2023年7月15日土曜日

この国を一体どうしたいのか 岸田首相の恐ろしいほどの思考停止(日刊ゲンダイ)

 12日、リトアニアの首都NATO事務総長と会談した岸田首相は、「戦略的利益を共有するNATO安全保障の分野で4つの優先課題と16の協力分野で協力する」ことを確認し、「インド太平洋への関心と関与を高めるNATOとの連携を一層深化していきたい」と述べました。
 なぜ対露軍事同盟であるNATOにこんなにも入れ込もうとするのか、隣国である中国の存在を無視したその舞い上がり振りは異常というしかありません。
 降って湧いたようなNATO東京事務所開設の問題はフランスの反対でまだ止まっていますが、ロシアと中国を激怒させるだけで何のメリットもないことを何故日本自身が拒否しないのでしょうか。
 バイデン米大統領は同日開催されたG7とウクライナの首脳会議後の演説の冒頭で、「欧州でも米国でも、岸田首相が立ち上がり、ウクライナを支援し、日本の防衛費を増額すると思っていた人はほとんどいなかったと思う」と述べて、岸田首相を賞賛しました。
 岸田氏は大いに喜んだことでしょうが、それは日本が今後毎年数兆円を投じて、超高価でしかも不要な米国の武器を購入してくれることへのリップサービスに過ぎません。

 思想も信条も持たないと言われる岸田首相ですが、国のトップが最低限持たなければならない「国益を守る」という点でも そのカケラさえも持っていません。一体どういうことなのでしょうか。
 日刊ゲンダイが、「この国を一体どうしたいのか (岸田首相の)恐ろしいほどの思考停止」という記事を出し、こんな主体性のない外交をやっているのは世界中で日本くらいのもので、海外諸国は国益を最優先しシタタカな外交を展開していると述べています
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
この国を一体どうしたいのか 岸田空っぽ首相 恐ろしいほどの思考停止
                          日刊ゲンダイ 2023/07/13
                        (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 そういうことか。豪雨災害に苦しむ国民を置き去りにして、リトアニアで開催された「NATO」首脳会議に出席した岸田首相。本人は本気で“支持率アップ”につながると思っているらしい。しかし、ネットでは、支持率アップどころか<九州北部や中国地方の豪雨被害を無視して、本日出発ですか>などと批判の声が噴出している。
 出発の前日、予定通り欧州を訪問するかどうかは「明朝(11日朝)、被害状況を見極めた上で判断する」と口にしておきながら、平然と外遊に出掛けたのだから批判が殺到するのも当然である。雨はやまず、死者まででていたのに、よくぞ出発できたものだ。
 そもそも、日本は加盟国でもないのに、米欧の軍事同盟であるNATOの首脳会議に出席する必要があったのかどうか。日本が首脳会議に招待されたのは、アメリカの都合だ。中国を抑え込むために、アメリカの同盟国である日韓にNATOとの協力を拡大させようとしていた。要するに「呼ばれたから行った」といった程度なのではないか。
 外交通を気取る岸田は、就任以来、やたらと外国に行きたがり、8月以降もアメリカ、インドネシア、インド、さらにアメリカと外遊日程を詰め込んでいる。
 異様なのは、これだけ外交を重ねても、この国をどうしたいのか、まったく見えてこないことだ。中身ゼロの外交をくり返している。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。
「岸田外交の大きな問題は、理念、哲学、メッセージがまったく見えないことです。たとえば、アメリカがウクライナへクラスター爆弾を供与することに対して、イギリス、ドイツ、カナダ、イタリアといった国々が一斉に反対の声を上げているのに、岸田首相は沈黙したままです。賛成なのか、反対なのか意思表示しない。
 クラスター爆弾は、非人道的兵器として『オスロ条約』で製造や使用を禁止されている。日本はオスロ条約に加盟しているのに、なぜ反対しないのか。さらに、NATOの連絡事務所を東京に開設する構想についても、賛否を明確にしない。フランスのマクロン大統領は、中国を刺激することになる東京事務所の開設には、ハッキリと『ノン』の意思表示をしています。東京事務所を開設するかどうか、日本は当事者でしょ。なぜ、意思表示しないのか。アメリカに忖度しているのは明らかです」
 各国が自分たちの考えを堂々と表明しているのに、アメリカの顔色をうかがっているだけの岸田外交を、世界はどうみているのだろうか。軽蔑しているに違いない。本人は外交に自信を持っているらしいが、“空っぽ首相”が外遊を重ねるたびに、国益を損なっている格好だ。

どの国も国益を最優先しているぞ
 こんな主体性のない外交をやっているのは、世界中で日本くらいのものだ。海外諸国は国益を最優先し、シタタカな外交を展開している。
 今回、外交巧者ぶりを見せつけたのがトルコだ。エルドアン大統領はスウェーデンのNATO加盟を巡って、巧みに交渉を進め、しっかりと「果実」を引き出している。スウェーデンの加盟に難色を示し続けて、NATO加盟国をジリジリさせながら、首脳会議の直前、加盟容認に転じることで、見返りとして、長年求めていた「EU加盟」に一歩近づけている。10日のスウェーデン首脳らとの会談後の声明には、「スウェーデンはトルコの加盟交渉を活発化させる努力を支援する」との文言が盛り込まれた。
 さらに、渇望していたアメリカのF16戦闘機の売却についても、バイデン大統領から「支持」を取り付けている。NATOへの新加盟は、既存メンバーすべてが容認しないと認められないルールを巧みに利用した格好だ。ある意味、アメリカまで手玉に取ってしまった。
 イスラエルもアメリカからは「厄介な同盟国」と見られている。アメリカを巻き込み、イスラエルを取り囲むアラブ、イスラム諸国を分断させ、自分たちの優位な状況をつくっている。
 フランスだってシタタカな外交路線を貫いている。NATOの一員でありながら、経済的なつながりが強い中国と親交を深め、台湾問題を巡っても、マクロン大統領は「欧州はアメリカに追従すべきではない」と発言。NATOの東京事務所開設構想についても、中国を刺激することを避けるために反対している。

 同盟国といっても、どの国もアメリカと駆け引きをしているのが実情である。ただただアメリカに隷従しているのは日本だけだ。高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言う。
「日本はトルコやフランスよりも経済力があるのだから、本来、その強い立場を利用し、独自外交を展開できるはずです。なのに、アメリカ追従が染みつき、いまだに『アメリカに従っていれば何とかなる』という発想です。そのため、自分の頭で外交方針を考えることができない、思考停止状態に陥っている。だからか、外国訪問を重ねているのに、岸田首相には独自外交がない。首相就任後にやったことと言えば、海外バラマキくらいでしょう」

アメリカ追随の時代遅れ
 このまま、“空っぽ首相”に外交をやらせていたら、いずれ日本は、アメリカの戦争に巻き込まれることになるのではないか。
 実際、岸田政権の誕生後、アメリカに要求されるまま日本の軍拡は急ピッチで進んでいる。敵基地攻撃能力の保有に、5年で総額43兆円という防衛費の倍増、さらに、殺傷能力のある武器輸出の拡大──と、日本は米中対立の“先兵”役を買って出ている状態だ。
 日本がNATOの首脳会談に出席したことも、中国を相当、刺激したはずである。事実、中国は「アジア太平洋版NATOは必要ない」と怒り狂っている。後から訂正したが、バイデン大統領の「私が彼(岸田首相)を説得し、日本は防衛費を飛躍的に増やした」という発言も、本当のことなのではないか。前出の五野井氏はこう言う。
「すでに国際社会ではアメリカ1強時代は終わりかけています。いまや、アメリカ一国では世界の秩序も保てない。グローバルサウスも含めて、世界は多極化し始めている。『アメリカか中国か』『アメリカかロシアか』といった二元論は、もはや通用しません。必要なのは、どちらか一方に付くのではなく、シタタカに実をとることです。
 アメリカとも中国とも対話できる関係をつくるべきです。フランスは米、中のみならず、グローバルサウスにも目くばりし、多元的な外交を展開しています。それに引き換え、アメリカベッタリの岸田政権は戦略性に欠けている。今のままだと、最悪、アメリカの使い走りになり、日本だけが中国と戦争することになる可能性もあるでしょう」

 首相になってやりたいことを問われた岸田首相は「人事」と答え、子どもに「なぜ首相になったのか」と質問されると戸惑いながら、「一番権限の大きい人なので」と回答。この男には、対策も理念もない。中身のない男に、国益が複雑に入り組んだ外交などやれるはずがないのだ。即刻、クビをかえなければダメだ。