2023年7月12日水曜日

12- 集中企画・マイナ狂騒(13)~(15)

 9月に予想されている内閣改造に関連し、麻生副総裁が9日付の「北國新聞」の「総理が語る」で自派の河野デジタル相について<私は閣内に残らない方がいいと思っています。もっと党務や閥務で汗をかくことが、河野さん自身のためにもなると思います>と発言したことが注目されています。
 その真意については、世論調査で「総理候補」トップを誇ってきた河野氏が最近評判ガタ落ちのため、これ以上傷を深くしないためなのではという観測もあります。いずれにせよあの見るからに暑苦しい顔が出なくなることは、国民の精神衛生上も好ましいことです。
 日刊ゲンダイの連載記事「集中企画・マイナ狂騒(13)~(15)」を紹介します。
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集中企画・マイナ狂騒(13)
河野大臣「3年後に新しい読み取り機」で医療現場また地獄…ウハウハは大手IT企業のみ
                         日刊ゲンダイ 2023/07/07
 3年後に「地獄再び」か ─。5日の衆院閉会中審査で河野デジタル相は、2026年に導入予定の新しいマイナカードについて「仕様によっては新しい読み取り機が必要になる可能性は当然ある」と言ってのけた。医療現場はマイナ保険証を使うシステム導入に四苦八苦。混乱が収まらぬ中、再び同じことが繰り返されるのか。
                ◇  ◇  ◇
 昨年9月にオンライン資格確認を原則義務化する「規則」が発令。期限の今年4月に合わせ、医療機関はシステム整備を加速させた。診療所の場合、カードリーダー1台が無償で提供されるほか、端末整備などの関連費用に上限43万円の補助金が支給される。しかし、補助金の範囲内で整備費用が賄えないことが多い。急ぎの義務化案件でもあり、システム業者は補助金を超えた見積もりを送りつけ、契約を迫るケースもあったという。

費用17万円持ち出しも
 埼玉県のある医科クリニックでは、端末、ルーター、ケーブル、ソフトなどの機器代や工事費などで60万円かかり、17万円が持ち出しになった。さらに、月額8000円の保守料は補助金の対象外だ。
 開業医などでつくる埼玉県保険医協会の担当者はこう言う。
「今年4月にオンライン資格確認が義務化されたことから、医療機関は導入を急がされました。しかし、短期間に注文が集中したため、機器が不足し、工事が追いつかず、いまだにシステムを導入できていない医療機関が少なくありません。まだ“1巡目”が終わらないうちに、3年後に“新しいカードリーダー”という話が出て、驚いています。1巡目と同じく、2巡目も費用や手間など医療機関が苦労を強いられる光景が目に浮かびます」

政・官・業の癒着が存在か
 河野氏の答弁を引き出した立憲民主党の長妻昭政調会長は「今、必死になって医療機関は(カードリーダーを)導入しているのに、なぜ、3年後また変えるのか」と声を荒らげたが、その通りだ。
 あまりにも早すぎるカードリーダーの交換には何か裏があるのかと勘繰ってしまう。医療機関が悲鳴を上げる一方、ウハウハなのは大手IT企業だ。
「共通番号いらないネット」事務局の宮崎俊郎氏が言う。
「全国の医療機関は18万です。そのうち9割がオンライン資格確認のシステムを導入するとして、カードリーダーを交換すれば、約16万もの医療機関の“特需”を生み出すことになります。大手IT企業を儲けさせるために、新しいカードリーダーを導入しようとしているとみられても仕方がありません。必要性に乏しく、批判を浴びても、マイナカードの用途を拡大しようとする背後に、政・官・業の癒着が存在することも重要な視点です。メディアや野党はこの点にも切り込んでほしい」
 河野氏はどこを向いて仕事をしているのか。


集中企画・マイナ狂騒(14
デジタル庁に「立ち入り検査」の衝撃!河野太郎大臣“クビ宣言”突きつけられメンツ丸潰れ
                          日刊ゲンダイ 2023/07/08
 いくら言い繕っても、責任は免れないということだ。マイナンバーに別人情報が紐付けられるトラブルが相次いだことを受け、政府の第三者機関である個人情報保護委員会(個情委)が近くデジタル庁に立ち入り検査を実施する方針を固めたことが7日、判明した。マイナンバー制度の所管庁が検査対象になるとは衝撃だ。河野デジタル相は今ごろ、真っ青になっているのではないか。
                ◇  ◇  ◇
 個情委は公金受取口座の誤登録に関し、デジタル庁のリスク管理と対策に不備があったと問題視。自治体の支援窓口の端末で誤登録が相次いだことを受け、「自治体が端末を利用する際の正確な操作手順を徹底せず、リスクの軽減などができなかった」とデジタル庁の責任を重く見ている。
 公金受取口座の誤登録をめぐっては、家族ではない別人の口座が登録されるミスが940件に上る(今月4日時点)。河野大臣は「自治体の支援窓口でのログアウト忘れにより、同一口座が本人と別人に紐付けられてしまった」と、自治体に“責任転嫁”する説明を繰り返してきた。しかし、そんな言い訳は個情委に通用しなかった。制度を直接所管する官庁が行政指導を食らうなんてことになれば、前代未聞である。
「委員会の求めに応じて適切に対応する」──。河野大臣は7日の会見で、個情委の立ち入り検査に言及。「現時点で何か決まっていることはない」と詳細を明かさなかったが、その表情は普段の会見よりもこわばっているようだった。
「マイナンバー制度の所管庁たるデジタル庁が『個人情報を保護できていない』との烙印を押されたも同然で、河野大臣のメンツは丸潰れ。“クビ宣告”に等しいと思います。9月前半を軸に検討されている内閣改造で、河野大臣は交代させられるのではないか。岸田首相にしてみれば、立ち入り検査は河野大臣を更迭する十分な理由になりますから」(永田町関係者)

問われる個人情報保護委の本気度
 来年秋に現在の健康保険証を原則廃止する政府方針に逆風が吹き荒れる中、立ち入り検査は政権運営にとって都合がいい側面もあるという。
「マイナンバーカードと保険証の一体化に賛成している日本医師会すらも、『現行の保険証の有効期間延長』を言い始めました。政権が『保険証廃止』に突っ走るか、仕切り直すのか、決めるタイミングは今しかない。そこで、独立性の高い個情委の立ち入り検査が『保険証廃止の延期』へ方針転換する理由になり得るワケです」(同前)
「河野大臣のクビ」と「保険証廃止の延期」に、個情委による立ち入り検査を利用しようとする政権の思惑すらも透けるのだ。
 そもそも、個情委は内閣府の外局として独立性を担保されているものの、デジタル庁を徹底的に調査・監督できるのかどうか。立ち入り検査を実施したとしても、デジタル庁が「再発防止を徹底する」などの体のいい決意表明をするだけで、お茶を濁してしまう事態になりはしないか。個人情報保護の問題などに詳しい南山大の實原隆志教授(憲法・情報法)がこう言う。
「個情委は行政機関などへの立ち入り検査や勧告・命令という強い権限を有していますが、多くの場合、調査対象への報告徴収にとどめる特徴があります。今回は立ち入り検査なので、従来よりも積極的な姿勢を示したことは評価できます。しかし、個情委はあくまでもマイナンバー制度の運用を監視・監督する立場であり、制度そのものの問題を指摘する立場にない。したがって、政府が推し進めている制度を後押しする検査に終わってしまわないかが懸念されます。デジタル庁の対応の問題をあぶり出して提言を出しても、いわば“対症療法”に過ぎません。本当に厳格な監視・監督の役割を果たせるのか、立ち入り検査の結果が問われます」
 マイナ制度への不安がこれだけ高まっているのに、茶番の検査は許されない。


集中企画・マイナ狂騒(15)
河野デジタル相「微々たる数」「問題にならない」発言が火に油マイナ自主返納さらに加速
                          日刊ゲンダイ 2023/07/10
 河野デジタル相が連日、言いたい放題だ──。全国でマイナカードの自主返納が急増しているのは、国民の不信や不安の表れだ。ところが、河野大臣はこうした動きを小バカにする発言を連発。自主返納を“些細なこと”にして、フタをしようと躍起になっている。
                ◇  ◇  ◇
 河野大臣は8日、静岡市内で「(自主返納が)増えているという人がいるが本当に微々たる数だ。マイナンバーカードの申請数は1日1万人を超えている。あまり『返納』『返納』と言わない方がよい」と強調。
 さらに、9日は兵庫県洲本市で「返納についてはほとんど数がないと聞いている。問題ではない」と「問題」にすらならないと言い放った。しかし、自主返納は「微々たる数」で、片づけられる動きなのか──。
 日刊ゲンダイは報道や自治体発表を基に自主返納の件数を調査した(別表 省略)。自主返納の件数を集計していない自治体もあり、報じられていない県も少なくないが、それでも全国であまねく拡大していることがわかる。

マイナ不信、全国に急拡大で焦り?
 河野大臣は件数だけを捉えているが、注目すべきは増え方だ。横浜市は4、5月が十数件だったが、6月は140件と約10倍。佐賀市は4、5月ゼロだったのに6月は13件も発生している。沖縄は4月8件、5月19件、6月80件とトラブル発覚に比例して激増している。「共通番号いらないネット」の原田富弘氏が言う。
「私はマイナンバー制度に反対の立場で、もちろんマイナカードも取得しませんでしたが、マイナカードを自主返納している人は、そういう人ではありません。カードに期待したか、少なくとも、所持することに問題はないと判断して取得したはずです。その人たちがあえて自主返納する動きが、目に見える数字で全国津々浦々に広がっています。河野大臣は『微々たる数』で済ませようとせず、自主返納に込められた国民のメッセージにしっかり耳を傾けるべきです」
 連日、自主返納を矮小化する発言を繰り返しているのは、世論の盛り上がりを警戒した“焦り”の裏返しなのだろうか、これらの発言により、火に油が注がれている。

 ネット上では〈河野大臣が発言すればするほど #マイナンバーカード大返納運動 が起こる〉〈この人は返納した人の気持ちとか、今のトラブル中とか何も感じてないんだな〉〈微々たると言い張る河野ビビってる〉と大炎上だ。
 河野大臣の「上から目線」の不遜な態度は、自主返納の動きをさらに加速させることは間違いない。河野大臣が「ギャフン」と音を上げる日は近いか。