安倍政府は2016年の第三次補正予算を編成する方針であり、その総額は約1兆円、そのうちの2000億円をミサイル防衛の強化に充てるということです。
北朝鮮の脅威に備えて喫緊の課題であるからだというのが言い分ですが、北朝鮮と対立関係にある韓国を除けば、世界中でそんな国はありません。なぜ日本だけが北朝鮮のミサイルに備えなくてはならないのでしょうか。そこには安倍首相と稲田防衛相の独特の「思い込み」があるだけで、客観的な理由など見当たりません。
8月3日に北朝鮮が日本海に弾道ミサイルを着弾させたときに、稲田防衛相はすぐに新型の迎撃ミサイル「SM-3ブロックIIA」などの導入を示唆するとともに、弾道ミサイルの「破壊措置命令」を常態化させました。
それにもかかわらず9月5日に北朝鮮が3発の弾道ミサイルを北海道沖に着弾させた時、日本側が発射を知ったのは着弾後のことで破壊措置どころではありませんでした。
発射後10分以内に到達するミサイルの迎撃などは「原理的に無理」なのです。
仮に奇跡的に迎撃が間に合ったとしても、発射のタイミング、迎撃ミサイルの軌道(3次元)、迎撃ミサイルの速度に寸分の誤差でもあれば衝突はせずに「迎撃」はできません。
日本はこれまで、役に立つという保証のまるでない迎撃ミサイルシステムに約1兆6000億円を投じたと言われています。
安倍政権は、アメリカが一方的に価格を決めるこの種のシステムをこの先も買い続ける積りのようですが、それではいくら金があっても足りません。そもそも原理的に価値がないと思われる装置(システム)を政治家が勝手に選択して購入してよい筈がありません。
天木直人氏は、このままでは間違いなく、我々は戦争の前に「生活苦で殺される」ことになると述べています。
(関係記事)
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戦争で殺される前に生活苦で殺されることになる日本国民
天木直人 2016年11月27日
軍事力を強化して日本の安全を守ろうとする主張に対し、私が決まって繰り返す反論の言葉がある。
そんなことをすれば、我々は戦争で殺される前に生活苦で殺されることになる、という言葉だ。
まさしくそれを裏付ける報道を、今朝11月27日の読売新聞が行った。
読売新聞は一面トップで、安倍政府は2016年の第三次補正予算を編成する方針を固めたと、一大スクープ報道した。
問題はその内容だ。
総額約1兆円に上る補正予算には、経済対策関連予算は計上されず、なんとその2割に当たる約2000億円を、既存のミサイル防衛システムの強化に充てるという。
北朝鮮の脅威に備えて、喫緊の課題であるからだという。
しかも読売新聞は、その記事の解説欄で、米国の最新鋭ミサイルシステム、いわゆる高高度ミサイルとも、最終段階ミサイルとも言われている、より高額で敵対的なミサイルシステムの導入について、本格的な検討に入った、と書いている。
これではいくら予算があっても足らない。
おりから、安倍首相は、消費税増税はいうまでもなく、社会保険、医療保険の負担増や年金削減をどんどんと強行し、国民生活を猛烈な勢いで苦しめている。
一億総中流のはずであった日本が、いつのまにか、一握りの富裕者と多数の生活困窮者に急速に分断されつつある。
このままではほとんどの国民が戦争の犠牲になる前に生活苦の犠牲になる。
北朝鮮の危機が高まっていると言うけれど、戦争になる確率はどれほどあるというのか。
しかも万が一戦争が起きたらミサイル核戦争になる。
一瞬にして皆が犠牲になる。
しかし、生活苦は確実に目の前で起きている。
そして、このまま安倍政権が続くと、確実に国民は犠牲になる。
そして、気づくことなく真綿で首を絞められるように犠牲になっていく。
このままでは間違いなく、我々は戦争で殺される前に生活苦で殺されることになる。
我々は、本気になって目の前に差し迫っている危機を克服しなければいけない時に来ているのである(了)