このところ安倍首相は、国会でのTPP協定批准に向けたゴリ押しに加えて、トランプ氏との会談やペルーでのAPEC首脳会議でも、TPP発効に向けて異様なこだわりを見せています。オバマ氏が米国での批准を断念しているというのに、実に不可解でまた異常なことです。
もしもただ一国で批准したことを以て、米国からTPPとまったく同じ条件で日米2か国間の貿易協定を迫られたときに、一体どう対応しようというのでしょうか。
トランプ氏は、日米安保条約の成立過程に「無知だ」と言われていますが、それを言うならば安倍氏はTPP協定の恐ろしさに「全く無知だ」というしかありません。
もしもただ一国で批准したことを以て、米国からTPPとまったく同じ条件で日米2か国間の貿易協定を迫られたときに、一体どう対応しようというのでしょうか。
トランプ氏は、日米安保条約の成立過程に「無知だ」と言われていますが、それを言うならば安倍氏はTPP協定の恐ろしさに「全く無知だ」というしかありません。
最も注意すべきものの一つがISD条項です。政府はこれまでアジア各国などとの協定にISD条項を付してきたが何も問題はなかったという認識のようですが、アメリカがTPPで意図している同条項はそんな生易しいものではありません。日本の医療制度などはたちまち崩壊させられます。
仮にTPP協定が成立した場合、ISD条項で日本の医療制度が崩壊する仕組みは以下のとおりです。
薬価基準制定の会合に米国の製薬会社は参加できるので、そこで従来価格の10倍ほどを主張するかも知れません、それが認められないと彼らは、「日本の制度によって本来の利潤が抑制されて不利益を受けた」という『金科玉条』の言い分でISD訴訟を起します。
TPPの仲裁裁定は一審制で3人の弁護士が裁きますが、米国側の弁護人1人と世銀から1人が出るので、アメリカが訴訟で負けることはありません。過去の全事例でそうなっています。仲裁は、ことの是非善悪の観点からではなくて、ひたすら「儲ける」ことが「妨害されたかどうか」で機械的に下される筈です。
そうなれば毎年起される訴訟で、その都度日本は莫大な損害賠償を支払わなくてはならないので、結果的に国民皆保険制度はまず財政的に破綻します。そんなTPPから脱退しようとしても全加盟国が了承しないと認められません。(この部分は下記の記事から引用)
しんぶん赤旗の「主張」とISD関係の記事を紹介します。
産経新聞の記事も併せて紹介します。
(関係記事)
産経新聞の記事も併せて紹介します。
(関係記事)
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(主張)TPP国際協議 安倍首相は異常な固執やめよ
しんぶん赤旗 2016年11月22日
安倍晋三首相が、アメリカ・ニューヨークでのトランプ次期米大統領との会談や、ペルー・リマでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議、環太平洋連携協定(TPP)参加12カ国の首脳会議など、一連の会合を重ねました。異常に目立つのは首相のTPP発効への固執です。アメリカのトランプ氏が大統領選中TPPへの批判を公言するなか、リマでの一連の会合でもアメリカ抜きの経済連携協定づくりを模索する発言などがあったといわれます。日本国内でもTPPに同意が得られていないのに、国際協議で発効に固執する首相の態度は異常です。
発効の見通し立たない
「自由貿易こそ世界経済成長の源泉」「TPPは自由で公正なルールにもとづく経済圏を作り出す」―安倍首相は一連の協議などでこうした発言を重ねたと伝えられます。日本、アメリカなど12カ国が参加し、関税などを原則撤廃するTPPの発効を最大限もてはやしたものですが、相手側からの反応は決して芳しいものではありませんでした。
アメリカのトランプ氏はもともとTPPが国内を「空洞化」し、雇用などを破壊するとして反対してきました。オバマ現大統領は署名したものの、トランプ氏は大統領に就任すれば「離脱」すると発言しており、安倍首相との会談でも、トランプ氏を説得しようという首相の思惑通りには進まなかったとみられています。TPPは日本だけでなくアメリカも批准しなければ発効せず、その見通しはたっていないのは明らかです。
リマで開かれたAPEC首脳会議では、首脳宣言に「あらゆる形態の保護主義に対抗する」ことを盛り込んだものの、同時に開かれたTPP参加12カ国の首脳会議では発効に向けた国内手続きを進めるとしただけで、共同宣言も発表することができませんでした。
参加国の中でも国内の手続きを見送っている国や、「アメリカ抜き」の協定を求める声も出ています。首脳会議で「このままではTPPが完全に死んでしまう」とまで言って各国に批准を求めた安倍首相の態度は、TPP参加国からも全面的に支持されていません。
安倍首相をはじめ、日本政府にはオバマ米大統領が任期中の年内に開かれる米議会でTPPを批准してもらうという“期待”もありましたが、リマではオバマ氏との本格的な会談も開かれませんでした。トランプ氏が所属する共和党が多数になった米議会は年内批准に賛成しておらず、アメリカの批准頼みの安倍首相の計画はここでも破たんしています。
国内の同意抜きの暴走
もともと国内ではTPPへの反対がますます広がっているのに、日本が率先して批准すれば発効を促進できるといい続けてきた安倍首相の態度は、国民の意思にも民主主義にも反しています。
関税や非関税障壁を原則撤廃するTPPは、日本の農業だけでなく「食の安全」や医療、保険、雇用など国民の暮らしに全面的に影響します。多国籍大企業が投資先の国を訴えることができるISDS条項など、国の主権そのものを破壊してしまう危険があります。
国民の利益にならない協定を国民の同意抜きに強行するのは許されません。まず審議中の参院で徹底審議のうえ、廃案にすべきです。
ISDS条項 司法権まで侵害 参院特・山添氏が追及 TPP撤退求める
しんぶん赤旗 2016年11月22日
日本共産党の山添拓議員は21日の参院環太平洋連携協定(TPP)特別委員会で、多国籍企業の利益を守るために使われるISDS(投資家対国家紛争解決)条項について、投資先の国の司法権さえ侵害する危険があることを明らかにしました。
1990年代以降、多国籍企業がISDS条項を使って提訴し、投資先の国内司法判断を、仲裁判断で否定する事件が起きています。山添氏は、環境汚染を続ける米石油会社に損害賠償を命じたエクアドルの地方裁判所の判決の効力停止を仲裁廷が命じた事例まであることを指摘。「仮に、日本国内の司法判断で勝訴しても、仲裁廷で負けた場合、日本政府は(仲裁判断に従って)賠償金を支払うのか」とただしました。
石原伸晃TPP担当相は「条約を順守する立場から、仲裁判断に従う」と答えました。
次いで、金田勝年法相は、日本政府が仲裁判断に従わず、投資家が強制執行を求めた場合、国内裁判所が「公序良俗違反」などを理由に仲裁判断を覆すこともありうると答えました。
石原、金田両大臣の答弁を受けて、最終的に岸田文雄外相は「(仲裁廷の)裁定の趣旨と、国内裁判所の判断の双方を踏まえた代替的な対応をはかることで、ISDS手続きを無意味にしないようにする」との見解を示しました。
山添氏は「ISDS(による仲裁判断)を尊重して解決をはかるというなら、主権の侵害となる」と批判。国内裁判所の判断より仲裁判断を優先し、司法権の独立を脅かすISDS条項の危険性をあらためて強調し、TPPからの撤退を求めました。
【トランプ次期大統領】 就任初日の「TPP脱退」を宣言
当選後初めて明言
産経新聞 2016年11月22日
【ワシントン=小雲規生】トランプ次期米大統領は21日、ビデオメッセージを発表し、来年1月20日の就任初日に「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)から脱退する意志を表明する」と宣言した。トランプ氏が大統領選後にTPP脱退に言及するのは初めて。
トランプ氏はメッセージのなかで「就任初日に起こせる行政府としての行動」を列挙。その一番目の項目としてTPP脱退の宣言を挙げた。そのうえで雇用や産業を米国に取り戻すため、二国間での自由貿易協定を目指すとしている。
トランプ氏はこのほか、シェール開発や石炭産業への規制の緩和、インフラ設備へのサイバー攻撃の防止計画の策定、ビザ制度の悪用の調査を打ち出した。また行政府からの退職から5年間はロビイストになることを禁止し、政府が新たな規制をひとつ作る際には既存の規制を2つ廃止するルールも定めるとしている。
トランプ氏は政権移行の準備状況について、「極めてスムーズで効率的かつ効果的に」進んでいると強調。次期政権の原則は「米国を最優先させることだ」として、次世代の生産活動や技術革新が米国内で起こる態勢を整えるとしている。