米大統領選においてメディアの流す情報とは反対の結果になったことに関連して、オバマ大統領が「(インターネット上の)偽報道」を問題視し、米有力メディアもインターネットで伝えられている情報を攻撃しているということです。
しかしそれは体制側の見方であって、ケント・ギルバート氏が述べたように米国民のメディアリテラシーの高さを示すものと見るべきでしょう※1。
植草一秀氏も全く同様の見解を示し米国民を高く評価しています。
インターネットは報道における「最後の自由空間」と言われていますが、そこに統制が加えられようとしているのは見過ごせません。
櫻井ジャーナルは、冒頭記載の米国の動きに加えて、「ウォーターゲート事件」を掘り起こした敏腕記者のバーンスタインが1977年にワシントン・ポスト紙を辞め、その直後に本を出版し、「400名以上のジャーナリストがCIAのために働き、1950年から66年にかけて、ニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供している」と暴露したことを伝えています。
また、ドイツ有力紙の元編集者ウド・ウルフコテも、2年前に「ジャーナリストとして過ごした25年の間に教わったことは、嘘をつき、裏切り、人びとに真実を知らせないこと。多くの国のジャーナリストがCIAに買収されているとしている」ことを著書で暴露しました※2。
櫻井ジャーナルは、かくして「西側の支配層はメディアを支配、自分たちにとって都合の良い情報、自分たちの計画に人びとを賛成させる情報を流す仕組みを作りあげた」としています。
その一方、日本ではまだそこまでの締め付けはないにもかかわらず、メディアの側で迎合的な「体制側へのすり寄り」が起きているのはご承知のとおりです。
植草一秀の「知られざる真実」の記事も併せて紹介します。
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情報操作に失敗したと考えたのか、オバマ米大統領は言論統制の強化を主張、大手メディアも同調
櫻井ジャーナル 2016年11月21日
バラク・オバマ大統領が「偽報道」を問題視、有力メディアもインターネットで伝えられている情報を攻撃している。勿論、インターネット上には怪しげな情報も少なくないのだが、オバマや有力メディアが意識しているのは自分たちの「報道」の効果をなくした情報、つまり事実だ。言論統制の強化を主張したと言える。
フランクリン・ルーズベルトが大統領に就任した直後にウォール街の大物たちが目論んだクーデター計画を議会で明らかにしたスメドリー・バトラー少将によると、クーデター派は新聞を自分たちのプロパガンダ機関だと認識、ルーズベルト攻撃に使うつもりだと話していたという。
第2次世界大戦が終わると情報操作は組織的になり、ウォール街の大物弁護士で秘密工作の黒幕とも言うべきアレン・ダレス、その側近でフランク・ウィズナーとリチャード・ヘルムズ、そしてワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムを中心にモッキンバードと呼ばれているプロジェクトがスタートする。ウィズナーはダレスと同じようにウォール街の弁護士で、同時に破壊工作機関のOPCの責任者になり、ヘルムズは後にCIA長官に就任する。(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979)
ヘルムズがCIA長官だった時期にウォーターゲート事件が起こり、ワシントン・ポスト紙が「大統領の犯罪」を追及する。その時の社主はキャサリン・グラハム。フィリップの妻で、世界銀行の初代総裁だったユージン・メイアーの娘だ。
同紙でこのスキャンダルを追いかけたのは若手記者のボブ・ウッドワードとカール・バーンスタイン。ウッドワードは「ディープスロート」という情報源を持っていたが、直前まで海軍の情報将校で記者としては素人に近い。実際の取材と執筆はバーンスタインが担当したようだ。
そのバーンスタインは1977年にワシントン・ポスト紙を辞め、その直後に「CIAとメディア」という記事をローリング・ストーン誌に書いている。こうした記事を書くためには同紙を辞めねばならなかったのだろうが、それによると400名以上のジャーナリストがCIAのために働き、1950年から66年にかけて、ニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供しているとCIAの高官は語ったという。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977)
しかし、アメリカで報道統制が強化されるのはその後。ベトナム戦争でアメリカが敗北したのは国内で反戦運動のためだと好戦派は考え、運動を盛り上げた責任は戦場の実態を伝えるメディアにあると評価した。1970年代にはCIAの内部告発などで支配層にとって都合の悪い情報が漏れ、議会で追及されたということも報道統制に動いた一因。
そこで内部告発が難しいルールを作り、気骨ある記者を排除、規制緩和でメディアを少数の巨大資本が支配できるようにした。こうした動きは日本にも及び、1987年5月3日に朝日新聞阪神支局が襲撃されたことも影響してプロパガンダ機関化は進んだ。1991年に開かれた「新聞・放送・出版・写真・広告の分野で働く800人の団体」が主催する講演会の冒頭、「ジャーナリズムはとうにくたばった」と、むのたけじは発言したという(むのたけじ著『希望は絶望のど真ん中に』岩波新書、2011年)が、その通りだ。つまり、今のマスコミはゾンビのようなもの。
報道統制はアメリカや日本以外の国々でも問題になっている。例えば、ドイツの有力紙とされるフランクフルター・アルゲマイネ紙(FAZ)の元編集者、ウド・ウルフコテによると、ジャーナリストとして過ごした25年の間に教わったことは、嘘をつき、裏切り、人びとに真実を知らせないこと。多くの国のジャーナリストがCIAに買収されているとしている。その結果、ヨーロッパの人びとはロシアとの戦争へと導かれ、引き返すことのできない地点にさしかかっているとしていた。そして2014年2月、この問題に関する本を出している。この危機感が日本では希薄だ。
このように西側の支配層はメディアを支配、自分たちにとって都合の良い情報、自分たちの計画に人びとを賛成させる情報を流す仕組みを作りあげた。本当に信じているのか、信じた振りをしているだけなのかは不明だが、日本に住む多くの人は支配層の思惑通りに発言し、動いている。「左翼」や「リベラル派」を自称している人びとも例外ではない。
ただ、日本以外の国々ではメディアに対する信頼度は急速に低下、有力メディアはソ連時代のプラウダやイズベスチヤのようになってしまった。そこで、オバマ大統領は言論統制の必要性を主張したわけだ。そこまでアメリカ帝国の腐食は進んでいるとも言える。
情報操作マスゴミ無視が最強必勝の極意
植草一秀の「知られざる真実」2016年11月20日
本日11月20日付日本経済新聞に世論調査に関する記事が掲載されている。
米国大統領選が私たち日本の主権者に与えた最大の教訓は、「メディアの情報操作に騙されるな」ということである。
メディアが流す情報のウソと本当を見分ける能力をメディアリテラシーと言う。今回の米大統領選は米国人のメディアリテラシーの高さを示すものである。
メディアは完全にクリントン支持だった。そして、トランプ候補に対して集中攻撃、総攻撃を展開した。
これに対してトランプ氏が、メディア情報の偏向を強く訴えたことも効果的だった。
しかし、これと同じ情報操作が日本で実行されたなら、日本の有権者はメディア誘導に流されてしまう可能性が高い。
7月末の東京都知事選では鳥越俊太郎氏に対してメディアが総攻撃した。メディアの情報操作で80万票が鳥越氏から小池氏に移し替えられたと推定される。これによって選挙結果が変化したと見られる。
メディアの情報操作には裏がある。理由があるのだ。ある候補を勝たせること、あるいは、ある候補を当選させないこと。この目的があり、その目的に沿って情報操作が実行される。
日本経済新聞元経済部長でテレビ東京副社長(元)の池内正人氏は、インターネット上のサイト「あらたにす」に、次のように記述した。
「大新聞が得意の世論調査をやればいい」、「これが国政選挙の場合だったら、この種の世論調査は不可能だ。選挙法に触れるかもしれない。しかし一政党内の選挙ならば、規制する法律はないと思う」
これは、2010年9月14日に実施された民主党代表選に関して述べられたものだ。日本の歴史の分岐点になった選挙である。
不正選挙が実施されていなければ、この代表選で小沢一郎氏が勝利している。小沢一郎政権が誕生していた。しかし、現実には菅直人氏が選出された。
2009年に誕生した鳩山由紀夫政権の意義をすべて水泡に帰したのが菅直人政権である。そして、菅直人政権が野田佳彦政権に引き継がれて政権交代の意義が完全に破壊されたのである。
日本政治史の最大の分岐点になった選挙が2010年9月の民主党代表選である。
テレビメディアではNHKの大越健介氏が小沢一郎氏の当選阻止のために卑劣な情報操作を実行した。大越健介氏はワシントン勤務を経ている。米国の支配者の指令を受ける存在であると推察される。
この流れのなかで、テレビ東京副社長が上記の記述を示したのである。
池内氏は記事のなかで民主党の小沢一郎氏の出馬について、次のように記述した。
「仮に小沢氏あるいは鳩山氏が立候補するとすれば、重大な問題を引き起こす可能性がある。この両氏は「政治とカネ」の問題で、民主党の代表と幹事長の職を辞したばかりだ。もし当選すれば、そのまま総理大臣に選出される。特に小沢氏の場合は、首相になってしまうと検察審査会の権限も及ばなくなるという。
国民は民主党の規約に口出しはできない。その間隙を縫って、一国の最高首脳が国民の手が届かないところで誕生する形になる。これは議会制民主主義の盲点かもしれない。
菅氏についても似たようなことが言える。国民の審判なしに、2度も総理の座に就くことになるからだ。
ただ菅氏の場合は、急に引退した鳩山氏のあとを継ぐ形で副総理から昇格したという事情はある。」
悲しくなるほどに低レベルの論評である。まともな論拠も示さずに、まさにこじつけと歪んだ認識を元に、単に小沢を落とせと暴言を吐いているに過ぎない。
このような立場から、「大新聞が得意の世論調査をやればいい」と述べているのだから恐ろしい。もちろん、その「世論調査」とは「創作」する「世論調査」である。
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