参院に引き続き衆院憲法審査会が17日におよそ1年5か月ぶりに再開され、「憲法制定の経緯」などをテーマに各党が意見を表明しました。
いまさら70年前の「憲法制定の経緯」を論じるとは驚きですが、自民党の狙いが「アメリカに押し付けられた憲法」を強調したいことにあるのは明らかです。果たして政権への従属姿勢が顕著なNHKは17日21時のニュースで、「アメリカが僅か9日間で作成した原案云々」と報じていました。
各党の意見表明の中で特筆すべきは公明党で、同党の北側一雄氏は、現行憲法が連合国軍総司令部(GHQ)による「押し付け」だとする見解について「憲法がGHQの関与の下で制定されたことは事実であるが、”押しつけ” には賛同できない。憲法の制定過程で国会で多くの修正がされ、圧倒的な賛成で可決されたうえに、何よりも日本国憲法はこの70年間国民に広く浸透し支持されてきたもので、押しつけという主張自体がもはや意味がない(要旨)」と自民党内に強い見方と一線を画しました。
衆参両院で3分の2以上の議席を占める改憲勢力の中で、自民、公明両党の主張の違いが鮮明になったのはこの際大きいことであり注目されます。
民進党の武正元外務副大臣は「日本国憲法の3原則は守るべき」、「自民党の憲法改正草案には危惧を覚えざるをえない」とし、「安倍総理大臣が各党に改憲草案を提出するよう要求したのは行政府の長からの越権だ」と述べました。憲法上護憲の義務を持つ首相自身がそんなことを要求するとは理不尽の極みです。
共産党の赤嶺政賢議員は「国民の多数は改憲を求めておらず、審査会を動かすべきではない。憲法を守り、平和、民主主義の原則を現実の政治に生かすことこそ政治に求められている」と述べました。
社民党の照屋国会対策委員長は「憲法の3大原則や9条などは、国民から強く支持され、わが国が平和国家として歩んできた担保になった」、「改憲という名の憲法破壊は、平和の破壊であり、人間としての尊厳を有する個人の破壊だ」と述べました。
(追記) 当ブログでは2012年7月3日~20日に断続的に、「憲法制定の頃 1~5」の記事を載せました。そのURLは下記のとおりです。
【憲法制定のころ】 1~5 2012.7.3~7.20
1 「憲法はアメリカに押し付けられたものか??」
2 「憲法研究会の憲法草案要綱と政府の憲法改正要綱」
3 「9条はどのように審議されたか?」
4 「ベアテ ・ シロタ ・ ゴードン」
5 「憲法調査会におけるベアテ参考人の陳述」
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東京新聞 2016年11月17日
衆院憲法審査会は十七日午前、約一年五カ月ぶりに実質審議を再開した。「憲法制定経緯と憲法公布七十年を振り返って」を議題に十六日の参院憲法審に続き各会派が意見表明と自由討議を行った。公明党の北側一雄氏は、現行憲法が連合国軍総司令部(GHQ)による「押し付け」だとする見解について「賛同できない。主張自体がもはや意味がない」と自民党内に強い見方と一線を画した。衆参両院で三分の二以上の議席を占める改憲勢力の中で、自民、公明両党の主張の違いが鮮明になった。
北側氏は、憲法がGHQの関与の下で制定されたことは「事実だ」と指摘。その上で、押し付け憲法論を否定する根拠として「何よりも日本国憲法はこの七十年、国民に広く浸透し、支持されてきた」と述べた。制定過程で国会で多くの修正がされ、圧倒的な賛成で可決されたことも挙げた。
(中 略 後添のNHK記事を参照)
審査会は昨年六月、参考人の憲法学者三人全員が当時審議中の安保法案を違憲と指摘したことをきっかけに休止状態が続いていた。
<押し付け憲法論> 現行憲法が戦後の占領下でGHQに押し付けられ、策定されたとの主張。自民党内に「国民の自由な意思が十分に反映されたとは言い難く、制定過程に問題がある」(中川雅治参院議員)との声が強く、「自主憲法」制定論につながっている。これに対し、草案はGHQが作成したが、当時の民間有識者の憲法案を参考にし、制定過程で多くの重要な修正が加えられ、世論が歓迎したことを理由に「押し付けではない」との反論がある。
衆院憲法審査会 約1年5か月ぶりに審議再開
NHK NEWS WEB 2016年11月17日
衆議院憲法審査会は去年6月以来、およそ1年5か月ぶりに審議を再開させ、自民党は「憲法と社会のあいだにずれが生じてきている部分がある」として、「国民の憲法改正への合意形成を目指していくべきだ」と主張しました。
これに対し、民進党は自民党の憲法改正草案について、「危惧を覚えざるをえない」と指摘するとともに、「安倍総理大臣からの各党に対する草案提出要求は行政府の長からの越権だ」と批判しました。
衆参両院で、与党と憲法改正に前向きな勢力が、改正の発議に必要な3分の2の議席を占めていますが、衆議院憲法審査会では、安全保障関連法などの議論が行われた去年6月以来、審議が行われていませんでした。
16日の参議院憲法審査会に続いて、17日、およそ1年5か月ぶりに審議を再開させた衆議院憲法審査会では、「憲法制定の経緯」などをテーマに、各党が意見を表明しました。
この中で、自民党の中谷前防衛大臣は「わが国の社会や安全保障環境の変化など、憲法を取り巻く環境は大きく変化しており、憲法と社会の実際にずれが生じてきている部分がある。日本国憲法の基本原理を堅持しつつ、改正の必要性のある項目に関し、国会議員が熟議を重ね、国民の憲法改正への合意形成を目指していくべきだ」と述べました。
民進党の武正元外務副大臣は「日本国憲法の3原則は守るべきだという認識が、衆参両院の憲法審査会で共有されることが、憲法改正の発議の大前提となると考えるが、自民党の憲法改正草案には危惧を覚えざるをえない。また、安倍総理大臣からの各党に対する草案提出要求は行政府の長からの越権だ」と述べました。
公明党の北側副代表は「日本国憲法はこの70年、国民に広く浸透し支持されてきていて、『押しつけ憲法』という主張自体、今や意味がないと言わざるをえない。憲法の基本原理はあくまで維持しながら、条項を付け加えていく方法、いわゆる『加憲』方式で、憲法改正論議を進めていくことがふさわしい」と述べました。
共産党の赤嶺政賢衆議院議員は「憲法審査会は憲法改正原案を審査する場であり、ここでの議論は発議につながる。国民の多数は改憲を求めておらず、審査会を動かすべきではない。憲法を守り、平和、民主主義の原則を現実の政治に生かすことこそ政治に求められている責任だ」と述べました。
日本維新の会の足立康史衆議院議員は「特定のイデオロギーを表現するためではなく、具体的な課題を解決するために憲法改正を行うべきだ。国論を二分する安全保障や危機管理などの問題よりも、国民にとって身近で切実な問題を優先し、憲法改正に向けた選択肢を示すべきだ」と述べました。
社民党の照屋国会対策委員長は「憲法の3大原則や9条などは、国民から強く支持され、わが国が平和国家として歩んできた担保になったと確信している。改憲という名の憲法破壊は、平和の破壊であり、人間としての尊厳を有する個人の破壊だ」と述べました。
衆議院憲法審査会では来週24日にも、「立憲主義などの在り方」をテーマに、各党が意見表明と自由討議を行うことにしています。