衆院TPP特別委員会での採決は2日午後に行われる見通しで、衆院通過は4日以降に延期されましたが、与党は早速会期の延長を画策しています。どうしてもこの臨時国会でTPP協定を批准したいというわけです。
それではその前提となる委員会の審議はどのように進んでいるのでしょうか。
「くろねこの短語」氏は「安倍晋三は合意文書を理解していないどころか、読んだこともないに違いない」とするブログを発表しました。要するに協定の条文に書かれていないことを、自分勝手な思い込みに基づいてデタラメに答弁しまくっているということです。
また同ブログは国連人権委員会の「独立専門家」デ・サヤス氏の 「TPP協定に関する声明」を紹介していますので、末尾に添付しす。
デ・サヤス氏は声明の中で、貿易協定は透明性と説明責任を含む国際法の基本原則と合致しなければならない、世界中の市民社会が圧倒的に反対しているにもかかわらず、TPP参加の12カ国が条約に署名しようとしていることを憂慮している、秘密裏の交渉でつくりあげられたTPP協定には根本的な欠陥があるので署名や批准をすべきではない、またISDS仲裁条項は根本的に不均衡かつ不正・不当なもので、投資家と国家の間に重大な非対称性があるとしています。
そしてもしTPPを発効させようとするのであれば、国際法に合致しているかどうかについて国際司法裁判所で争われる必要があり、そうすれば同裁判所はすぐにでも勧告的意見(是正勧告)を出すことができるだろう、世界中の監視団はTPPに反対していると述べています。まさに不正の結晶であるというわけです。これがTPP協定が徹底して秘密主義で進められている所以です。
もしも安倍首相がいうような結構な協定であるならば、なぜ、そこから離脱するには「参加国全員の承認を要する」などいうヤクザも顔負けの条項があるのでしょうか。一度捕らえた「(日本という)獲物」は絶対に逃がさないという意図に他なりません。TPPの目的が日本を標的にしたものであることは当初から言われていました。
31日には共産党の畠山和也議員が、日本の薬価制度についてアメリカから「米国のルールに合わせよ」と要求される可能性を糾しました。
日米間の交換文書で、中医協審議会などに「外国を含む全ての利害関係者の出席や意見書提出を認める」よう求めていることや、本文の25章、26章に「意見を提供する継続的な機会を与える」との規定があることを挙げて、「米国の製薬企業が日本の公定価格に対してどんどん口を出して変えていくことがないと言い切れるか」と確認したのですが、安倍首相は「米国が変えろと言っても、われわれが了解することはない」と述べるのみで、「日本の薬価制度」は対象外と明言せず、米企業の介入の可能性を否定できませんでした。そもそも米国の強い要求を絶対服従の安倍内閣が蹴った例などないのではないでしょうか。
「TPPを批准させない!全国共同行動」は31日も、衆院第2議員会館前で座り込みを行いました。ニュージーランドのジェーン・ケルシー教授が参加して、「TPPは企業の利益のための協定であることは明らかだ。TPPは、食の安全、暮らしを守るルールを私たちから奪う」と述べました。
TPP協定はこの無知の首相のもとで強引に批准されることになるのでしょうか。
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脳内お花畑満開のTPP国会質疑・・・
安倍晋三は合意文書を理解していないどころか、読んだこともないに違いない
くろねこの短語 2016年11月01日
TPP強行採決はどうやら4日まで持ち越すようだ。それにしても、TPPに関する国会質疑のなんと不毛なことよ。
昨日も、国内の医薬品の価格決定に関してアメリカの製薬会社によって価格が左右されるんじゃないかという質問に、ペテン総理は「米国から要求されたとしても、今の仕組みを変えることはない」と答弁している。さらに、輸入食品の安全性についても「TPPがわが国の(食品の安全に関する)制度に制約を加えるものではない。安全でないものが一般家庭に届けられることはない」と強弁している。
どちらの答弁も、何を根拠してのたまってくれちゃってるんだろう。これってあくまでもペテン総理がそう思っているだけのことで、TPP合意文書のどこにそんなことが書かれているのだろう。医薬品の価格なんか、アメリカの製薬会社が米国式ルールに合わせろって訴えたらどうなるんだ。それこそがISDS条項の恐さなんであって、そんなことになったら日本の制度なんてひとたまりもありませんよ。
ISDS条項については参考人質疑で「敗訴した場合、外国企業が相手国の(訴訟)費用も負担し、手続きの透明性が確保されているなど乱訴防止の規定がある」って楽観論を展開した学識者もいるようだが、甘いにも程がある。アメリカ企業がISDS条項を使って訴えようとしたら、どんなことしたって仕掛けてくるだろう。なによりも、TPPってのはアメリカのルールを世界に押し付けるのが目的で、そのためにISDS条項ってのはあるようなものなんだからね。
国連がTPPに署名も批准もするなって各国政府に呼びかけていたという話もある。このままだと、国破れて山河もなしってことになりますよ。
・ヒラリーもトランプもTPP反対なのに日本だけがなぜ強行するのか? 安倍政権のTPPインチキ説明総まくり
日本の薬価制度 TPPで米企業介入招く
畠山議員追及 「現制度維持の保証ない」衆院特委
しんぶん赤旗 2016年11月1日
日本共産党の畠山和也議員は31日の衆院環太平洋連携協定(TPP)特別委員会で、日本の薬価制度についてアメリカから「米国のルールに合わせよ」と要求される可能性について追及し、「危険なTPPは批准すべきでない」と主張しました。
日本の薬価は、厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)が決める事実上の公定価格です。アメリカでは製薬会社と保険会社が自由に決めます。
畠山氏は、TPP協定に関連する日米間の交換文書(サイドレター)で、中医協などの審議会のあり方について“外国を含む全ての利害関係者の出席や意見書提出を認めること”を求めていると指摘。「中医協も日本の薬価制度も、米国のルールに合わせよ、ということではないか」とただしました。塩崎恭久厚労相は「(サイドレターに)法的拘束力はない」と否定しました。
畠山氏は、協定本文にも企業の介入を認める規定があると指摘。その26章には「利害関係者が規則の案を評価し、意見を作成・提出」する規定があり、25章「規制の整合性」では、薬価に限らず利害関係者がルールの統一のために小委員会で「意見を提供する継続的な機会を与える」との規定があります。畠山氏は「米国の製薬企業が日本の公定価格に対してどんどん口出し、介入して変えていくことがないと言い切れるか」とただしました。
安倍晋三首相は「米国が変えろと言っても、われわれが了解することはない」と述べるものの、「日本の薬価制度」は対象とはならないと明言せず、米企業の介入の可能性を否定しませんでした。
畠山氏は、協定本文27章「TPP委員会の設置」で「3年後から協定の見直し」が明記されていると指摘。全てが見直しの対象になるため「今は現制度が維持されても将来に保証はない」と述べ、さらに追及する考えを述べました。
TPP強行阻止へ座り込み 企業のためでなく、私たちのための経済ルールを
しんぶん赤旗 2016年11月1日
環太平洋連携協定(TPP)の承認案・関連法案の衆院での採決強行を許さないと、「TPPを批准させない!全国共同行動」は31日、衆院第2議員会館前で座り込みを行いました。北海道や京都府などからも市民が駆け付けました。
呼びかけ人の一人、アジア太平洋資料センターの内田聖子事務局長は「8000ページを超える協定文のうち、翻訳されたのはわずか2400ページほど。国民に内容を示さぬまま、採決など論外だ」と批判しました。
ニュージーランドからオークランド大学のジェーン・ケルシー教授が参加。「TPPは企業の利益のための協定であることは明らかだ。TPPは、食の安全、暮らしを守るルールを私たちから奪う。私たちのための経済ルールを実現しよう」と述べました。
TPPテキスト分析チームが作製したパンフレットを手に衆院TPP特別委員に要請した京都市の内科医、竹内由紀子さんは「議員一人ひとりにTPPの危険性をしっかり伝えていきたい」と語りました。
日本共産党、民進党、社民党の国会議員が激励あいさつ。日本共産党からは、斉藤和子、塩川鉄也の両衆院議員が訴えました。
国連人権理事会「独立専門家」デ・サヤス氏のTPP 「環太平洋連携協定」に関する声明
貿易はそれ自体が目的ではなく国際的な人権体制の文脈で見られる必要がある。なぜなら、それは各国に拘束的な法的義務を課すものだからだ。貿易協定は、「孤立的な」法制度ではなく、透明性と説明責任を含む国際法の基本原則と合致しなければならない。それらは、人権条約の履行義務を遅らせたり回避したり弱体化させたり実行不能にさせたりするものであってはならない。 私は、世界中の市民社会が圧倒的に反対しているにもかかわらず、TPPに参加予定の12カ国が、条約に署名しようとしていることを憂慮している。なぜなら、それが多様な利害関係者と民主的な協議をすることなしに、秘密裏の交渉でつくりあげられた産物だからだ。したがってTPP(Trans-Pacific Partnership、「環太平洋連携協定」)は根本的な欠陥があり、署名または批准すべきではない。今のところ条項には各国による規制や修正の余地がないからだ。 議会は、 TPP署名の事前と事後に、人権・健康・環境への影響評価が確実におこなわれるようにするうえで重要な役割を担っている。またTPPから脱退しても「国家として生き残る」ことができる条項が条約の中に組み込まれていることを保障させるという点でも議会の役割は極めて重要だ。 国連「人権理事会」にたいする私の2015年報告書(A/HRC/44/30)は、貿易協定のこの時代遅れのモデルの主要な法的問題を説明し、21世紀にふさわしい総合的な貿易協定をつくりだすよう要請した。それは人権と発展を条項のなかに組み込んだ新しい型の貿易協定だ。また報告書には具体的な「行動計画」も含まれており、人権と発展を犠牲にすることなく貿易を発展させる戦略も提起されている。またその「行動計画」は、そのような貿易が持続可能となるような指針も定式化している。 国連総会にたいする私の2015年の報告(A/285/70)では、「投資家ー国家紛争解決(ISDS:Investor-State Dispute Settlement )仲裁条項」は根本的に不均衡かつ不正・不当なものだととして、その廃止を呼びかけた。なぜなら、この条項によれば、この特別法廷では、投資家は政府を訴えることができるのにたいし、政府は投資家を訴えることができないからだ。貿易と投資の紛争は、国家の司法権および国家対国家の司法体制にもとづきながら、法の支配の下で解決することができる。 ISDSをめぐる最近30年間の憂慮すべき経験は、投資家と国家の間に重大な非対称性があったことを示している。これは将来の貿易協定で繰り返されてはならないことだ。いま残されている選択肢は、 市民社会が要求しているように、現状のままではTPPに署名しないか、署名しても批准しないことだ。それが民主的に選出された議会の責任である。 もしTPPが発効すべきものであるならば、それが国際法に合致しているかどうかは国際司法裁判所(ICJ:the International Court of Justice)で争われる必要がある。ICJに要請すれば、ICJは今すぐにでも勧告的意見を出すことができるだろう。というのは、貿易協定と国連憲章との間に矛盾がある場合(これには国家の主権、人権、開発にかかわる条項が含まれている)国連憲章が優先させるべきだとICJは宣言しているからだ。 世界中の監視団はTPPに反対している。なぜなら、それは出発したときから国際人権規約ICCPR(the International Covenant on Civil and Political Rights「市民的および政治的権利に関する国際規約」)の19条および25条にたいする明確な違反であり、それがもたらす「規制恐怖」‘regulatory chill’のゆえに、国家が不当な企業活動を規制できなくなるからだ。にもかかわらず、今や企業のロビー活動家たちはTPPを署名のテーブルにまで持ち込むことに成功している。 もし全ての関係12カ国でTPPの賛否を決める国民投票が実施されれば満場一致で拒否されることは確実だ。 各国の貿易大臣が、2016年2月4日、難問山積のTPPに署名する目的でニュージーランドのオークランドへ集まってきたが、署名式を前にして私は、TPPの当事国政府にたいして、「人権条約を遵守する義務」および「持続可能な開発目標(the Sustainable Development Goals)を達成するという当事国の最近の公約」を再確認しそれを公に表明することを、ここに強く要請するものである。 |
<註1>
アルフレッド・デ・サヤス氏(米国)は、国連の「民主的で公正な国際秩序を推進」に関する最初の「独立専門家」として、国連人権理事会によって任命され、2012年5月に仕事を開始した。氏は現在、ジュネーブ外交大学院の国際法教授である。詳しくは下記を参照。
<註2>
前述の通りTPPの協定文には日本語による正文がありません。しかも5000頁をこえる大部のものです。そこで山田正彦氏(元農林水産大臣、TPP交渉差止・違憲訴訟の会幹事長)や内田聖子氏(アジア太平洋資料センター事務局長)などが中心となって「TPPテキスト分析チーム」が起ち上げられました。この集団によるTPP協定文の詳しい分析は下記にあります。
アジア太平洋資料センターに掲載されている【TPP協定文分析レポート】
アジア太平洋資料センターに掲載されている【TPP協定文分析レポート】