4日、衆院TPP特別委員会でTPP承認案が「強行採決」されました。それは議会運営のルールをまったく無視したものでした。数の力があるから何でも押し切れるという訳です。
安倍首相が国会で「我が党においては結党以来、強行採決をしようと考えたことはない」と信じられないことを述べた、その舌の根も乾かぬ間のことでした。事実は、第一次安倍内閣では僅か11か月の間に17回の強行採決を行っています。まことに「息をするようにウソを吐く」人間です。
しかも今回の強行採決は自民党内の多数の意志ということではなくて、官邸、特に安倍首相自身がどうしても成立させたいと強硬だったからということです。それも海外の首脳に『わが国は先駆けてTPP承認案を通過させた』と自慢したいからという、子供じみた発想からだというから呆れます。
アメリカのグローバル企業から見ればまさに「飛んで火にいる夏の虫」、あるいは「鴨がネギを背負って来た」です。何故、取り返しのつかないことになる「かも知れない」という意識が全く欠如しているのでしょうか。
LITERAの記事としんぶん赤旗の記事:「TPP強行 問われる政府・与党の責任」を併せて紹介します。
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TPP“騙し討ち強行採決”は安倍首相の強い意向だった!
民主主義を無視し嘘を撒き散らす安倍政権の増長
LITERA 2016年11月4日
こんなやり方がまかり通るこの国は、ほんとうに民主主義国家なのだろうか。本日、衆院TPP特別委員会でTPP承認案が「強行採決」されたが、それは議会運営をまったく無視したものだった。
そもそも、きょうは13時から衆院本会議で「パリ協定」の承認案を採決する予定だったが、衆院TPP特別委委員長である塩谷立議員が委員長職権で本会議後に予定されていた特別委をいきなり開催。「強行採決発言は冗談」という山本有二農水相の2度目の失言に対して辞任要求を行っていた民進党や共産党などの野党は当然、これに猛反発したが、自民、公明、そして日本維新の会の賛成多数で可決してしまったのだ。
議会運営のルールなんてはなから無視、数の力があれば何でも押し切れるという安倍政権の横暴さ──。安倍首相は先月17日に「我が党においては結党以来、強行採決をしようと考えたことはない」という、自虐ギャグかと見紛うような大嘘を国会でぶち上げた。この人の嘘はいまにはじまったものではないが、発言から半月程度であっさり強行採決を行うとは、どこまでも国民を舐めているとしか思えない。
自民党は「強行採決というかたちで実現するよう頑張らせていただく」と発言した福井照議員をTPP特別委の理事から降ろしたが、結局、この言葉は嘘偽りない“本音”だったわけだ。
「党内には強行採決への慎重論や、TPP先送り論もあったようですが、官邸がどうしても成立させたいと強硬だったようです。背景にはもちろん安倍政権に今井尚哉首相秘書官をはじめ経済産業省人脈が入り込んでいるということもありますが、安倍首相自身が強いこだわりを見せていた。どうも、海外の首脳に『わが国は先駆けてTPP承認案を通過させた』と自慢したいというのがあるようです」(官邸担当記者)
安倍首相は特定秘密保護法や安保法制でも同じように自分の個人的野心のために強行採決で法案を通してきたが、まさか早さ競争で自慢するために強行採決とは……。しかし、安倍首相は10月7日のTPP主要閣僚会議で「他国に先駆け、日本の国会でTPP協定を承認し、早期発効にはずみをつける」とこれを裏付けるような発言をしている。
なんとも頭が痛くなる話だが、さらに今回、ひどいのが山本農水相の問題をそのままにしての採決だったということだ。
山本農水相については「強行採決発言は冗談」という暴言、SBS米をめぐる疑惑などが噴出しているが、問題はそれだけではない。山本農水相は失言した田所嘉徳衆院議員のパーティで、同時に「JAの方々が大勢いらっしゃるようでございますので、明日でも田所先生の紹介で農林省に来ていただければ何かいいことがあるかもしれません」などと利益誘導をほのめかす発言も行っていた。
このような無反省かつ議員としての自覚も欠如した人物を大臣に据えたまま採決に踏み切る。これは安倍政権が「マスコミを抑え込んでいるから、何をやっても世論の反発は起こらない」と、増長しきっているからだろう。
職権を濫用し国会の機能を停止させ、強行採決でなんでも決定していく。いったいこの異常事態はどこまでエスカレートしていくのだろうか。 (編集部)
(国会の視点) TPP強行 問われる政府・与党の責任
暴言大臣放置し衆院規則無視
しんぶん赤旗 2016年11月6日
環太平洋連携協定(TPP)の承認案・関連法案について、自民・公明の与党と日本維新の会は4日、衆院特別委員会での強行採決に踏み切りました。しかし本会議は開催できず、政府・与党が当初狙っていた10月中の衆院通過に続き、先週中の通過も見送らざるをえなくなりました。いま問われている政府・与党の責任、国会が果たすべき役割とは―。(藤原直)
「驚いたのは(衆院議院運営委員会の佐藤勉)委員長もこのようになるとは知らなかったということだ」(民進党の泉健太議運委理事)
今回の採決は、強行採決の中でも極めて異常なものでした。
協議最中
というのも、同特別委員会が4日、強行開会されたのは、その前に予定されていた衆院本会議の開会をめぐって議運委理事会で断続的に協議が続けられていた最中だったからです。これは「委員会は、議院の会議中は、これを開くことができない」などとした、衆院規則に照らしてもルール違反でした。
議運委理事会では、野党側が2度にわたる暴言をはいた山本有二農水相の辞職要求への対応などを求め、佐藤議運委員長も「会議を開く状況に至っていない。与党に努力を求めたい」と語っていました。こうした状況での特別委の強行開会と採決は、まさに「何がなんでも」とTPPの早期批准を促す官邸と歩調を合わせるような現場の暴走でした。
野党4党が、同特別委での異常な採決を認めないよう申し入れたところ、大島理森衆院議長も「決して平穏な状況のもとで採決が行われたわけではない」と言明。「円満」な運営を求めていた佐藤議運委員長も同委理事会で「さらに混乱を招き、責任を感じている」と述べました。
「一番のポイント、問題の原因は、山本農水相の一連の発言だ」。大島議長もこう述べています。
山本氏は「強行採決」をけしかけた先月の暴言を1日の会合で「冗談」と語ったことで、何の反省もしていなかったことを示しました。さらに同じ場で利益誘導まがいの発言をしたことも問題になっています。
日本共産党の穀田恵二国対委員長は4日の会見で「ことの発端は農水相の国会と国政を無視した暴言だ」と強調。政府・与党側には「野党4党の辞任要求に何らかの回答が必要だ」と述べました。
暴言大臣が放置され、ルールまで破った異常な状況のもとで行われた採決は、このまま認められるものではありません。
懸念山積
TPPをめぐっては、日本農業への深刻な影響や食の安全の問題、薬価の問題、巨大企業が国家を訴える投資家対国家紛争解決(ISDS)条項の問題、中小企業への影響など懸念事項は山積しており、論戦は始まったばかりです。4月の特別委員会の開催にあたって与野党理事で合意していた中央公聴会なども開かれていません。
承認案には世論調査でも6割を超える人々が「今国会にこだわらず慎重に審議するべきだ」と求めています。(10月29、30日実施の共同通信調査)
穀田氏は「ようやく本格的議論になりつつあるTPPについての慎重審議を引き続き行うことが求められている」と強調しました。ここにこそ、いま国会が果たすべき役割があります。
■衆院TPP特別委員会をめぐる主な動き
(省 略)