2023年7月14日金曜日

14- トイレ使用制限「違法」性的少数者の職場環境 最高裁が初判断(しんぶん赤旗)

 戸籍上は男性だが女性として社会生活を送る経済産業省の職員が、職場での女性用トイレの使用を制限されたのは不当だとして、国を訴えた裁判の上告審で、最高裁第3小法廷は11日、トイレの使用制限を認めた国(人事院)の対応を「違法」とする判決を出しました。

 裁判官5人全員一致の意見で性的マイノリティーの職場環境に関する訴訟で、最高裁の判断は初めてです。
 原告の職員は、「まだまだ差別や偏見がはぴこる中で、他の差別事案にも応用できる内容の判決だ」と語りました。
 原告の弁護士らは「抽象的な印象で押しつぶしていいのか、と最高裁がメッセージを出した」ことを評価し裁判官「自認する性別に即して社会生活を送ることが誰にとっても重要な利益であ」とした点「トランスジェンダーに対する差別や偏に真剣に向き合っている」と述べました。

 しんぶん赤旗の記事を4編 紹介します。
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主張 トイレ制限「違法」 少数者の尊厳守る環境整備を
                       しんぶん赤旗 2023年7月13日
 戸籍上は男性で、女性として暮らすトランスジェンダーの経済産業省職員が省内の女性用トイレ使用を制限されたのは不当だと国を訴えていた訴訟で、最高裁は国の対応を違法とする判決を出しました。制限を適法とした東京高裁判決は破棄され、原告の勝訴が確定しました。性的少数者の職場環境を巡る訴訟で最高裁が判断を示したのは初めてです。判決は、職員が「日常的に相応の不利益を受けている」とし、経産省と人事院の対応は著しく妥当性を欠くと批判しました。性的少数者の苦しみに寄り添い、職場環境の改善を求めた重要な司法判断です。

当事者の不利益を直視
 原告の職員は入省後に性同一性障害と診断されました。戸籍上の性別変更に必要な性別適合手術は、健康上の理由で受けませんでした。職場に説明し女性の服装で働きましたが、勤務するフロアから2階以上離れた女性用トイレの使用しか許されませんでした。
 制限撤廃の要求を人事院が認めなかったため、同職員は2015年に裁判に踏み切りました。一審の東京地裁は原告が勝訴しましたが、東京高裁は国の違法性を認めず、原告は上告していました。
 最高裁第3小法廷は裁判官5人の全員一致で、トイレ使用制限は国の裁量権の逸脱・乱用であり違法と結論付けました。判決は「具体的な事情を踏まえることなく他の職員に対する配慮を過度に重視し、原告の不利益を不当に軽視するもの」と指摘しました。原告が女性用トイレを使い始めてもトラブルはなく、明確に異を唱える他の職員もいなかった事実に基づいた判断です。原告が処遇の是正を求めてから約4年10カ月も国側が見直しの調査や検討をしなかったことも判決は問題視しています。
 各裁判官の個別意見も示唆に富みます。宇賀克也裁判官は、性別適合手術は生命や健康への危険が伴い経済的負担も大きく、体質で受けられない人もいるとし、手術をしていない場合でも「可能な限り、本人の性自認を尊重する対応をとるべきだ」と述べました。

 トランスジェンダーの人が自認する性別で暮らすことについて長嶺安政裁判官は、とくに「切実な利益」で法的に保護されるべきものだと記しました。渡辺恵理子裁判官も「人として生きていく上で不可欠ともいうべき重要な法益」と指摘しました。同裁判官は、他の女性職員らとの利害調整を「感覚的・抽象的」に行うことは許されず、「女性職員らの利益が本当に侵害されるのか、侵害される恐れがあったのか、具体的かつ客観的に検討されるべきだ」と提起しました。性的少数者への偏見が根強い中、事実に基づく議論を行うべきだという戒めです。

政治の立ち遅れ克服せよ
 最高裁判決を機に、性的少数者の尊厳と権利が保障され、安心して暮らせる社会に向けた動きを加速させなければなりません。
 先の通常国会では、性的少数者への理解を進める法案をめぐり、自民党や日本維新の会の議員を中心に、差別と偏見に満ちた誤った議論が流布されました。自民、公明、維新、国民の4党が当事者の願いに反する法律を強行したことは重大な逆行です。性的少数者の権利と尊厳を保障するために、日本の政治の大きな立ち遅れを克服することが急務です。


トイレ使用制限「違法」性的少数者の職場環境 最高裁が初判断
経産省職員の勝訴確定
                       しんぶん赤旗 2023年7月12日
裁判官全員一致
 戸籍上は男性だが女性として社会生活を送る経済産業省の職員が、女性用トイレの使用を制限されたのは不当だとして、国を訴えた裁判の上告審で、最高裁第3小法廷(今崎幸彦裁判長)は11日、トイレの使用制限を認めた国の対応を「違法」とする判決を出しました。裁判官5人全員一致の意見です。
 性的マイノリティーの職場環境に関する訴訟で、最高裁の判断は初めてです。

 訴えを起こした経済産業省の50代の職員は性同一性障害と診断され、女性として働きたいと要望。しかし、勤務するフロアから2階以上離れた女性トイレしか使用が認められませんでした。これを不服として人事院に改善勧告を求めましたが、退ける判定が出たため、2015年11月、国を相手に提訴。一審・東京地裁は、トイレの使用制限は違法だと判断しましたが、二審・東京高裁は逆に違法ではないとしたため、職員側が上告していました。
 最高裁判決は、性同一性障害の診断を受けた職員が、自認する性別と異なる男性用のトイレを使用するか、勤務するフロアから離れた女性トイレを使用せざるを得ないのは、「日常的に相応の不利益を受けている」と認定。
 人事院判定は、女性トイレの自由な使用について明確に異を唱える別の職員がいたとうかがえないなど「具体的な事情を踏まえることなく、他の職員への配慮を過度に重視し、原告職員の不利益を不当に軽視するもので著しく妥当性を欠く」と判断しました。


差別に向き合う判決 原告の経産省職員・弁護団会見
                       しんぶん赤旗 2023年7月12日
庁舎トイレの制限巡る訴訟
 経済産業省による性的マイノリティーヘの庁舎トイレ使用制限を巡る訴訟で、制限は違法だと最高裁が新たな判断を示しました。この勝訴を受け、原告でトランスジェンダーの50代職員が11日弁護団と東京都内で会見。職員は、性的マイノリティーの職場環境の改善について最高裁が初判断を下したことを高く評価しました。
 原告の職員は、「まだまだ差別や偏見がはぴこる中で、他の差別事案にも応用できる内容の判決だ」と静かに語りました。
 山下敏雅弁護士は、戸籍上は男性で女性として生活する原告が、女性トイレを自由に使用することについて、判決が「トラプル生ずることは想定しがたく、特段の配慮をすべき他の職員の存在が確認されていなかった」とした点に言及。「抽象的な印象で押しつぶしていいのか、と最高裁がメッセージを出したのは評価したい」と述べました。
 立石夏弁護士は、判決の補足意見の中で’裁判官から「自認する性別に即して社会生活を送ることが誰にとっても重要な利益であ」とした点について、「トランスジェンダーに対する差別やに真剣に向き合っている」と強調しました。


「最高裁判決の意義大きい」 トイレ制限「違法」に小池氏
                       しんぶん赤旗 2023年7月12日
 日本共産党の小池晃書記局長は11日の記者会見で、戸籍上は男性で女性として生きる経済産業省の職員が女性トイレの利用を不当に制限されたとして国を相手取って起こした訴訟で、最高裁が同日、利用制限を認めない判決を下したことについて問われ、「当然の判決と受け止めている」「性的少数者への差別的な取り扱いは許されないということが最高裁の判決となったことの意義は大きい」と指摘しました。
 小池氏は、「(原告は)20年来、トランスジェンダー女性として周囲に認められてきたと聞いている。トイレの使用制限がかけられるのは不当だというのはその通りだと思う」と述べた上で、「トランスジェンダーなど性的少数者が排除されたりするようなことはあってはならない。そういう方向での司法判断が下ったと理解している」と語りました。