2023年7月3日月曜日

NHK悪質やらせマイナ日曜討論(植草一秀氏)

 放送法第四条では「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」とされていますNHKでは従来政府の施策を批判する意見を紹介する際には必ず賛成意見も添えるようにして来ました。

 ところが2日のNHK日曜討論「河野太郎担当相に問う」では、「マイナカード制度の根本問題はある程度の間違いは許されるものなのかどうか」であったのに、「マイナカードについては間違いはあってはならない」との立場の人間が不在であったと植草一秀氏が指摘しました。鋭い視点です。NHKには元々その視点が欠落していたのかも知れませんが、放送のプロとして許されないことです。
「ある程度の間違いはやむを得ない」ということになると、現状のデタラメさがある程度改善されれば「それで良い」ということになり兼ねないからで、それによって「医療過誤」が起きて死亡したり重篤化することは「決して許されない」というのが植草氏の主張です。
 これから出来ることとしては、デジタル庁は必要にして十分な時間を掛けてシステムとプログラムを見直すと共に、各自治体等は必要にして十分な時間を確保してデータ入力のミスをゼロにすることです。理由がないまま、唯々急かすという今の政府の姿勢は絶対に認められません。
 植草氏のブログを紹介します。
 併せて京都新聞の記事を紹介します。
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NHK悪質やらせマイナ日曜討論
                植草一秀の「知られざる真実」 2023年7月 2日
放送法第4条に次の規定が置かれている。
(国内放送等の放送番組の編集等)
第四条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

マイナカード問題をNHKが取り上げた。「河野太郎担当相に問う」とのテーマで番組が編集された。
マイナカード制度の根本問題は 「ある程度の間違いは許される」ものなのかどうか。
出演者のすべてが 「新しい制度にある程度の間違いは避けられない」との主張を示す。
これでは 「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」を満たさない。
庄司昌彦氏は「交通事故があるからと言って自動車社会を否定することにはならない」と主張した。
別の角度からの見解は、「マイナ制度は自動車社会とは異なり、1件でも事故、誤りは許されない」というもの。
自動車社会である程度の事故が許容されるとの考え方はあり得るが、対象が原発であればどうなるか。「原発である程度の事故は許される」ということになるのか。

ものごとによって「ある程度の間違いが許されるもの」と「ある程度の間違いも許されないもの」に分かれる。
マイナ制度について「ある程度の間違いも許されない」との見解が存在する。
この立場の識者を出演させないなら、「多くの角度から論点を明らかにすること」は不可能。
日本総合研究所上席主任研究員の岩崎薫里氏は、「日本でもそろそろ行政は間違いを犯さないというマインドセットを変える必要がある」と述べた。

政治権力、行政権力に媚びを売る発言者だけをあつめて討論しても、意義のある討論は成立しない。単なる政府広報番組に堕す。
住民票を誤交付すれば人命が奪われる事態も発生し得る。
DV問題が深刻であるとき、住民票の誤交付で悲惨な事件が発生した事実も存在する。
マイナカード問題が論議されてきた最大の背景は重大な個人情報を取り扱うという点にあった。

これまでも指摘してきたが、マイナンバーカード制度に対する反対論の核心が二つある。
第一は現在の日本政府に個人情報を厳正に管理する能力があるのかとの疑問。
第二は現在の日本政府に個人情報を一元管理させる信頼を置けるのかとの疑問。
いま明らかになっているのは第一の問題だ。
氏名、生年月日、住所、性別の4つの項目のうち、氏名、生年月日のみで照合した結果、同姓同名で生年月日も同じ個人が混同されたとの弁明が示される。
また、銀行口座情報との紐付けに際して、端末での操作に際して利用者がログアウトしなかった場合に、次の利用者の入力した口座情報が前に操作した人の情報として紐付けられたとの弁明も示される。

問題は同姓同名で生年月日も同一の個人が存在し得ることを事前に想定できること。
端末を操作した個人がログアウトせずに端末を離れることを事前に想定できること。
このような、当たり前の想定を織り込んで事務フローが設計されていなかったことが問題なのだ。
「ある程度の間違いがあっても構わない」対象であれば問題は大きくない。
しかし、「間違いがあってはならない」対象であれば、この対応では制度運用のリスクが大き過ぎる。

日本政府に個人情報を厳正に管理する能力がないことが明らかになっている。
それにもかかわらず制度の運用を強行するのか。
まずは制度をいったん凍結することが先決だ。

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「マイナ保険証は使い物にならない」資格確認トラブルは6割強 滋賀県保険医協会が政府批判
                             京都新聞 2023/6/30
 開業医らでつくる滋賀県保険医協会は6月29日、マイナンバーカードと一体の「マイナ保険証」に関する緊急アンケートを県内の医療機関に実施した結果、他人の情報とひも付けられていた事例が3医療機関で確認されたと公表した。保険者の情報が正しく表示されない事例があったのは41医療機関に上った。
 アンケートは、約700人の協会員が所属する医療機関550施設に対し、16~23日に実施。医科・歯科診療所126施設と8病院が答えた。
 マイナ保険証で患者の保険資格を確認する「オンライン資格確認」は115医療機関が導入していたが、そのうち64%に当たる74医療機関でトラブルがあった。42医療機関が「カードリーダーやパソコンの不具合でマイナ保険証が読み取れなかった」と回答。ICチップの破損などマイナ保険証の不具合も14医療機関であった。
 (こうした)トラブルに(対して)は、多くの医療機関が従来の健康保険証で資格を確認していた。一方、加入保険が確認できず、いったん医療費を10割請求したとした医療機関が4月以降で6カ所あり、同協会は10件以上の10割請求事案があったと推察した。