南スーダンPKOにおける「駆け付け警護」の新任務を命じられた約130人の陸自部隊の派遣に当たり、稲田防衛相は19日の壮行会において、「駆け付け警護」は「現地の邦人にとっても部隊にとっても、リスク低減につながる」と訓示しました。
家族も見守る中でまるで邦人救出のための任務のような言いぶりでしたが、現在南スーダンには日本人のNGOは不在で、「7月のいわゆる政府軍と反政府軍の “大規模戦闘” 以降、日本人のNGOは周辺国から指揮を執るようになり、例外的に ”日本国際ボランティアセンター” の1人が今月末まで出張しているだけ」ということです。
現地での「戦闘行為」を「衝突」と誤魔化し、現地の状況は「PKO参加5原則」に背反していないと強弁するなど、政府は南スーダンPKO活動については誤魔化しに終始して来ましたが、壮行会の訓示でも稲田防衛相はすぐにばれるウソを堂々と述べたわけです。実にデタラメなことです。
NGO団体にとって自衛隊の「駆け付け警護」は迷惑千万だということは、ことの始まりの時から言われていました。戦闘力を持つ自衛隊と一体と思われることで、平和を志向する日本のNGO集団というイメージがくずれるからです。
安倍首相の自己満足のために付与されたとしか思えない「駆け付け警護」に関わる政府の一連の行為は、自衛隊員とNGOメンバーの安全を大きく損なうものです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
駆け付け警護「現地邦人のため」 稲田大臣のあざといウソ
日刊ゲンダイ 2016年11月23日
南スーダンPKOで「駆け付け警護」の新任務を命じられた約130人の陸自部隊が21日、首都ジュバに到着した。
稲田防衛相は、駆け付け警護について「現地の邦人にとっても、部隊にとっても、リスク低減につながる」と、19日の青森市での壮行会で訓示。まるで邦人救出のための任務のような言いぶりだったが、とんでもない。
そもそも自衛隊のPKO参加はあくまで“他国”の平和維持のため。邦人救護が主目的ではない。政府の見解も「駆け付け警護は、救援要請した団体や個人の“国籍”で区別することはない」(内閣府PKO事務局)だ。
それなのに、自衛隊部隊の出発時に、わざわざ「現地邦人のリスク低減」と強調するあたり、稲田氏の訓示は実にあざとい。
■NGOスタッフは1000人に1人
稲田氏は駆け付け警護は「邦人救護のため」と言いたげだが、南スーダンで人道支援に従事するNGO(非政府組織)のうち、日本人スタッフはどれだけいるのか。現地事情に詳しいNGO「日本国際ボランティアセンター(JVC)」によると、現在、南スーダンでは各国から約1000人がNGO活動に従事している。
「7月のいわゆる“大規模衝突”以降、日本人は周辺国から指揮を執るようになった。現在、常駐スタッフはいないと思います。今、当方の1人が今月末まで出張で訪問しています」(JVC広報担当)
日本人のNGOスタッフの割合は1000人に1人。とっくに撤収していることを恐らく知りながら、稲田氏は“邦人のリスク低減”などと言い張っているのだ。まさに「針小棒大」。国民をあざむく、印象操作のそしりは免れない。
さらにタチが悪いことに、NGO団体にとって駆け付け警護は、迷惑千万だということだ。
「現地のNGOは駆け付け警護そのものを要請していません。現地で襲撃されたスタッフを助け出すために、武力を用いられても、同じ“武装組織”と見なされ、危険度は増してしまう。これまで南スーダンのNGOは現地住民と親近感を持って信頼関係を築いてきたのに、武力介入で台無しにされかねません」(JVC広報担当)
これでは“押しかけ警護”だ。