は、12日の自民党大会で自衛隊の女性隊員が登壇して「君が代」斉唱をリードしたことに関して高市首相は当初「違反には当たらない」としたものの、木原稔官房長官は15日になって「法律に違反するということと、政治的誤解を招かないかということは別問題で、しっかり反省すべきだ」と明言して「政治的誤解を招いたこと」について非を認めました。
 植草氏は、自衛隊法、自衛隊施行令、自衛隊服装令等に照らしてどういう問題があるのかを明らかにして、「自衛隊の正規の演奏服を着用した現職の自衛官を官職を紹介した上で自民党大会において国歌斉唱のリードする行為を行わせたことについての法的解釈を国会において明確にする必要がある」と指摘します。
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米軍海上封鎖で再び暗雲広がる
               植草一秀の「知られざる真実」 2026年4月19日
イランのアラグチ外相が4月17日にイスラエルとレバノンの10日間の停戦合意を受けて商業船舶に対しホルムズ海峡を開放するとXに投稿し、ホルムズ海峡開放の期待が高まったが、再び先行きが不透明になった。

イランの中央司令部は4月18日に声明を発表し、アメリカが封鎖という名目で海賊行為を続けていると批判した上で、ホルムズ海峡を以前の状態に戻し厳格な管理統制下に置いたと主張した。この主張を裏付けるかのように、イギリスの海事当局は4月18日にオマーン沖でタンカーが革命防衛隊の艦艇2隻から銃撃を受けたと報告があったと明らかにした。

米国とイランが大筋で合意に達したかのように思われたが交渉は一筋縄では進展していない。
ペルシャ湾に取り残されている多数のタンカー等の商船に大きな動きが生じたが、商船はUターンして元の位置に回帰してしまった。
週末の金融市場で原油価格が急落して株価が急騰したが、週明けは再び波乱含みの展開になる可能性が高まった。

トランプ大統領は2018年5月にイラン核合意(JCPOA)からの離脱を表明し、イランへの経済制裁を再開した。トランプ大統領はオバマ政権下で締結された合意が不十分であると批判。イランの核開発活動を「最大級の圧力」で停止させるとした。このことがベースにある。
トランプ大統領としてはオバマ大統領の「核合意」よりも高い水準でイランとの合意を締結することが必要不可欠。このためにイランに対して強い要求を示している

トランプは周囲の者からの偏った進言を受け入れて2月28日の軍事侵攻に突き進んだ。AIを駆使した軍事作戦を構築するシステムが構築されトランプ大統領に提案があった。トランプ大統領は提案を信じ込んで軍事攻撃に踏み込んだが、結果は目論見と外れるものになった。
米国の軍事侵攻を米国民でさえ高く評価していない。

イランの抵抗は頑強で米国の思い通りの結果にはつながらない。中間選挙を控えてトランプ大統領はTACO=Trump Always Chickens Out.に逃げ込むしかなくなった。
しかし、撤退には大義名分が必要。トランプ大統領は「大勝利」を喧伝しなければならない。
そこで、イランに対して厳しい条件をつける。

これにイランの強硬派が反発している。交渉に当たっているのはイラン政権幹部だが最終的な意思決定権を革命防衛隊が握っている革命防衛隊は安易な妥協を許さない
ホルムズ海峡開放はあくまでもイランの管理下において実施される必要があることを強調している。
他方、米国はオバマ大統領の核合意との兼ね合いでイラン核問題について妥協できない。

イラン核濃縮を禁ずる期間の設定が最低限重要なポイントになる。
オバマ核合意では禁止期間が15年だった。トランプ大統領としてはこれよりも短い期間での合意はできないとする立場。
また、イランは60%濃縮ウランをすでに440キログラム保有している。これを米国が除去するのかどうかもポイントになる。他方、イランの側は核問題について根本的な不満を有している。米国がイスラエルの核保有を放置していること。これが中東情勢の根本問題である

両者が歩み寄らなければ合意は成立しない。トランプ大統領の勝利を宣言しないではいられない性格が交渉を困難にしているとの評価も成り立つ。
しかし、イランとの停戦を実現しなければならない立場に追い込まれているのはトランプ大統領の側だ。この現実を見据えてトランプが譲歩しなければ交渉がまとまらないリスクがある。
「ゲーム論」の考察が必要だが、まずはトランプ大統領が不毛な戦争を終結する大きな判断を下す必要がある。ボールはトランプの手のなかにあると言ってよい
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イラン情勢急転二つの背景
               植草一秀の「知られざる真実」 2026年4月18日
イランのアラグチ外相が4月17日、イスラエルとレバノンの10日間の停戦合意を受けて商業船舶に対しホルムズ海峡を開放するとXに投稿した。
外相は投稿で停戦の残りの期間中、すべての商業船舶に対してホルムズ海峡が開放されるとした。ただし、「イランが指定したルートで」と条件を付した

これに対してトランプ米大統領は同日、自身のSNSでホルムズ海峡が開放されたとして謝意を示す一方、「イランとの取引が100%完了するまで、海上封鎖は引き続き完全に実施され、効力を持つ」と投稿。いくつかの問題点は残るが米イランの戦闘終結に向けた協議が前進する可能性が高まった

米ニュースサイト「アクシオス」は17日、米国とイランによる戦闘終結に向けた次回協議がパキスタンで19日に開催される見通しだと報じた。この協議について、イランがウラン濃縮を放棄する見返りに、米国が200億ドル(約3兆1700億円)規模の資産凍結解除に応じる案も検討されていると伝えた。

イスラエルとレバノンによる一時停戦は、米東部時間16日午後5時(日本時間17日午前6時)に発効。仲介したトランプ米大統領はSNSに「双方が平和を望んでいる」と投稿。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とレバノンのジュゼフ・アウン大統領を「ホワイトハウスに招待する」と明かした。
トランプは両首脳の対面会談が1~2週間以内に実現するとの見通しを示した。

イラン情勢の新たな動きを受けて原油先物価格が急落。代表的な指標である米WTI先物は一時1バレル=80ドルを割り込んだ。
原油価格急落を受けて日経平均先物価格が夜間取引で急騰。一時6万円台に上昇した。
懸念されてきたイラン戦争が終結する見通しが広がり始めている。細部での米・イラン両国の合意形成が成立するか懸念は残されているが、事態が収束に向かう可能性が高まりつつある。

戦争終結が実現する方向に動いた大きな事情が二つある。
第一はトランプ大統領のTACO行動様式。イランの体制転換が瞬時に実現するとの甘い見通しで軍事侵攻に突き進んだが想定通りにいかなかった。中間選挙を控えてトランプが挙げた拳を降ろす指向を強めた

第二は中国がイランに対して交渉妥結に向けての誘導を行ったと見られること。イランと中国は関係が深い。中国は原油消費量の7割を輸入に頼る。タンカーで輸入する原油の半分がホルムズ海峡を通過する。海峡が完全に封鎖されて原油輸入が滞れば中国経済に重要な影響が発生する。イランは中国籍船舶のホルムズ海峡航行を容認していたが、米国が海峡封鎖行動を取り、中国にも影響が出ることが懸念された

他方、中国はイラン産原油の9割を輸入する。イランにとって中国が最重要の原油輸出先である。トランプ大統領は訪中日程を延期して5月中旬に定めたが、イラン戦争が長期化すればトランプ訪中が先送りされる可能性も生じる。中国はイランへの武器支援を慎重に抑止し、事態鎮静化を一貫して訴えてきた。

米国とイランの交渉を仲介したのはパキスタンだが中国はイランとパキスタンの両国を通じて戦争を終結させるための条件整備に尽力したと見られる。米国とイスラエルによるイランとレバノンに対する一方的な軍事侵攻が終結を見るとすれば吉報である。

しかし、類似した事態が今後発生しないとも限らない。
事態の本質を衝く総括が行われなければならない

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                 (後 略)


自民党大会責任負うのは党首
               植草一秀の「知られざる真実」 2026年4月17日
4月12日の自民党大会で、自衛隊の女性隊員が登壇して「君が代」斉唱をリードした。
高市首相は当初、「違反には当たらない」としたしかし、木原稔官房長官は4月15日になって「法律に違反するということと、政治的誤解を招かないかということは別問題で、しっかり反省すべきだ」と発言して「政治的誤解を招いたこと」についての非を認めた。

しかし、法律には違反していないとの立場が維持されているようにも見える。関連法令に照らすと自民党の行為は法令に抵触するものと考えられる。国会では自民党の行為を厳正に審議する必要がある。
自衛隊法に次の定めがある。
(政治的行為の制限)
第六十一条 隊員は、政党又は政令で定める政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法をもつてするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除くほか、政令で定める政治的行為をしてはならない。

陸幕長は会見で君が代を斉唱した自衛官に報酬は払われてないとした。「払わなかった」のか「払わなかったことにした」のかは不明。しかし、仮に「払われなかった」としても問題は残る
赤旗社会部長の三浦誠氏は「プロの歌い手なので、この場合、自民党に対する利益供与となるでしょう。つまり金銭に相当する寄付をしたことになります。自衛隊法施行令では、自衛隊員が政治目的のために「その他の利益を提供」することは禁じられています。」と指摘する。

自衛隊法施行令はどのような定めを置いているか。一部を抜粋する。
(政治的目的の定義)
第八十六条 法第六十一条第一項に規定する政令で定める政治的目的は、次に掲げるものとする。
三 特定の政党その他の政治的団体を支持し、又はこれに反対すること
続く第八十七条は(政治的行為の定義)として具体的な制限行為を列挙する。
(政治的行為の定義)
第八十七条 法第六十一条第一項に規定する政令で定める政治的行為は、次の各号に掲げるものとする。
一 政治的目的のために官職、職権その他公私の影響力を利用すること
二 政治的目的のために寄附金その他の利益を提供し、又は提供せず、その他政治的目的を持つなんらかの行為をし、又はしないことに対する代償又は報酬として、任用、職務、給与その他隊員の地位に関してなんらかの利益を得若しくは得ようと企て、又は得させようとし、あるいは不利益を与え、与えようと企て、又は与えようとおびやかすこと。

現職の自衛官が陸上自衛隊中央音楽隊の演奏服を着用して自民党大会に出席して国歌斉唱をリードした。
自衛隊服装規則には次の定めがある。
13条の2 音楽隊員である自衛官は、国際的儀礼、自衛隊の儀式その他の場合において、陸上自衛官にあつては陸上幕僚長が、(中略)演奏のため特に必要があると認めて指示するとき、通常演奏服装をするものとする。
当該自衛官は自民党大会に出席して肩書きを紹介されて国歌を斉唱した。肩書を紹介されず、私服で出席して国家を斉唱したのではない。明白に自衛官としての行為として自民党大会に出席して国家を斉唱したということになる。国民民主党の榛葉幹事長は国会質疑で「現場の自衛官と防衛省の職員守ろうよ。守ってやろうよ」と発言。まったく的外れな主張。的外れな国民民主党もこの国の政治をダメにしている主犯の一角だ

自衛隊法施行令第八十七条に「国歌斉唱をリードすること」という文言が「具体的な制限行為」として明記されていないことをもって自衛官の自民党大会での国歌斉唱リードが同施行令に違反しないとは言えない。自衛隊の正規の演奏服を着用した現職の自衛官を官職を紹介した上で自民党大会において国歌斉唱のリードする行為を行わせたことについての法的解釈を国会において明確にする必要がある

行為当事者である自民党ならびに自民党総裁を兼務する高市首相が「違法には当たらない」と述べても意味がない。首相は法的解釈を判定する最終責任者ではない。
あくまでも高市首相個人の見解に過ぎない。国民民主党の榛葉幹事長は国会質疑で「現場の自衛官と防衛省の職員守ろうよ。守ってやろうよ」と発言。まったく的外れな主張。的外れな国民民主党もこの国の政治をダメにしている主犯の一角だ。

続きは本日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」4395号
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